低線量CTによる肺がん検診の有益性

-文献名-
Mark H. Ebell, Michelle Bentivegna and Cassie Hulme. Cancer-Specific Mortality, All-Cause Mortality, and Overdiagnosis in Lung Cancer Screening Trials: A Meta-Analysis. The Annals of Family Medicine November 2020, 18 (6) 545-552.

-要約-
【背景】肺がんは罹患率と死亡率の重要な原因であり、2020年には推定228,820人が新たに診断され、135,720人が死亡すると予想されている。早期発見は乳がんと大腸がんの疾患特異的死亡率を減少させることが示されている。胸部X線撮影によるスクリーニングは肺がん診断時からの生存率を改善するが、この効果はリードタイムバイアスによるものであり、肺がん特異的死亡率と全死亡率は改善されていない。National Lung Screening Trial(NLST)では、55~74歳で少なくとも30年以上の喫煙歴があり、現在喫煙者であるか、または過去15年以内に禁煙したことがある53,454人の参加者を対象に、低線量コンピュータ断層撮影(LDCT)と胸部X線撮影を比較した。 NLSTの結果は2011年に発表され、2013年には米国予防サービスタスクフォースが、現在の喫煙者または過去15年間に禁煙した喫煙歴30年の55~80歳の人にLDCTを用いた肺がん検診を推奨した。 イタリアのDetection and Screening of Early Lung Cancer With Novel Imaging Technology(DANTE)試験では1.01(95%CI、0.70-1.44)、デンマークの肺がんスクリーニング試験(DLCST)では1.03(95%CI、0.66-1.60)であった.2019年のメタアナリシスでは、死亡率の結果が得られた5件の研究のみが同定された。 同年の第2回メタアナリシスでは、LDCTを用いた肺がんスクリーニングのランダム化試験9件の死亡率データが報告されたが、オランダとベルギーの試験であるNederlands-Leuvens Longkanker Screenings Onderzoek(NELSON)試験の最終データは、2020年2月まで公表されておらず、含まれていなかった。さらに、このメタアナリシスでは、欠陥のある試験のデータが含まれており、全死因死亡率のデータとNELSON試験の女性のデータが除外されており、絶対的なリスク低下とスクリーニングに必要な数が推定されていなかった。そこで我々は、肺がんに対するLDCTスクリーニングと疾患特異的死亡率および全死因死亡率との関係を理解することを目的として、これらの制限に対処した質の高いランダム化比較試験のメタアナリシスを新たに実施した。第二に、スクリーニングの重要な潜在的危害である過剰診断の証拠を評価した。
【目的】肺がん特異的死亡率および全死亡率を減少させるための低線量コンピュータ断層撮影(LDCT)を用いた肺がん検診の有益性は明らかではない。我々は、転帰との関連を評価するためにメタアナリシスを実施した。
【方法】LDCTスクリーニングと通常のケアまたは胸部X線撮影を比較するランダム化比較試験を同定するために、文献および以前のシステマティックレビューを検索した。ランダム効果モデルを用いてメタアナリシスを行った。主要アウトカムは、肺がん特異的死亡率、全死因死亡率、および過剰診断の指標としてのスクリーニング群と非スクリーニング群の間の肺がんの累積発生率であった。
【結果】バイアスのリスクが低い90,475人の患者を対象とした8つの試験に基づいてメタアナリシスを行った。LDCTスクリーニングにより肺がん特異的死亡率の有意な減少が認められた(相対リスク=0.81;95%CI、0.74-0.89)(Figure.2);推定絶対リスクの減少は0.4%(スクリーニングに必要な数=250)であった。全死因死亡率の減少は統計的に有意ではなかった(相対リスク=0.96;95%CI、0.92-1.01)(Figure.3)が、絶対リスクの減少は肺がん特異的死亡率の減少と一致していた(0.34%;スクリーニングに必要な数=294)。追跡期間が最も長い研究では、肺がんの発生率はスクリーニング群で25%高く、過剰診断の割合は20%であった。
【結論】このメタアナリシスは、過剰診断の可能性のトレードオフはあるものの、肺がん特異的死亡率の有意な減少を示しており、肺がんリスクの高い人にはLDCTによる肺がんスクリーニングを推奨することを支持している。

【開催日】2021年3月3日(水)

急性心筋梗塞後の長期ベータブロッカー療法の継続期間(2020年12月)

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。
-文献-
Long-term b-blocker therapy and clinical outcomes after acute myocardial infarction in patients without heart failure: nationwide cohort study
European Heart Journal (2020) 41, 3521–3529 doi:10.1093/eurheartj/ehaa376

