特発性肺線維症の早期診断におけるfine crackles

―文献名―
Onofre Moran-Mendoza, Thomas Ritchie, Sharina Aldhaheri. Fine crackles on chest auscultation in the early diagnosis of idiopathic pulmonary fibrosis: a prospective cohort study. BMJ Open Resp Res: first published as 10.1136/bmjresp-2020-000815 on 7 July 2021.

―要約―
Introduction:
特発性肺線維症(IPF)は、原因不明の間質性肺疾患(ILD)であり、通常60歳以上で発症し、予後は不良で、診断時からの生存期間の中央値は2~3年である。IPFは、原因不明の呼吸困難を伴うすべての成人患者で考慮されるべきであり、一般に咳、二基底性吸気性ラ音、ばち指を呈する。IPFの診断と治療の開始は2年以上遅れることがあり、その結果死亡率が高くなることが示されている。現在、ニンテダニブとピルフェニドンの2つの利用可能な抗線維化薬があり、これらは病気の進行を遅らせ、死亡率を低下させる可能性がある。IPFが疑われる患者を専門医に早期に紹介することで、早期の治療と予後の改善に繋がる可能性がある。
高解像度胸部CTは、ILDを診断するための最良の非侵襲的検査だが、スクリーニングとして使用するには費用がかかり、実用的ではない。胸部聴診によるfine cracklesは、現在、IPFを早期に診断するための唯一の現実的な手段であることが示唆されている。これまで、IPFの早期診断におけるfine cracklesの役割を評価した研究はない。
今回、IPFおよび他のILDの早期診断におけるfine cracklesの有用性を評価する目的で研究を行った。

Method:
カナダのオンタリオ州にあるキングストン健康科学センターのILDクリニックに紹介されたすべての患者の胸部聴診におけるクラックル音の存在と種類を前向きに評価した。この研究に含まれる患者は、IPFの事前診断がなく、一部の患者は無症候性であるか、呼吸機能検査で正常とされていた。ILDの最終診断が確立される前に、様々なレベルの経験を持つ臨床医が胸部聴診を行い、他の臨床医の評価と最終診断を知らされていない標準化されたデータ収集フォームにcracklesの存在と種類を記録した。
Cracklesの存在と種類は、各患者の最初とその後の来院時に、臨床医によって次のように記録された:(a) no crackles, (b) fine crackles, (c) coarse crackles, (d) fine cracklesとcoarse cracklesの両方。cracklesの識別は、診断(IPFと非IPF)、およびcracklesの識別に影響を与える可能性のある患者と臨床医の特性によって層別化された。

Results:
ILDクリニックに紹介された290名のILD患者を評価した。最初の所見では、IPF患者の93%と非IPFのILD患者の73%が聴診でfine cracklesを認めた。IPFの患者では、咳(86%)、呼吸困難(80%)、拡散能の低下(87%)、総肺活量の低下(57%)、強制肺活量の低下(50%)よりもfine cracklesが一般的だった。その後の来院時の診察では、最初にfine cracklesを認めた患者の90%で、同じタイプのcrackle音が確認された。重回帰分析では、fine cracklesの識別は、肺機能、症状、肺気腫、COPD、肥満、または臨床医の経験による影響を受けなかった。

Discussion:
本研究の結果、無症候性の患者や呼吸機能検査で正常だった患者を含む、ほとんどのIPF患者にfine cracklesが存在し、肺気腫、COPD、肥満の患者、または胸部聴診を行った臨床医の経験に関係なく、適切に識別できることが示された。胸部聴診のfine cracklesは、IPFや他のILD患者の早期診断と治療に繋がる可能性のある、高感度で堅牢なスクリーニングツールである。

【開催日】
2021年7月14日(水)

ビスフォスフォネート製剤中止のメリットとデメリット

―文献名―
Dennis M. Black 「Atypical Femur Fracture Risk versus Fragility Fracture Prevention with Bisphosphonates」 N Engl J Med 2020;383:743-53.

―要約―
Introduction:
ビスホスホネート製剤は,大腿骨近位部骨折および骨粗鬆症性骨折の減少に有効である.しかし非定型大腿骨骨折への懸念からビスホスホネート製剤の使用が大幅に減少しており,大腿骨近位部骨折の発生率が上昇している可能性がある.非定型大腿骨骨折と,ビスホスホネート製剤およびその他の危険因子との関連には重大な不確実性が残っている.

Method:
カイザーパーマネンテ南カリフォルニアの医療システムに加入しており,ビスホスホネート製剤の投与を受けている 50 歳以上の女性を研究対象とし,2007 年 1 月 1 日から 2017 年 11 月 30 日まで追跡した.主要転帰は非定型大腿骨骨折とした.ビスホスホネート製剤の使用を含む危険因子に関するデータは電子診療録から取得した.骨折は X 線写真で判定した.解析には多変量 Cox モデルを用いた.リスク・利益プロファイルは,関連する非定型骨折と予防されたその他の骨折とを比較する目的で,ビスホスホネート製剤の使用期間 1~10 年でモデル化した.

