成人における短期間の経口ステロイドと有害性

-文献名-
Short term use of oral corticosteroids and related harms among adults in the United States: population based cohort study.Akbar K Waljee.et al.BMJ 2017;357:j1415

-要約-
【目的】
短期間の経口ステロイドと有害事象(敗血症、、静脈血栓症、骨折)との関連性をみること。
【デザイン】
後ろ向きコホート研究と自己対照ケースシリーズ
(参考…自己対照ケースシリーズとは:case自身に対照となる期間を設定して比較する手法)
【セッティング】
全米の民間医療保険データセット
【対象】
2012から2014年の期間、18~64歳の成人を継続して登録した。
【主要アウトカム】
30日以下の経口ステロイドの短期間使用率。ステロイド使用者と非使用者の有害事象の発生率。30日以下と31~90日の有害事象発生率比。
【結果】3年間で成人1,548,945人のうち、327,452人(21.1%)が少なくとも1回は短期間経口ステロイドを外来で処方されていた。高齢患者、女性、白人の間で使用頻度が高かった(全てP<0.001)。最も使用頻度が高かった一般的な適応症は、上気道炎、脊髄の問題、アレルギーであった。処方医は様々な診療科の専門医であった。30日以内では敗血症の発生率増加(incidence rate ratio 5.30, 95% confidence interval 3.80 to 7.41)、静脈血栓塞栓症の増加 (3.33, 2.78 to 3.99)、骨折の発生率増加(1.87, 1.69 to 2.07)となっており、引き続き31~90日となっていくに従い低減した。このリスクの増加は20 mg/day でも同様であった。 (敗血症incidence rate ratio 4.02、静脈血栓塞栓症 3.61、骨折 1.83 for fracture; 全て P<0.001)

absolute risk
敗血症 ステロイド使用者0.05% (n=170 of 327 452)
        非使用者0.02% (n=293 of 1 221 493)
        ⇒NNH3330人
静脈血栓塞栓症  使用者0.14% (n=472 of 327 452)
        非使用者0.09% (n=1054 of 1 221 493)
        ⇒NNH2000人
骨折       使用者0.51% (n=1657 of 327 452)
        非使用者0.39% (n=4735 of 1 221 493)
        ⇒NNH830人

【まとめ】
米国成人5人に1人が3年間で短期間の経口ステロイド処方を受けており、有害事象のリスク増加と関連していた。
中川1(20171004)

中川2(20171004)

【開催日】
平成29年10月4日(水)

1世代のうちに格差をなくそう:健康の社会的決定要因に対する取り組みを通じた健康の公平性

―文献名―
Commission on Social Determinants of Health. Closing the gap in a generation: health equity through action on the social determinants of health. Geneva: World Health Organization, 2008.

―要約―
委員会は、一世代のうちに健康格差をなくすことを求める
社会正義は生と死に関わることである。それは人々の生き方や、それに伴って生じる病に かかる可能性や、早世の危険に影響するものである。私たちは、一方では世界の特定の地域で平均余命と健康状態が改善し続ける様子に感嘆し、他方では、別の地域でそうした改 善が見られないことに懸念を抱く。今日生まれた女の子がある国では 80 歳以上まで生きる と期待できるのに、別の国では45歳まで生きられないと予測される。同じ国の中であっても、社会的不遇の程度と密接に関係した劇的な健康格差が存在する。同じ国内であれ、異 なる国の間であれ、このような格差は決して起こるべきではない。
これらの健康の不公平、つまり避けることが可能な健康の格差は、人々が成長し、生活し、 労働し、老いていく環境と、既存の保健医療システムが原因となって生じる。人々が生まれ、死にゆく環境条件を形成するのは、政治的、社会的、経済的な諸力である。政治政策および経済政策は、子どもが成長して潜在能力を全開させ、生き生きした生活を送ることができるか、それとも荒廃した生活を送ることになってしまうかを左右する。豊かな国でも貧しい国でも、解決すべき健康問題の本質は収束する傾向にある。ある社会の発展の水準は、その社会の貧富の程度にかかわらず、そこに暮らす人々の健康状態や、健康がいかに公平に社会階層の別なく保障されているか、そして健康障害による不遇から人々が保護されているかによって判定できる。「健康の社会的決定要因に関する委員会」は、2005年WHOにより、社会正義の精神にもとづいて、健康の公平性を促進するために必要な証拠(エビデンス)を揃え、健康の公平性の達成に向けた世界的な運動を前進させるために設置された。
本委員会は、WHOおよびすべての政府に対して、健康の公平性を達成するために、健康の社会的決定要因に関して国際的な取り組みを先導することを求める。いまこそ各国政府や市民社会、WHO、そしてそのほかの国際機関が、世界の人々の生活を改善するために連帯して行動を起こすことが不可欠である。一世代で健康の公平性を達成することは、可能であり、正義であり、いまこそそれをなすべき時である。

<委員会の主要な勧告>
1. 日常生活状況を改善する
・初め(幼年期)から公平性を保証する
健康な場所でこそ人々は健康になる
・公正な雇用と適切な労働
・ライフコースを通じた社会保障
国民皆健康保険
2. 権力、資金、リソースのし不公平な分配に対処する
・全ての政策、システム、事業において健康の公平性を考慮する
・公正な資金供給
・市場の責任
・ジェンダーの公平
政治的エンパワメント〜包摂(Inclusion様々な集団を含む)と発言権
・良好なグローバル・ガバナンス
3. 問題を測定して理解し、対策の影響を評価する
・健康の社会的決定要因:モニタリング、研究、そして訓練

<実践者>
・多国間機関
・WHO
・国と地方自治体
市民社会:政策、計画、事業及び評価への参加
:業績の監視
・民間部門
・研究機関

【開催日】
2017年10月4日(水)