言語コミュニケーションと患者の安全性について

-文献名-
Rick Iedema, Trish Greenhalgh,et al.Spoken communication and patient safety: a new direction for healthcare communication policy, research, education and practice? BMJ open quality.2019.8.16.

-要約-
背景:NHS(イギリスの国民健康サービス)では36時間毎に約100万人の患者に医療サービスを提供しています。この過程において、数百万以上の口頭でのやり取りが行われます。これらの数字を考えると、話し言葉のコミュニケーションの失敗による事故が壊滅的な影響を与える可能性は十分にあります。実際、世界中のインシデント調査では、不適切または効果のないコミュニケーションが予期しないケアイベントや望ましくないケアの結果に最も関わる要因であることを示しています。
2017年NHS改善委員会は、患者の安全のため医療従事者のスタッフ-患者コミュニケーションをどのように改善するかを明確化するため、医療専門家の外部ワーキンググループに委託し、問題と課題の概念マップを作成し、これを基にレポートを作成しました。その結果は6つの重要なコミュニケーションドメインを示していました。
方法:ワーキンググループは10ヶ月かけて、ヘルスケア環境での音声コミュニケーションに関する既存の学術文献および非市販文献の調査をしたこと、定期的に収集されたNHSデータ(苦情通知および重大なインシデントレポートの代表数)を調査し、そのオンラインリソース(患者のフィードバックなど)のウェブサイトにアクセスしました。私達はこれらの二次情報源に、4つのフォーカスグループの患者と、合計100人のNHS患者とスタッフで行われた2つの半日相談イベント(NHSIが組織し、ワーキンググループのメンバーが共同進行)から得た情報を加えています。データはテーマ別に分析され、合成されました。以下の6つのドメインが発見されました。
①コミュニケーション環境
音声コミュニケーションの理想的な環境は、「思いやりのある環境」によって特徴付けられます。良い例としては外観がキレイでスタッフも親切で、清掃が行き届いている環境です。悪い例としては発電機が診察室のすぐ外にあり騒音があるなどの環境です。良い環境はケアの安全性と患者の心理的および生理学的安全感に貢献し、臨床医と患者とのコミュニケーションをサポートします。
②情報交換
音声コミュニケーションは、適切な人が適切なタイミングで正確かつ適切な情報を交換するときに効果的です。専門用語の使用など明瞭性の欠如がある場合、情報が過度にスクリプト化(漠然とわかる状況)されている場合、技術的でその場のコミュニケーション相手に十分に適合していない場合、競合する情報が混在する場合、情報が不十分またはない場合に問題が発生します。
良い例としては手術室でオペ室の看護師に「私の右手にステッチとはさみをお願いします」とその場にあって明瞭であること。悪い例としてはBIPAPで救急室から病棟へ移動する際に、事前の報告もなく準備についても確認しないまま移動し、酸素が用意されていないなど。
③聞き取りと態度
文献では、効果的なコミュニケーションを、敬意、コミットメント、前向きな考え、共感、信頼、受容性、誠実さ、およびケアに関する継続的かつ協力的な焦点に関連付けています。親切で援助的であれば良い一方で、配慮がないことは悪く働きます。患者の期待と理解は、より多様で明確になりつつあります。患者が自身のケアに寄与すべきことに積極的かつ敬意を持って耳を傾けることは、ケアの質と安全性にとって重要です。
④調整と対応
情報のネゴシエーションを最適化するには聞き取りと態度が重要ですが、この4番目の領域である調整と対応は、臨床医と患者の関係を育む上で重要です。臨床医は患者の気分やユーモアに合わせてコミュニケーションを調整する必要があります。これは、相互の信頼、およびデリケートでプライベートな問題の議論のための「共通基盤」を開発します。 この育成は1回限りの「チェック」ではなく、継続的なプロセスとなります。患者に対する発話を調整することにより、GPは関係を育み、それによってケアの質と安全性を向上させます。信頼関係が相互理解とオープン性を必要とする状況では、関係を構築することが最重要です。病気や治療がより長期的で複雑になり、不確実性にさらされつつある今、これは特に当てはまります。
⑤効果的なチームコミュニケーションのための前提条件の作成
チームは上記の①~④を実現することで効果的にコミュニケーションを取ります。それは「心理的に安全」であると感じ、懸念を提起したり問題を指摘したりすることが十分に価値があり、恐れずに言って良いとメンバーが感じるからです。
チームのコミュニケーションは、チームのすべてのメンバーの知識、感情、洞察を尊重する必要があることは明らかです。
⑥特徴のあるグループとのコミュニケーション
子どもや若者、話し言葉の英語を理解できない人(例:英語が話せない人、聴覚障害、学習障害、認知障害など)や苦しんでいる人、精神疾患がある人などのグループとのコミュニケーションには、通常よりも注意が必要です。このような特徴のある患者とコミュニケーションをとるためには病院のパスポート(名前、民族、宗教などの患者に関する基本的な詳細と、患者や介護者が「やりたいことや話したいこと」をリストできるセクションがある。また、写真、ポイントボード、読みやすい文書などの理解に役立つ「コミュニケーション方法」に関するセクションも含まれている)を作ることを推奨します。
結論:これらの6つのドメインは、安全なコミュニケーションのいくつかの側面を確認し、情報交換を超えた医療コミュニケーションの理解を拡大し、一般的なケア環境の質、聴力、対人関係を追求する関係のダイナミクスを含んでいます。さらに、チームコミュニケーションの多次元性、および患者のユニークなグループとのコミュニケーションの特徴を強調しています。適切な条件を作成する上で組織のリーダーシップの重要な役割を認識し、安全性が重視されるコミュニケーションをするためにすべきことは、上記の各ドメインに対処し、スタッフをさらに理解する必要があります。3つのせめぎ合いに対処する必要があります。(1)良好なコミュニケーションの狭い定義(正確、関連する情報の交換)およびより広い定義(状況認識、感情を必要とする社会的、感情的、文化的行為)の間(2)理想的なコミュニケーションビジョン(冷静、プライベート、中断なし)と、NHSで話されたコミュニケーションが行われる実際の、そしてしばしば準最適な状況の間(3)ツール、テクノロジー、チェックリストによってサポートされる構造化、スクリプト化、標準化されたアプローチと、複雑な状況の中で働く個々の臨床医の適応性、創造性、コミットメントを称賛しサポートするアプローチの間。
会話によるコミュニケーションを改善するという挑戦は簡単ではありません。少なくとも、このような改善には、ケアの複雑さのレベルの上昇を管理するための専門家の学習能力と反射能力の強化に役立つ行動的介入が必要になります。