Results:
女性 196,129 人のあいだで,非定型大腿骨骨折は 277 件発生した.多変量補正後,非定型骨折のリスクはビスホスホネート製剤の使用期間に伴って上昇し,3 ヵ月未満の場合と比較したハザード比は,3 年以上 5 年未満で 8.86(95%信頼区間 [CI] 2.79~28.20)であり,8 年以上で 43.51(95% CI 13.70~138.15)まで上昇した.その他の危険因子には,人種(アジア人の白人に対するハザード比 4.84,95% CI 3.57~6.56),身長,体重,グルココルチコイドの使用などがあった.ビスホスホネート製剤の中止は,非定型骨折リスクの急速な低下と関連した.ビスホスホネート製剤の 1~10 年間の使用中の骨粗鬆症性骨折・大腿骨近位部骨折リスクの低下は,白人では非定型骨折リスクの上昇をはるかに上回ったが,アジア人では白人ほど大きくは上回らなかった.白人では,使用開始後 3 年の時点で大腿骨近位部骨折は 149 件予防され,ビスホスホネート製剤に関連する非定型骨折は 2 件発生したのに対し,アジア人ではそれぞれ 91 件と 8 件であった.
非定型大腿骨骨折のリスクはビスホスホネート製剤の使用期間とともに上昇し,ビスホスホネート製剤の中止後速やかに低下した.アジア人は白人よりもリスクが高かった.非定型大腿骨骨折の絶対リスクは,ビスホスホネート製剤投与に伴う大腿骨近位部骨折およびその他の骨折リスクの減少と比較して,非常に小さい状態が持続した.(カイザーパーマネンテほかから研究助成を受けた.)

Discussion:
第一に、治療を受けた大部分がアレンドロネート(アクトネル)であったため、他のビスフォスフォネート系薬剤やデノスマブなど、他の薬剤や製剤に推論を広げることはできませんでした。第二に、ビスフォスフォネートの曝露を含む共変量の評価は、カイザーパーマネンテの会員期間に限定されているため、コホートに参加する前の会員期間が短い人のビスフォスフォネートの累積曝露量が過小評価されている可能性がある。第三に、今回のリスク・ベネフィットの比較は、骨折の数のみに基づいている。より完全な比較を行うには、コストに加えて関連する罹患率や死亡率を考慮する必要がある。非定型大腿骨骨折後の死亡率は、データは限られているが、股関節骨折後よりも低い。1~5年間の治療による骨折減少のモデルは、無作為化臨床試験による強力なエビデンスベースを持っているが、5年以上になるとエビデンスベースはより限定される。確認された大腿骨骨折の約16%については、X線写真が得られなかったか、判定に不十分であったため、非定型骨折の真の発生率が過小評価されている可能性がある。第四に、黒人の非定型大腿骨骨折は2件のみであり、この集団での推論を妨げるものであった。

【開催日】
2021年7月14日(水)

Testing rates in patients at high risk for primary aldosteronism (March 2021)

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

―文献―
Cohen JB, Cohen DL, Herman DS, Leppert JT, Byrd JB, Bhalla V. Testing for Primary Aldosteronism and Mineralocorticoid Receptor Antagonist Use Among U.S. Veterans : A Retrospective Cohort Study. Ann Intern Med. 2021 Mar;174(3):289-297. doi: 10.7326/M20-4873. Epub 2020 Dec 29. PMID: 33370170; PMCID: PMC7965294.

―要約―
Introduction:
原発性アルドステロン症は治療抵抗性高血圧の一般的な原因である。しかしカリフォルニア、イリノイ、およびニューヨークのヘルスシステムの研究からのエビデンスでは原発性アルドステロン症の検査率が推奨されている患者の間で3%未満と低いことが示唆されている。
しかし、同様の研究は大規模には行われておらず、大規模で高度に統合された医療システムで検査率が低いかどうかは不明である。明らかな治療抵抗性高血圧の発症と検査に関連する要因を有する米国退役軍人における原発性アルドステロン症の検査頻度を評価することを目的とした。また、テストがMRA療法による明らかな治療抵抗性高血圧のエビデンスに基づく治療及び長期血圧コントロールの違いと関連しているかどうかを評価しようとした。
Method:
 Design:レトロスペクティブコホート
 Date Source:米国退役軍人保健局(VHA) Corporate Date Warehouseの米国退役軍人保健局データを使用。このデータには約900万人の退役軍人に関する詳細な診断コード、検査結果、バイタルサイン、薬局の処方記録が含まれる。
Participants
2000年〜2017年に明らかな治療抵抗性高血圧(n=269,010)の退役軍人で、治療抵抗性高血圧とは3種類の降圧薬(利尿薬を含む)で治療中に少なくとも1ヶ月間隔で収縮期血圧が140mmHgもしくは拡張期血圧が90mmHg以上であること、もしくは4つのクラスの降圧薬を必要とする高血圧で定義される。
 除外:原発性アルドステロン症の検査を受けた、または明らかな治療抵抗性高血圧の基準を満たす前にMRA治療を開始した患者、および明らかな治療抵抗性高血圧の基準を満たす前に慢性腎臓病ステージ4または5または末期腎臓病を患った患者を除外した。
primary end point:血中アルドステロン濃度と血漿レニン活性まだは血漿レニン濃度のいずれかの同時測定として定義される、原発性アルドステロン症の検査の実施割合
secondary end point:MRA治療の開始とSBPの経時的変化

