大きな影響を受けた書籍

更別村診療所の山田です。

20110301

週間医学界新聞2011年2月14日の記事でも紹介されましたが、私が昨年「家庭医による地域・コミュニティへの包括的なアプローチ」に関して執筆を担当しているときに出会い、大きな影響を受けた書籍を紹介します。

家庭医が地域・コミュニティにアプローチする、と言うとどうもCOPC(Community -Oriented Primary Care)に代表されるやや公衆衛生的なアプローチのイメージがつきまといますが、それだけではなんだかしっくり来ない感覚を常に持っていました。
そんなときに書籍に出会ったのでした。

『病院の世紀の理論』 
猪飼 周平

著者の猪飼氏は医療の歴史、社会学の視点から以下のように説いています。

・・・医療にとっての20世紀とは、「治療」およびそれを支える治療医学に対する社会的期待・信任が歴史上もっとも高まった時代であったということができる。・・・
医師を頂点とした、そのような時代は終焉を迎えつつあると述べられ
・・・予防・治療・生活支援を統合的に行うことで、新しい意味における健康を達成しようとする社会システム=包括ケアシステムが形成される・・・
・・・包括ケアの供給は、それまでの病院中心のケアよりも、地域的性格を強めていくだろう・・・
・・・包括ケアシステムにおいては、担い手のあり方が従来の医師を頂点とする専門家の階層システムから、多様な職種や地域住民の間のネットワークへと移行する・・・

私自身が現在勤務しているコミュニティで経験している変化に非常にマッチする表現でした。
病院や各専門診療科が有している現在の機能の重要性が失われることは今後もないと思うのですが、猪飼氏が述べる新しい包括ケアシステムによくなじむ医師こそ家庭医なのではないだろうか?と考えますし、家庭医が地域・コミュニティに対して関わっていくための重要なヒントがここにあるように思いました。
関心のある方は是非お読み下さい!

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