【開催日】2020年3月4日(水)

儀式としての身体診察

-文献名-
Costanzo, Cari, and Abraham Verghese. “The physical examination as ritual: social sciences and embodiment in the context of the physical examination.” Medical Clinics 102.3 (2018): 425-431.

-要約-
Introduction:
検査技術の発達により、身体診察は軽視されている潮流にあり、診察時の見逃しによる不必要であった医療過誤に対するコストも指摘されている。身体診察は医師患者関係を維持するものとしての位置付けもあるが、これについての研究は乏しい。しかし患者の不満として「私の主治医は触ってすらくれなかった」と言った事はよく話題になる。

医学と社会科学における身体診察
2016年に身体診察と医師患者関係のレビュー文献があるが、その肯定的な評価については質的研究結果よりもむしろ持論を元にしたものが殆どであった。またエスノグラフィーによる報告では、身体診察はむしろ侵襲的であるという否定的な評価であった。

Embodiment:
身体とは、mind/bodyの2つから成り立つのではなく、歴史・文化・政治的力も不可分であるという考え方。個人の歴史だけではなく、社会や政治背景が身体的な差異に対してプラスやマイナスの評価を与え位置付けている事も含まれる(例:植民地政策における皮膚の色によるヒエラルキー)。

儀式としての身体診察
筆者の考える儀式性)
a.特異で象徴的な場所で身体診察は行われる(診察室は非日常的な空間である)
b.聴診器や打腱器など象徴的な道具が用いられる
c.上記場所や道具を用いた独自性や実践は、普遍的である
衣服を脱いだり、触ったりすることを許容することは、患者本人が脆弱性を示す(患者役割を身にまといそれを保持したい事を暗に意味している)ことであり、臨床医が注意深く思いやりを持って身体診察に取り組むことが強く求められている。

プラセボ効果と身体診察
well-administered身体診察はinferior身体診察と比べて、患者の気持ちを安らかにさせて、神経生物学的効果が、研究されている。

診療の喜びと身体診察の意味
臨床医の燃え尽き予防として、身体診察のような医師患者関係を強めるプロセスになるような儀式を意識する事も1つであろう。

【開催日】2020年3月11日(水)

TV会議や電話による診察と直接面談による診察の内容と質の比較

-文献名-
Victoria Hammersley, et al. Comparing the content and quality of video, telephone, and face-to-face consultation: a non-randomised, quasi—experimental, exploratory study in UK primary care. BJGP. 2019; DOI:

-要約-
【背景,イントロダクション】
英国のプライマリ・ケア現場では直接面談による診察(face to face consultation,以下FTFC)の代替/補完として電話による診察(telephone consultation,以下TC)の利用が広がっており,働く人や家事で忙しい人にとって時間の節約とプライマリ・ケアサービスへのアクセス改善に役立っている.一方ではTCは時間が短く,扱われる健康問題の幅が狭く,十分な情報収集やアドバイス,ラポール形成が難しく,比較的単純な診察においてのみ有用であり,余り安全ではないとする研究もあり,全身状態や非言語コミュニケーションなど視覚的な情報が欠落することも指摘されている.インターネットを利用したTV会議(video consultation,以下VC)はこういった課題を解決し,身体所見を必要としないある種の診察においては有用かも知れないことから,NHS(National Health Service)がVCの利用可能性について言及している.
【目的】
スコットランドでパイロットとして使用されているAttend Anywhereと呼ばれるVCのシステムを用いて,プライマリ・ケアの診療における医師や患者の受け入れの良さ,VCがFTFCやTCとどのように異なるのかを探索する.
【セッティング】
スコットランドのGeneral Practice(GP)のクリニック.
【方法】
GPクリニックで診療を受け,フォローアップの必要な患者にフォローアップの方法としてVC,TC,FTFCの3つから選択してもらった.診察は録音されその内容と質を分析した.また,診察後,医師(GP)と患者双方にアンケート調査を行った.VCの流れはFigure2 .診察の内容と質の分析に用いられた指標はBox.1.