-要約-
Aims
長期間のベータブロッカー療法とAMI後に心不全を起こしていない患者での臨床的アウトカムの関連を調査すること
Method
2010年〜2015年の間に退院時にベータブロッカー療法によるAMIの冠動脈血行再建術を受け、死亡、再発性MI、またはHFが1年間発生しなかった、合計28,970人の18歳以上の患者が韓国の全国医療機関の保険データから登録された。
Primary outcomeは全死因。
Secondary outcomeは再発性MI、新規HFによる入院、全死因による死亡・再発性MI・新規HFによる入院の各二次転機と複合アウトカム
Outcomes
アウトカムは指標MI後1年後のランドマーク分析を利用して1年以上のベータブロッカー療法(N=22707)と1年未満のベータブロッカー療法(N=6263)の結果を比較した。(Figure1)
フォローアップ期間の中央値は3.5年(2.2~5.0年)、1684人が死亡した。
1年未満のベータブロッカー療法を受けた患者と比較して、1年以上のベータブロッカー療法を受けている患者は、全死因による死亡リスク [調整済みハザード比(HR)0.81;95%CI0.72-0.91]および全死因による死亡、再発性MI、また新しいHFによる入院の複合アウトカム[調整済みハザード比(HR)0.82;95%CI 0.75-0.89]のリスクは優位に低かったが、再発性MIと新規HFによる入院のリスクは優位ではなかった。(table 2 Figure2)サブグループ解析でも1年以上のベータブロッカーの使用と全死因のリスクの関連は一貫していた。(Figure3)
Figure4ではそれぞれの地点でベータブロッカーを継続している患者と中断した患者を示している。継続的なベータブロッカー療法に関連する全死因のリスク低下 [調整済みハザード比(HR)0.86;95%CI 0.75-0.99]、再発性MIのリスク低下(調整済みHR 0.67; 95%CI 0.51–0.87; P = 0.003)は2年を超えて観察されたが、MI後3年を超えては観察されなかった。[調整済みハザード比(HR)0.87;95%CI 0.73-1.03]。全死因、再発性MI、新しいHFによる入院の複合リスクは3年以上持続するベータブロッカーによる加療を受けた患者で有意に低かった。(adjusted HR 0.85; 95% CI 0.74–0.98; P = 0.03) (table3,Figure4)
Discussion
 今回のコホート研究ではAMI後に心不全を起こさなかった1年以上のベータブロッカー療法をうけた患者が1年以下しか加療を受けなかった患者に対して、より低い全死因のリスクと関連があった。その有益な効果は様々のサブグループの中でも一貫していた。
 現在の結果にはいくつかのもっともらしい説明がある。
① HFなしに退院したAMIの多くの患者はフォローアップ中にMIの再発や再入院、HFによる死亡を経験している。それゆえに、二次予防としてベータブロッカーを続けることは退院の時にHFがない患者にとって有益であるかもしれない
② 血圧は長期でベータブロッカー治療を受けた患者の方が受けていない患者に比べてコントロールが良い可能性がある。血圧コントロールは冠動脈疾患がある患者のリスクを減らす重要な治療であり、厳格な血圧コントロールは冠動脈イベントリスクの高い患者にとって心血管イベントを改善する。
③ 血管内超音波試験からのプールされた分析では、ベータブロッカー療法は冠動脈疾患のある患者はアテローム量の減少に関連があることを示したので、冠動脈の動脈硬化の進展を遅らせる可能性がある。
Limitation
① この研究ではベータブロッカーを使う理由を特定できていない。長期間のベータブロッカー治療を受ける患者はフォローアップ中にベータブロッカーを中断した人たちに比べてベータブロッカー療法に耐えられているため、重度リスクのプロファイルが少ないかもしれない。潜在的なバイアスを乗り越えるために、我々はAMI後の早期ステージにベータブロッカー治療を始めた人々を除外した、そして、immortal time biasを回避するためにランドマーク解析を実施した。
② 記録されていない交絡因子によって引き起こされる潜在的な選択バイアスが存在する。例えば、我々はAMIのタイプの情報や欠陥造影による重症度、人体計測的・行動科学的要因などの情報は欠落していたし、請求に基づく疾病管理に関する情報は限られていた。
③ 左室機能障害に伴う情報はなかった。しかし、韓国におけるMIを経験した大部分の患者は左室駆出機能を保っていた。その上,駆出率の低い患者はベータブロッカー療法を受け、予後不良である可能性が高いためこのタイプのバイアスを我々の発見で説明する可能性は低い。
Conclusion
MI後の1年以上ベータブロッカー療法を受けたHFのないAMIの患者における全死因による死亡の減少と関連があった。しかし。AMI後のルーチンなベータブロッカー療法の適切な期間を決定するにはさらなる大規模なRCTが必要とされる。

【開催日】2021年3月3日(水)

医師-患者関係が機能的健康に及ぼす長期的なインパクトを評価する

-文献名-
Olaisen RH, Schluchter MD et al. Assessing the Longitudinal Impact of Physician-Patient Relationship on Functional Health. Ann Fam Med. 2020; 18: 422-429.

-要約-
【目的】
日常的なケアリソース(プライマリ・ケア)へのアクセスは、健康アウトカムの改善と関連しているが、医師-患者関係が患者の健康にどのように影響するかについて,特に長期な研究は限られた数しか存在しない。本研究の目的は、医師-患者関係の変化が機能的健康に及ぼす長期的な影響を調べることである。
【方法】
(研究デザイン)
Medical Expenditure Panel Survey(MEPS〜 米国国民の代表的な健康支出,利用,支払い現,健康状態,健康保険範囲の推定を提供することを目的とした一連の調査、AHRQが運営.2015-2016年)を用いた2年間のプロスペクティブコホート研究。
(対象)
18歳以上で2015年,2016年の双方で1回以上医療機関を受診した住民が解析の対象とした.
(アウトカム)
アウトカムは機能的健康の1年間の変化(12項目のShort-Form Survey: SF-12 https://www.qualitest.jp/qol/sf12.html).
(予測因子)
予測因子は医師-患者の関係の質、医師と患者の関係の変化であり、MEPSのデータから抽出し作成し既に信頼性と妥当性が過去の研究から評価を受けている,MEPS Primary Care (MEPS-PC) Relationship subscaleを用いて利用した。
参加者は研究開始時にMEPS-PCのスコアが人口のmedianをカットオフにlowとhighの2群に分けられ,2年後のスコアの変化を3群に分けて評価した(変化なし,悪化,改善).
(交絡因子)
年齢、性別、人種/民族、学歴、保険の有無、米国の地域、multi morbidity
(解析)
我々は、調査による重み付け、共変量の調整を行い、予測限界平均解析を行い,群間の違いを測定するために,効果推定値としてCohen dを利用した.
MEPS-PC Relationship subscaleの軌跡(例:high⇒same, low ⇒ betterなど)の違いによるSF-12については、multiple pairwise comparisons with Tukey contrastを用いて検証した。
【結果】
(demographic characteristics)
Table 1の右のカラム.
(サブグループごとの医師-患者関係)
Multimorbidityの高いグループは低いグループと比較して優位に医師・患者関係のスコアが低かった.(Table 2)
無保険の患者は健康保険加入患者と比較してスコアが低かった.
ベースラインの機能的健康が低い患者は高い患者と比較して医師-患者関係のスコアも低かった.
(ベースラインの医師-患者関係とフォロー後の機能的健康)
ベースラインの医師-患者関係とフォローアップ後(2016年)の機能的健康の間の survey-weighted correlation は0.20(P<0.01)であった.
(医師-患者関係の軌跡と機能的健康) Table 3
患者のベースラインの医師・患者関係のhigh, lowに関わらず,2015年から2016年の間に医師-患者関係が改善している場合,機能的健康は改善していた.医師・患者関係に変化がない場合,悪化した場合は,機能的健康が悪化する傾向にあった.
【結論】
医師と患者の関係の質は、機能的健康と正の関連がある。これらの知見は、患者中心の健康アウトカムの改善を目的とした医療戦略と医療政策に情報を与える可能性がある。

【開催日】2021年2月10日(水)

皮膚感染と軟部組織膿瘍の診断のためのPOC超音波検査についてのまとめ

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。
-文献名-
Gottlieb M, Avila J, Chottiner M, Peksa GD. Point-of-Care Ultrasonography for the Diagnosis of Skin and Soft Tissue Abscesses: A Systematic Review and Meta-analysis. Ann Emerg Med. 2020;76(1):67. Epub 2020 Feb 17.

