救急部門の指導医コメントが研修医の仕事量に与える影響:J(^o^)PAN無作為化比較試験の結果から

―文献名-
Kuriyama A et al. (2016) Impact of Attending Physicians’ Comments on Residents’Workloads in the Emergency Department: Results from Two J(^o^)PAN Randomized Controlled Trials.
PLOS ONE 11(12): e0167480.

―要約-
目的
救急部門は迷信が信じられる傾向にあり、先行研究では満月の夜や13日の金曜日の受信が増加したかなどの調査が行われている。
また文献的には指摘がないが、一般的には「今日は平和だね」「静かな当直になるといいね」という元気なコメントを指導医がすると、突然救急部門が忙しくなるというジンクスが蔓延しているため、指導医からの明るい元気付けるコメントは控える傾向になっている。そこで今回は指導医からの日直帯の救急外来に景気付けのコメントがあるかないかで、救急部門で働く研修医の仕事量がどうかを検討する。その結果、ジンクスが否定された場合は、指導医と研修医でより良い会話ができることが期待される。

方法
倉敷中央病院(1131床の3次医療機関)の救急部門の平日9時から17時の救急外来(J(^o^)PAN-1試験)そして14時から22時までの救急搬送患者(J(^o^)PAN-2試験)のいずれかを診察した25名の研修医を対象として、単施設における2つの並行群、評価者盲検、無作為化試験としてCONSORTガイドラインに沿って実施した。結果に影響しないように研究委員会によって参加同意書は破棄され、研修医には未告知で研究は進められ、研究終了後に研究計画書が公開された。
参加した研修医は “今日は平和だといいね、今日は静かな日になるといいね”などのコマンドを乱数発生器を元に無作為に受け取ったこの研究を知っている6名の救急指導医から、コメントもらった群(介入群)とコメントを受け取っていない群(介入群)に割り付けられた。両試験は2014年6月から2015年3月まで実施され、研修医は、勤務中に診察を受けた患者数、シフトの忙しさや難易度についてアンケートが毎回救急シフト開始時に配布され、5ポイントのLikert尺度で評価し、救急部門の秘書がシフト後にアンケートを回収し、独立した別の指導医がデータセットを作成し、もう一人の医師がデータを分析した。統計解析はWilcoxon順位和検定を使用し、介入群と対照群の間でその他のアウトカムを比較するためにスチューデントのt検定を使用した。研修医への潜在的な学習効果やメッセージの経時的な鈍化効果を除外するために、主要アウトカムについて、各2ヵ月間の最初の10回のシフトで感度分析を行った。すべての統計検定は両側一致で、有意水準はp<0.05であった。すべての解析はStata v.11.2(StataCorp, College Station, TX, USA)を用いて行った。

結果
J(^o^)PAN-1試験では合計169件がランダム化され(介入群81件、対照群88件)、J(^o^)PAN-2試験では178件(介入群85件、対照群93件)がランダム化された。
J(^o^)PAN-1試験では、診察した救急外来患者数(それぞれ5.5人と5.7人、p=0.48)、研修のスケーリングによるシフトの忙しさ(2.8人対2.8人、p=0.58)、または経験したシフトの難易度(3.1人対3.1人、p=0.94)に差は認められなかった。しかし、J(^o^)PAN-2試験では、忙しさ(2.8対2.7;p=0.40)と難易度(3.1対3.2;p=0.75)は群間で同程度であったが、介入群の方が対照群よりも多くの転院患者を診察した(4.4対3.9;p=0.01)。

J(^o^)PAN-1試験では、ストレス(それぞれ2.8対2.9;p=0.40)、食事時間(17.2分対17.3分;p=0.98)、または疲労(3.0対3.0;p=0.85)において、介入群と対照群の間に有意差は認められなかった。さらに、入院数(10.4対10.6;p=0.70)または救急部門を受診した外来患者数(中央値、31対32;Wilcoxon p=0.98)には有意差は認められなかった。J(^o^)PAN-2試験では、ストレス(それぞれ3.0対2.9;p=0.61)、食事時間(15.6分対15.3分;p=0.82)、または疲労(2.9対2.9;p=0.95)において、介入群と対照群の間に有意差は認められなかった(表2)。さらに、入院患者数(14.1対14.0;p=0.86)または転院患者数(中央値、11対12;Wilcoxon p=0.68)には有意差は認められなかった。

