HCFMフェローシッププログラムモジュール責任者メッセージ
 「家庭医療学コア」では、専門研修(後期研修)で学んだ家庭医療の概念に関する理解を、実践を通してさらに深めます。

 家庭医には、継続的な医師患者関係のようなミクロな視点と、地域包括ケアのようなマクロな視点の両方が求められます。患者さん一人ひとりの苦悩に寄り添いながら、その一方で全住民と手を携えて地域課題の解決を図る。そうした複眼的思考を身につけることで、ほかの専門医にはない、家庭医ならではの力を磨いていくことにつながると信じています。

 皆さんは専門研修の3年ないし4年間で、さまざまな健康問題に対応する知識・技術、多職種連携の進め方、介護・福祉の知識など、家庭医として独り立ちするために必要なスキルを一通り身につけます。ですが、後期研修の期間だけではどうしても家庭医として大事な2つのポイントを十分に修得することができません。

《Point1》 継続的な医師患者関係の構築
 患者さんの名前を聞けばその家族の顔までパッと頭に浮かぶ。あるいは自分がそこにいることで患者さんが安心して診療所に通うことができる。半年や1年間の診療所研修でそこまでの関係性を築くことは難しいでしょう。家庭医療において、医師患者関係の深まりは質の高い医療の提供に結びつきます。メリットの一つは個別ケアの質向上です。患者さん一人ひとりのニーズ、好み、生活背景に合わせた医療を提供するのが個別ケアですが、2年間同じ診療所にいることで、特に聞き取りに時間を割かなくても、迅速に的確な個別ケアを行うことができます。もう一つは患者さんが抱える苦悩の解消です。半年間の関係性では、病気からくる患者さんのさまざまな苦悩を解決することは難しいでしょう。しかし継続的に医師患者関係を深めることで、医師患者関係そのものが患者さんにとっての癒やし(ヒーリング)になります。「家庭医はBeing thereであることが大事だ」と私たちは専門研修で学びますが、それを知識だけではなく、2年間で実感できることがフェローシップの魅力でもあります。

《Point2》 地域包括ケアアプローチの実践
 専門研修でも地域包括ケアをある程度経験しますが、自ら地域の問題を見つけ出し、診療所の壁を越えて関係機関(行政・医師会・住民ネットワークなど)に積極的に働きかけ、地域住民と一緒に課題解決を図るのは相当時間が掛かります。半年ではもちろん難しいでしょう。ひょっとすると2年間取り組んでも答えがでないかもしれません。しかし、じっくりと時間をかけて地域課題に向き合うことで、地域包括ケアのアプローチ方法を十分に学ぶことができるでしょう。

 「診療所経営」パートでは、診療所の所長として必要とされるマネジメントの基礎を学びます。いわゆるMBAでカバーする「ヒト」「モノ」「カネ」に関する領域を、基礎科目と応用科目に分けた上でほぼすべてカリキュラムに組み込んでいます。

 私は、病院の事業再生の仕事を通してたくさんの経営者を見てきました。倒産した病院の経営者に最も多いのが経営を丸投げする経営者でした。医師といえども経営は人任せにしない、これは非常に大切なことです。HCFMでの学びを通して、診療所内で起きるさまざまな経営課題に対し、事務長などと共通言語で議論しながら自らが課題解決の中心となってリーダーシップを発揮する。いわゆる“経営を丸投げしたく「なくなる」能力”を身につけてもらえたらと思います。

 基礎モジュールでは主にビジネススキルやリーダーシップ論を学びます。具体的には、ファシリテーションスキルやプレゼンテーションスキル、コミュニケーションをスムーズに進めるための衝突解決方法などを学びます。また、診療報酬や医療政策に関する基礎的な知識もカバーします。
 応用モジュールは「ヒト」「モノ」「カネ」の3つの経営資源の視点で構成しています。

「ヒト」
 組織の課題を解決し、成果を出すために必要な人材マネジメントや組織論を学びます。実際に診療所で起こった(しかもどこでも頻発する)ケースを題材として取り上げ、自分ならどう問題を解決するか、議論を重ねながら考察を深めます。

「モノ」
 患者さんから「選ばれる診療所」をめざす上で必要な経営戦略やマーケティングを学びます。

「カネ」
 診療所経営に必要な財務会計の基礎を学びます。会計は非常に複雑なルールに基づいて行われるので取り組みにくい面もあるでしょうが、経営者にとって必須のスキルですから、ここは丁寧にカバーしていきます。

 そして集大成として、診療所開設のシミュレーションを行います。
 具体的に開業場所を設定し、診療圏(どの程度の患者数が見込めるか)や地域特性を調査し、診療所の理念・経営戦略・診療方針を決め、データを元に収入を予測します。さらにどの職種を何人採用し、必要な医療機器や備品、広告宣伝、その他費用を見積もり、何年かけて黒字化させるのか、運転資金がどれだけ必要なのかを試算した上でプレゼンテーションをしてもらいます。私は銀行の融資担当者の視点から数字に無理や矛盾がないか、診療方針や集患対策が地域ニーズと合致しているのかを厳しく審査します。こうしたシミュレーションを通して、現実の診療所経営の厳しさを身をもって知ることとなるでしょう。