-要約-
目的
皮膚および軟部組織の感染症は、救急部門ではコモンな主訴である。これまで研究では身体診察だけでは蜂窩織炎と膿瘍を区別するのに信頼性が低いことが示されている。皮膚と軟部組織感染症の診断精度が向上するツールとして、POC超音波が研究された。
今回の目的は、膿瘍に対するPOC超音波の診断精度を評価することである。サブグループ解析は、成人対小児の患者、および高率の疑い症例と臨床的にはっきりしない症例について実施され、副次的な目的として、POC超音波によるマネジメントの変更が正しかったか誤っていたのかの割合、および治療失敗の減少についてが含まれている

方法
皮膚および軟部組織膿瘍の評価のためのポイントオブケア超音波検査の診断精度を評価するすべての前向き研究について、PubMed、Scopus、Latin American and Caribbean Health Sciences Literature Database、Cumulative Index of Nursing and Allied Health、Google Scholar、Cochrane Database of Systematic Reviews、Cochrane Central Register of Controlled Trialsについて研究開始から2019年7月26日までの間の文献を調査した。
データは事前に定義されたワークシートに二回抽出しQUADAS-2 ツール(診断精度に関する研究の質を評価するためのツール、Table2参照)を用いて分析を行った。診断精度は、感度、特異度、陽性尤度比、陰性尤度比でそれぞれ95%信頼区間を示した。

結果
・我々は14件の研究(患者数2,656人)を同定し、その結果POC超音波は感度94.6%(95%CI 89.4%~97.4%)、特異度85.4%(95%CI 78.9%~90.2%)で、陽性尤度比は6.5(95%CI 4.4~9.6)、陰性尤度比は0.06(95%CI 0.03~0.13)であった。
・POC超音波は感度94.6%(95%CI 89.4%~97.4%)、特異度85.4%(95%CI 78.9%~90.2%)で、陽性尤度比は6.5(95%CI 4.4~9.6)、陰性尤度比は0.06(95%CI 0.03~0.13)であった。
・検査前に膿瘍または蜂窩織炎の疑いが高かった症例では、POC超音波の感度は93.5%(95%CI 90.4%~95.7%)、特異度は89.1%(95%CI 78.3%~94.9%)で、陽性尤度比は8.6(95%CI 4.1~18.1)、陰性尤度比は0.07(95%CI 0.05~0.12)であった
・臨床的にはっきりしないCaseではPOC超音波は感度91.9%(95%CI 77.5%~97.4%)、特異度76.9%(95%CI 65.3%~85.5%)で、陽性尤度比は4.0(95%CI 2.5~6.3)、陰性尤度比は0.11(95%CI 0.03~0.32)であった
・成人ではPOC超音波は感度98.7%(95%CI 95.3%~99.8%)、特異度91.0%(95%CI 84.4%~95.4%)で、陽性尤度比は10.9(95%CI 6.2~19.2)、陰性尤度比は0.01(95%CI 0.001~0.06)であった
・小児患者では、POC超音波の感度は89.9%(95%CI 81.8%~94.6%)、特異度は79.9%(95%CI 71.5%~86.3%)で、陽性尤度比は4.5(95%CI 3.1~6.4)、陰性尤度比は0.13(95%CI 0.07~0.23)であった
・POC超音波は10.3%(95%CI 8.9%~11.8%)の症例で方針変更につながり、0.7%の症例で間違った方針変更につながった(95%CI 0.3%~1.1%)

結論
最近のデータによると、POC超音波は膿瘍と蜂窩織炎の鑑別診断のための良い診断精度を有し、10%の症例で正しい治療変更に導いた。さらなる研究では、理想的なトレーニングとそのための適した画像収集のプロトコルを特定する必要がある。

【開催日】2021年2月10日(水)

心房細動の早期リズムコントロール

-文献名-
P. Kirchhof, A.J. Camm, A. Goette.Early Rhythm-Control Therapy in Patients with Atrial Fibrillation.N Engl J Med. 2020 Oct 1;383(14):1305-1316.

-要約-
背景 心房細動の患者は心血管系合併症のリスクが高い.過去にリズムコントロールとレートコントロールで予後に差がないという報告があるが,発症早期にリズムコントロールを行うことで心血管リスクを軽減できるかどうかは不明である.アブレーションも含めたリズムコントロール戦略が早期Af診療のアウトカムを改善させるか調べる.
デザイン RCT.非盲検化試験.多施設(欧州11カ国,135施設).2011年〜2016年.ITT解析.
ドイツの教育研究省による資金提供.
対象者 2789例.≧18歳の発症早期(初回診断から≦12カ月)の心房細動患者で,①TIA/脳卒中の既往があるか,②>75歳の者か,③以下の条件*のうち2つ以上に該当する者。年齢>65歳,女性,心不全,高血圧,糖尿病,重症冠動脈疾患,慢性腎臓病(GFR15〜59),左室肥大(拡張期中隔壁幅> 15mm),末梢動脈疾患.
介入 現行のガイドラインが推奨する治療(抗凝固薬,レートコントロール)および合併する心血管疾患に対する治療を受けたうえで,早期のリズムコントロール(洞調律維持療法)群(1395例)または標準治療のみの群(1394例)。
早期のリズムコントロール群:抗不整脈薬または心房細動アブレーションによる治療.週に2度また症状発生時は,患者自ら遠隔モニタリングデバイスECGを送信.医療機関がリズムコントロールを調整.
標準治療群:抗凝固薬による治療とレートコントロール(心拍数調節療法)を中心とした治療。これらの治療でも心房細動による症状が生じた場合は,リズムコントロールを実施。
結果
追跡期間中央値5.1年。
有効性が確認されたため,第3回目の中間解析の時点で試験は中止。
(以下,Fig1)
2年後の治療状況は,リズムコントロール群では65.1%が抗不整脈薬継続,標準治療群では14.6%が抗不整脈薬使用.リズムコントロール群でアブレーションを行ったのは19.4%.(フレカイニド(タンボコール®,1c),アミオダロン,ドロネダロン(日本採用なし),プロパフェノン(プロノン®,1c),その他の不整脈薬)

(以下,Table1)
患者背景:平均年齢70.3歳,女性46.4%。
心房細動の診断から登録までの日数:中央値で36日。
登録時の心房細動の状況:初発 37.6%,発作性 35.6%,持続性 26.6%。
登録時の洞調律の割合:54.0%
登録時のCHA2DS2-VASCスコアの平均値:3.4

(以下,Table.2)
プライマリーエンドポイント=「心疾患や脳卒中による死亡」「心不全や急性冠症候群の悪化による入院」の複合
早期リズムコントロール群249例(3.9/100人・年) vs. 標準治療群316例(5.0/100人・年)
[ハザード比(HR)0.79; 96%信頼区間(CI)0.66~0.94; P =0.005]
内訳のうち,心疾患や脳卒中による死亡をみても有意差あり.