結論
指導医からの激励コメントは、救急部門で働く研修医の仕事量への不吉な効果は最小限であった。

 

【開催日】2020年9月23日(水)

日本人2型糖尿病患者に対する経口セマグルチド単剤療法の用量反応性、効果、安全性(PIONNER9)

-文献名-
Yamada Y, Katagiri H, Hamamoto Y, et al. Dose-response, efficacy, and safety of oral semaglutide monotherapy in Japanese patients with type 2 diabetes (PIONEER 9): a 52-week, phase 2/3a, randomised, controlled trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2020;8(5):377-391. doi:10.1016/S2213-8587(20)30075-9

-要約-
背景 日本人2型糖尿病特有の表現型を考えると経口セマグルチドなどの新規両方は、この集団での評価を必要とする。PIONEER9は経口セマグルチドの用量反応を評価し、日本人集団における経口セマグルチドの有効性と安全性をプラセボおよび皮下GLP1受容体アゴニストと比較すること目的とした。
方法
 PIONEER9は日本の16施設(診療所と大学病院)で行われた52週のフェーズ2/3aのランダム化試験。
参加者は食事や運動による加療でコントロール不良の2型糖尿病(HbA1c7.0~10.0%)、または経口血糖降下薬単剤(HbA1c6.5~9.5%)で加療中の20歳以上の日本人患者。除外項目は90日以内に週1回GLP-1受容体アゴニスト、週1回DPP4阻害薬、チアゾリジンによる加療を行われた患者、腎障害(eGFR<30)、緊急治療を要する増殖性網膜症や黄斑症の患者。 1日1回の経口セマグルチド(リベルサス:3mg/7mg/14mg)とプラセボ、1日1回皮下注射製剤のリラグルチド(ビクトーザ)0.9mgを1:1:1:1:1にランダムに割付け、二重盲検化された。(Figure1) Primary endpoint  ランダムに割り付けられた全ての患者の試験製品推定値でのベースラインから26週までのHbA1cの変化。 結果 2017年1月10日から7月11日までの間に243人の患者がセマグルチド3mg(n=49),7mg(n=49),14mg(n=49)また、プラセボ(49),リラグルチド0.9mg(n=48)にランダム割り付けされた。患者のベースラインに差はなかった。 26週までのHbA1cのベースラインからの変化(平均8.2%)において経口セマグルチドは用量依存的だった。(セマグルチド3mg ではmean change-1.1%,[SE0.1]、7mg では-1.5%[0.1]、14mgでは-1.7%[0.1]、プレセボでは−0.1%[0.1]、リラグルチド0.9mgでは-1.4%[0.1]) 26週時点でのHbA1cのベースラインからの推定変化はプラセボと比較して経口セマグルチド3mg,7mg,14mg全てで優位に変化していた。セマグルチド14mgではリラグルチド0.9mgに比較して有意に変化していた。(Figure2) プラセボと比較したHbA1cの変化の推定治療差 経口セマグルチド3mgで-1.1%ポイント(95%CI-1.4to0.8;p<0.0001) 経口セマグルチド7mgで-1.5%ポイント(–1·7 to –1·2; p<0·0001) 経口セマグルチド14mgで-1.7%ポイント(–2·0 to –1·4; p<0·0001) リラグルチド0.9mgと比較した推定治療差 経口セマグルチド3mgで0.3%ポイント(95% CI –0·0 to 0·6; p=0·0799) 経口セマグルチド7mgで-0.1%ポイント(–0·4 to 0·2; p=0·3942) 経口セマグルチド14mgで-0.3%ポイント(–0·6 to –0·0; p=0·0272) 体重変化は経口セマグルチド14mgでは26週でベースラインから減少し、52週まで持続的に減少した。26週でプラセボ(P=0.0073)、リラグルチド(セマグルチド7mg P=0.0312/セマグルチド14mg P<0.0001)と比較して経口セマグルチド14mgは有意に体重減少した(Figure3)。 主要な軽度または中等度の消化管イベントが経口セマグルチドで最も頻繁に報告された有害事象だった。便秘が最も一般的で、経口セマグルチドの患者5~6人(10~13%)、プラセボで3人(6%)、リラグルチド9人(19%)だった。 結論 この研究は経口セマグルチドが2型糖尿病の日本人患者におけるプラセボとリラグルチドの両方と比較した経口セマグルチド単剤療法の有効性と安全性を示している。用量反応関係が確立され、経口セマグルチド14mgにより26週目においてHbA1cと体重両方がプラセボおよび日本で承認されたリラグルチドの維持量(0.9mg)よりも有意に減少することがわかった。経口セマグルチド7mgはリラグルチド0.9mgと同等にHb1cを下げることがわかった。 JC白水1