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【結果】
13名のGP(男性8名),162名(FTFC 54名,TC 56名,VC52名)が参加.データを全て収集できた患者は149名.
・ 患者特性
VCを選択した患者は相対的に若く平均42歳(TC 54.3歳,FTFC 52.3歳).VCを選択した患者は女性の方が多かった(54%.FTFC 39%,TC 55%).英国の白人が大部分を占めた(87%).FTFCを選択した患者は過去1年間でより診察の回数が多かった(中央値10回.TC 6回,VC 5回).
VCの患者でスマートフォンを利用したのが49%,PCを利用したのが35%であった.
・ 技術的な障壁
WiFi環境整備,GPのAttend Anywhere利用への習熟などが障壁となったが,3名の患者しか「VCは有用ではない」と回答しなかった.診察を他の方法に切り替えた患者が複数名いた(詳細は原著).
・ 患者アンケート(Table2,3)
全体的に患者のかかえるプロブレムがよく取り扱われ有用であったが,FTFCの患者が「very good」と回答する頻度が高かった.
・ GPアンケート
患者のプロブレムをマネジメントするために非常に有用(very useful)と回答したGPは FTFCで86%,TCで78%,VCで65%.VCを利用したGPの10%が「VCを再び診察に用いたいと思うか?」の問いに「思わない」と回答した.その理由の多くが技術的な問題であった.
・ 診察内容と質に関する分析(Table5,Table6)
全般的にVC,TCではFTFCと比較すると取り扱われた健康問題が少なかった(VC 1.5,TC 1.8,FTFC 2.1).
FTFCはより時間が長かった(VC 5.94分,TC 5.56分,FTFC 9.61分).
全般的にRCGPの指標による診療の質評価はほぼ同様であった.VCとTCではFTFCに比較して「patient’s own health understanding」「Places problems into psychosocial context」の2項目が低い結果であった.生活習慣へのアドバイスを与える頻度はFTFCの方がより高かった.RIASの指標による分析では是パン的にFTFCの方が患者教育とカウンセリングに時間が割かれており,患者が提供する情報が多かった.VCとTCの間に差はなかった.

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【結論】
VCはTCと同様,扱われる健康問題はFTFCと比較すると少なく診察時間も短かった.診察の内容,質に於いてもFTFCがより豊かな診療であった.患者経験においてもFTFCの方が良好であった.VCは主に若く,ITになじみのある人に選択され,普段は診察を受ける頻度の少ない人が選択した.患者の価値感が利便性にある場合,身体診察が不要な場合,VCにはアドバンテージがあるだろう.

【開催日】2019年12月11日(水)

プライマリケアにおけるタイムマネージメント:「時間がない」のはホント?

―文献名―
Tanner J Caverly, Rodney A Hayward, James F Burke
Much to do with nothing: microsimulation study on time management in primary care
BMJ 2018;363:k4983 | doi: 10.1136/bmj.k4983

―要約―
【目的】『総合診療医は決断の共有や予防医学に割く時間がない』という主張の信頼性を調査する
【デザイン】Monte Carlo microsimulation study
【セッティング】米国のプライマリ・ケア
【参加者】National Health and Nutrition Examination Surveyから導き出された、米国の年間労働時間と
患者パネルサイズ(2000人の患者)を代表する1000人の総合診療医
【主要アウトカム】予防的介入において決断を共有する際に、必要な時間と実際に利用可能な時間
(prevention-time-space-deficit)
【結果】総合診療医は平日、予防的ケアを話し合う時間を平均29分有する(各受診者には2分少々のみ)が、
彼らは予防に関する決断の共有を全て終わらせるのに6.1時間必要である。全ての参加者は
prevention-time-space-deficit(平均5.6時間の欠如)を経験している。しかし、この時間の欠如は
個人的な時間を減らして仕事にシフトすれば簡単に克服しうる。例えば、入浴の頻度を1日おきに減らす、
彼らのことをあまり好きでない年長の子供達との時間を削る、などである。
【結論】この研究では、総合診療医が個別のケアのための価値ある時間を浪費しているという疑惑を確認している。
プライマリ・ケアの権力者は、ひとたびこの個人的な時間の多さについて情報提供されたなら、総合診療医が
個人的な時間をもっと臨床的な需要へ再分配することを説得する方法を試し始めることが出来るだろう。

【開催日】2018年12月19日(水)

急性期小児疾患における意志決定

―文献名―
‘So why didn’t you think this baby was ill?’ Decision-making in acute paediatrics.
Arch Dis Child Educ Pract Ed. 2018 Mar 1. pii: edpract-2017-313199. doi: 10.1136/archdischild-2017-313199.