セカンダリーエンドポイント=1年あたりの入院日数.
群間で有意差なし.
平均値:早期リズムコントール群 5.8日/年 vs. 標準治療群5.1日/年(P =0.23)

(以下,Table.3)
安全性の主要アウトカム=「死亡」「脳卒中」「リズム制御療法に関連した重篤な有害事象」の複合
群間で有意差なし.
早期リズムコントロール群231例(16.6%)vs. 標準治療群223例(16.0%)

<内訳>
脳卒中:早期リズムコントロール群2.9% vs. 標準治療群4.4%(P =0.03)。
死亡:9.9% vs. 11.8%。
リズムコントロールに関連する重篤な有害イベント:4.9% vs. 1.4%(P <0.001)。(5年間)
 →非致死性の心停止,中毒,徐脈,AVブロック,トルサードポワンツ,タンポナーデ,出血など

安全性の副次アウトカム=2年後の症状,左室機能
両治療群間に有意差は認められなかった。

ディスカッション 
・過去の報告と異なり,今回リズムコントロール群で有意差が出たのは,①カテーテルアブレーション治療群が入っていることや②発症早期の介入をみていることなどが考えうる.
・リズムコントロールによる有害事象は有意に発生したが,その頻度は低い.
・限界は,非盲検化試験であること,フォローアップ期間が短いこと,費用について検討していないこと,などが挙げられる.

結論 早期リズムコントロールは,早期心房細動と心血管疾患を有する患者において,通常のケアに比べて有害な心血管転帰のリスクが低いことと関連していた.

【開催日】2021年2月3日(水)

無症候性重症大動脈弁狭窄症における早期手術

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
Kang, Duk-Hyun, et al. Early surgery or conservative care for asymptomatic aortic stenosis. New England Journal of Medicine. 2020;382(2):111-119.

-要約-
背景
無症候性の重度の大動脈弁狭窄症患者における外科的介入のタイミングと適応については議論の余地がある。
方法
多施設共同試験において、無症候性の重度の大動脈弁狭窄(大動脈弁口面積が0.75cm2以下で、毎秒4.5m以上の大動脈ジェット速度または50mm Hg以上の平均大動脈弁圧較差のいずれかがあると定義される)患者145人を無作為に早期手術あるいはガイドラインの推奨に従った保存的治療に割り付けた。一次エンドポイントは、手術中、術後30日間の死亡、フォローアップ期間全体における心血管疾患による死亡の複合アウトカムとした。原因であったことが判明した。主要な副次的エンドポイントは追跡期間中のあらゆる原因による死亡とした。
結果
早期手術群では、73例中69例(95%)が無作為化後2ヵ月以内に手術を受け、手術による死亡は認められなかった。ITT分析では、一次エンドポイントイベントは早期手術群で1人(1%)、保存的治療群では72人中11人(15%)に発生した(ハザード比、0.09;95%信頼区間[CI]、0.01~0.67;P = 0.003)。あらゆる原因による死亡は、早期手術群では5人(7%)、保存的治療群では15人(21%)で発生した(ハザード比、0.33;95%信頼区間[CI]、0.12~0.90)。保存的治療群では、突然死の累積発生率は4年後に4%、8年後に14%であった。

背景
無症候性の重度の大動脈弁狭窄症患者における外科的介入のタイミングと適応については議論の余地がある。
方法
多施設共同試験において、無症候性の重度の大動脈弁狭窄(大動脈弁口面積が0.75cm2以下で、毎秒4.5m以上の大動脈ジェット速度または50mm Hg以上の平均大動脈弁圧較差のいずれかがあると定義される)患者145人を無作為に早期手術あるいはガイドラインの推奨に従った保存的治療に割り付けた。一次エンドポイントは、手術中、術後30日間の死亡、フォローアップ期間全体における心血管疾患による死亡の複合アウトカムとした。原因であったことが判明した。主要な副次的エンドポイントは追跡期間中のあらゆる原因による死亡とした。
結果
早期手術群では、73例中69例(95%)が無作為化後2ヵ月以内に手術を受け、手術による死亡は認められなかった。ITT分析では、一次エンドポイントイベントは早期手術群で1人(1%)、保存的治療群では72人中11人(15%)に発生した(ハザード比、0.09;95%信頼区間[CI]、0.01~0.67;P = 0.003)。あらゆる原因による死亡は、早期手術群では5人(7%)、保存的治療群では15人(21%)で発生した(ハザード比、0.33;95%信頼区間[CI]、0.12~0.90)。保存的治療群では、突然死の累積発生率は4年後に4%、8年後に14%であった。

結論
非常に重度の大動脈弁狭窄を有する無症候性の患者において,早期に大動脈弁置換術を受けた患者では,保存的治療を受けた患者に比べて,追跡期間中の手術死亡または心血管系原因による死亡の複合アウトカムの発生率が有意に低かった.