JC白水2

JC白水3

JC白水4

【開催日】2020年8月12日(水)

経口抗凝固薬/PPI内服併用と上部消化管出血による入院の関連

-文献名-
Ray, Wayne A., et al. “Association of oral anticoagulants and proton pump inhibitor cotherapy with hospitalization for upper gastrointestinal tract bleeding.” JAMA 320.21 (2018): 2221-2230.

-要約-
背景 抗凝固薬とPPIの併用療法は、(頻度が高く、時に重篤な抗凝固療法単独の合併症である)上部消化管出血のリスクに影響する可能性がある。
目的 上部消化管出血による入院発生率を、抗凝固薬単独群とPPI併用群で比較する、また上部消化管出血リスクに関係する変数を明らかにする
デザイン・セッテング・対象者 過去起点コホート研究。
2011年1月1日から2015年9月30日のMedicare被保険者
要因 Apixabanエリキュース、Dabigatranプラザキサ、Rivaroxabanイグザレルト,Warfarinと
PPI併用のあり・なし
主たるアウトカムと測定方法 上部消化管出血による入院の調整済み10000人年あたり発生率と10000人年あたりの抗凝固薬の調整済みリスク差、発生率比
結果 Table2添付あり
1,643,123人の対象者において1,713,183件の新規経口抗凝固薬のケースがコホートに含まれた(平均年齢76.4歳±2.4、 女性の651,427人年フォロー(全体の56.1%)、心房細動による内服870,330人年(74.9%)、PPIなし群754,389人年で7119人が発生。調整済み上部消化管出血による入院発生率115人/一万人年(95%CI:111-118)。Rivaroxabanでは1278人発症、入院発生率144人/一万人年(95%CI:136-152)で他の3剤よりも統計学的に有意に高い発生率であった。Apixabanが279人発症、入院発生率73人/一万人年(発生率比1.97 95%CI1.73-2.25)、リスク差70.9(95%CI59.1-82.7) 、Dabigatranが629人発症、入院発生率120人/一万人年(発生率比1.19 95%CI1.08-1.32)、リスク差23.4(95%CI10.6-36.2)、Warfarinが4933人発症、入院発生率113人/一万人年(発生率比1.27 95%CI1.19-1.35)、リスク差30.4(95%CI20.3-40.6)であった。またApixabanは、Dabigatran(発生率比0.61 95%CI0.52-0.70)、リスク差-47.5(95%CI-60.6から-34.3)Warfarin(発生率比0.64 95%CI0.57-0.73)、リスク差-40.5(95%CI-50.6から-31.0)と比較し有意に発生率が低かった。
PPI併用群264,447人年:76人/一万人年。PPIなし群と比較して、上部消化管出血による入院リスクは発生率比0.66(95%CI:0.62-0.69)、Apixaban内服群:発生率比0.66(95%CI:0.52-0.85)、リスク差 -24 95%CI-38から-11)、Dabigatran内服群:発生率比0.49(95%CI:0.41-0.59)、リスク差 -61.1 95%CI-74.8から-47.4)、Rivaroxaba内服群:発生率比0.75(95%CI:0.68-0.84)、リスク差 -35.5 95%CI-48.6から-22.4)、Warfarin内服群:発生率比0.65(95%CI:0.62-0.69)、リスク差 -39.3 95%CI-44.5から-34.2)と全てにおいて発生率は低値であった。
結論 新規に経口凝固薬を内服した患者において、上部消化管出血による入院発生率はRivaroxaba内服群で最も高く、Apixaban内服群で最も低かった。それぞれの抗凝固薬において、PPI併用群はPPIなし群と比べて上部消化管出血による入院発生率は低値であった。この知見は、抗凝固薬を選択する際のリスク・ベネフィットの評価に影響を与えうる。

JC佐藤①

【開催日】2020年8月5日(水)

変形性膝関節症に対する高浸透圧ブドウ糖関節内注射の効果

-文献名-
Shan RW et al. Efficacy of Intra-Articular Hypertonic Dextrose (Prolotherapy) for Knee Osteoarthritis: A Randomized Controlled Trial. Ann Fam Med 2020; 18:235-242.

