75歳以上の成人にがん検診の中止について話し合うためのプライマリ・ケア医の準備戦略

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
Mara AS, et al. A strategy to Prepare Primary Care Clinicians for Discussing Stopping Cancer Screening With Adults Older Than 75years. Innovation in Aging. 2020; Vol4(4): 1-12.

-要約-
【背景と目的】
75歳以上の高齢者,特に余命が10年未満の人ではがんが過剰にスクリーニングされている.本研究は、プライマリ・ケア・プロバイダー(PCP)にマンモグラフィや大腸がん(CRC)検診の中止について話し合うためのスクリプト(台本.参考文献18の研究で開発されたもの)を提供し、さらに患者の10年後の余命に関する情報を提供することが、患者のこれらのがん検診受診意向に与える影響を調べることを目的とした。

【研究のデザインと方法】
ボストン周辺の7箇所の施設(クリニック,地域の健康センター,大学病院など)に勤務するPCPを対象に実施した.PCPの予約記録から選定された参加者(患者)は受診前後にアンケートに記入した。PCPには、診察前にスクリーニングの中止について話し合うためのスクリプトと患者の10年後の平均余命に関する情報が提供され,研究終了時にアンケートに記入した。質問内容はがん検診の中止について話し合うことと患者の余命についてである。診察前後の患者のスクリーニングに対する意志(1-15のリッカート尺度;スコアが低いほど意図が低いことを示唆する)をWilcoxonの符号付き順位検定を使用して比較した。

【結果】
45のPCPから75歳以上の患者90人(電話で依頼した対象患者の47%)が参加した。 患者の平均年齢は80.0歳(SD = 2.9)、43人(48%)が女性、平均寿命は9.7年(SD = 2.4)であった。37人のPCP(12人が地域密着型)が質問票に記載した。PCP32人(89%)はスクリプトが有用であると考えており、29人(81%)が頻繁に使用すると考えていた。また,35人(97%)のPCPが患者の余命に関する情報が役立つと考えていた。しかし、患者の余命について話し合うことに安心感を感じていると答えたPCPは8人(22%)にとどまった。大腸癌のスクリーニングおよびマンモグラフィ検査を希望する意志を表す患者は受診前から受診後にかけて減少した(大腸癌: 9.0 [SD = 5.3]~6.5 [SD = 6.0]、p < 0.0001,マンモグラフィー: 12.9 [SD = 3.0]~11.7 [SD = 4.9]、p = 0.08,大腸癌で有意に減少)。診察前に患者の63%(54/86)がPCPと余命について話し合うことに興味を持っていたが,診察後では56%(47/84)であった。

【ディスカッション】
研究に参加したPCPはがん検診の中止について話し合うためのスクリプトや患者の余命に関する情報が有用であると考えた。結果として,75歳以上の患者はCRC検診を受けようとする意識が低かった可能性がある。
【Translational Significance(現場に適用できる本研究の意義)】
ガイドラインでは、平均余命が10年未満の高齢者にはがん検診を行わないことが推奨されているが、患者にとって有害性が有益性を著しく上回るためである。しかしながら、PCPが高齢者とがん検診の中止について話し合うことはほとんどない。この研究では、PCPが高齢患者の10年後の余命に関する情報およびがん検診の中止について話し合うためのスクリプト(台本)が有用であることが明らかになり、この介入を使用することで、余命が短く、有益な可能性がほとんどない高齢者ががん検診を受けようとすることが少なくなる可能性があることが明らかになった。さらに、本研究では、56%の高齢者が10年後の余命についてPCPと話し合うことに興味を持っていることが明らかになった;しかしながら、10年後の余命について高齢者と話し合うことに快感を感じているPCPはほとんどいなかった。

 

【開催日】2020年10月7日(水)

肺癌スクリーニングによる死亡率の低下

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

―文献名-
H.J. de Koning. Reduced Lung-Cancer Mortality with Volume CT Screening in a Randomized Trial. NEJM. 2020 Feb 6; 382(6): 503-513.