ディスカッション
・本研究の意義:無症状の重症大動脈弁狭窄症患者における手術の決定は弁置換術のリスクと経過観察のリスクの間のバランスを慎重に見積もる必要がある。大動脈弁狭窄症は、慎重な経過観察+症状が出るまで手術を遅らせる戦略は比較的安全ではあるが、突然死のリスク、患者による症状の否定または報告の遅れ、不可逆的な心筋損傷、および手術リスクの上昇と関連する。以前の観察研究で見られたベースライン治療の群間の違い、治療選択バイアス、および測定されていない交絡因子を減らすことで本研究では、早期大動脈弁置換術を支持する証拠を示した。
・示されたベネフィットに対する説明:2群間の長期生存期間の有意差の理由として考えられるのは、第一に、本試験および最近の低リスク患者における外科的大動脈弁置換術とTAVRを比較した試験では、手術リスクはそれより以前の研究に比べて大幅に低かった点である。この試験では、手術による死亡率は1%未満であり、綿密な術後のモニタリング・術後のケアの改善により、早期手術に関連した長期的なリスクが大幅に減少した可能性がある。第二に、早期手術群では突然死が見られなかったことから、早期手術により突然死が避けられた可能性がある。対照的に、保存的治療群では、症状が出る前の大動脈弁狭窄の進行中の突然死の年間リスクが上昇する傾向があった。第三に、保存的治療群では、最終的な大動脈弁置換術は避けられず、大動脈弁置換術のリスクは、症状が進行するまで手術が延期されたことで増加した可能性である。手術後の心血管系イベントは保存的治療群でより頻繁に観察され、大動脈弁置換術を遅らせることによる長期的リスクが高いことが示唆された。
研究の限界と適用上の注意:第一に、大動脈弁狭窄の重症度が高い患者を対象とした本試験では、手術待機時間によりリスクが高まるため、早期手術が良い結果に出る傾向があった可能性がある。第二に、早期手術群では5%、保存的治療群では3%の患者でクロスオーバーが発生した。ただ、Per-protocol解析とintention-to-treat解析の結果はほぼ同じであった。第三に、この試験は盲検化されていないため、患者が受けた治療を臨床医が把握していることに、非致死的転帰が影響を受けた可能性がある。第四に、重度の大動脈弁狭窄症を有する無症候性の患者に症状がないことを確認するために運動検査を行うことは妥当であるが、本試験では選択的にしか実施されていない。第五に、患者数の少なさと主要エンドポイントイベントの少なさが本試験の重要な限界である。最後に、この試験では比較的若い患者(最近の低リスク患者を対象としたTAVR試験に登録された患者と比較して)が対象であり、その中でも二尖性大動脈弁疾患の発症率が高く、左室収縮機能が正常で、共存する疾患が少なく、手術リスクが低い患者が含まれていた。このように、我々の試験集団はTAVR試験に登録されている集団とはかなり異なっており、無症候性の重症大動脈弁狭窄症に対する早期TAVRに直接結果を適用できない。

【開催日】2021年2月3日(水)

コロナ禍の診断エラーを減らすには?

-文献名-
“Reducing the Risk of Diagnostic Error in the COVID-19 Era” J Hosp Med. 2020 Jun;15(6):363-366.

-要約-
背景【担当者注】
“診断エラー”は, 「患者の健康問題について正確で適時な解釈がなされないこと,もしくは,その説明が患者になされないこと」と定義される.(Improving Diagnosis in Health Care. National Academies Press. 2015.)
下記の3つの分類が存在, 併存する.(Arch Intern Med. 2005;1493-9.)
【①診断の見逃し, ②診断の間違い, ③診断の遅れ】
原因は, 個人の資質の問題(知識不足, 技術不足)ではなく, 「ヒューリスティクス, 認知バイアス」, 「システムの問題」であることが多い. 参考資料https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/series/182
<論文要旨>
COVID-19のパンデミックは, 診断エラーを高める可能性がある.疾患自体が新しく, 臨床知識やエビデンスが未だ発展途上であることや, 逼迫する医療体制などの状況による, 医療者のストレス, 疲労, 燃え尽きが背景にある.本稿では, COVID-19時代に懸念される診断エラーの新しい類型を提案する.これらのエラーは, システムに基づくものと認知的なものの両方の起源を持つ.いくつかのエラーは, パンデミックに特有のものもある.本研究は, 8つの診断エラーの概要と対策を提示する.

予測される診断エラーの種類(Table, 表)
“古典的”: COVID-19の検査が実施できなかったり, 偽陰性の結果によって診断が困難になる.
“変則的”: 非典型的な, 呼吸器症状を呈さない患者がいる. COVID-19の診断を困難になる可能性がある.
“アンカリング”: 細菌性肺炎などで呼吸器症状のある患者を、COVID-19と誤診する.十分な検査が行われていない場合に起こりえる.
“二次的”: COVID-19患者の続発症を見逃す可能性がある.例えば, COVID-19患者の増悪する呼吸不全の背景に, 凝固障害による肺塞栓症が新規発症している可能性があるが, 原因検索を行わず, COVID-19による肺機能障害として対処される可能性がある.知見が不十分な状況で, この診断エラーは増加する.
“急性に生じる巻き添え”: 新たな急性症状を呈した患者は, 感染リスクを理由に急性期医療の受診を控えることがある.急性心筋梗塞や脳卒中の患者が受診せず診断が遅延することが懸念される.
“慢性に生じる巻き添え”: 定期受診や待機的処置が延期, 自己中断された場合に, 重要な疾患の診断に遅れが生じる可能性がある.
“ひずみ”: 切迫した医療体制によりCOVID-19以外の診断が, 影響を受ける可能性がある.外科医, 小児科医, 放射線科医らが, 急性期医療に「再配置」される.新しい役割を担う臨床医が, 慣れない状況や疾患の症状に直面したときにこの診断エラーは増加する.これまでの経験が豊富であっても, 新しい役割でのスキルや経験が不十分であったり, 指導を求めることに抵抗感を抱くことがある.
“予想外の診断エラー”: 個人用防護具PPEや遠隔医療技術などを使用して患者の診療に当たることが増えている.これは医師と患者の双方にとって未経験なことであり, “予想外”の診断エラーを引き起こす可能性がある.遠隔医療や接触機会の制限の状況では、熟練の臨床医でも病歴聴取, 身体診察能力が低下する可能性がある.