Results
明らかな治療抵抗性高血圧の基準を満たした後の、フォロー期間の中央値は3.3年で、4277人(1.6%)が原発性アルドステロン症の検査を受けた。(Figure1) Figure2の左の図は各VHA医療センター(n=130)で原発性アルドステロン症の検査を受けた治療抵抗性高血圧症の患者の割合を示している。検査率は全体の0~6%で明らかな治療抵抗性高血圧の患者数は医療センター全体の検査率との相関はなかった。Figure2の右の図は年ごとの検査率で検査率は年間1〜2%だった。
(Appendix Figure)原発性アルドステロン症の検査に関連する要因として、患者レベルでは低カリウム血症(standardized hazard ratio [HR], 1.93 [95% CI,1.80 to 2.07])、より高いSBP(standardized HR, 1.43 [CI,1.37 to 1.49])、を含むいくつかの要因が検査を受ける可能性が高い。また、腎臓内科医(HR,2.05[95%CI,1.66~2.52])または内分泌科医(HR,2.48[95%CI,1.69~3.63])による患者の問題を特定するための外来(index visit)はプライマリケアと比較して検査をする可能性が高いことに関連していた。センターレベルでは地方は非地方より検査をする可能性が低かった(HR, 0.53 [CI, 0.31 to 0.91])。
(table2)原発性アルドステロン症の検査を実施した場合は検査なしの場合と比較して、MRA療法を開始する可能性が4倍高く(HR 4.10[CI3.68~4.55])、低カリウム血症の病歴のある患者は低カリウム血症のない患者(HR, 4.21 [CI, 3.59 to 4.94])よりMRA(HR, 7.11 [CI, 6.25 to 8.10])で治療される可能性は高かった、そして、時間経過とともにより良い血圧コントロールと関連していた。
 Limitation:主に男性のコホートで後ろ向きデザイン、誤分類に対する診察室血圧の感受性の問題、および原発性アルドステロン症の確定検査の欠如などがlimitationである。
Conclusion:明らかな治療抵抗性高血圧を伴う退役軍人に関する全国的に施行したコホートでは原発性アルドステロン症の検査は稀であり、原発性アルドステロン症の検査はMRAによるエビデンス に基づく治療の割合が高いことと、長期的なBPコントロールが優れていることに関連していた。この発見は小規模な医療システムにおけるガイドライン推奨の実践への遵守が低いという以前の観察を補強し、治療抵抗性高血圧患者の管理を改善する緊急の必要性を強調している。

【開催日】
2021年7月7日(水)

家庭医が患者からの要求を妥当ではないと感じ、そのまま受け入れるのも、拒否するのもいずれも難しい時にどう対応するか -フォーカスグループ研究-

―文献名―
Jørgen Breivold, Karin Isaksson Rø, Stefán Hjörleifsson, Conditions for gatekeeping when GPs consider patient requests unreasonable: a focus group study, Family Practice, 2021;, cmab072, https://doi.org/10.1093/fampra/cmab072

―要約―
Background: 患者からの要求を家庭医が妥当ではないと考えるような場合、それは、家庭医と患者の間での衝突のもとになりうる。そうした時に、ゲートキーピングは難しいものとなる。なぜなら、家庭医は、医師患者関係を保つことと、医療の過剰利用による害から患者を守ること、そして、有限なヘルスケアリソースの管理者として振る舞うことの間のせめぎ合いの中で折り合いをつけなければならないためである。そのような困難な診療を家庭医がどうやってうまく収めているのかについて、更なる知識が必要である。

Objective: ノルウェーの家庭医が、妥当ではないと考えるような患者からの要求を受けた際に、どのような状況があれば、その中でもゲートキーパーとしての役割を果たす能力がひきだされるかを探索する

Methods: 2019年に、3回のノルウェーの家庭医のフォーカスグループに基づいた質的調査を行なった。その中で、患者が一見妥当ではない要求をしてきたが、家庭医が臨床的に適切な形で診療を収めることができたような外来について調査した。Thematic crosscase analysisを、Systematic Text Condensationを用いてそのフォーカスグループの逐語録をもとに行なった。

Results: 家庭医が患者の妥当ではない要求に直面した時に助けになる状況として以下の三つのテーマが見出された。
(i) communication skills for mutual understanding and trust
・患者の要求が妥当でないと感じるのは、家庭医がその背景の事情や文脈を理解していないサインであると考える
・家庭医がそう感じるだけでは不十分で、診療の中で、患者がその要求の背後にある懸念を家庭医に理解してもらえたという土台が必要である。よって、家庭医は、患者側の視点に対して尊重を示し、患者がやりとりにより関わるよう促す必要がある
・患者から信頼を得るための戦略は家庭医によって異なったていた:
例:自身の過去の医療経験を強調して示す、診察を丁寧に行うことでその後の主張に箔をつける、など
・患者の視点に共感しつつも、的確な説明を行うことで誤解があればそれがどこなのかはっきりさせることではじめて、患者が当初要求していた内容とは違う結末に診療がなってもそれを受け入れることができる可能性が出てくる

(ii) a long-term perspective
・時間が経つことでお互いがお互いの視点に寛容になり、協調できるようになっていくプロセスを研究参加者は話していた
例えば、患者側は、この家庭医は最後まできっちり面倒をみることや、フォローが必要になってもしっかり対応してくれることを経験することで、医師側は、患者の置かれた状況の具体性・固有性に詳しくなることではじめは妥当でないと感じた要求についても何らかの対応ができるようになっていく
・患者との諍いを避けすぎると、医師としての一貫性は保てない一方で、医学的視点にこだわると、診療全てでよい結果を出していくことができないため、柔軟な姿勢で問題解決に臨むことが信頼につながるし、厳密すぎると患者と衝突するだけである。交渉の余地はケースごとに異なり、時には受け入れ可能な範囲での妥協が必要となる(外科には紹介できないが、理学療法ならできる、など)

