Inappropriate treatments for nursing home patients at the end of life / May 2021

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

―文献名―
Honinx E, Van den Block L, Piers R, et al. Potentially Inappropriate Treatments at the End of Life in Nursing Home Residents: Findings From the PACE Cross-Sectional Study in Six European Countries.J Pain Symptom Manage. 2021;61(4):732-742.e1. doi:10.1016/j.jpainsymman.2020.09.001

―要約―
Introduction
ヨーロッパでは、65歳以上の高齢者の最大38%が老人ホームで亡くなっている。ベルギー、イギリス、フィンランド、イタリア、オランダ、ポーランドの老人ホームでPACE(Palliative Care for Older、高齢者のための緩和ケア)の横断的研究を行った。

目的
老人ホーム入居者の人生最後の1週間における潜在的に不適切な治療の割合を推定し、国による違いを分析すること。

Method
研究デザインとサンプリング
老人ホームの死亡した入居者を対象とした横断的な調査を、2015年に6つのヨーロッパの国(ベルギー、イギリス、フィンランド、イタリア、オランダ、ポーランド)で、比例層化無作為抽出法を用いて実施した。各国の老人ホームは、地域(州やその他の大きな地域)、種類、ベッド数(国の中央値以上/以下)で層別され、国全体をカバーするように無作為にサンプリングされました。

データ収集
過去3カ月間に死亡した入居者の概要と、それぞれの主要な回答者(スタッフ、すなわち、ケアに最も関与している看護師/ケアアシスタント、管理者/運営者、GP)のリストを各施設が提供した。これらの人々には、匿名コードと、完全な匿名性と守秘性を保証する添付文書が付いた紙のアンケート用紙が送られ、アンケート用紙はエクセルファイルを使ってモニターする研究者に直接返却された。自分が知っている限りで、これらの治療が人生の最後の週に行われたかどうかを尋ねられました。

測定方法
本研究で、不適切な治療とは、期待される健康上の利益(寿命の延長や痛みの軽減など)よりも、負の影響(死亡率や症状の重さなど)が大きい」治療や投薬を指す。
人工経腸栄養(経腸栄養、経管栄養TPN)、輸液、蘇生、人工呼吸、輸血、化学療法・放射線療法、透析、手術、抗生物質、スタチン、抗糖尿病薬、新規経口抗凝固薬を対象とした。

Results
調査対象者の特徴
死亡時の平均年齢は、ポーランドで81歳、ベルギーとイギリスで87歳となっていた(表1)。入院者はほとんどが女性で、ポーランドの63.5%からイングランドの75%までの範囲であった。入所者は主に老人ホームで死亡した(ポーランドでは80%、オランダでは89.3%)。認知症は、フィンランドで最も多く(82.5%)、イングランドで最も少なかった(60.2%)。死亡時の疾患としては、悪性がん(42.9%)であったイングランドを除き、すべての国で重度の心血管疾患が最も多く報告されました(ベルギー34.7%~ポーランド55.7%)。機能的および認知的状態が最も悪かったのはポーランド(BANS-S平均スコア21.9)で、最も良かったのはイングランド(BANS-S平均スコア17.5)であった。

6カ国における、人生の最後の1週間における潜在的に不適切な治療の割合の違い
最後の1週間に少なくとも1つの不適切な治療を行った割合は、ベルギーの19.9%からポーランドの68.2%まで差があった(p<0.001)。人工的な栄養補給や水分補給は、ポーランドで最も多く(54.3%)、オランダでは最も少なかった(2.7%、p<0.001)。ポーランド(48.6%)とイタリア(24.5%)では輸液が最も多く使用されていた(p<0.001)。経腸栄養剤は主にポーランド(17%;p>0.001)で投与されていたのに対し、経管栄養はイタリア(21.5%;p>0.001)で多く使用されていました。すべての治療法のうち、抗生物質の使用が最も多く、ベルギーの11.3%からポーランドの45%まで、すべての国で使用されました(p<0.001)。
リスク因子調整の結果、これらの差は住民の特性によるものではなく、各国の適切なケアの違いを反映したものであると考えられた。

Discussion
ほとんどの治療法の存在割合は、国によって統計的に有意に異なっていた。

研究の強み
医療制度や緩和ケアの文化が異なる欧州6カ国の322の老人ホームの1,384人の入居者のデータを含めることができた。リスク調整を行うことで、本研究の結果が国ごとの存在割合の違いを反映しており、入居者の特性の違いに影響されていないことが確認されました。

研究の限界
①調査データから、特定の治療法が「不適切」な場合を推測することはできず、治療が行われた時点では、ある治療が不適切であるとは考えられなかったかもしれない。
②データは看護師個人から収集したため、リコールバイアスの可能性があります。
③治療の開始時期や臨床的な適応についての情報を収集していない。
④治療法によっては大量の欠損データ(最大で24%)があった。 → 不完全な症例と完全な症例の回帰帰納法による感度分析を行いました。その結果、主に同様の結果が得られ、欠損データの影響は小さいことがわかりました。
⑤入居者が病院で死亡した場合、老人ホームは人生最後の1週間の病院での治療に関する情報を持っていない可能性があり、これが過小評価につながる可能性があります。→ 病院で死亡した入居者は全体の15%に過ぎないことから、これによるバイアスの可能性は小さいと思われます。

臨床的意義
国による違いが大きいことから、文化的な違いを考慮して、介護施設のスタッフやGPが治療の意思決定や終末期の認識を行う際に役立つガイドラインを作成する必要がある。介護施設における事前のケアプランは、入居者、親族、介護者が将来のケアの目標や好みを話し合うのに役立つ可能性があるため、より大きな注意を払う必要がある。最後に、終末期のケアに関する会話や終末期のケアの身体的側面に関するスタッフのトレーニングが必要である。今回の結果は、政策立案者やその他の意思決定者が、老人ホームにおける終末期ケアの適切性を向上させるための公衆衛生政策や介入策を策定する際に利用することができ、また、国境を越えて優良事例を交換することができます。

Conclusion
老人ホーム入居者の人生最後の1週間における不適切と思われる治療の存在割合は、抗生物質の使用が一般的であったことを除いて、ほとんどの調査対象国で低かった。イタリアとポーランドでは,すべての治療がより多く行われており,特に人工栄養・輸液と抗生物質の投与が多かった。これらの違いは、法律、ケア組織、文化、緩和ケアに関する介護施設スタッフの知識や技術など、国ごとの違いを反映している。

【開催日】
2021年10月6日(水)

Guideline on behavioral and psychological treatments for chronic insomnia in adults (April 2021)

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

―文献名―
Edinger JD, Arnedt JT, Bertisch SM, Carney CE, Harrington JJ, Lichstein KL, Sateia MJ, Troxel WM, Zhou ES, Kazmi U, Heald JL, Martin JL. Behavioral and psychological treatments for chronic insomnia disorder in adults: an American Academy of Sleep Medicine systematic review, meta-analysis, and GRADE assessment. J Clin Sleep Med. 2021 Feb 1;17(2):263-298.