―要約-
Introduction
肺癌は癌による死亡の主要な原因であり、診断の時点で約70%進行癌、5年生存率は15%と低い。喫煙率は低下しているものの、いまだに成人の17-28%は喫煙者で、タバコ関連疾患の問題は深刻である。
NLST(米国の肺スクリーニング試験)では、肺癌の高リスク者においてXpとCTによる肺癌クリーニングを比較したところ、CT群で肺癌死亡率が20%低いことがわかっているが、その他に肺癌スクリーニングと死亡率の関連を示す研究はない。
2000年に開始されたNELSON試験(オランダ・ベルギーの肺癌スクリーニング試験)は、高リスク者を10年間追跡した低線量・ボリュームスキャンCTによるスクリーニングが肺癌発生率・死亡率などを減少させるかを調べた研究である。
Method
研究はエラスムス大学医療センター、グローニンゲン大学医療センターが行っており、スクリーニングの参加機関は4つの大学や医療センター(UMCG, University Medical Center Utrecht, Spaarne Gasthuis, and University Hospital Leuven)である。
参加者は喫煙が15本x25年以上もしくは10本x30年以上とした。
Current smoker;2週間以内の喫煙歴がある人
Former smoker;過去10年以内に禁煙した人
除外基準は中等症〜重症の基礎疾患があり2階へあがれないような人、体重140kg以上、過去の腎癌・悪性黒色腫・乳癌、過去5年以内の肺癌の診断・治療、過去1年のCT検査を受けた人である。
女性で上記の基準を満たす参加者は少なく男性に焦点を当てる研究となった。
50歳から74歳までの合計13,195人の男性(一次分析)と2594人の女性(サブグループ分析)が無作為に割り当てられた。→table1
2004年1月から2012年12月までの間で、4回の低線量CTスクリーニング(開始時、1年目、3年目、および5.5年目)を受けた人と、スクリーニングを受けなかった人とを比較した。

追跡期間は5, 7, 10-11年で行った。
肺癌特異的な死亡率を特定するために、死因を特定する臨床専門家委員会が設立され、専門家委員会の認証によって死亡が肺癌であることが結論づけられた。ランダム割付時から肺癌の診断、肺癌による死亡、その他の原因よる死亡を記録した。

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Results
参加者は前述table1(下記)へ。群間の特性には有意差なし。男性参加者は計13195人で、6538人のスクリーニング群と6612人の対照群に割り当てられている。
CTの実施率は平均90%程度。Indeterminate test(不確実な検査?)では追加検査を行い、55%の結節が解決、最終的に2.1%が検査陽性となった。呼吸器科での精密検査にて合計203件が肺癌と診断され、スクリーニングの陽性率は43.5%であった。
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Fig.1 Aは追跡期間および試験グループごとの肺がんの累積発生率であり、10年間でスクリーニング群で5.58例/1000人年、対照群で4.91例/1000人年であった。
Table3より、スクリーニング群ではstage1A/1Bが58.6%と多かったことに比較して、対照群では13.5%だった。Stage4の肺癌はほぼ半数の参加者で診断されているが、スクリーニングで検出されたのは9.4%であった。ほとんどが腺癌だった。
Fig.1Bは10年間での累積死亡率であるが、10年間のフォローアップでの肺癌による死亡はスクリーニング群で156人(2.50人/1000人年)、対照群で206人(3.30人/1000人年)であり、10年後の肺がんによる累積死亡率は、対照群と比較してスクリーニング群で0.76(95%信頼区間[CI]、0.61〜0.94; P=0.01)であった。
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Discussion
本試験では、スクリーニング間隔が時間経過とともに伸びているにもかかわらず、高リスク喫煙者の肺癌死亡率が大幅に低下する結果となった。スクリーニングの受診率は高く、男性の87.6%が3回のスクリーニング検査を受けた。また、発見時の肺癌の多くが初期段階であったため、外科的治療などの根治術の適応が増えた。
女性を対象としたサブグループ分析でもCTによるスクリーニングは肺癌死亡率に対して良好な結果が得られた。
大量のサンプルサイズを要するため、全死因では有意差を示すことはできなかったが、肺癌以外の死因に関してはスクリーニング群と対照群で有意差はなかった。
肺癌スクリーニングにおける過剰診断は課題の一つである。10年で19.7%の過剰診断がみられた。
 将来的にはスクリーニングの適応になる高リスク患者の選択がより洗練されることで、CTによる肺癌スクリーニングのメリットが増すであろう。

【開催日】2020年9月23日(水)

総タンパクおよび動物性、植物性タンパク質の食事による摂取と、全ての原因および心血管疾患、癌による死亡のリスク

―文献名-
Dietary intake of total, animal, and plant proteins and risk of all cause, cardiovascular, and cancer mortality: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective cohort studies. Sina Naghshi, Omid Sadeghi、Walter C Willett, Ahmad Esmailzadeh. BMJ. May 2020;370:m2412|doi:10.1136/bmj.m2412