(iii) Support of the gatekeeper function
ゲートキーピングの役割は、医療サービスへの要求が高くなり、患者の消費者主義的な態度を促進する社会的な力のために、ますます困難になっている。患者はゲートキーピングの役割を認識し、それがGPに求められていることを前提として知る必要がある。専門職としてのコミュニケーション技術および関係性の継続性に重点をおくことによって、家庭医はゲートキーパーとしての役割を維持することが可能となる。
(それだけでなく)専門職の中および社会から、そうしたゲートキーパーの役割を支えるような視点も必要である。これは、GP自身の責任でもあると研究参加者は述べていた。GPは、患者が医師に期待して然るべきことを伝えるべく公の議論に参加すべきであり、GP間で、意見の割れる医療問題についてより意見を統一できるよう努力すべきとした。しかし、GPのゲートキーピングの役割は、公的機関からの公式情報でも説明されるべき(例:抗生物質の過剰利用を避ける広報活動によって風邪への抗生物質の使用を避けることを説明しやすくなった)であり、それによってGPの役割には医療の過剰利用から患者を守ることや、共有資源の管理者としての役割が含まれることが正当化される。

Discussion
内容について:
患者からの妥当ではない要求に対処するためには、患者の視点を探り、その妥当性を認め、信頼を築くための特定のコミュニケーションスキルが必要であるというこれまでの研究結果に合致するものだった。
本研究では、GP側の柔軟な態度や関係性の継続性が重要であり、先行研究におけるGPがゲートキーパーの役割を果たすために、競合する要素の間で妥協をしているという結果と合致するものだった。
また、プライマリケアにおける関係性の継続性は、死亡率や、専門家の利用を減らしつつ、スタッフと患者の満足度をあげるという研究もある。
本研究の本質は、家庭医が、非現実的な医療に対する期待に由来する患者との意見の不一致を解消するには、社会からゲートキーパーの役割を認められている必要があるという点である。プロフェッショナリズムの理論によると、ある専門職の権威は、そのメンバーが公共の利益のための特定のタスクを実行するために自分のスキルを採用すべきであり、専門職が非専門家よりもこれらのタスクを管理するのに適しているという合意に依存している(25)。さらには、専門職の正当性は、その実践の土台となる間主観的な規範についての幅広い合意に依存している。医療サービスの商品化や商業化、医療情報や医療技術の普及は、何が患者の利益になるかという医師の判断に対する患者の信頼をある程度損なっているように思われる(29)。先行研究によると、拒否の交渉をする際に、長年の患者と医師の関係を維持するためにGPが用いる戦略の一つは、責任をプライマリ・ケア組織やガイドラインなどの遠く離れた第三者に負わせることである(28)。よって、ゲートキーピングは、個々の臨床の場ではなく、社会的な文脈で理解されるべきである。
近年、医療の過剰使用に対処するためのさまざまな専門的な取り組みが国際的に開始されていますが(32.35)、GPが医療の過剰使用による害から患者を守る能力を支援する上で、このような取り組みの有効性はまだ調査されていないため、更なる調査が待たれる。

Conclusion:GPがゲートキーパーとしての役割を維持するためには、専門的なコミュニケーションスキルと人間関係の継続性が優先される必要があります。しかし、theory of professionsで予測されるように、ゲートキーパーとしての役割は、医療専門職の中だけでなく、社会や公的機関からのサポートが必要である。

【開催日】
2021年7月7日(水)

COPD患者と在宅NPPV

―文献名―
Wilson ME, et al. Association of Home Noninvasive Positive Pressure Ventilation With Clinical Outcomes in Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA. 2020 Feb 4;323(5):455-465.

―要約―
Introduction
COPD患者の急性増悪時における高CO2血症・急性呼吸不全に対してのNIPPVの院内使用についてはエビデンスが確立している(COPD急性増悪による急性呼吸不全の患者において、院内NIPPVは、死亡率の低下、気管挿管の減少、入院期間の短縮、合併症の減少に関連していることがわかっている。)しかし、慢性COPDと高CO2血症における在宅NIPPVとその転帰との関連は不明である。
COPD および高CO2血症の患者において、bilevel positive airway pressure (BPAP)およびnoninvasive home mechanical ventilator (非侵襲的HMV)による在宅 NIPPV と臨床転帰および有害事象との関連を評価した。

※呼吸機器の定義に関しては、eTable2参照
BPAP装置は通常、圧換気を行うが、換気モードやモニタリング機能が追加されている場合がある。HMVは、Pressure control換気、Volume control換気などが可能であり、通常は気管切開した患者に使用されるが、NIPPVでも使用できる。BPAP装置と比較して、追加の換気モード、モニタリング、制御機能、および安全装置、アラーム、バックアップ電源の機能を備えている。

Method
1995年1月1日から2019年11月6日までに発表された英語の論文をMEDLINE、EMBASE、SCOPUS、Cochrane Central Registrar of Controlled Trials、Cochrane Database of Systematic Reviews、National Guideline Clearinghouse、Scopusで検索した。
在宅NIPPVを1か月以上使用した高CO2血症を伴うCOPDの成人を登録した無作為化臨床試験(RCT)および比較観察研究を対象とした。
データの抽出は独立した 2 人のレビュアーが行った。バイアスについてはRCT については Cochrane Collaboration の risk of bias tool を用いて評価し、非ランダム化研究については Newcastle-Ottawa Scale の選択項目を用いて評価した。
主要評価項目は、最長追跡期間における死亡率、全原因による入院、挿管の必要性、および QOL とした。副次評価項目は、呼吸器疾患による入院、救急外来受診、集中治療室(ICU)への入室、COPDの増悪、日常生活動作、呼吸困難、睡眠の質、運動耐容能、有害事象とした。

Results
21件のRCTと12件の観察研究の合計51085名の患者(平均年齢65.7歳、女性43%)が対象となった。
死亡者は434名、挿管を行った患者は27名であった。