―要約―
はじめに
成人の慢性不眠症の行動療法や心理療法を活用する臨床ガイドラインを裏付けるエビデンスを提供することが、このシステマテックレビューの目的である。

方法
米国睡眠医学学会は9人の睡眠医学と睡眠心理学の専門家による研究班を組織した。成人の慢性不眠症の治療のための行動療法、心理療法に関するRCTの同定のためシステマテックレビューが行われた。切実で重要なアウトカムにおける臨床的に有意な改善を生み出す治療法かどうか同定するため、統計解析が行われた。最終的には、治療法を推奨するエビデンスを評価するGrading of Recommendations Assessment, Development, and Evaluation process(GRADEアプローチ) が使われた。

結果
1244件の文献が検索され、124件が組み入れ基準に合い、89件が統計解析に耐えうるデータを提供した。認知行動療法、ブリーフセラピー、刺激管理法2)、睡眠制限療法3)、リラクゼーション訓練4)、睡眠衛生5)、バイオフィードバック6)、逆説志向、集中的睡眠再訓練、マインドフルネス、のエビデンスが示された。エビデンスの質、利点と害のバランス、患者の価値観と好み、資源利用への配慮に関する要約も提示した。

*2 刺激管理法 例)寝室は寝るだけ、起きたら部屋から出る、TVや本を寝室で見ない
*3 睡眠制限法 例)日誌等から平均睡眠時間から逆算して、就寝時間を遅くする
*4 リラクゼーション 例) 腹式呼吸、筋ストレッチ、自律訓練法
*5 睡眠衛生 例)食事、運動、嗜好品の適切指導、光、音、気温の環境調整、加齢と睡眠時間の説明
*6 バイオフィードバック 例)前頭筋の筋電図をモニタリングして、リラックス法をみにつける
*7 逆説志向
夜、眠ろうとして眠れない経験を多くの人がもっています。眠ろうと思えば思うほど、眠れなくなるのです。眠ろうとする自分に意識が向きすぎる「過剰な自己観察」のために余計に睡眠が遠のいていきます。そこでフランクルは、眠れない夜は眠ることを諦めるように勧めます。「今夜はちっとも眠りたくない、ひとつ今夜は体を休ませながら、あれやこれやを考えてみたい。この前の休暇のことや、つぎの休暇のことをなど」本来であれば避けたい眠れない状況を、ユーモアをもって自ら望むことによって逆に睡眠を求める過剰な意識が薄れて眠りが訪れるというのです。
参照:https://diamond.jp/articles/-/176280?page=3
*8 集中的睡眠再訓練 例)脳波が測定できる部屋で、寝ても3分以内に起こされる(30分1セットで5時間)

【開催日】
2021年9月1日(水)

COVID-19パンデミックに伴う、米国におけるがん検診不足の関連性について

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

―文献―
Ronald C. Chen, MD, MPH; Kevin Haynes, PharmD, MSCE; Simo Du, MBBS, MHS; John Barron, PharmD; Aaron J. Katz, PharmD, PhD
Association of Cancer Screening Deficit in the United States With the COVID-19 Pandemic.JAMA Oncol. 2021;7(6):878

―要約―
重要性
COVID-19パンデミックは、がん検診の急激な減少をもたらした。しかし、パンデミックに伴う米国でのスクリーニングの総量の減少と、異なる地域や社会経済的地位(SES)の指標による個人への影響の違いについては、まだ完全には解明されていない。

目的
COVID-19パンデミックに関連する乳がん、大腸がん、前立腺がんのスクリーニング率を、異なる地域および異なるSES指数四分位の個人について定量化し、2020年における米国人口全体のがんスクリーニング不足を推定する。

デザイン、セッティング、参加者
このレトロスペクティブコホート研究では、米国の地理的に多様な地域のメディケアアドバンテージおよび商業医療プランに加入している約6,000万人を対象とした、単一支払いの行政請求データと登録情報からなるヘルスコア統合研究データベースを使用している。参加者は、2018年、2019年、2020年の1月から7月にデータベースに登録された個人で、分析指標月以前に対象となるがんの診断を受けていない人でした。

※メディケア(Medicare)は、65 才以上の高齢者と 65 才未満の障害者向けの米国の公的 医療保険プログラムである。米国の 65 才以上の高齢者のほぼ全員がメディケアに加入し、その数は 2013 年において 4,350 万人に上った。また、障害者の加入者数は 88万人であり、合計すると 5,230 万人、国民全体の約6人に1人がメディケアを利用している。 メディケアは4つのプログラムに分かれている。それらは、パート A(病院保険)、パート B(補足的医療保険)、パートC(メディケア・アドバンテージ)、パート D(外 来処方薬給付)であり、それぞれ財源が異なる。
https://www.dir.co.jp/report/research/economics/usa/20141027_009074.pdf