診断エラーに対する戦略
<テクノロジーによる支援>
テクノロジーは, 新たなリスクに対処するためのプログラムやプロトコル作成, 実装に役立つ.例えば, 感染流行状況の把握、重症化リスクの予測アルゴリズムや, 医療機関同士の患者搬送プロトコル, 電子カルテデータから潜在的なリスクを割り出し待機的処置の日程調整を自動で行うプログラムなどが考案されている.
<業務フローとコミュニケーションの最適化>
対面での接触が限られている場合でも, 診療の工夫(例:患者へのiPadの提供, ジェスチャーなどの非言語コミュニケーション)を行うことで, 患者や家族と包括的な話し合いを持つことができる.慣れていない分野に再配置された医師は“バディシステム”を利用し, 経験豊富な臨床医とペアを組むことができ, 助けを求めやすくなる.
<“人”に焦点を当てた介入>
一人での診療に慣れている医師もいるが, 今は「診断ハドル(訳者注 huddle: アメリカンフットボールで, 次のプレーを決めるフィールド内での作戦会議.)」を導入する時期であり, 異常や困難な症例について議論したり, 何か見逃していないかどうかを判断したりするべきである.
患者にデジタルツールを使った自己診断を奨励することに加えて, 急性心筋梗塞や脳卒中などの特定の重要な疾患については, 公衆衛生当局やメディアの助けを借りて医療支援を求めるよう一般市民に助言することも望ましい.
<組織, 所属機関での戦略>
スタッフの心理的安全性に配慮した組織環境、安全戦略を確保しなければならない.
リーダーは, チームの行動指針や規範について明確に伝える.
認知バイアスにつながる疲労, ストレス, 不安を最小限に抑えるために, ピアサポート, カウンセリング, 勤務時間調整,他の支援を実施する.院内外で, 診断上の課題, 最新の情報を継続的に共有し, 改善すべきである.
<国家レベルでの対応>
アクセス性, 正確性, 検査の性能に関する課題は, 国レベルで対処されるべきである.診断パフォーマンスとアウトカムをモニターし, COVID-19の診断エラーが異なる人口統計にどのように影響するかを評価するために, 標準化された測定基準が開発されるべきである.

結論
臨床医は患者の診断と治療に最善を尽くすように, 認知とシステムに基づいた診療を提供しなければならない.診断エラーと対策を共有し診療システムの再設計と強化を行うことで, 予防可能な診断エラーを防ぐべきである.

表. COVID-19 パンデミックで予想される診断エラー(原表を基に担当者作成)

【開催日】2021年1月13日(水)

癌のリスクを減らすための食事ガイドライン

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
Chetyl L. Rock. American Cancer Society Guideline for Diet and Physical Activity for Cancer Prevention. CA Cancer J Clin. 2020;70(4):245.Epub 2020 Jun 9.

-要約-
<Abstract>
アメリカがん協会(ACS)は、コミュニケーション、ポリシー、およびコミュニティ戦略の基盤として機能し、最終的にはアメリカ人の食事および身体活動パターンに影響を与えるために、食事および身体活動ガイドラインを発行している。このガイドラインは、がんの研究、予防、疫学、公衆衛生、および政策の専門家の全国委員会によって作成され、食事と活動のパターンおよびがんのリスクに関連する最新の科学的証拠を反映している。ACSガイドラインは、食事と身体活動のパターンに関する個々の選択の推奨事項に焦点を当てているが、それらの選択は、健康的な行動を促進または阻害するコミュニティの背景の中で生じる。したがって、この委員会は、がんのリスクを減らすための個人の選択に関する4つの推奨事項に付随するコミュニティアクションの推奨事項を提示する。コミュニティの行動に関するこれらの推奨事項は、社会のすべてのレベルの個人が健康的な行動を選択する真の機会を持つためには、支援的な社会的および物理的環境が不可欠であると認識されている。この2020年のACSガイドラインは、米国心臓協会および米国糖尿病学会の、冠状動脈性心臓病および糖尿病の予防、ならびに2015年から2020年の米国人向け食事ガイドラインおよび2018年の身体的健康増進に関するガイドラインと一致している。

<ガイドラインと推奨事項の概要>
1980年代初頭以来、ACSや世界がん研究基金/米国がん研究協会(WCRF/AICR)などの政府および主要な非営利医療機関は、体重管理、身体活動、食事療法、アルコール消費に焦点を当てたがん予防ガイドラインと推奨事項を発表している。WCRF/AICRガイドラインの最初の更新後、WCRF/AICRは、さまざまな種類のがんを包括的に報告し、厳格なシステマティックレビュープロトコルに基づく継続的更新プロジェクトを含めるように取り組みと推奨事項を拡大した。WCRF/AICRからの第3専門家報告書は、更新された癌予防の推奨事項とともに、2018年に報告された。
現在のACSの食事療法と身体活動のガイドラインと推奨事項は、2012年のACSガイドラインを更新した。それは主にWCRF/AICRのシステマティックレビューと継続的更新プロジェクトのレポートに基づいており、システマティックレビューとそれ以降に公開された大規模なプール分析からのエビデンスが反映されている。

癌予防のための食事療法と身体活動に関する2020年アメリカがん協会ガイドライン(表1)
個人向けの推奨事項
1.生涯を通じて健康的な体重を達成し、維持する
 体重を健康的な範囲内に保ち、成人期の体重増加を避ける。
2.身体的に活発である
 成人は、週あたり150〜300分の中程度の強度の身体活動、または75〜150分の激しい強度の身体活動、または同等の組み合わせを行うべきである。300分の上限を達成または超えることが最も望ましい。
 子供と青年は、毎日少なくとも1時間の中程度または激しい強度の活動を行うべきである。
 座ったり、横になったり、テレビを見たりするなどの座りがちな行動や、その他の形式の画面ベースの娯楽は制限する。
3.すべての年齢で健康的な食事パターンに従う
 健康的な食事パターンには次のものが含まれる。
 ◦健康的な体重の達成と維持に役立つ量の栄養素が豊富な食品
 ◦さまざまな野菜—濃い緑、赤、オレンジ、繊維が豊富なマメ科植物(豆とエンドウ豆)など
 ◦果物、特にさまざまな色の果物全体
 ◦全粒穀物
 健康的な食事パターンは、以下を制限または含まないものである。
 ◦赤肉と加工肉
 ◦砂糖で甘くした飲料
 ◦高度に加工された食品と精製穀物製品
4.アルコールを飲まないことが最も望ましい
 飲酒を選択する人は、女性の場合は1日1杯、男性の場合は1日2杯以下に制限する必要がある。
 コミュニティアクションの推奨事項
 公的、私的、およびコミュニティ組織は、国、州、および地方レベルで協力して、手頃な価格の栄養価の高い食品へのアクセスを増やす政策および環境の変化を開発、提唱、および実施する必要がある。身体活動のための安全で、楽しく、アクセス可能な機会を提供する。そして、すべての人のアルコールを制限する。


【開催日】2021年1月13日(水)

小児アトピー性皮膚炎における頻繁な入浴と頻度の少ない入浴:無作為化臨床試験

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。
-文献名-
Cardona ID, Kempe EE, Lary C, Ginder JH, Jain N. Frequent Versus Infrequent Bathing in Pediatric Atopic Dermatitis: A Randomized Clinical Trial. J Allergy Clin Immunol Pract. 2020;8(3):1014-1021. doi:10.1016/j.jaip.2019.10.042