BPAPと装置なしの比較

死亡リスクを有意に低下させた。
2.31% vs 28.57%、RD-5.53%[95%CI; -10.29%~-0.76%]、OR0.66 [95% CI; 0.51〜0.87]、P=0.003
全原因による入院患者を優位に減らした。
39.74% vs 75.00%、RD-35.26%[95% CI; -49.39%〜-21.12%]、OR0.22[95% CI; 0.11〜0.43]、P<0.001
挿管の必要性を優位に減らした。
5.34% vs 14.71%、RD-8.02%[95%CI; -14.77%〜-1.28%] OR0.34[95% CI; 0.14〜0.83]、P=0.02
QOLには有意な差は見られなかった。

非侵襲的HMVと装置なしの比較

死亡リスクに有意差はなかった。
21.84% vs 34.09%、RD-11.99%[95% CI; -24.77%~0.79%]、OR0.56[95% CI; 0.29-1.08]、 P=0.49

有害事象

NIPPVを使用した場合と装置を使用しない場合と比較して、有意差はなかった。重篤な副作用はほとんどなく、0.24/人で非重篤な副作用が出現、多くは皮膚症状(顔面発疹や鼻潰瘍)、眼症状、鼻症状だった。

Discussion
COPD と高CO2血症の患者を対象としたこのメタアナリシスでは、家庭用 BPAP は装置を使用しない場合と比較して、死亡率、全原因による入院、挿管のリスクを低下させたが、QOL には有意な差はなかった。非侵襲的HMVは装置を使用しない場合と比較して、入院リスクの低下と有意に関連していたが、死亡リスクには有意差がなかった。
しかし、エビデンスの質は低~中程度で、QOLに関するエビデンスは不十分であり、いくつかのアウトカムの分析は少数の研究に基づいていた。
装置の種類、設定、PaCO2減少に伴う調整方法などについては依然として不明。一部の研究では、より高強度のNIPPVや、追加のモードや機能を備えた装置で転帰の改善が確認されているが、装置のモードを比較した他の研究では転帰の違いは確認されていない。また、どのPaCO2閾値でNIPPVを開始すべきか、閾値が低くても臨床的に有意な効果があるかどうかも不明なままである。現在のガイドライン、推奨事項、実施方法は様々である。

※日本のガイドラインについては下図参照

NIPPVを受けた患者の顔面発疹や粘膜乾燥などの非重篤な有害事象の発生率は25%近くに及んだが、重篤な有害事象はまれであり、発生率はNIPPVを使用した群と使用していない群とで有意差はなかった。

【開催日】2021年6月9日(水)

COVID-19既感染者に新型コロナワクチン(mRNA BNT162b2:ファイザー/ビオンテック社)を接種したときの副反応について

―文献名―
Antonella d’Arminio Monforte, Alessandro Tavelli, et al. Association between previous infection with SARS CoV-2 and the risk of self-reported symptoms after mRNA BNT162b2 vaccination: Data from 3,078 health care workers.E Clinical Medicine 36 (2021) 100914.

―要約―
【背景】
医療従事者(HCW)は,SARS CoV-2による感染症に罹患するリスクが高いため,ワクチン接種の優先順位が高い。 本研究では過去にCOVID-19の罹患歴のあるHCWにおいて、ワクチン接種後の重度および中等度の全身症状のリスクが高いかどうかを調査することを目的とした。

【方法】
イタリア・ミラノの2つの大規模三次病院(ASST Santi PaoloおよびCarlo)で2021年1月4日から2月9日の間に抗SARS CoV-2 mRNA BNT162b2ワクチンを接種したHCW全員のコホートにオンラインアンケートを実施した。アンケートは2回実施.1回目は2回目接種の直前,2回目は2回目接種2週後.過去のSARS-CoV-2感染/COVID-19発症,2回の各投与後の局所および全身の症状を報告してもらった。中等度の全身症状は「日常生活に支障をきたすもの、または休業を余儀なくされるもの」とした。中等度の全身症状に関連する因子をロジスティック回帰で特定した。

【結果】
3,078人のHCWが対象となった。うち,SARS-CoV-2感染/COVID-19の既往のあるものは396名(12.9%)であった。対象となったHCW全体では59.6%が1回目の投与で、73.4%が2回目の投与で、局所的または全身的な症状を1つ以上経験していた。重度の全身症状,重篤な有害事象は報告されなかった。中等度の全身症状については1回目と2回目の投与後に、それぞれ6.3%(COVID-19経験者14.4% vs COVID-19未経験者5.1% p<0.001)と28.3%(COVID-19経験者24.5% vs COVID-19未経験者28.3% p=0.074)に発生した。(Table2,Table3,下記)すでにCOVID-19を経験している被験者は、初回投与後に中等度の全身症状のリスクが独立して3倍高くなり、2回目の投与後には30%低くなった。

【適応】
今回のデータは、既感染のHCWにおいては重篤な有害事象がなく,短期間の副反応が発生することを現実世界において証明した。女性や若年層と同様に免疫反応の違いがこのグループのHCWの中等度の全身症状の要因となっている可能性がある。

【資金提供】
資金提供なし。

Table2. 1回目のワクチン接種後

Table3. 2回目のワクチン接種後

【開催日】2021年6月9日(水)

低線量CTによる肺がん検診の有益性

-文献名-
Mark H. Ebell, Michelle Bentivegna and Cassie Hulme. Cancer-Specific Mortality, All-Cause Mortality, and Overdiagnosis in Lung Cancer Screening Trials: A Meta-Analysis. The Annals of Family Medicine November 2020, 18 (6) 545-552.