介入:分析指標の月と年

主要な結果と測定方法:乳がん、大腸がん、前立腺がんの検診のレセプト。

結果
2020年の3月から5月にかけて、3つのがんの検診は2019年に比べて急激に減少し、4月に最も急激な減少が見られ(乳がん:90.8%減、大腸がん:79.3%減、前立腺がん:63.4%減)、乳がんと前立腺がんでは7月までに月間検診率がほぼ完全に回復した。(Figure1.)
COVID-19パンデミックに伴う米国人口全体の検診不足の絶対値は、乳がんで390万人、大腸がんで380万人、前立腺がんで160万人と推定された。
地域別に見ると、北東部が最も急激に検診数が減少し、西部は中西部や南部に比べて回復が遅れていた。例えば、4月の乳がん検診率の変化率(2020年対2019年)は、西部では-87.3%(95%CI、-87.9%~-86.7%)、北東部では-94.5%(95%CI、-94.9%~-94.1%)となっている(低下)。7月は、中西部の-0.3%(95%信頼区間、-2.1%~1.5%)から西部の-10.6%(同、-12.6%~-8.4%)までの範囲であった(回復)。
SES別では、SES指数が最も高い四分位の個人でスクリーニングの減少幅が最も大きく、2020年にはSESによるがんスクリーニングの格差が縮小することが示された。例えば、SES指数が最も低い四分位と最も高い四分位の個人の10万人の加入者あたりの前立腺がん検診率は、2019年4月にはそれぞれ3525(95%CI、3444~3607)と4329(95%CI、4271~4386)であったのに対し、2020年4月には1535(95%CI、1480~1589)と1338(95%CI、1306~1370)であった。多変量解析の結果、遠隔医療利用はより高いがん検診と関連していた。

Limitations:
例えば、保険に加入している人のみを対象とした分析では、COVID-19パンデミックに関連したがん検診の不足を集団レベルで推定することに偏りが生じる可能性がある。特に、今回の分析は、保険に加入していない人や公的保険に加入している人を代表していない可能性があり、SESとの関連を過小評価する可能性がある。もう一つの限界は、分析に必要な人種/民族の情報がないことである。
また、解析に使用したコードの多くはスクリーニング検査に特化したものだったが、コードによってはスクリーニングと他の臨床的適応のための検査を区別しないものもあった。対象となるがんの既往歴のない人を含めることで、スクリーニング以外の目的で実施された検査が不正確にカウントされるという限界は一部緩和された。

結論と関連性
COVID-19の大流行に伴うがん検診の大幅な不足に対処するためには、手技を必要としない検診方法の利用拡大など、公衆衛生上の努力が必要である。

【開催日】
2021年8月4日(水)

Testing rates in patients at high risk for primary aldosteronism (March 2021)

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

―文献―
Cohen JB, Cohen DL, Herman DS, Leppert JT, Byrd JB, Bhalla V. Testing for Primary Aldosteronism and Mineralocorticoid Receptor Antagonist Use Among U.S. Veterans : A Retrospective Cohort Study. Ann Intern Med. 2021 Mar;174(3):289-297. doi: 10.7326/M20-4873. Epub 2020 Dec 29. PMID: 33370170; PMCID: PMC7965294.

―要約―
Introduction:
原発性アルドステロン症は治療抵抗性高血圧の一般的な原因である。しかしカリフォルニア、イリノイ、およびニューヨークのヘルスシステムの研究からのエビデンスでは原発性アルドステロン症の検査率が推奨されている患者の間で3%未満と低いことが示唆されている。
しかし、同様の研究は大規模には行われておらず、大規模で高度に統合された医療システムで検査率が低いかどうかは不明である。明らかな治療抵抗性高血圧の発症と検査に関連する要因を有する米国退役軍人における原発性アルドステロン症の検査頻度を評価することを目的とした。また、テストがMRA療法による明らかな治療抵抗性高血圧のエビデンスに基づく治療及び長期血圧コントロールの違いと関連しているかどうかを評価しようとした。
Method:
 Design:レトロスペクティブコホート
 Date Source:米国退役軍人保健局(VHA) Corporate Date Warehouseの米国退役軍人保健局データを使用。このデータには約900万人の退役軍人に関する詳細な診断コード、検査結果、バイタルサイン、薬局の処方記録が含まれる。
Participants
2000年〜2017年に明らかな治療抵抗性高血圧(n=269,010)の退役軍人で、治療抵抗性高血圧とは3種類の降圧薬(利尿薬を含む)で治療中に少なくとも1ヶ月間隔で収縮期血圧が140mmHgもしくは拡張期血圧が90mmHg以上であること、もしくは4つのクラスの降圧薬を必要とする高血圧で定義される。
 除外:原発性アルドステロン症の検査を受けた、または明らかな治療抵抗性高血圧の基準を満たす前にMRA治療を開始した患者、および明らかな治療抵抗性高血圧の基準を満たす前に慢性腎臓病ステージ4または5または末期腎臓病を患った患者を除外した。
primary end point:血中アルドステロン濃度と血漿レニン活性まだは血漿レニン濃度のいずれかの同時測定として定義される、原発性アルドステロン症の検査の実施割合
secondary end point:MRA治療の開始とSBPの経時的変化

Results
明らかな治療抵抗性高血圧の基準を満たした後の、フォロー期間の中央値は3.3年で、4277人(1.6%)が原発性アルドステロン症の検査を受けた。(Figure1) Figure2の左の図は各VHA医療センター(n=130)で原発性アルドステロン症の検査を受けた治療抵抗性高血圧症の患者の割合を示している。検査率は全体の0~6%で明らかな治療抵抗性高血圧の患者数は医療センター全体の検査率との相関はなかった。Figure2の右の図は年ごとの検査率で検査率は年間1〜2%だった。
(Appendix Figure)原発性アルドステロン症の検査に関連する要因として、患者レベルでは低カリウム血症(standardized hazard ratio [HR], 1.93 [95% CI,1.80 to 2.07])、より高いSBP(standardized HR, 1.43 [CI,1.37 to 1.49])、を含むいくつかの要因が検査を受ける可能性が高い。また、腎臓内科医(HR,2.05[95%CI,1.66~2.52])または内分泌科医(HR,2.48[95%CI,1.69~3.63])による患者の問題を特定するための外来(index visit)はプライマリケアと比較して検査をする可能性が高いことに関連していた。センターレベルでは地方は非地方より検査をする可能性が低かった(HR, 0.53 [CI, 0.31 to 0.91])。
(table2)原発性アルドステロン症の検査を実施した場合は検査なしの場合と比較して、MRA療法を開始する可能性が4倍高く(HR 4.10[CI3.68~4.55])、低カリウム血症の病歴のある患者は低カリウム血症のない患者(HR, 4.21 [CI, 3.59 to 4.94])よりMRA(HR, 7.11 [CI, 6.25 to 8.10])で治療される可能性は高かった、そして、時間経過とともにより良い血圧コントロールと関連していた。
 Limitation:主に男性のコホートで後ろ向きデザイン、誤分類に対する診察室血圧の感受性の問題、および原発性アルドステロン症の確定検査の欠如などがlimitationである。
Conclusion:明らかな治療抵抗性高血圧を伴う退役軍人に関する全国的に施行したコホートでは原発性アルドステロン症の検査は稀であり、原発性アルドステロン症の検査はMRAによるエビデンス に基づく治療の割合が高いことと、長期的なBPコントロールが優れていることに関連していた。この発見は小規模な医療システムにおけるガイドライン推奨の実践への遵守が低いという以前の観察を補強し、治療抵抗性高血圧患者の管理を改善する緊急の必要性を強調している。