-要約-
【Introduction】
高浸透圧ブドウ糖によるprolotherapy(DPT)は炎症により誘発される組織浸潤を通じて治癒と疼痛の緩和を得るための伝統的な治療法.標準的な方法は関節内外に注射を実施するものであり,過去のRCTやシステマティックレビューにおいて有効性が示されているが,関節内外どちらのアプローチが有効なのかは分かっていない.手技は患者にとっては侵襲的であり,関節外への注射は専用のトレーニングを要するものであり普及していない.手技が簡便で臨床的に広く安全に実施されている関節内注射のみの有効性はこれまで質の高い研究がなかった.
【Purpose】
変形性膝関節症に対する高浸透圧ブドウ糖関節内注射(DPT)が生理食塩水(NS)と比較して有効か調べる.
【Method】
(セッティング)
香港の大学付属のプライマリ・ケアクリニック 1施設
(患者)
45−75歳の変形性膝関節症患者
(デザイン)
ランダム化比較試験
(その他の内的妥当性について)
ランダム化割り付けは隠蔽化されており,研究者,患者,治療者,解析者ともに盲検化されている.ITT解析が実施されている.サンプルサイズの計算法についても記載あり妥当と思われる.
(介入方法)
DPT群は2.5MLの50%グルコースと2.5MLの精製水を混合し25%のグルコース液5MLを作成し,NS群は生理食塩水.25Gの針で膝関節内にエコー下に注入.各群ともに0週,4週,8週,16週で注射を実施した.
(アウトカム)
一次: the Western Ontario McMaster University Osteoarthritis Index (WOMAC 0−100点) pain score
二次: WOMAC composite, WOMAC stiffness, WOMAC function, いくつかの客観的に測定できる身体機能,痛みのVAS, EuroQol−5D score.
全てのアウトカムはベースラインと16週後,26週後,52週後に評価された.
【Results】
両群のBaseline characteristicsに違いはなかった.
52週後時点での差分の差分(difference in difference)は
WOMAC pain scoreは −10.34(95%CI −19.20 – -1.49, p=0.022)
WOMAC composite score は -9.65(95%CI −17.77 – -1.53, p=0.020)
WOMAC function score は -9.55(95%CI -17.72 – -1.39, p=0.022)
VASは −10.98(95%CI −21.36 – -0.61, p=0.038)
EuroQol-5D は 8.64(95% CI 1.36 – 5.92, p=0.020)
有害事象の報告はなかった.
【Conclusion】
関節内ブドウ糖注射によるprolotherapyは生理食塩水と比較して変形性膝関節症患者の疼痛を緩和し,機能とQOLを改善することが示された.手技は簡便で安全であり,患者のアドヒアランス,満足度も高いものであった.

【開催日】2020年6月10日(水)

慢性的な呼吸困難感に対するモルヒネ徐放製剤の多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験

-文献名-
Currow D, Louw S, McCloud P, Fazekas B, Plummer J, McDonald CF, Agar M, Clark K, McCaffery N, Ekstrom MP; Australian National Palliative Care Clinical Studies Collaborative (PaCCSC).
Regular, sustained-release morphine for chronic breathlessness: a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled trial.
Thorax. 2020 Jan;75(1):50-56. doi: 10.1136/thoraxjnl-2019-213681. Epub 2019 Sep 26.