-要約-
Introduction:アトピー性皮膚炎(AD)は慢性の皮膚炎症で世界中のこどもの15~30%に影響を及ぼしている。アトピー性皮膚炎は皮膚バリア機能障害と免疫調整障害を特徴とする。その高い有病率にも関わらず、小児アトピー性皮膚炎に関する入浴頻度を含む最良の入浴方法を評価した研究はほとんどなく、その結果、アトピー性皮膚炎のガイドラインでは一貫した根拠はない状態である。アトピー性皮膚炎を持つ子供の親はしばしば矛盾する情報を受け取り、不満と混乱を生んでいる。プライマリケア医の50%以下しか毎日の入浴を進めていないのに対して、専門医(アレルギー専門医、免疫学者、小児皮膚科医)の50%以上が毎日の入浴を推奨しているというデータもある。
これらの研究からPCPsより専門医は毎日の入浴を推奨する傾向にあり、矛盾したアドバイスは混乱と不満をうむ原因となりうる。
中等度から重症のアトピー性皮膚炎の小児に対するwet-wrap therapy(WWT)による閉鎖療法は効果的であるとされている。Soak and smear(or Soak and Seal)(SS):少なくとも10〜15分バスタブに浸かって、すぐに乾かし、皮膚軟化剤で閉鎖をする方法も急性期に効果的であることが示されている。アトピー性皮膚炎の病態生理学に置いて皮膚の水分補給と経表皮水分喪失量の重要性を考慮し、SS入浴は局所薬剤の浸透を促進し、水分喪失を防ぐことによってWWTを模倣する可能性があることを考慮し、頻繁なSS入浴は小児のアトピー性皮膚炎において入浴を制限するよりも効果的であるかもしれないと仮定した。
我々の目的は重症のアトピー性皮膚炎に対して急性期の治療介入として、1日2回、15~20分、SS入浴すること(Wet method : WM)と、週2回、10分以下でSS入浴すること(dry method : DM)の効果を比較することである。また、水分補給状態やStaohylococcus aureusのコロニー形成する密度をWM、DM間で定量化した。

Method:どのような方法を用いたのか、特殊な方法であれば適宜解説を入れる。
アメリカのメイン州の病院関連のアレルギー免疫学診療所でシングルブラインドのクロスオーバー試験を使用したランダム化試験を実施した。対象者はSCORing Atopic Dermatitis(SCORAD)index*1で25以上(中等度〜重度)のアトピー性皮膚炎の6ヶ月〜11歳の小児に対する、頻繁に行うSS入浴と頻繁には行わないSS入浴の頻度を比較した。
2グループに1:1でランダム化した。
グループ1は週に2回、10分以下のSS入浴を2週間に渡る(DM)実施したのち、日に2回、15~20分のSS入浴を2週間に渡る(WM)実施した。グループ2はその反対の順番で実施した。
患者は同じ保湿剤、洗剤、低ランクの局所コルチコステロイド(TCS)を投与された。Primary outcomeはSCORing Atopic Dermatitis(SCORAD)indexを利用してADの重症度を評価した。
Secondary outcomeはアトピー性皮膚炎の重症度(アトピー性皮膚炎クイックスコア(ADQ)*2、QOL、staphylococcal aureusのコロニー形成密度、皮膚の水分補給状態、保湿剤、局所コルチコステロイドの使用量に関する評価された。

Results:
63人の小児をスクリーニングし、42人が基準を満たし、ランダム化された。(Figure1)
ADの重要度に関して、両群でWMのSCORADの平均変化がベースラインから大幅に減少していることがわかった。
WM、DM間のSCORAD治療効果のモデル推定値は21.2だった。[95%CI 14.9-27.6;P<.0001](table2 95%CI,14.9-27.6;P<.0001).SCORADの臨床的に重要な値の変化は8.7であり、この変化はその差を超えていた。
ある研究では症状の30%の減少が臨床的に重要であると見なされており、マクマネー検定で二次解析すると、WMで30%の改善を達成した患者は23人で、DMでは6人だった。WMはDMに対して大幅な改善を示していた(Figure 2: McNemar’sX2=8.83,df=1,P=.0030) 同様にWMはADQを5.8減少させ、(tableⅡ 95%CI,1.8-9.7)統計的に優位な改善を示した。さらにSCORADの変化はADQの変化と相関していた(図3r=0.66)しかし、ADQの解析ではSCORADと同様の傾向を示したが、優位性には達しなかった。(P=.061)
そのほかの二次解析では優位な変化は認めなかった

Discussion:今回の研究の限界、残された課題などを記載する。
中等度から重度のアトピー性皮膚炎の小児に対する、保湿剤やステロイド外用などの通常ケアに加え、入浴の頻度の影響を調べ、Wet methodはSCORADやADQで比較した場合に統計的、臨床的に優位に改善を示すことがわかった。これらのデータにより1日2度のSoak and seal入浴が中等度から重度のアトピー性皮膚炎の重症度を減らすことが示された。
今回の研究はsingle blind の前向き、クロスオーバーデザインのランダム化試験を使った、SSを組み合わせた入浴頻度に関する疑問における初めての研究である。SSと組み合わせて入浴頻度を評価する研究は数、サイズ、質、に制限があるが、我々の研究で見られたWMアプローチの有効性はこれまでの研究と一致している。
今回の研究の結果の説明として最も可能性の高いのはTCSの吸収の強化と潜在的なアレルゲンや刺激物の「洗い流し」が皮膚バリアの改善ではなく免疫調整不全を改善したことである。これまでのエビデンスでは乾燥している角質層より湿潤している角質層の方が局所薬はよく浸透することが示されている。その結果WMはwet wrap therapyの有効性を示されたメカニズムと同様に、TCSの有効性を高めることによりステロイドを節約することができるかもしれない。また、皮膚へのアレルゲンの暴露がアトピー性皮膚炎の炎症を引き起こしている可能性があり、WMはこの炎症の原因となる鱗屑、外皮、アレルゲン、刺激物をより効果的に除去する可能性がある。
小児ADの表現型は成人の慢性疾患とは実質的にことなると考えられており、今回は小児集団を研究しており、成人にそのまま適応することはできない。小児ADではTH2およびTH17/TH22応答の増加とTH1活性化およびINF-γ応答の低下を特徴とする。アトピー性の低い成人集団でこれらの結果が一貫しているかどうかはっきりしていない。
現実の世界で1日2回のSS入浴は手間がかかり、家族にとってはアドヒアランスが難しくなる可能性があると認識している。我々の研究では高いアドヒアランスだったが、入浴ログと患者への直接の電話連絡が必要なこともあり、これらのインセンティブは研究以外の環境では存在しない。我々の研究は患者が中等症から重症の場合に短期間(2週間)の急性治療介入であることを意味しており、1日に2回の入浴は家族により労力を強いることになるが、少ない入浴よりはより効果的であることを示した。また、中等度から重度程度の場合にウェットラップ両方を行う必要やより強力な局所ステロイドなしに、湿疹の重症度を改善する可能性を示した
ADの治療および予防におけるSS入浴頻度の役割を評価するには、より大規模な研究が必要である。 更なる研究により、TCSを使用しないWMアプローチが長期的にADのリスクを軽減できるかどうか判断される可能性があるが、中等度から重度のADの6ヶ月〜11歳の小児では、急性期治療としてWMアプローチを行うことが、標準治療のTCSへの介入として安全であり、ADの重症度を低下させ、ステロイドの節約効果がある可能性がある。