【開催日】
2021年7月7日(水)

急性心筋梗塞後の長期ベータブロッカー療法の継続期間(2020年12月)

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。
-文献-
Long-term b-blocker therapy and clinical outcomes after acute myocardial infarction in patients without heart failure: nationwide cohort study
European Heart Journal (2020) 41, 3521–3529 doi:10.1093/eurheartj/ehaa376

-要約-
Aims
長期間のベータブロッカー療法とAMI後に心不全を起こしていない患者での臨床的アウトカムの関連を調査すること
Method
2010年〜2015年の間に退院時にベータブロッカー療法によるAMIの冠動脈血行再建術を受け、死亡、再発性MI、またはHFが1年間発生しなかった、合計28,970人の18歳以上の患者が韓国の全国医療機関の保険データから登録された。
Primary outcomeは全死因。
Secondary outcomeは再発性MI、新規HFによる入院、全死因による死亡・再発性MI・新規HFによる入院の各二次転機と複合アウトカム
Outcomes
アウトカムは指標MI後1年後のランドマーク分析を利用して1年以上のベータブロッカー療法(N=22707)と1年未満のベータブロッカー療法(N=6263)の結果を比較した。(Figure1)
フォローアップ期間の中央値は3.5年(2.2~5.0年)、1684人が死亡した。
1年未満のベータブロッカー療法を受けた患者と比較して、1年以上のベータブロッカー療法を受けている患者は、全死因による死亡リスク [調整済みハザード比(HR)0.81;95%CI0.72-0.91]および全死因による死亡、再発性MI、また新しいHFによる入院の複合アウトカム[調整済みハザード比(HR)0.82;95%CI 0.75-0.89]のリスクは優位に低かったが、再発性MIと新規HFによる入院のリスクは優位ではなかった。(table 2 Figure2)サブグループ解析でも1年以上のベータブロッカーの使用と全死因のリスクの関連は一貫していた。(Figure3)
Figure4ではそれぞれの地点でベータブロッカーを継続している患者と中断した患者を示している。継続的なベータブロッカー療法に関連する全死因のリスク低下 [調整済みハザード比(HR)0.86;95%CI 0.75-0.99]、再発性MIのリスク低下(調整済みHR 0.67; 95%CI 0.51–0.87; P = 0.003)は2年を超えて観察されたが、MI後3年を超えては観察されなかった。[調整済みハザード比(HR)0.87;95%CI 0.73-1.03]。全死因、再発性MI、新しいHFによる入院の複合リスクは3年以上持続するベータブロッカーによる加療を受けた患者で有意に低かった。(adjusted HR 0.85; 95% CI 0.74–0.98; P = 0.03) (table3,Figure4)
Discussion
 今回のコホート研究ではAMI後に心不全を起こさなかった1年以上のベータブロッカー療法をうけた患者が1年以下しか加療を受けなかった患者に対して、より低い全死因のリスクと関連があった。その有益な効果は様々のサブグループの中でも一貫していた。
 現在の結果にはいくつかのもっともらしい説明がある。
① HFなしに退院したAMIの多くの患者はフォローアップ中にMIの再発や再入院、HFによる死亡を経験している。それゆえに、二次予防としてベータブロッカーを続けることは退院の時にHFがない患者にとって有益であるかもしれない
② 血圧は長期でベータブロッカー治療を受けた患者の方が受けていない患者に比べてコントロールが良い可能性がある。血圧コントロールは冠動脈疾患がある患者のリスクを減らす重要な治療であり、厳格な血圧コントロールは冠動脈イベントリスクの高い患者にとって心血管イベントを改善する。
③ 血管内超音波試験からのプールされた分析では、ベータブロッカー療法は冠動脈疾患のある患者はアテローム量の減少に関連があることを示したので、冠動脈の動脈硬化の進展を遅らせる可能性がある。
Limitation
① この研究ではベータブロッカーを使う理由を特定できていない。長期間のベータブロッカー治療を受ける患者はフォローアップ中にベータブロッカーを中断した人たちに比べてベータブロッカー療法に耐えられているため、重度リスクのプロファイルが少ないかもしれない。潜在的なバイアスを乗り越えるために、我々はAMI後の早期ステージにベータブロッカー治療を始めた人々を除外した、そして、immortal time biasを回避するためにランドマーク解析を実施した。
② 記録されていない交絡因子によって引き起こされる潜在的な選択バイアスが存在する。例えば、我々はAMIのタイプの情報や欠陥造影による重症度、人体計測的・行動科学的要因などの情報は欠落していたし、請求に基づく疾病管理に関する情報は限られていた。
③ 左室機能障害に伴う情報はなかった。しかし、韓国におけるMIを経験した大部分の患者は左室駆出機能を保っていた。その上,駆出率の低い患者はベータブロッカー療法を受け、予後不良である可能性が高いためこのタイプのバイアスを我々の発見で説明する可能性は低い。
Conclusion
MI後の1年以上ベータブロッカー療法を受けたHFのないAMIの患者における全死因による死亡の減少と関連があった。しかし。AMI後のルーチンなベータブロッカー療法の適切な期間を決定するにはさらなる大規模なRCTが必要とされる。

【開催日】2021年3月3日(水)

皮膚感染と軟部組織膿瘍の診断のためのPOC超音波検査についてのまとめ

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。
-文献名-
Gottlieb M, Avila J, Chottiner M, Peksa GD. Point-of-Care Ultrasonography for the Diagnosis of Skin and Soft Tissue Abscesses: A Systematic Review and Meta-analysis. Ann Emerg Med. 2020;76(1):67. Epub 2020 Feb 17.