-要約-
【目的】
 モルヒネは慢性的な呼吸困難感を緩和すると考えられるが、大きなRCTによるデータが不足している。慢性的な呼吸困難感に対する低用量のモルヒネ徐放製剤の有効性と安全性をプラセボ対照無作為化比較試験により検証する。
【方法】
 オーストラリアの呼吸器・循環器・緩和ケアの入院・外来サービス14施設で二重盲検の無作為化比較試験を行った。修正版MRC息切れスケールで2以上の呼吸困難感を有する成人を対象とした。介入群は経口モルヒネ徐放製剤20mg/日と下剤、対照群はプラセボと下剤をそれぞれ7日間服薬した。両群とも必要時にモルヒネ速放製剤2.5mg/回を1日6回まで使用可とした。主要エンドポイントは現在の呼吸困難感のVAS評価の前後での変化とした。二次エンドポイントは24時間前と今における呼吸困難感の最低・最高・平均強度と患者のQOL、介護者のQOL、患者の治療への好みを評価した。
【結果】
 介入群に145名、対照群に139名が無作為に割り付けられた。主要評価項目である現在の呼吸困難評価の変化に有意差はみられなかった(変化の差-0.15 mm, 95%信頼区間 -4.59 to 4.29; p=0.95)。副次評価項目でも介入効果は認められなかった(24時間で最悪の呼吸困難感, p=0.064; 24時間で最良の呼吸困難感, p=0.207; 24時間の平均的な呼吸困難感, p=0.355; 現在の呼吸困難の不快感, p=0.338; 倦怠感, p<0.001, 介入群の方が倦怠感増悪; QOL, p=0.880; 全身状態, p=0.260)。介入群は便秘(p=0.001)、疲労(p<0.001)、悪心・嘔吐(p=0.008)が有意に多かった。モルヒネのレスキュー使用は対照群でより多かった(介入群, 平均5.8回, 対照群, 8.7回; p=0.001)。 【結論】  慢性的な呼吸困難感に対するモルヒネ徐放製剤の定期服用の介入効果は認められなかったが、レスキュー使用は対照群より少なかった。 【開催日】2020年3月11日(水)

TV会議や電話による診察と直接面談による診察の内容と質の比較

-文献名-
Victoria Hammersley, et al. Comparing the content and quality of video, telephone, and face-to-face consultation: a non-randomised, quasi—experimental, exploratory study in UK primary care. BJGP. 2019; DOI:

-要約-
【背景,イントロダクション】
英国のプライマリ・ケア現場では直接面談による診察(face to face consultation,以下FTFC)の代替/補完として電話による診察(telephone consultation,以下TC)の利用が広がっており,働く人や家事で忙しい人にとって時間の節約とプライマリ・ケアサービスへのアクセス改善に役立っている.一方ではTCは時間が短く,扱われる健康問題の幅が狭く,十分な情報収集やアドバイス,ラポール形成が難しく,比較的単純な診察においてのみ有用であり,余り安全ではないとする研究もあり,全身状態や非言語コミュニケーションなど視覚的な情報が欠落することも指摘されている.インターネットを利用したTV会議(video consultation,以下VC)はこういった課題を解決し,身体所見を必要としないある種の診察においては有用かも知れないことから,NHS(National Health Service)がVCの利用可能性について言及している.
【目的】
スコットランドでパイロットとして使用されているAttend Anywhereと呼ばれるVCのシステムを用いて,プライマリ・ケアの診療における医師や患者の受け入れの良さ,VCがFTFCやTCとどのように異なるのかを探索する.
【セッティング】
スコットランドのGeneral Practice(GP)のクリニック.
【方法】
GPクリニックで診療を受け,フォローアップの必要な患者にフォローアップの方法としてVC,TC,FTFCの3つから選択してもらった.診察は録音されその内容と質を分析した.また,診察後,医師(GP)と患者双方にアンケート調査を行った.VCの流れはFigure2 .診察の内容と質の分析に用いられた指標はBox.1.

JC20201211山田1

JC20191211山田2

【結果】
13名のGP(男性8名),162名(FTFC 54名,TC 56名,VC52名)が参加.データを全て収集できた患者は149名.
・ 患者特性
VCを選択した患者は相対的に若く平均42歳(TC 54.3歳,FTFC 52.3歳).VCを選択した患者は女性の方が多かった(54%.FTFC 39%,TC 55%).英国の白人が大部分を占めた(87%).FTFCを選択した患者は過去1年間でより診察の回数が多かった(中央値10回.TC 6回,VC 5回).
VCの患者でスマートフォンを利用したのが49%,PCを利用したのが35%であった.
・ 技術的な障壁
WiFi環境整備,GPのAttend Anywhere利用への習熟などが障壁となったが,3名の患者しか「VCは有用ではない」と回答しなかった.診察を他の方法に切り替えた患者が複数名いた(詳細は原著).
・ 患者アンケート(Table2,3)
全体的に患者のかかえるプロブレムがよく取り扱われ有用であったが,FTFCの患者が「very good」と回答する頻度が高かった.
・ GPアンケート
患者のプロブレムをマネジメントするために非常に有用(very useful)と回答したGPは FTFCで86%,TCで78%,VCで65%.VCを利用したGPの10%が「VCを再び診察に用いたいと思うか?」の問いに「思わない」と回答した.その理由の多くが技術的な問題であった.
・ 診察内容と質に関する分析(Table5,Table6)
全般的にVC,TCではFTFCと比較すると取り扱われた健康問題が少なかった(VC 1.5,TC 1.8,FTFC 2.1).
FTFCはより時間が長かった(VC 5.94分,TC 5.56分,FTFC 9.61分).
全般的にRCGPの指標による診療の質評価はほぼ同様であった.VCとTCではFTFCに比較して「patient’s own health understanding」「Places problems into psychosocial context」の2項目が低い結果であった.生活習慣へのアドバイスを与える頻度はFTFCの方がより高かった.RIASの指標による分析では是パン的にFTFCの方が患者教育とカウンセリングに時間が割かれており,患者が提供する情報が多かった.VCとTCの間に差はなかった.