-要約-
【背景】肺がんは罹患率と死亡率の重要な原因であり、2020年には推定228,820人が新たに診断され、135,720人が死亡すると予想されている。早期発見は乳がんと大腸がんの疾患特異的死亡率を減少させることが示されている。胸部X線撮影によるスクリーニングは肺がん診断時からの生存率を改善するが、この効果はリードタイムバイアスによるものであり、肺がん特異的死亡率と全死亡率は改善されていない。National Lung Screening Trial(NLST)では、55~74歳で少なくとも30年以上の喫煙歴があり、現在喫煙者であるか、または過去15年以内に禁煙したことがある53,454人の参加者を対象に、低線量コンピュータ断層撮影(LDCT)と胸部X線撮影を比較した。 NLSTの結果は2011年に発表され、2013年には米国予防サービスタスクフォースが、現在の喫煙者または過去15年間に禁煙した喫煙歴30年の55~80歳の人にLDCTを用いた肺がん検診を推奨した。 イタリアのDetection and Screening of Early Lung Cancer With Novel Imaging Technology(DANTE)試験では1.01(95%CI、0.70-1.44)、デンマークの肺がんスクリーニング試験(DLCST)では1.03(95%CI、0.66-1.60)であった.2019年のメタアナリシスでは、死亡率の結果が得られた5件の研究のみが同定された。 同年の第2回メタアナリシスでは、LDCTを用いた肺がんスクリーニングのランダム化試験9件の死亡率データが報告されたが、オランダとベルギーの試験であるNederlands-Leuvens Longkanker Screenings Onderzoek(NELSON)試験の最終データは、2020年2月まで公表されておらず、含まれていなかった。さらに、このメタアナリシスでは、欠陥のある試験のデータが含まれており、全死因死亡率のデータとNELSON試験の女性のデータが除外されており、絶対的なリスク低下とスクリーニングに必要な数が推定されていなかった。そこで我々は、肺がんに対するLDCTスクリーニングと疾患特異的死亡率および全死因死亡率との関係を理解することを目的として、これらの制限に対処した質の高いランダム化比較試験のメタアナリシスを新たに実施した。第二に、スクリーニングの重要な潜在的危害である過剰診断の証拠を評価した。
【目的】肺がん特異的死亡率および全死亡率を減少させるための低線量コンピュータ断層撮影(LDCT)を用いた肺がん検診の有益性は明らかではない。我々は、転帰との関連を評価するためにメタアナリシスを実施した。
【方法】LDCTスクリーニングと通常のケアまたは胸部X線撮影を比較するランダム化比較試験を同定するために、文献および以前のシステマティックレビューを検索した。ランダム効果モデルを用いてメタアナリシスを行った。主要アウトカムは、肺がん特異的死亡率、全死因死亡率、および過剰診断の指標としてのスクリーニング群と非スクリーニング群の間の肺がんの累積発生率であった。
【結果】バイアスのリスクが低い90,475人の患者を対象とした8つの試験に基づいてメタアナリシスを行った。LDCTスクリーニングにより肺がん特異的死亡率の有意な減少が認められた(相対リスク=0.81;95%CI、0.74-0.89)(Figure.2);推定絶対リスクの減少は0.4%(スクリーニングに必要な数=250)であった。全死因死亡率の減少は統計的に有意ではなかった(相対リスク=0.96;95%CI、0.92-1.01)(Figure.3)が、絶対リスクの減少は肺がん特異的死亡率の減少と一致していた(0.34%;スクリーニングに必要な数=294)。追跡期間が最も長い研究では、肺がんの発生率はスクリーニング群で25%高く、過剰診断の割合は20%であった。
【結論】このメタアナリシスは、過剰診断の可能性のトレードオフはあるものの、肺がん特異的死亡率の有意な減少を示しており、肺がんリスクの高い人にはLDCTによる肺がんスクリーニングを推奨することを支持している。

【開催日】2021年3月3日(水)

急性心筋梗塞後の長期ベータブロッカー療法の継続期間(2020年12月)

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。
-文献-
Long-term b-blocker therapy and clinical outcomes after acute myocardial infarction in patients without heart failure: nationwide cohort study
European Heart Journal (2020) 41, 3521–3529 doi:10.1093/eurheartj/ehaa376