-要約-
目的
皮膚および軟部組織の感染症は、救急部門ではコモンな主訴である。これまで研究では身体診察だけでは蜂窩織炎と膿瘍を区別するのに信頼性が低いことが示されている。皮膚と軟部組織感染症の診断精度が向上するツールとして、POC超音波が研究された。
今回の目的は、膿瘍に対するPOC超音波の診断精度を評価することである。サブグループ解析は、成人対小児の患者、および高率の疑い症例と臨床的にはっきりしない症例について実施され、副次的な目的として、POC超音波によるマネジメントの変更が正しかったか誤っていたのかの割合、および治療失敗の減少についてが含まれている

方法
皮膚および軟部組織膿瘍の評価のためのポイントオブケア超音波検査の診断精度を評価するすべての前向き研究について、PubMed、Scopus、Latin American and Caribbean Health Sciences Literature Database、Cumulative Index of Nursing and Allied Health、Google Scholar、Cochrane Database of Systematic Reviews、Cochrane Central Register of Controlled Trialsについて研究開始から2019年7月26日までの間の文献を調査した。
データは事前に定義されたワークシートに二回抽出しQUADAS-2 ツール(診断精度に関する研究の質を評価するためのツール、Table2参照)を用いて分析を行った。診断精度は、感度、特異度、陽性尤度比、陰性尤度比でそれぞれ95%信頼区間を示した。

結果
・我々は14件の研究(患者数2,656人)を同定し、その結果POC超音波は感度94.6%(95%CI 89.4%~97.4%)、特異度85.4%(95%CI 78.9%~90.2%)で、陽性尤度比は6.5(95%CI 4.4~9.6)、陰性尤度比は0.06(95%CI 0.03~0.13)であった。
・POC超音波は感度94.6%(95%CI 89.4%~97.4%)、特異度85.4%(95%CI 78.9%~90.2%)で、陽性尤度比は6.5(95%CI 4.4~9.6)、陰性尤度比は0.06(95%CI 0.03~0.13)であった。
・検査前に膿瘍または蜂窩織炎の疑いが高かった症例では、POC超音波の感度は93.5%(95%CI 90.4%~95.7%)、特異度は89.1%(95%CI 78.3%~94.9%)で、陽性尤度比は8.6(95%CI 4.1~18.1)、陰性尤度比は0.07(95%CI 0.05~0.12)であった
・臨床的にはっきりしないCaseではPOC超音波は感度91.9%(95%CI 77.5%~97.4%)、特異度76.9%(95%CI 65.3%~85.5%)で、陽性尤度比は4.0(95%CI 2.5~6.3)、陰性尤度比は0.11(95%CI 0.03~0.32)であった
・成人ではPOC超音波は感度98.7%(95%CI 95.3%~99.8%)、特異度91.0%(95%CI 84.4%~95.4%)で、陽性尤度比は10.9(95%CI 6.2~19.2)、陰性尤度比は0.01(95%CI 0.001~0.06)であった
・小児患者では、POC超音波の感度は89.9%(95%CI 81.8%~94.6%)、特異度は79.9%(95%CI 71.5%~86.3%)で、陽性尤度比は4.5(95%CI 3.1~6.4)、陰性尤度比は0.13(95%CI 0.07~0.23)であった
・POC超音波は10.3%(95%CI 8.9%~11.8%)の症例で方針変更につながり、0.7%の症例で間違った方針変更につながった(95%CI 0.3%~1.1%)

結論
最近のデータによると、POC超音波は膿瘍と蜂窩織炎の鑑別診断のための良い診断精度を有し、10%の症例で正しい治療変更に導いた。さらなる研究では、理想的なトレーニングとそのための適した画像収集のプロトコルを特定する必要がある。

【開催日】2021年2月10日(水)

無症候性重症大動脈弁狭窄症における早期手術

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
Kang, Duk-Hyun, et al. Early surgery or conservative care for asymptomatic aortic stenosis. New England Journal of Medicine. 2020;382(2):111-119.

-要約-
背景
無症候性の重度の大動脈弁狭窄症患者における外科的介入のタイミングと適応については議論の余地がある。
方法
多施設共同試験において、無症候性の重度の大動脈弁狭窄(大動脈弁口面積が0.75cm2以下で、毎秒4.5m以上の大動脈ジェット速度または50mm Hg以上の平均大動脈弁圧較差のいずれかがあると定義される)患者145人を無作為に早期手術あるいはガイドラインの推奨に従った保存的治療に割り付けた。一次エンドポイントは、手術中、術後30日間の死亡、フォローアップ期間全体における心血管疾患による死亡の複合アウトカムとした。原因であったことが判明した。主要な副次的エンドポイントは追跡期間中のあらゆる原因による死亡とした。
結果
早期手術群では、73例中69例(95%)が無作為化後2ヵ月以内に手術を受け、手術による死亡は認められなかった。ITT分析では、一次エンドポイントイベントは早期手術群で1人(1%)、保存的治療群では72人中11人(15%)に発生した(ハザード比、0.09;95%信頼区間[CI]、0.01~0.67;P = 0.003)。あらゆる原因による死亡は、早期手術群では5人(7%)、保存的治療群では15人(21%)で発生した(ハザード比、0.33;95%信頼区間[CI]、0.12~0.90)。保存的治療群では、突然死の累積発生率は4年後に4%、8年後に14%であった。

背景
無症候性の重度の大動脈弁狭窄症患者における外科的介入のタイミングと適応については議論の余地がある。
方法
多施設共同試験において、無症候性の重度の大動脈弁狭窄(大動脈弁口面積が0.75cm2以下で、毎秒4.5m以上の大動脈ジェット速度または50mm Hg以上の平均大動脈弁圧較差のいずれかがあると定義される)患者145人を無作為に早期手術あるいはガイドラインの推奨に従った保存的治療に割り付けた。一次エンドポイントは、手術中、術後30日間の死亡、フォローアップ期間全体における心血管疾患による死亡の複合アウトカムとした。原因であったことが判明した。主要な副次的エンドポイントは追跡期間中のあらゆる原因による死亡とした。
結果
早期手術群では、73例中69例(95%)が無作為化後2ヵ月以内に手術を受け、手術による死亡は認められなかった。ITT分析では、一次エンドポイントイベントは早期手術群で1人(1%)、保存的治療群では72人中11人(15%)に発生した(ハザード比、0.09;95%信頼区間[CI]、0.01~0.67;P = 0.003)。あらゆる原因による死亡は、早期手術群では5人(7%)、保存的治療群では15人(21%)で発生した(ハザード比、0.33;95%信頼区間[CI]、0.12~0.90)。保存的治療群では、突然死の累積発生率は4年後に4%、8年後に14%であった。

結論
非常に重度の大動脈弁狭窄を有する無症候性の患者において,早期に大動脈弁置換術を受けた患者では,保存的治療を受けた患者に比べて,追跡期間中の手術死亡または心血管系原因による死亡の複合アウトカムの発生率が有意に低かった.