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【結論】
VCはTCと同様,扱われる健康問題はFTFCと比較すると少なく診察時間も短かった.診察の内容,質に於いてもFTFCがより豊かな診療であった.患者経験においてもFTFCの方が良好であった.VCは主に若く,ITになじみのある人に選択され,普段は診察を受ける頻度の少ない人が選択した.患者の価値感が利便性にある場合,身体診察が不要な場合,VCにはアドバンテージがあるだろう.

【開催日】2019年12月11日(水)

認知症患者の予後:オランダでの前向き全国レジストリ研究の結果

-文献名-
Irene E van de Vorst, Ilonca Vaartjes, Mirjam I Geerlings, Michael L Bots, Huiberdina L Koek. Prognosis of patients with
dementia: results from a prospective nationwide registry linkage study in the Netherlands. BMJ Open 2015; 5:e008897.

-要約-
OBJECTIVE
国立病院の登録データに基づいて認知症の死亡リスクを報告し,一般住民や心血管疾患の死亡リスクと比較してリスクを把握すること.
DESIGN
2000年1月1日~2010年12月31日までの前向きコホート研究
SETTING
病院ベースのコホート
PARTICIPANTS
全国の病院ベースの臨床的に診断された認知症患者59,201人(病院に入院,または日中のクリニック受診)のコホートで構成された(男性38.7%,81.4歳(SD 7.0)).
MAIN OUTCOME MEASURES
日中のクリニックを受診した認知症患者について,一般集団と比較して1年および5年の年齢別および性別別の死亡リスクが報告された.
急性心筋梗塞,心不全,または脳卒中で入院した患者と比較して,認知症で入院した患者では,これらは絶対および相対リスク(RR)として表された.
RESULTS
1年死亡リスクは男性で38.3%,女性で30.5%だった.5年死亡リスクはそれぞれ65.4%と58.5%だった.
病院に入院した認知症患者の死亡リスクは,日中のクリニックを受診した患者よりも有意に高かった(1年RR 3.29,95%CI 3.16〜3.42,および5年RR 1.79,95%CI 1.76〜1.83).
一般集団と比較して,死亡リスクは日中のクリニック受診患者で有意に高かった(1年RR:女性2.99,95%CI 2.84〜3.14,男性3.94,95%CI 3.74〜4.16).
5年RRはやや低かったが,それでも有意であった.
結果は若い年齢でより顕著で,入院患者の死亡リスクは心血管リスクと同等かそれを上回っていた.
(女性の1年RR:認知症 vs AMI 1.24,95%CI 1.19~1.29,認知症 vs 心不全1.05,95%CI 1.02~1.08,認知症 vs 脳卒中1.07,95%CI 1.04〜1.10).
5年RRは同等だった.男性の場合,RRはわずかに高かった.
CONCLUSION
認知症は,他の疾患や一般集団と比較して予後が悪い.入院患者のリスクは,心血管疾患後のリスクを上回った.

【開催日】2019年10月2日(水)

プライマリケアにおけるうつ病の疫学

-文献名-
Manish K. Jha, MD, et al. A structured approach to detecting and treating depression in primary care:
VitalSign6 project. Annals of Family Medicine. 2019;4(17):326-334.