―要約―
Introduction:
小児の急性疾患の診療の核については不明な点が多いです。重篤な疾患に出会う確率は低いですが、見逃すと致命的となります。今まで有効なバイオマーカーとスコアリングシステムの探索を行っていたにも関わらず、小児の重篤な疾患を鑑別するための診断ツールに大きな変革はありません。
詳しく調べるか、経過観察するか、治療するかの判断は医師の経験に基ついています。
不要な入院を防ぎ、安全にかつ効果的に子供たちに介入する意思決定はどのように作られるか?
この記事では小児急性疾患における意思決定のアートと化学について臨床医と教育者が無意識に
使っているプロセスを理解し、概念化させることを目的とします。
A common problem:遭遇する可能性は低いが、重篤な急性疾患の鑑別は重要である。急性小児疾患の見逃しは責任が大きいにも関わらず、診断のプロセスを複雑にする4つの要因があります。
1小児生理学の性質:小児の生理学的評価(バイタル)は複雑です。バイタルの基準値が設定され、それを知っていることは重要です。しかし専門家の意見に基つかれて作成されているため正常範囲内に異常な子供が含まれていることも多々あります。つまり基準値は普段の状態や診察内容などの他の一連の流れも含めた傾向が確立された際に有用となるものです。これは流れが確認出来ない可能性があるプライマリケア医、救急医には困難なことがあります。
大事なのは病気の全体の程度を裏つけるためにバイタルを利用することです。
2コミュニケーションの多様性:小児の診療で重要なのは病歴です。ここで注意として、病歴を保護者から聞く際に、保護者の不安(主観)によって、プレゼンテーションが強く影響することを知っておく必要があります。
また検査、診察の難しさもあります。(例:4歳児の脳波の検査が正しいのか?2歳児の腹部診察での号泣の意味など)。どの情報を取り入れるか理解するためには経験が必要です。また、意思決定に関しては患者のプレゼンテーション
を分析し統合的に判断する必要があり、その際には「リスク」についても適切に説明されなければなりません。
病気の診断に関しては医師の努力が依然に必要ではあるが、意思決定を行う際の最適な方法については今後決められるべきである。
3臨床医の経験則:ヒューリスティックは完璧ではないが、十分に実用的な問題解決アプローチです。経験豊富な臨床医が膨大な病歴と検査から得られた情報を融合させて無意識に行います(table1)。トラップを回避するためには直観的思考よりも分析的思考が重要ですが、緊張性気胸のように直観的思考が必要な場合もあるし、分析的思考が過度だと親に混乱を与えてしまう可能性があります。この中でバイアスに対する1つの対策がベイズの定理の適用です(figure1).事前確率を見積もり、検査を行い、検査後確率から診断に至る方法です。
4外的因子の影響:医師と保護者の病気に対するアジェンダが異なることが多々あります(table2)。例えば頭部外傷では親は被曝のリスクから子供を守るよりもCTスキャンをとることを優先することがあります。また、有熱者では安全に帰すために髄膜炎を否定する医師と咳を治して欲しい保護者のようなアジェンダのズレも影響しています。
病気の発生の影響:小児における一貫した課題は重大疾患になる確率が低いことです。医師は安心のために過度に検査をするか直観に基つくのかに直面します。有病率が非常に低い疾患で所見がない場合は検査の意義は低い一方で、特定のプレゼンテーションを持つ疾患では検査の意義は高い。小児の診断決定ツールはあまり有でない。英国で使用されているNICEの有熱のガイドラインは感度、特異度ともに乏しい。頭部外傷ガイドラインは感度を犠牲にすることなく特異性を達成した稀なツールである。疾患の発症は年齢でも異なる。例えばアトピー性の喘息は5歳未満では稀であり、3歳の子供の喘鳴の再発はウイルスに起因するものと誰もが考えるだろう。しかし年齢が変わるとその確率も変化してくる。喘息のリスク因子として確定したものもなく最近の英国呼吸器学会でもアトピーの家族歴は貧弱な指標と示しています。
まれな疾患と一般的な疾患を区別するための明確なツールはなく、一般的な疾患の方が明らかに多い。稀な疾患のネガティブを証明できないことは小児診療の意思決定における最大の課題の1つです。
上級意思決定と直観の利用:小児急性疾患の診断は、テストや意思決定ツールに頼ることが出来ないので上級意思決定への道をガイドラインは示しています。上級意思決定とは子供を安全で正確な臨床評価を受けるプロセスである。仮説を確認するか否か検証するテスト(hypothetic-deductive technique)やベイズの定理のような教育的、数学的アプローチに沿うことは、正しいという本来の感覚です。このゲシュタルト(どちらにもとれる感覚)と直観の両者の利用は上級意思決定の中核的な実践です。スクリーニングツールは未経験者を助けるが、すべての患者に適応するものでもない。臨床的な直観を発達させる能力は、患者経験が最も大事である一方でフィードバックプロセスやエラーから学ぶことも重要である。その教育戦略についてbox1に記載があります。子供を見る臨床医の間では多くの暗黙の知識が存在します。これはエビデンスベースの外にあり、ガイドラインには含まれません。デルファイ法(熟練の意見を集約する)などのツールを使用することで知識を有効な方法で抽出することが可能になります。
これによって患者経験から生まれる重要な要素が明らかになる可能性があります。これは今までグレーの領域を解明するかもしれない。経験から生まれる大規模なコンセンサス・オピニオンの発表は意思決定プロセスの重要な要素の開発に大きく関わるだろう。
結論:小児診療の意思決定はいくつかの要因によって影響されます。子供/親に依存するもの、臨床医に依存するものがあります。認知バイアスを意識し上級意思決定者へのアクセスを行い、臨床実践における直観の役割を理解することは急性小児科診療の転機を改善する上で重要です。医師は最良の決定を行うために可能な限り公表されたエビデンスを利用すべきです。暗黙の知識の開発と適応は、現在は理解不十分な部分ではあるが、意思決定における最も重要な要素の1つとなる可能性がある領域です。