ディスカッション
・本研究の意義:無症状の重症大動脈弁狭窄症患者における手術の決定は弁置換術のリスクと経過観察のリスクの間のバランスを慎重に見積もる必要がある。大動脈弁狭窄症は、慎重な経過観察+症状が出るまで手術を遅らせる戦略は比較的安全ではあるが、突然死のリスク、患者による症状の否定または報告の遅れ、不可逆的な心筋損傷、および手術リスクの上昇と関連する。以前の観察研究で見られたベースライン治療の群間の違い、治療選択バイアス、および測定されていない交絡因子を減らすことで本研究では、早期大動脈弁置換術を支持する証拠を示した。
・示されたベネフィットに対する説明:2群間の長期生存期間の有意差の理由として考えられるのは、第一に、本試験および最近の低リスク患者における外科的大動脈弁置換術とTAVRを比較した試験では、手術リスクはそれより以前の研究に比べて大幅に低かった点である。この試験では、手術による死亡率は1%未満であり、綿密な術後のモニタリング・術後のケアの改善により、早期手術に関連した長期的なリスクが大幅に減少した可能性がある。第二に、早期手術群では突然死が見られなかったことから、早期手術により突然死が避けられた可能性がある。対照的に、保存的治療群では、症状が出る前の大動脈弁狭窄の進行中の突然死の年間リスクが上昇する傾向があった。第三に、保存的治療群では、最終的な大動脈弁置換術は避けられず、大動脈弁置換術のリスクは、症状が進行するまで手術が延期されたことで増加した可能性である。手術後の心血管系イベントは保存的治療群でより頻繁に観察され、大動脈弁置換術を遅らせることによる長期的リスクが高いことが示唆された。
研究の限界と適用上の注意:第一に、大動脈弁狭窄の重症度が高い患者を対象とした本試験では、手術待機時間によりリスクが高まるため、早期手術が良い結果に出る傾向があった可能性がある。第二に、早期手術群では5%、保存的治療群では3%の患者でクロスオーバーが発生した。ただ、Per-protocol解析とintention-to-treat解析の結果はほぼ同じであった。第三に、この試験は盲検化されていないため、患者が受けた治療を臨床医が把握していることに、非致死的転帰が影響を受けた可能性がある。第四に、重度の大動脈弁狭窄症を有する無症候性の患者に症状がないことを確認するために運動検査を行うことは妥当であるが、本試験では選択的にしか実施されていない。第五に、患者数の少なさと主要エンドポイントイベントの少なさが本試験の重要な限界である。最後に、この試験では比較的若い患者(最近の低リスク患者を対象としたTAVR試験に登録された患者と比較して)が対象であり、その中でも二尖性大動脈弁疾患の発症率が高く、左室収縮機能が正常で、共存する疾患が少なく、手術リスクが低い患者が含まれていた。このように、我々の試験集団はTAVR試験に登録されている集団とはかなり異なっており、無症候性の重症大動脈弁狭窄症に対する早期TAVRに直接結果を適用できない。

【開催日】2021年2月3日(水)

癌のリスクを減らすための食事ガイドライン

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
Chetyl L. Rock. American Cancer Society Guideline for Diet and Physical Activity for Cancer Prevention. CA Cancer J Clin. 2020;70(4):245.Epub 2020 Jun 9.

-要約-
<Abstract>
アメリカがん協会(ACS)は、コミュニケーション、ポリシー、およびコミュニティ戦略の基盤として機能し、最終的にはアメリカ人の食事および身体活動パターンに影響を与えるために、食事および身体活動ガイドラインを発行している。このガイドラインは、がんの研究、予防、疫学、公衆衛生、および政策の専門家の全国委員会によって作成され、食事と活動のパターンおよびがんのリスクに関連する最新の科学的証拠を反映している。ACSガイドラインは、食事と身体活動のパターンに関する個々の選択の推奨事項に焦点を当てているが、それらの選択は、健康的な行動を促進または阻害するコミュニティの背景の中で生じる。したがって、この委員会は、がんのリスクを減らすための個人の選択に関する4つの推奨事項に付随するコミュニティアクションの推奨事項を提示する。コミュニティの行動に関するこれらの推奨事項は、社会のすべてのレベルの個人が健康的な行動を選択する真の機会を持つためには、支援的な社会的および物理的環境が不可欠であると認識されている。この2020年のACSガイドラインは、米国心臓協会および米国糖尿病学会の、冠状動脈性心臓病および糖尿病の予防、ならびに2015年から2020年の米国人向け食事ガイドラインおよび2018年の身体的健康増進に関するガイドラインと一致している。

<ガイドラインと推奨事項の概要>
1980年代初頭以来、ACSや世界がん研究基金/米国がん研究協会(WCRF/AICR)などの政府および主要な非営利医療機関は、体重管理、身体活動、食事療法、アルコール消費に焦点を当てたがん予防ガイドラインと推奨事項を発表している。WCRF/AICRガイドラインの最初の更新後、WCRF/AICRは、さまざまな種類のがんを包括的に報告し、厳格なシステマティックレビュープロトコルに基づく継続的更新プロジェクトを含めるように取り組みと推奨事項を拡大した。WCRF/AICRからの第3専門家報告書は、更新された癌予防の推奨事項とともに、2018年に報告された。
現在のACSの食事療法と身体活動のガイドラインと推奨事項は、2012年のACSガイドラインを更新した。それは主にWCRF/AICRのシステマティックレビューと継続的更新プロジェクトのレポートに基づいており、システマティックレビューとそれ以降に公開された大規模なプール分析からのエビデンスが反映されている。