-要約-
 Purpose:
この報告では、米国の大都市圏で進行中の、16のプライマリケアクリニックにおけるうつ病患者のスクリーニング、
治療およびアウトカムを改善するために行われた「質の改善プロジェクト(VitalSign6)」の結果について記述している。

・16のクリニックの内訳:6つのcharity clinic、6つの連邦政府認定health care center、2つの民間の低所得者層向けクリニック、
 2つの民間のメディケアあるいは私的保険に加入している患者のためのクリニック

 Method:
この後ろ向き分析の対象は、前述の「質の改善プロジェクト」においてPHQ-2でスクリーニングされた25000人の患者(12歳以上)である。
スクリーニング陽性(PHQ-2>2)となった患者は、自記式質問票とclinicianの診察によってさらなる評価が行われた。
2014年8月から2016年11月までに集められたデータは3種類で、(1)当初のPHQ-2施行群(n=25000)、(2スクリーニング陽性群(n=4325)、(3)clinicianによってうつ病と診断され、
18週間以上登録されていた群(n=2160)である。

 Results:
うつ病のスクリーニングされた患者の17.3%(4325/25000)が陽性と判定された。
スクリーニング陽性だった患者のうち、clinicianの診察によってうつ病と診断されたのは56.1%(2426/4325)であった。
18週間以上登録された患者のうち、64.8%がmeasurement-based pharmacotherapyを開始され、8.9%が外部の専門家に紹介された。
薬物療法を開始した1400人の患者のうち、フォローアップの回数は、0回45.5%、1回30.2%、2回12.6%、3回以上11.6%であった。
寛解率は、フォローアップ回数が1回20.3%(86/423)、2回31.6%(56/177)、3回以上41.7%(68/163)であった。
ベースラインの特徴として、脱落率の高さと関連していたのは、非白人、薬物乱用スクリーニング陽性、うつ病/不安障害の症状の重症度が低い、若年であった。

 Conclusion:
ルーチンスクリーニングとうつ病の治療開始後、3回以上フォローアップされている患者は寛解率が高かったが、ケアの脱落率の高さは、アウトカムに悪影響を及ぼす重大な問題である。

背景:
➢ 大うつ病はUSでは成人の5-10%を占める。その半数はうつ病と診断されていない。適切な治療を受けているのは1/5以下。
ゆえに一般人口を対象にうつ病のスクリーニングを行うことが推奨されている。2015年に外来でうつ病とスクリーニングされたのは3%のみ。

➢プライマリケアクリニックで治療されたうつ病患者のアウトカムは、measurement-basedcare(MBC)に則って行われた場合、精神科での治療と同等である。

➢ Measurement-based careアプローチ:
(1)標準化された症状や副作用、治療のアドヒアランスの評価
(2)治療に対する現場での意思決定
(3)継続的なフォローアップ
(4)意思決定をサポートするためのclinicianへのフィードバック
から成る。通常のケアと比較して2倍の寛解率と見込めるとされ、うつ病のガイドラインにも採用されている。
主に患者の自己報告による(自記式質問票を活用)。

➢ Quality-improvement project:うつ病は慢性疾患であり、エビデンスに基づいたうつ病診療をプライマリケアで新しいスタンダートへ。
ウェブベースのアプリを活用しており、それによって(1)スクリーニング、(2)うつ病と診断された患者の症状のモニタリング、(3)clinicianに対してMBCをガイドする

➢ Clinician:内科医、家庭医、小児科医、physician assistants、advanced practice nurses

【開催日】2019年9月4日(水)

家庭医療の後期研修中に学術活動を増やすための持続可能なカリキュラムとは?

―文献名―
Sajeewane Manjula Seales et al.
Sustainable Curriculum to Increase Scholarly Activity in a Family Medicine Residency.
Fam Med. 2019;51(3):271-5.

―要約―
背景と目的
学術活動(以下SA)は,家庭医療の後期研修プログラムのためにACGMEの準拠要件である。しかし専攻医に学術活動に参加させることは困難である。しかし2010年にジャクソンビル海軍病院の家庭医療レジデンシー(NHJ―FMR)は、専攻医のSAのアウトプットを劇的増加させるリサーチカリキュラムを開発した。この研究の目的は,そのアウトプットが経時的に持続可能かどうかを測定することである。
方法
NHJ-FMRプログラムにおける2012~2013の学年から2016~2017の学年(N=185)の間のレジデントのSAについての後ろ向き記録レビューを実施した。リサーチカリキュラムへの以下の介入が2010~2012年度に実施された:
・研究コーディネートの指導医ポスト(FRC)
 →理想的には研究の経験が豊富でリーダシップスキルがある人材だが、我々のFRCは限られた研究経験であり、准教授レベルでFRCのポストは0.1FTEであった。
・SAポイントシステム(Table1参照)
・同僚支援を行う研究コーディネーターのポスト
 →PGY2やPGY3で特に研究への関心が高い人材で、同僚の研究の動機付けやメンタリングを行う役割。
  彼らは半日の研究日をもつ
・SAのアウトプットは、専攻医の年間のプロジェクトの合計、年間の質プロジェクト(地方会や全国学会での発表もしくはピアレビュー雑誌への投稿)もしくはピアレビューのプロジェクトを計算し、回帰分析とマン・ホイットニーのU検定(ノンパラメトリック検定)を行った。