-要約-
Aims
長期間のベータブロッカー療法とAMI後に心不全を起こしていない患者での臨床的アウトカムの関連を調査すること
Method
2010年〜2015年の間に退院時にベータブロッカー療法によるAMIの冠動脈血行再建術を受け、死亡、再発性MI、またはHFが1年間発生しなかった、合計28,970人の18歳以上の患者が韓国の全国医療機関の保険データから登録された。
Primary outcomeは全死因。
Secondary outcomeは再発性MI、新規HFによる入院、全死因による死亡・再発性MI・新規HFによる入院の各二次転機と複合アウトカム
Outcomes
アウトカムは指標MI後1年後のランドマーク分析を利用して1年以上のベータブロッカー療法(N=22707)と1年未満のベータブロッカー療法(N=6263)の結果を比較した。(Figure1)
フォローアップ期間の中央値は3.5年(2.2~5.0年)、1684人が死亡した。
1年未満のベータブロッカー療法を受けた患者と比較して、1年以上のベータブロッカー療法を受けている患者は、全死因による死亡リスク [調整済みハザード比(HR)0.81;95%CI0.72-0.91]および全死因による死亡、再発性MI、また新しいHFによる入院の複合アウトカム[調整済みハザード比(HR)0.82;95%CI 0.75-0.89]のリスクは優位に低かったが、再発性MIと新規HFによる入院のリスクは優位ではなかった。(table 2 Figure2)サブグループ解析でも1年以上のベータブロッカーの使用と全死因のリスクの関連は一貫していた。(Figure3)
Figure4ではそれぞれの地点でベータブロッカーを継続している患者と中断した患者を示している。継続的なベータブロッカー療法に関連する全死因のリスク低下 [調整済みハザード比(HR)0.86;95%CI 0.75-0.99]、再発性MIのリスク低下(調整済みHR 0.67; 95%CI 0.51–0.87; P = 0.003)は2年を超えて観察されたが、MI後3年を超えては観察されなかった。[調整済みハザード比(HR)0.87;95%CI 0.73-1.03]。全死因、再発性MI、新しいHFによる入院の複合リスクは3年以上持続するベータブロッカーによる加療を受けた患者で有意に低かった。(adjusted HR 0.85; 95% CI 0.74–0.98; P = 0.03) (table3,Figure4)
Discussion
 今回のコホート研究ではAMI後に心不全を起こさなかった1年以上のベータブロッカー療法をうけた患者が1年以下しか加療を受けなかった患者に対して、より低い全死因のリスクと関連があった。その有益な効果は様々のサブグループの中でも一貫していた。
 現在の結果にはいくつかのもっともらしい説明がある。
① HFなしに退院したAMIの多くの患者はフォローアップ中にMIの再発や再入院、HFによる死亡を経験している。それゆえに、二次予防としてベータブロッカーを続けることは退院の時にHFがない患者にとって有益であるかもしれない
② 血圧は長期でベータブロッカー治療を受けた患者の方が受けていない患者に比べてコントロールが良い可能性がある。血圧コントロールは冠動脈疾患がある患者のリスクを減らす重要な治療であり、厳格な血圧コントロールは冠動脈イベントリスクの高い患者にとって心血管イベントを改善する。
③ 血管内超音波試験からのプールされた分析では、ベータブロッカー療法は冠動脈疾患のある患者はアテローム量の減少に関連があることを示したので、冠動脈の動脈硬化の進展を遅らせる可能性がある。
Limitation
① この研究ではベータブロッカーを使う理由を特定できていない。長期間のベータブロッカー治療を受ける患者はフォローアップ中にベータブロッカーを中断した人たちに比べてベータブロッカー療法に耐えられているため、重度リスクのプロファイルが少ないかもしれない。潜在的なバイアスを乗り越えるために、我々はAMI後の早期ステージにベータブロッカー治療を始めた人々を除外した、そして、immortal time biasを回避するためにランドマーク解析を実施した。
② 記録されていない交絡因子によって引き起こされる潜在的な選択バイアスが存在する。例えば、我々はAMIのタイプの情報や欠陥造影による重症度、人体計測的・行動科学的要因などの情報は欠落していたし、請求に基づく疾病管理に関する情報は限られていた。
③ 左室機能障害に伴う情報はなかった。しかし、韓国におけるMIを経験した大部分の患者は左室駆出機能を保っていた。その上,駆出率の低い患者はベータブロッカー療法を受け、予後不良である可能性が高いためこのタイプのバイアスを我々の発見で説明する可能性は低い。
Conclusion
MI後の1年以上ベータブロッカー療法を受けたHFのないAMIの患者における全死因による死亡の減少と関連があった。しかし。AMI後のルーチンなベータブロッカー療法の適切な期間を決定するにはさらなる大規模なRCTが必要とされる。

【開催日】2021年3月3日(水)

医師-患者関係が機能的健康に及ぼす長期的なインパクトを評価する

-文献名-
Olaisen RH, Schluchter MD et al. Assessing the Longitudinal Impact of Physician-Patient Relationship on Functional Health. Ann Fam Med. 2020; 18: 422-429.

-要約-
【目的】
日常的なケアリソース(プライマリ・ケア)へのアクセスは、健康アウトカムの改善と関連しているが、医師-患者関係が患者の健康にどのように影響するかについて,特に長期な研究は限られた数しか存在しない。本研究の目的は、医師-患者関係の変化が機能的健康に及ぼす長期的な影響を調べることである。
【方法】
(研究デザイン)
Medical Expenditure Panel Survey(MEPS〜 米国国民の代表的な健康支出,利用,支払い現,健康状態,健康保険範囲の推定を提供することを目的とした一連の調査、AHRQが運営.2015-2016年)を用いた2年間のプロスペクティブコホート研究。
(対象)
18歳以上で2015年,2016年の双方で1回以上医療機関を受診した住民が解析の対象とした.
(アウトカム)
アウトカムは機能的健康の1年間の変化(12項目のShort-Form Survey: SF-12 https://www.qualitest.jp/qol/sf12.html).
(予測因子)
予測因子は医師-患者の関係の質、医師と患者の関係の変化であり、MEPSのデータから抽出し作成し既に信頼性と妥当性が過去の研究から評価を受けている,MEPS Primary Care (MEPS-PC) Relationship subscaleを用いて利用した。
参加者は研究開始時にMEPS-PCのスコアが人口のmedianをカットオフにlowとhighの2群に分けられ,2年後のスコアの変化を3群に分けて評価した(変化なし,悪化,改善).
(交絡因子)
年齢、性別、人種/民族、学歴、保険の有無、米国の地域、multi morbidity
(解析)
我々は、調査による重み付け、共変量の調整を行い、予測限界平均解析を行い,群間の違いを測定するために,効果推定値としてCohen dを利用した.
MEPS-PC Relationship subscaleの軌跡(例:high⇒same, low ⇒ betterなど)の違いによるSF-12については、multiple pairwise comparisons with Tukey contrastを用いて検証した。
【結果】
(demographic characteristics)
Table 1の右のカラム.
(サブグループごとの医師-患者関係)
Multimorbidityの高いグループは低いグループと比較して優位に医師・患者関係のスコアが低かった.(Table 2)
無保険の患者は健康保険加入患者と比較してスコアが低かった.
ベースラインの機能的健康が低い患者は高い患者と比較して医師-患者関係のスコアも低かった.
(ベースラインの医師-患者関係とフォロー後の機能的健康)
ベースラインの医師-患者関係とフォローアップ後(2016年)の機能的健康の間の survey-weighted correlation は0.20(P<0.01)であった.
(医師-患者関係の軌跡と機能的健康) Table 3
患者のベースラインの医師・患者関係のhigh, lowに関わらず,2015年から2016年の間に医師-患者関係が改善している場合,機能的健康は改善していた.医師・患者関係に変化がない場合,悪化した場合は,機能的健康が悪化する傾向にあった.
【結論】
医師と患者の関係の質は、機能的健康と正の関連がある。これらの知見は、患者中心の健康アウトカムの改善を目的とした医療戦略と医療政策に情報を与える可能性がある。