【開催日】2018年12月19日(水)

家庭医療・古典シリーズ  家庭医の外来の「ルーチン、ドラマ、セレモニー」とは一体何か?

-文献名-
Miller WL. Routine, ceremony, or drama: an exploratory field study of the primary care clinical encounter. J Fam Pract. 1992 Mar;34(3):289-96.

-要約-
<サマリ>
背景:家庭医の診療ではしばしば家族システム理論と生物心理社会モデルを用いるが、忙しい外来診療においてはそれらの適応の仕方には違いがある。
方法:4人のグループ診療のうちの2名の家庭医によって日々の診療マネジメントの例示を同定しする。共同での質的研究を使ってその過程を探索する。鍵となる人物となる2名の家庭医と看護師の管理者への半構造化インタビューも用い、人類科学的なインタビュー技術を用いてテーマ分類を行なった。結果として生じた臨床上の出会いの類型化と意思決定の分類を参与観察と鍵となる人物からのレビューを用いて評価を行なった。最終結果は医師患者関係の過去の文献との比較で行った。
結果:3つの臨床上の出会いの類型が同定された。
 ●ルーチン:単純、単回、短時間外来、契約上の診療、生物医学モデルのみで対応
 ●セレモニー:誓約的、儀式的なスタイル
 ●ドラマ:精神的な問題を含め、衝突や感情を扱う状況 
結論:臨床上の出会いを分類することは、家庭医にとって家族システムの考え方を忙しい日々の診療に統合するための助けとなるであろう。これらの発見は今後の未来の研究、臨床研究、教育など多くのものに応用できる。
――――――――――
<結果の詳述>
外来の4つの定型分類
 ●1、ルーチン:『型通りの単純作業』
  ➢「シンプル」「簡単」「ありふれた風邪」「飯の種」
  ➢日常の感染症、小外科、保険書類関係、保証を提供するもの
  ➢解決するのが容易で比較的身体的問題のみの外来

 ●2、ドラマ:『不穏で緊迫した感情が蠢く場面』
  ➢「複雑」「困難」「問題」「話が終わらない外来」「悪い知らせを伝える」
  ➢不確実性が高い場面、衝突が生じる場面、医師―患者の合意が難しいとき、家族内の対立、アドヒアランスの不良、がんや糖尿病、ダウン症の告知
  ➢時間がかかる脅威を感じる外来で、その後も頻回の受診を必要とする。家族図が助けとなる。
  ➢早期にこれはドラマだという認識を持つと、患者さんが帰る間際の「先生、実は」という状況を減らすことができ、またその外来の最後に今後に続く何回もの受診の価値を伝えることができる。
  ➢問題解決は必要としない

 ●セレモニー:『儀式・祭事』
  ➢内容から2つに分かれる。
 ●3−1、移行期セレモニー(特別な機会での式事:結婚式、お葬式的な?)
  ➢新しいドラマの最初の幕開け、「予定の破壊者」であり「隠されている時間爆弾」。
  ➢ルーチンの中でドラマであると早期に認識し、以下の4つのステップを踏むことが重要 
    1.医者が患者を信頼していることを患者に知ってもらう
    2.医師は患者が最も恐れていることを取り扱う
    3.「一生のお願いだから聴診器を当ててください」への診察の実施
    4.医師は、希望を与えて、次回までに何か出来ることを提供する 
  ➢移行期の説明を受け、不安について学び、家族との再会・和解を開始し、さらに害が生じないように長期間の診療を準備
 ●3−2、維持期セレモニー(定例”Do”式事:朝礼、お歳暮的な?)
  ➢プロトコールに沿った対応、いつも通りの対応、
  ➢これも医師の快適さ・不快さでさらに2つに分かれる。
    ✧3-2-a.維持期好意的セレモニー 
     ●慢性疾患の管理・マネジメント、患者とのホラ話・噂話の交換 
    ✧3-2-b.維持期絶望的セレモニー
     ●「腹を立てている患者」、「孤独な患者」と評される。
     ●不要なビタミンB12注射や疼痛緩和注射などの不快な定期マネジメント(出来上がってしまったパターン)
 ●移行期も維持期も両方ともに、定められ繰り返される型や構成となっている。儀式的であったり、良し悪し関係なくパターン化された繰り返しのプロセスである。(McWhinneryは、シャーマン的な振る舞いと表現)

【開催日】2018年10月24日(水)

診察時間の長さは患者の満足度と関連しない

-文献名-
Elmore N, Burt J, Abel G, et al. Investigating the relationship between consultation length and patient experience: a cross-sectional study in primary care. Br J Gen Pract. 2016.