癌予防のための食事療法と身体活動に関する2020年アメリカがん協会ガイドライン(表1)
個人向けの推奨事項
1.生涯を通じて健康的な体重を達成し、維持する
 体重を健康的な範囲内に保ち、成人期の体重増加を避ける。
2.身体的に活発である
 成人は、週あたり150〜300分の中程度の強度の身体活動、または75〜150分の激しい強度の身体活動、または同等の組み合わせを行うべきである。300分の上限を達成または超えることが最も望ましい。
 子供と青年は、毎日少なくとも1時間の中程度または激しい強度の活動を行うべきである。
 座ったり、横になったり、テレビを見たりするなどの座りがちな行動や、その他の形式の画面ベースの娯楽は制限する。
3.すべての年齢で健康的な食事パターンに従う
 健康的な食事パターンには次のものが含まれる。
 ◦健康的な体重の達成と維持に役立つ量の栄養素が豊富な食品
 ◦さまざまな野菜—濃い緑、赤、オレンジ、繊維が豊富なマメ科植物(豆とエンドウ豆)など
 ◦果物、特にさまざまな色の果物全体
 ◦全粒穀物
 健康的な食事パターンは、以下を制限または含まないものである。
 ◦赤肉と加工肉
 ◦砂糖で甘くした飲料
 ◦高度に加工された食品と精製穀物製品
4.アルコールを飲まないことが最も望ましい
 飲酒を選択する人は、女性の場合は1日1杯、男性の場合は1日2杯以下に制限する必要がある。
 コミュニティアクションの推奨事項
 公的、私的、およびコミュニティ組織は、国、州、および地方レベルで協力して、手頃な価格の栄養価の高い食品へのアクセスを増やす政策および環境の変化を開発、提唱、および実施する必要がある。身体活動のための安全で、楽しく、アクセス可能な機会を提供する。そして、すべての人のアルコールを制限する。


【開催日】2021年1月13日(水)

小児アトピー性皮膚炎における頻繁な入浴と頻度の少ない入浴:無作為化臨床試験

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。
-文献名-
Cardona ID, Kempe EE, Lary C, Ginder JH, Jain N. Frequent Versus Infrequent Bathing in Pediatric Atopic Dermatitis: A Randomized Clinical Trial. J Allergy Clin Immunol Pract. 2020;8(3):1014-1021. doi:10.1016/j.jaip.2019.10.042

-要約-
Introduction:アトピー性皮膚炎(AD)は慢性の皮膚炎症で世界中のこどもの15~30%に影響を及ぼしている。アトピー性皮膚炎は皮膚バリア機能障害と免疫調整障害を特徴とする。その高い有病率にも関わらず、小児アトピー性皮膚炎に関する入浴頻度を含む最良の入浴方法を評価した研究はほとんどなく、その結果、アトピー性皮膚炎のガイドラインでは一貫した根拠はない状態である。アトピー性皮膚炎を持つ子供の親はしばしば矛盾する情報を受け取り、不満と混乱を生んでいる。プライマリケア医の50%以下しか毎日の入浴を進めていないのに対して、専門医(アレルギー専門医、免疫学者、小児皮膚科医)の50%以上が毎日の入浴を推奨しているというデータもある。
これらの研究からPCPsより専門医は毎日の入浴を推奨する傾向にあり、矛盾したアドバイスは混乱と不満をうむ原因となりうる。
中等度から重症のアトピー性皮膚炎の小児に対するwet-wrap therapy(WWT)による閉鎖療法は効果的であるとされている。Soak and smear(or Soak and Seal)(SS):少なくとも10〜15分バスタブに浸かって、すぐに乾かし、皮膚軟化剤で閉鎖をする方法も急性期に効果的であることが示されている。アトピー性皮膚炎の病態生理学に置いて皮膚の水分補給と経表皮水分喪失量の重要性を考慮し、SS入浴は局所薬剤の浸透を促進し、水分喪失を防ぐことによってWWTを模倣する可能性があることを考慮し、頻繁なSS入浴は小児のアトピー性皮膚炎において入浴を制限するよりも効果的であるかもしれないと仮定した。
我々の目的は重症のアトピー性皮膚炎に対して急性期の治療介入として、1日2回、15~20分、SS入浴すること(Wet method : WM)と、週2回、10分以下でSS入浴すること(dry method : DM)の効果を比較することである。また、水分補給状態やStaohylococcus aureusのコロニー形成する密度をWM、DM間で定量化した。

Method:どのような方法を用いたのか、特殊な方法であれば適宜解説を入れる。
アメリカのメイン州の病院関連のアレルギー免疫学診療所でシングルブラインドのクロスオーバー試験を使用したランダム化試験を実施した。対象者はSCORing Atopic Dermatitis(SCORAD)index*1で25以上(中等度〜重度)のアトピー性皮膚炎の6ヶ月〜11歳の小児に対する、頻繁に行うSS入浴と頻繁には行わないSS入浴の頻度を比較した。
2グループに1:1でランダム化した。
グループ1は週に2回、10分以下のSS入浴を2週間に渡る(DM)実施したのち、日に2回、15~20分のSS入浴を2週間に渡る(WM)実施した。グループ2はその反対の順番で実施した。
患者は同じ保湿剤、洗剤、低ランクの局所コルチコステロイド(TCS)を投与された。Primary outcomeはSCORing Atopic Dermatitis(SCORAD)indexを利用してADの重症度を評価した。
Secondary outcomeはアトピー性皮膚炎の重症度(アトピー性皮膚炎クイックスコア(ADQ)*2、QOL、staphylococcal aureusのコロニー形成密度、皮膚の水分補給状態、保湿剤、局所コルチコステロイドの使用量に関する評価された。