【開催日】2021年2月10日(水)

皮膚感染と軟部組織膿瘍の診断のためのPOC超音波検査についてのまとめ

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。
-文献名-
Gottlieb M, Avila J, Chottiner M, Peksa GD. Point-of-Care Ultrasonography for the Diagnosis of Skin and Soft Tissue Abscesses: A Systematic Review and Meta-analysis. Ann Emerg Med. 2020;76(1):67. Epub 2020 Feb 17.

-要約-
目的
皮膚および軟部組織の感染症は、救急部門ではコモンな主訴である。これまで研究では身体診察だけでは蜂窩織炎と膿瘍を区別するのに信頼性が低いことが示されている。皮膚と軟部組織感染症の診断精度が向上するツールとして、POC超音波が研究された。
今回の目的は、膿瘍に対するPOC超音波の診断精度を評価することである。サブグループ解析は、成人対小児の患者、および高率の疑い症例と臨床的にはっきりしない症例について実施され、副次的な目的として、POC超音波によるマネジメントの変更が正しかったか誤っていたのかの割合、および治療失敗の減少についてが含まれている

方法
皮膚および軟部組織膿瘍の評価のためのポイントオブケア超音波検査の診断精度を評価するすべての前向き研究について、PubMed、Scopus、Latin American and Caribbean Health Sciences Literature Database、Cumulative Index of Nursing and Allied Health、Google Scholar、Cochrane Database of Systematic Reviews、Cochrane Central Register of Controlled Trialsについて研究開始から2019年7月26日までの間の文献を調査した。
データは事前に定義されたワークシートに二回抽出しQUADAS-2 ツール(診断精度に関する研究の質を評価するためのツール、Table2参照)を用いて分析を行った。診断精度は、感度、特異度、陽性尤度比、陰性尤度比でそれぞれ95%信頼区間を示した。

結果
・我々は14件の研究(患者数2,656人)を同定し、その結果POC超音波は感度94.6%(95%CI 89.4%~97.4%)、特異度85.4%(95%CI 78.9%~90.2%)で、陽性尤度比は6.5(95%CI 4.4~9.6)、陰性尤度比は0.06(95%CI 0.03~0.13)であった。
・POC超音波は感度94.6%(95%CI 89.4%~97.4%)、特異度85.4%(95%CI 78.9%~90.2%)で、陽性尤度比は6.5(95%CI 4.4~9.6)、陰性尤度比は0.06(95%CI 0.03~0.13)であった。
・検査前に膿瘍または蜂窩織炎の疑いが高かった症例では、POC超音波の感度は93.5%(95%CI 90.4%~95.7%)、特異度は89.1%(95%CI 78.3%~94.9%)で、陽性尤度比は8.6(95%CI 4.1~18.1)、陰性尤度比は0.07(95%CI 0.05~0.12)であった
・臨床的にはっきりしないCaseではPOC超音波は感度91.9%(95%CI 77.5%~97.4%)、特異度76.9%(95%CI 65.3%~85.5%)で、陽性尤度比は4.0(95%CI 2.5~6.3)、陰性尤度比は0.11(95%CI 0.03~0.32)であった
・成人ではPOC超音波は感度98.7%(95%CI 95.3%~99.8%)、特異度91.0%(95%CI 84.4%~95.4%)で、陽性尤度比は10.9(95%CI 6.2~19.2)、陰性尤度比は0.01(95%CI 0.001~0.06)であった
・小児患者では、POC超音波の感度は89.9%(95%CI 81.8%~94.6%)、特異度は79.9%(95%CI 71.5%~86.3%)で、陽性尤度比は4.5(95%CI 3.1~6.4)、陰性尤度比は0.13(95%CI 0.07~0.23)であった
・POC超音波は10.3%(95%CI 8.9%~11.8%)の症例で方針変更につながり、0.7%の症例で間違った方針変更につながった(95%CI 0.3%~1.1%)

結論
最近のデータによると、POC超音波は膿瘍と蜂窩織炎の鑑別診断のための良い診断精度を有し、10%の症例で正しい治療変更に導いた。さらなる研究では、理想的なトレーニングとそのための適した画像収集のプロトコルを特定する必要がある。

【開催日】2021年2月10日(水)