-この文献を選んだ背景―
 昨年度から当診療所では午後1診体制をとっており、3時間で30名前後の診察を、関注等の処置を含め原則1人で行う必要がある。また、午前の3診体制においても、自分自身の役割として外来を円滑にまわすために混み具合を見ながらある程度メリハリをつけて診察を行うことが増えてきた。一方で、短時間の診察であっても、患者の真の受診理由をできるだけ早く捉えて適切に対応することができれば、必ずしも患者の満足度が下がるわけではないという実感もあった。
 そこで、最近生涯学習のために始めたRSSリーダー(feedly®)のLatest headlines from BMJで、Research Newsとして本文献が取り上げられていたため関心を持った。

-要約-
【背景】
 プライマリ・ケアにおいて、より診察に時間をかけることが、これまでケアの質向上や健康関連アウトカムの向上と関連づけられてきた。しかし、診察時間の長さ(consultation length)と患者体験(patient experience)の潜在的な関連性については、エビデンスがほとんどない。

【目的】
 診察時間の長さと、患者が報告する医師のコミュニケーションの質・医師に対する信用性(trust)と信頼性(confidence)・全体満足度の関連性について調査する。

【研究デザインとセッティング】
 イギリスの13箇所のプライマリ・ケア施設において、440例の診察をビデオ録画し、患者体験に関する質問紙を用いて分析した。

【方法】
 研究に参加したGPの診察を受けた患者から、診察の録画と質問紙の記載について同意を得た。診察時間はビデオ録画により計算された。線形解析(患者・医師の背景を調整)により、患者体験(コミュニケーションの質・信用性と信頼性・全体満足度)と診察時間の長さの関連性を調査した

【結果】
 診察時間の長さと患者体験に関する3つの尺度の間に関連は認めなかった(すべてP>0.3)。診察時間追加分数あたりの調整スケール変化率は、コミュニケーションの質0.02(95%CI -0.20−0.25)、信用性と信頼性(95%CI -0.27−0.41)、全体満足度(95%CI -0.46−0.18)であった。(Table2-4)

【結論】
 コミュニケーションに関する患者体験尺度と診察時間の長さの間に関連性は認めず、ときに患者は非常に短い診察において良好な体験を報告した。しかし、より長い診察時間は、臨床的効果や患者の安全性といった、良質なケア達成のために同じく重要な側面のためには必要かもしれない。とくに複雑性の高い患者に対して、より長い診察時間がもたらす利益についてはさらなる研究が必要である。

今江先生図①

今江先生図②

今江先生図③

-考察とディスカッション-
【考察】
 本研究では、診察時間の長さと患者体験(コミュニケーションの質・信用性と信頼性・全体満足度)は関連しないことが示されたが、結論にも記載されている通り、ケアの質との関連については不明である。単純に時間をかければ患者は満足するわけではないことが示唆された一方で、短時間の診察でもケアの質が担保されるかどうかについては、家庭医の臨床能力・カルテ記載・扱う健康問題の複雑性・患者との継続性など、様々な観点から考える必要がありそうだ。

【ディスカッション】
 みなさまの実臨床での経験や実感とともに、本研究の結果や限界、診察時間とケアの質の関連等について、自由にディスカッションをお願いします。

【開催日】
 2016年11月2日(水)

マスク着用と患者の相談行動心理

―文献名―
田村恵理、岸本桂子、福島紀子.薬剤師のマスク着用が患者の相談行動心理に及ぼす影響.薬学雑誌.2013;133(6):737-745

―背景-
 院内でビデオレビューを行った際に、マスクを着用して診察していたのを見た指導医から「マスクを着用すると表情が見えなくなるので、着用しない方が良いのでは」というコメントを受けた。マスクに感染症予防の十分なエビデンスがないことは知られていたが、マスクを着用することについて、患者の目線からは「表情が見えづらく、コミュニケーションが取りづらい」という意見と、「しっかり感染対策をとっている、安心できる医院」という意見の両方があるのではないかと考えた(実際、インターネットの相談サイトでは上記の議論がされていた)。
 今回、医師ではなく薬剤師で調べられた研究ではあるが、「患者の相談行動心理」という家庭医にとっても重要と思われる問題を取り上げた文献が見つかったので、読んでみた。

―要約―
【諸言】
 患者の保有する病原体が空気中に飛び散った場合に、医療従事者のマスク着用が感染予防となるかの科学的根拠は明らかになっていない。また、患者の医療従事者に対する印象については、看護師の領域では複数報告されているが、研究結果には一貫した傾向がみられていない。医師の領域では、小児患者とその両親にとって、マスクと透明なフェイスシールドのどちらが懸念要素となるか調査しており、表情が見えるフェイスシールドの方がよい選択である可能性を示した。
 薬剤師は看護師や医師などの医療従事者と同様に、マスクを着用する医療職である。しかし、マスクをすると顔の一部分が隠れ、薬剤師の表情が見えづらくなることが、患者が薬剤師に相談し難いと感じる要因になる可能性が考えられる。本研究では、薬剤師と信頼関係を構築していない患者にとって、薬局薬剤師のマスク着用が服薬指導時に患者の相談行動を妨げる要因となるか検証を行う。