結果
専攻医一人あたりのプロジェクトの年間件数は、2012~2013年度の0.34件から、2016~2017年度の1.05件に増加した(Fig1)。また専攻医一人あたりの質改善プロジェクトは、統計的に有意な経時変化を示した。(F(1,9)−18.98,P<0.05,R2 of 0.6784:Fig3)介入前の年数と介入後の年数を比較すると、専攻医の平均の質プロジェクトでは統計的有意はなかった(P<005) 結語 このカリキュラムのモデルは、研修プログラムで実施できる学術活動の成果を高めるために独自性かつ信頼性の高い介入を重視している。 毎年の研究コーディネーターの異動にもかかわらず,SAの量と質は5年間で増加している、介入後に増加している。 この研究は専攻医主導の(教育)文化の変化を実証し、他のプログラムへの適応性に関する今後の研究の証拠となる。 ディスカッション ピアレビューのメンターシップは専攻医の文化を変え、研究が修了のためのチェックボックス項目から、それぞれの専攻医にとっての教育的な経験となった。この研究の限界は、記録に基づいているデザインであることと、単一プログラムであること。そして軍隊のプログラムであるが、軍隊であることの特徴はなく、ACGMEに準拠してAMFMの要件を満たす非軍隊のプログラムにも応用しやすい。  JC(松井0522)

JC(松井0522)1

JC(松井0522)2

【開催日】2019年5月22日(水)

研究利用時の電子カルテデータの質の評価軸と評価法

-文献名-
Methods and dimensions of electronic health record data quality assessment: enabling reuse for 
clinical research
Weiskopf NG, Weng C. J Am Med Inform Assoc (2012). doi:10.1136/amiajnl-2011-000681

-要約-
【目的】研究のために電子カルテ(electronic health record : EHR)データを再利用する点で、データの質の評価方法と評価軸を検討するため
【対象と方法】臨床研究の文献でEHRデータの質評価法が考察されているものを対象とした。反復プロセス(質的研究方法の1つ。Ref.11) A general inductive approach for analyzing qualitative evaluation data. )を用いて、測定されたデータの質や評価方法は抽出され分類された。
【結果】5つの質の評価軸が同定された( Table.1参照)。
Completeness 完全性(患者について真実が、電カル内にあるのか?漏れはないか)
Correctness 正確性(電カル内のデータは、真実か?入力の誤りなど)
Concordance 適合性(電カル内のデータ間や他リソースとの間で正誤性が保たれるか)
Plausibility もっともらしさ (知識から見て電カル内のデータが意味をなすか)
Currency タイムリーか (診療の機会に、データが記述がされているか)
また7つの評価方法が同定された。
ゴールドスタンダード: 別のリソース(GS)と電カルデータの比較
date element agreement :電カル内で同様の内容が別に記載されている同士の一致検討
data source agreement:上記GSと近いがデータ同士の一致検討
分布の比較 : 臨床から期待されうる分布との比較
妥当性の確認   :データがmake senseかどうか
ログ検討     :データ入力時の日時・時間・編集の有無など調査
element presence :望まれる箇所に、データ自体が存在するか
(Figure1参照)
【考察】
本調査は、データの質の基本的特徴(測定することは難しいが)と、更に評価軸
があることを示した。EHRデータの再利用に興味がある研究者に対して、データの質の分類を考慮すること、データの質について研究課題に準拠した関心を維持すること、他分野からのデータの質評価の作業を統合すること、システマティックに、実践経験に従い、統計的に基づくデータの質評価の方法を採用すること、を推奨する。
【結論】今の所、EHRデータの質の評価方法は一貫しておらず、一般論/標準基準として成熟する可能性も乏しい。もし臨床研究にEHRデータを再利用することになれば、研究者は妥当性が担保されたシステマティックなEHRデータの質評価の方法を用いなければならないだろう。

201810佐藤1

201810佐藤2

【開催日】2018年10月3日(水)