 

*1<アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018より>
JC2020白水1

*2 ADQ
JC2020白水2

Carel K, Bratton DL, Miyazawa N, Gyorkos E, Kelsay K, Bender B, Strand M, Atkins D, Gelfand EW, Klinnert MD. The Atopic Dermatitis Quickscore (ADQ): validation of a new parent-administered atopic dermatitis scoring tool. Ann Allergy Asthma Immunol. 2008 Nov;101(5):500-7. doi: 10.1016/S1081-1206(10)60289-X. PMID: 19055204.

Figure 1
JC2020白水3

TableⅡ
JC2020白水4

Figure 2
JC2020白水5

Figure 3
JC2020白水6

【開催日】2020年12月9日(水)

超高齢心房細動患者に対する低用量エドキサバン

-文献名-
K.Okumura. Low-Dose Edoxaban in Very Elderly Patients with Atrial Fibrillation. NEJM. 2020; Oct 29; 383(18): 1735-1745.

-要約-
Introduction:
年齢とともに心房細動は増加し、年齢と心房細動はいずれも脳梗塞のリスクである。心房細動患者の脳梗塞予防ガイドラインでは、高齢者であっても抗凝固療法が推奨されるが、超高齢者には腎機能障害・過去の出血歴・過去の転倒歴・ポリファーマシー・フレイルなどの出血リスクを鑑みて、処方をためらう医師が多い。高齢化に伴い、ハイリスク・超高齢者の抗凝固療法のエビデンスが必要である。
 低用量エドキサバン(15-30mg)は脳梗塞予防には用量不足として認可外ではあるが、出血のハイリスク群である超高齢者にとっては有益であるかもしれない。
Method:
 今回のELDERCARE-AF試験は、非弁膜症性心房細動を有し、脳卒中予防に承認されている用量での経口抗凝固療法が適当ではないと判断された超高齢(80 歳以上)の日本人患者を対象に、エドキサバン15mgの1日1回投与とプラセボ投与とを比較する第3相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照イベント主導型試験(主要評価項目の発現が定められた定数に達するまで継続する試験)である。COIとして第一三共からの資金提供あり。
Patient:80歳以上の非弁膜症性心房細動を有し、CHADs2スコアは2点以上。CCr15-30、出血の既往、BW45kg以下、NSAIDs内服中、抗血小板薬内服といった理由から抗凝固療法を見送られている。
Intervention:エドキサバン15mg内服
Comparison:プラセボ
Outcome:4-48週目までは4週毎、以降は8週毎にフォローアップを行い、有効性として脳卒中または全身性塞栓症の発症、安全性として国際血栓止血学会(ISTH)の定義による大出血の発症を評価した。
Results:
2016年8月〜2019年11月に164の施設、1086名がエントリーし、984名がエドキサバン15 mg/日の投与を受ける群(492例)とプラセボ投与を受ける群(492例)に1:1の割合で無作為に割り付けられた。除外された102名は20名が同意撤回、3名が死亡、79例が基準を満たさなかった。平均年齢は86.6(±4.2)歳、平均体重は50.6(±11.0)kg、平均CCr36.3(±14.4)であった。423名が過去に抗凝固療を受けていた。追跡期間は平均466日で、681例が試験を完了、303 例が中止となった。(同意の撤回158例・死亡135例・その他の理由10例)試験を中止した主な理由は出血と関係のない有害事象と試験継続の意志喪失・能力欠如であり、人数は2群で同程度であった。
66例の脳卒中または全身性塞栓症から59例が主要有効性評価項目として認定され、エドキサバン群で15例(2.3%/人年、プラセボ群で44例(6.7%/人年)であった。(ハザード比0.34, 95%CI 0.19~0.61, P<0.001)サブグループ解析でも概ね同様の結果であったが、NSAIDs内服群のみ結果のばらつきがあった。
安全性の評価としては、22例の大出血イベントがあり、エドキサバン群で20例(3.3%/人年)、プラセボ群で11例(1.8%/人年)であった。(ハザード比1.87, 95%CI 0.90~3.89,P=0.09)消化管出血に限ると、イベント発生数はエドキサバン群のほうがプラセボ群よりも多い結果となった。全死因死亡に大きな群間差はなかった。(エドキサバン群9.9%, プラセボ群10.2%,ハザード比0.97,95%CI 0.69~1.36)
Discussion:
 本試験はENGAGE AF-TIMI48試験のデータをもとにエドキサバンを15mgに減量して使用した。
脳卒中と出血の両方のリスクが高い超高齢者に対する確立された標準治療はなく、対照としてプラセボを使用した。先行研究ではアスピリンは心房細動の患者の脳卒中の予防に効果がなく、脳卒中のリスクが高い患者には推奨されなかったため、比較対照薬として抗血小板薬を使用しなかった。
先行研究で腎機能障害があり(CCr15-30)エドキサバン15mgを投与された人と、腎機能障害がなくエドキサバン30-60mgを投与された人の血中濃度は類似しており、今回の試験と先行研究での有効性・安全性の結果が同様であった一因かもしれない。
Limitation:
 脱落患者が多かったが、出血に関連した同意取り下げは6名のみであり、多くは出血とは関係のない有害事象が理由となった。
 日本人(東アジア人)は他の人種と比較して脳卒中や全身性血栓症の発生率が高く、出血の発生率も高いため、他の集団で適応できない可能性がある。

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【開催日】2020年12月9日(水)