【方法】
 協力の得られたドラッグストアで2012年8月2,3,9,10,13,14日に調査を実施。研究への参加同意が得られた来店者を被験者とした。服薬指導映像を映像a(マスク非着用)と映像b(マスク着用)の2種類用意し、被験者には映像aを視聴後その映像について質問紙に回答、次に映像bを視聴後その映像について質問紙に回答とした。質問紙の測定内容は、主要アウトカムとして(1)薬剤師に対する相談意思、副次的アウトカムとして(2)薬剤師に対する印象、その他に(3)被験者属性とした。(1)として6個の下位尺度で構成される「相談行動の利益・コスト尺度改訂版(全26項目)」を使用した。6個の下位尺度は「1.ポジティブな結果(8項目)」、「2.否定的応答(6項目)」、「3.秘密漏洩(3項目)」、「4.自己評価の低下(3項目)」、「5.問題の維持(3項目)」、「6.自助努力による充実感(3項目)」である。(質問紙の内容は文献のFig.1参照)

【結果】
 映像aと映像bで、下位尺度ごとに対応のあるt検定を行った結果、「5.問題の維持」のみ有意差がみられた(p=0.025)。また、「5.問題の維持」について多重ロジスティック回帰分析を行ったところ、被験者属性の「年齢」「マスク使用頻度」が有意に関連していた。

【考察】
 「5.問題の維持」は、相談を行わずに自分一人で悩んでいる場合に問題が維持されるかどうか、被験者の思考を測る下位尺度である。研究結果からは、自分一人で悩みを抱え込む傾向にある患者にとっては、薬剤師のマスク着用が服薬指導時の相談行動を妨げる要因となる可能性があると言える。
 また、多重ロジスティック回帰分析の結果から、マスクを着用する習慣がない患者ほど、薬剤師のマスク着用によって相談行動が妨げられる傾向にあること、また年齢は負の因子として相関していたため、若年者に比べ高齢者層では薬剤師のマスク着用が相談意思に及ぼす影響が小さい可能性がある。

―考察―
 研究については、被験者が服薬指導している2種類の映像を順次見るという形式なので、実際に対面するのと印象が異なる可能性、また先に見た映像aへの質問紙回答を基準に次の映像bへの質問紙回答をするという順序効果が生じる可能性については、文献の考察でも触れられていた。そして、研究自体が薬剤師について調査されたものなので、家庭医ではまた違った結果になる可能性もあるが、参考になる点も多いと感じた。
 研究結果で有意差の見られた項目は少なかったが、「5.問題の維持」に関する質問内容は「相談すると、相手が真剣に相談に乗ってくれる」「相談すると、相手が励ましてくれる」「悩みを相談することは、自分の弱さを認めることになる」となっており、家庭医としては無視できない部分かと思われた。
 一方で、マスクを着用することにより「きちんと感染対策をしている医療機関だな」と思ってもらえる、といったマスクによるポジティブな反応についてはこの研究では検討されておらず、特にインフルエンザ等の流行時期にはマスクを着用した方が患者にとっては好印象なのでは?という疑問は拭えなかった。

【開催日】
2015年5月20日(水)

Healthを尋ねる

―文献名―
Marian R, Stuart PhD and Joseph A, Lieberman Ⅲ MD, MPH.The Fifteen Minute Hour: Therapeutic Talk in Primary Care 4th  Edition.Chapter 8 Accenting the Positive: Putting an Affirmative Spin on the BATHE Technique.

―要約―
新しいBATHE法を理解するために、以下に例を示す。

 Eさんは、63歳の女性で、糖尿病、高血圧、軽度うつ、不眠があり、定期診察を受け、処方内容を調整することになっていた。彼女の日常の症状を聴取し、処方内容を見直した後で、Dr.Sは、「前回の診察から今日までで、最も良かったことはどんなことでしたか?」と尋ねた。Eさんは、怪訝そうにDr.Sを見つめたが、「何もいいことなんて無かったわ」と答えた。「OK、素晴らしいことは無かったかもしれませんね。ただこの数日で、ちょっと良いことはなかったですか?」するとEさんは笑顔を浮かべて、「そういえば…、孫から手紙が届いたわ。彼女は8歳なの。」「なるほど!それはどうして起こったんでしょうね。」とDr.Sが尋ねたところ「そうね、きっとあの子は私に連絡を取りたかったのよ。あの子は私のことが好きだから。」Eさんに笑顔が戻って来た。Dr.Sは、そのことに関して最も感謝していることを聞きたいと思った。すると、「私は、あの子のことを愛しています。とてもかわいい子なんです。あの子がいてくれることに感謝しています。息子夫婦がもっと近くに住んでくれればと思うけど…」とEさんは答えた。Dr.Sはどうやったら、Eさんがお孫さんとうまく関われるようになるかを尋ねた。「やっぱり、手紙と折々の電話、訪ねてみることかしら。」Dr.Sは「それは素晴らしいプランですね。こうしたことを話してくれて感謝しています」と答えた。そして、「それと、定期的な運動もしましょうね。最低30分程度のウォーキングがおすすめです。また、お孫さんと会う時には、何か体を動かすような遊びをされたらいいですね。」と付け加えた。Eさんは診察室を出る際、微笑をたたえていた。