Results:
63人の小児をスクリーニングし、42人が基準を満たし、ランダム化された。(Figure1)
ADの重要度に関して、両群でWMのSCORADの平均変化がベースラインから大幅に減少していることがわかった。
WM、DM間のSCORAD治療効果のモデル推定値は21.2だった。[95%CI 14.9-27.6;P<.0001](table2 95%CI,14.9-27.6;P<.0001).SCORADの臨床的に重要な値の変化は8.7であり、この変化はその差を超えていた。
ある研究では症状の30%の減少が臨床的に重要であると見なされており、マクマネー検定で二次解析すると、WMで30%の改善を達成した患者は23人で、DMでは6人だった。WMはDMに対して大幅な改善を示していた(Figure 2: McNemar’sX2=8.83,df=1,P=.0030) 同様にWMはADQを5.8減少させ、(tableⅡ 95%CI,1.8-9.7)統計的に優位な改善を示した。さらにSCORADの変化はADQの変化と相関していた(図3r=0.66)しかし、ADQの解析ではSCORADと同様の傾向を示したが、優位性には達しなかった。(P=.061)
そのほかの二次解析では優位な変化は認めなかった

Discussion:今回の研究の限界、残された課題などを記載する。
中等度から重度のアトピー性皮膚炎の小児に対する、保湿剤やステロイド外用などの通常ケアに加え、入浴の頻度の影響を調べ、Wet methodはSCORADやADQで比較した場合に統計的、臨床的に優位に改善を示すことがわかった。これらのデータにより1日2度のSoak and seal入浴が中等度から重度のアトピー性皮膚炎の重症度を減らすことが示された。
今回の研究はsingle blind の前向き、クロスオーバーデザインのランダム化試験を使った、SSを組み合わせた入浴頻度に関する疑問における初めての研究である。SSと組み合わせて入浴頻度を評価する研究は数、サイズ、質、に制限があるが、我々の研究で見られたWMアプローチの有効性はこれまでの研究と一致している。
今回の研究の結果の説明として最も可能性の高いのはTCSの吸収の強化と潜在的なアレルゲンや刺激物の「洗い流し」が皮膚バリアの改善ではなく免疫調整不全を改善したことである。これまでのエビデンスでは乾燥している角質層より湿潤している角質層の方が局所薬はよく浸透することが示されている。その結果WMはwet wrap therapyの有効性を示されたメカニズムと同様に、TCSの有効性を高めることによりステロイドを節約することができるかもしれない。また、皮膚へのアレルゲンの暴露がアトピー性皮膚炎の炎症を引き起こしている可能性があり、WMはこの炎症の原因となる鱗屑、外皮、アレルゲン、刺激物をより効果的に除去する可能性がある。
小児ADの表現型は成人の慢性疾患とは実質的にことなると考えられており、今回は小児集団を研究しており、成人にそのまま適応することはできない。小児ADではTH2およびTH17/TH22応答の増加とTH1活性化およびINF-γ応答の低下を特徴とする。アトピー性の低い成人集団でこれらの結果が一貫しているかどうかはっきりしていない。
現実の世界で1日2回のSS入浴は手間がかかり、家族にとってはアドヒアランスが難しくなる可能性があると認識している。我々の研究では高いアドヒアランスだったが、入浴ログと患者への直接の電話連絡が必要なこともあり、これらのインセンティブは研究以外の環境では存在しない。我々の研究は患者が中等症から重症の場合に短期間(2週間)の急性治療介入であることを意味しており、1日に2回の入浴は家族により労力を強いることになるが、少ない入浴よりはより効果的であることを示した。また、中等度から重度程度の場合にウェットラップ両方を行う必要やより強力な局所ステロイドなしに、湿疹の重症度を改善する可能性を示した
ADの治療および予防におけるSS入浴頻度の役割を評価するには、より大規模な研究が必要である。 更なる研究により、TCSを使用しないWMアプローチが長期的にADのリスクを軽減できるかどうか判断される可能性があるが、中等度から重度のADの6ヶ月〜11歳の小児では、急性期治療としてWMアプローチを行うことが、標準治療のTCSへの介入として安全であり、ADの重症度を低下させ、ステロイドの節約効果がある可能性がある。

 

*1<アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018より>
JC2020白水1

*2 ADQ
JC2020白水2

Carel K, Bratton DL, Miyazawa N, Gyorkos E, Kelsay K, Bender B, Strand M, Atkins D, Gelfand EW, Klinnert MD. The Atopic Dermatitis Quickscore (ADQ): validation of a new parent-administered atopic dermatitis scoring tool. Ann Allergy Asthma Immunol. 2008 Nov;101(5):500-7. doi: 10.1016/S1081-1206(10)60289-X. PMID: 19055204.

Figure 1
JC2020白水3

TableⅡ
JC2020白水4

Figure 2
JC2020白水5

Figure 3
JC2020白水6

【開催日】2020年12月9日(水)

喫煙に依存している成人における薬物治療の開始。米国胸部学会の公式臨床実践ガイドライン

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
Leone FT, Am J Respir Crit Care Med. 2020;202(2) :e5. 
Initiating Pharmacologic Treatment in Tobacco-Dependent Adults. An Official American Thoracic Society Clinical
Practice Guideline.

-要約-
Introduction:
現在の喫煙治療ガイドラインは禁煙への介入の有効性を確立しているが、臨床で多く直面する一般的な実施に関する質問に対して、詳細なガイダンスは提供していない。
治療チームが日常的に直面するいくつかの薬物療法開始の質問に対して、根拠に基づくガイドラインが作成された。

Method:
臨床医にとって重要な質問と結果に優先順位をつけるために禁煙に関する多様な専門家たちが参加した
。エビデンス 作成チームはシステマティックレビューを行い、これらの質問に回答し推奨を提示した
。GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluation)アプローチを用いて、効果の確実性と推奨の強さを示した。

Results:
ガイドラインでは薬物選択に関する5つの強い推奨と2つの条件付き推奨を策定した。
強い推奨事項にはニコチンパッチではなくバレニクリンの使用、ブプロピオン(日本未発売・抗うつ薬)ではなくバレニクリンの使用、精神疾患患者に対してニコチンパッチではなくバレニクリンの使用、禁煙の準備ができていない成人でのバレニクリンの開始、12週を超える延長治療期間の利用がある。
条件付きの推奨事項には、バレニクリンを単独で使用するのではなく、ニコチンパッチをバレニクリンと組み合わせたり、電子タバコではなくバレニクリンを使用したりすることが含まれる。

Discussion:
ガイドラインの推奨の数に制限があったため、全ての可能な薬物治療に対応できなかった。将来のガイドラインではバレニクリンが以前に失敗した患者、または以前にバレニクリン治療を拒否した患者に対する、最適なコントローラー戦略を検討する必要がある。

【開催日】2020年12月2日(水)