 当センターの「教育」には大きく2つの特徴があります。

《1》 家庭医教育の変遷を知る指導医から学ぶ
 当センターの指導医陣は、1996年の設立以来20年に渡って何人もの家庭医を日本各地へ送り出してきました。こうした家庭医教育の変遷を知る指導医と直接対話し、そのふるまいを見ながら学ぶことができるのは当センターの大きな魅力です。

《2》「家庭医療」「経営」「教育」「研究」の4領域を横断的に学ぶ
 4領域は一見まったく別のモノに見えますが、それらは相補的で、お互いの学びに深い影響を与えます。
 たとえば「経営」と「教育」では、「経営」はリソースの限界から見切りをつける、「教育」は逆にリソースや人の限界に挑戦するという側面がありますが、両方とも人が持って生まれたもの、学んで身につけたものを生かしたり、組み合わせるという意味で非常に近い関係性があるので、経営の場においても教育は必ずやプラスになります。将来は診療所の所長を目指している方もそうでない方も、ぜひ積極性を持って教育を学んで欲しいと思います。

 当センターの教育の特徴は「医学を教える以上に、家庭医になることを教える」ことにあります。家庭医教育は地域に根ざし、診療所という現場の中で行うことではじめて成り立ちます。指導医が発する言葉、患者さんに接する姿勢そのものが教育の側面を持つのです。学生・研修医と一対一で向き合ったときに、いかに言葉とふるまいの両方を使って教育を実践できるか、基礎モジュールではそうした日々の教育にフォーカスを当ててコースを展開します。
 一方で応用モジュールは、そこから一歩踏み込み、医学教育全体を見渡しながら家庭医療専攻医プログラムを継続的に評価・改善する力を身につけることを目指します。そのためには、日々の教育の裏側にある“なぜ?”を深掘りできるように心理学、教育学、経営学といった家庭医教育に影響を与えている学問も踏まえる必要があり、また、診療所以外ではどのような教育が行われているのかも知っておかなければいけません。これらの応用モジュールを履修することで、医学教育研究者やプログラムディレクターに求められる能力の基礎を養うことができます。
 家庭医の診療は社会や文化の影響を色濃く受けます。家庭医教育もまた時代性・地域性を強く反映します。すなわち自分が受けてきた教育をそのまま複製するだけでは時代が求める教育を提供できません。ですから皆さんにも、家庭医療の原理原則をしっかりと芯に据えながら、一方で時代に合わせて自分の教育実践を臨機応変に変えるしなやかさを持った指導医になっていただきたいと思います。

 研究には大きく分けて「量的研究」と「質的研究」があります。

《量的研究》
 統計的なデータを取り、仮説を検証して一般化するというのが一つの形です。

《質的研究》
 インタビューや動画データなどの数値化しづらいものを分析して、そこから仮説を形成していきます。「量的研究は仮説検証、質的研究は仮説形成」ともいわれます。

 基礎モジュールでは量的研究・質的研究それぞれの概念や研究方法など、臨床研究の基礎知識を身につけます。
 応用モジュールでは実際に量的研究の研究プロジェクトをゼロから立ち上げます。自分の経験から生まれた漠然とした疑問をリサーチクエスチョン(研究設問)に変えて研究計画書に落とし込み、データを取って、結果を元に考察し、発表にまとめるまでを1年半かけて行います。
 最初はモヤモヤしていたことが研究を通して結晶化されて見えるようになるプロセスには、日々の診療とはまた違った達成感や面白さを感じられるはずです。
研究というと臨床現場から離れて研究室に閉じこもるイメージがあり、「自分には関係ない」と思っている方もいるでしょう。ですが、臨床の中から研究のタネを見つけるのもリフレクション(振り返り)の力ですし、それを研究計画に仕立てるデザイン力や、研究を通して培われるマインドは、確実に家庭医としての武器となるでしょう。
 北海道家庭医療学センターでは、日常の診療とドッキングした「家庭医らしい」臨床研究のあり方を長年追究してきました。
 たとえば私自身が行った研究テーマに「介護に関する家族内関係性が介護負担感に与える影響」(2013年日野原賞受賞)があります。ある家族の中に病気・障害を抱えた患者さんがいる。その患者さんを取り巻く家族内の関係性が良い場合と悪い場合で、介護する人の負担感がどう違うのかを数値化してまとめたのがこの研究です。家族内関係が良いと介護負担感は軽く、家族内関係が悪ければ介護負担感は重い。だから介護負担を軽減するためには家族全体にアプローチすること(家族志向型ケア)がいかに重要であるかを結論として導きます。
 総合診療専門医が19番目の基本領域として新設されますが、基本領域の一つである以上、家庭医療(総合診療)の分野においても今後ますます固有の研究を積み重ねていくことが求められていくでしょう。
 家庭医療において学術分野はまだまだ未開拓の領域です。家庭医らしい研究、家庭医にしかできない研究を私たちと築いていきましょう。
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