長先生図5

 これまでのBATHE法(左表)は有効性がありながらも臨床家にとって、毎回持ち出す必要がないと考えられる嫌いがあった。そこで、毎回の診察室でもルーチンで用いられる新しい枠組み(ポジティブBATHE法(右表))が編み出された。
 ポジティブ心理学は、通常の人間の強さや善行に関する科学研究である。患者の人生におけるポジティブな側面に焦点を当てることが重要とされる。その焦点の当て方、エビデンスに基づいた枠組みとして、ポジティブBATHE法がある。ポジティブな感情つまり、感激、決心、ひらめきといったものは、健康や寿命に影響する。ポジティブな考え方は、免疫力を高め、抑うつ気分を振り払い、身体的、精神的健康を高めてくれる。ポジティブな感情な人は、ネガティブな感情の人よりも健康的な取り組みを行なうことが多い。
 感謝に関しての質問は、うまくいっていることに焦点を当てる技法である。うまくいっていることを発見し(Discover)、起こりえる最良のことを想像して(Dream)、戦略を立て(Design)、そしてポジティブな結果をもたらす(Deliver)。
 また、ポジティブBATHE法は治療手段の一つで、頻回受診の患者や、慢性疾患のある患者に推奨され、人生におけるポジティブな側面に焦点を当てる様に設計されている。BはBestであり、「今週(または、前回の診察から今日までで)最高に良いことがありましたか?」と尋ねる。AはAccountであり、「この良いことをどう説明しますか?」、TはThankfulnessを表し、「この良いことのどんなところに一番感謝しますか?」、HはHappenであり、「より頻回にこの良いことが起こるにはどうすればいいですか」、EはEmpathy, Empowermentを表し、「それは素晴らしい、あなたならできますよ」となる。
 人生において、よりポジティブな面に目を向けさせる一つの手法としては、毎日、3つよかったことを書き出すというものがある。感謝の気持ちはより健康状態を高める。患者は、自分自身の個性の長所を自己認識し、その長所を活かして行くように勧められる。
 赦し、つまり、過去の憤怒や妬みなどをやり過ごすことは、精神的、身体的に健康状態を改善する。患者は赦しの心境に達するように、プロセスを理解した方がよい。つまり、自分を傷つける者を特定し、想像の中で、彼と向き合い、なぜ不愉快な事が起こったかを理解し、相手の立場、自分の立場からそれぞれ対話させ、赦す決意をし、自身の苦悩・痛みをやり過ごすことができれば、人は赦しの境地に至り、精神的、身体的反応は変化して行く。個人の苦悩・痛みのポジティブな面とは、赦しの過程を導いてくれるということである。
 知足とは、様々な問題を解決しようとする中で常につきまとうストレスを軽減する手法として知られている。常に自身の振舞いや考え方の型を変化させて行く事の難しさは承知の通りである。しかし、ネガティブな結果はいつでも学びの糧となる。現実的楽観主義は、ポジティブな結果に至らしめ、健康の質を改善する。最後に、医師は希望を常に処方するべきである。

【開催日】
2015年1月14日(水)

高齢者における低い機能的健康リテラシーと死亡率の関連:縦断的コホート研究

―文献名―
Sophie Bostock, Andrew Steptoe, Association between low functional health literacy and ortality in older adults: longitudinal cohort study, BMJ, 2012;344:e162

―要約―
Objective 
 To investigate the association between low functional health literacy (ability to read and understand basic health related information) and mortality in older adults.

Design 
 Population based longitudinal cohort study based on a stratified random sample of households.

Setting
 England.

Participants
 7857 adults aged 52 or more who participated in the second wave (2004-5) of the English Longitudinal Study of Ageing and survived more than 12 months after interview. Participants completed a brief four item test of functional health literacy, which assessed understanding of written instructions for taking an aspirin tablet.

Main outcome measure
 Time to death, based on all cause mortality through October 2009.

Results
 Health literacy was categorised as high (maximum score, 67.2%), medium (one error, 20.3%), or low (more than one error, 12.5%). During follow-up (mean 5.3 years) 621 deaths occurred: 321 (6.1%) in
the high health literacy category, 143 (9.0%) in the medium category, and 157 (16.0%) in the low category. After adjusting for personal characteristics, socioeconomic position, baseline health, and health behaviours, the hazard ratio for all cause mortality for participants with low health literacy was 1.40 (95% confidence interval 1.15 to 1.72) and with medium health literacy was 1.15 (0.94 to 1.41) compared with participants with high health literacy. Further adjustment for cognitive ability reduced the hazard ratio for low health literacy to 1.26 (1.02 to 1.55).

Conclusions
 A third of older adults in England have difficulties reading and understanding basic health related written information. Poorer understanding is associated with higher mortality. The limited health
literacy capabilities within this population have implications for the design and delivery of health related services for older adults in England.

【開催日】
2014年8月13日(水)