―要約-
Introduction:
心血管疾患と癌は世界における2つの主要な死因である。これらの状態には食事が重要な役割を果たしている。長寿と関連する最適な栄養素の組成は不明確だが、タンパク質の摂取量については、ここ数十年で高タンパク食への移行が世界的に起こっている。高タンパク食は減量、筋肉量の維持、筋力向上に繋がる可能性があり、人気となっている。
高タンパク食は、血中グルコースや血圧などの心臓代謝バイオマーカーの改善とも関連している。高タンパク食、特に植物性のタンパク質は、HDLコレステロールや心血管疾患のリスクに影響を与えることなく、血中脂質濃度を有意に下げることを示したエビデンスが増えてきている。一方で、動物性タンパク質の摂取と心血管疾患および一部の癌の発生率と正の相関も報告されている。
総タンパク質摂取量と寿命の関連については議論の余地がある。今回、食事によるタンパク質の摂取と全ての原因、心血管疾患、および癌による死亡リスクの関連をまとめるため、前向きコホート研究のシステマティックレビューと用量反応メタアナリシスを実施した。

Method:
2019年12月31日までに公開された、PubMed/Medline、ISI Web of Science、Scopusなどのオンラインデータベースの全ての記事を体系的に検索した。
公開された研究の中から、総タンパク質、動物性タンパク質、植物性タンパク質の摂取と全ての原因による死亡、心血管疾患、全体としての癌または特定の癌との関連について調べられた、成人を対象とする観察的前向き研究が含まれた。小児・青年、慢性腎臓病・血液透析患者、末期癌、重篤な疾患をもつ患者を対象とした研究は除外した。

Results:
最終的に32件のコホート研究がこのシステマティックレビューに含まれ、31件の論文がメタアナリシスに含まれた。22件の論文で全死因の効果サイズが報告され、17件で心血管疾患による死亡、14件で癌による死亡が報告された。また、これらの論文のうち、26件は総タンパク質摂取量の効果サイズを報告した。16件は動物性タンパク質の摂取、18件は植物性タンパク質の摂取を報告した。
これらの研究の参加者数は288~135,335人、年齢は19~101歳。合計715,128人の参加者がこの32件の論文に含まれた。3.5年~32年の追跡期間中、全ての原因による死亡の総数は113,039人、心血管疾患による死亡は16,429人、癌による死亡は22,303人だった。
総タンパク質の摂取および全ての原因による死亡率の間の関連を調べた29件の論文のうち、6件は逆相関を、1件は正の相関を認め、他の報告では有意な関連を示さなかった。動物性タンパクの摂取と全ての原因の死亡率との関連について、2件は逆相関を示し、他の報告では有意な関連を示さなかった。さらに、7件の論文では、植物性タンパク質の摂取量と全ての原因による死亡率との間に逆相関を示した。心血管疾患の死亡率については、2件の研究が総タンパク質の摂取で保護的な関連を示し、1つの研究では動物性タンパク質、6件の報告では植物性のタンパク質に関するものだった。1つの研究で、総タンパク摂取量と癌死亡率の間に逆相関が示された。1つの研究では、植物性タンパク質の摂取量と癌の死亡率の間に逆の相関を示した。
総タンパク摂取量と全ての原因による死亡率について、関連する文献に含まれる480,304人の参加者のうち、72,261人が死亡した。総タンパク質の最高摂取量と最低摂取量を比較した全原因死亡率の要約効果サイズは0.94(95%信頼区間0.89-0.99、P=0.02)であり、総タンパク質摂取量と全原因死亡率の間の有意な逆相関を示した。研究官で有意な不均一性がみられた。
動物性タンパク質の摂取量と全原因死亡率については、関連する文献で304,100人の参加者と60,495人の死亡があったが、有意な関連はみられなかった(最高摂取量と最低摂取量の比較は1.00、95%信頼区間0.94-1.05、P=0.86)。研究間で中程度の不均一性があった。13の記事で調査された植物性タンパク質の摂取量について、439,339人の参加者と95,892人の死亡があり、全原因死亡率との逆相関がみられた(最高摂取量と最低摂取量を比較した統合効果サイズは0.92、0.87-0.97、P=0.0002)

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タンパク質摂取と心血管疾患死亡率について、10件の文献で調査された。これらの研究には427,005人の参加者と15,518人の死亡者が含まれていた。タンパク質摂取量の最高値と最低値を比較した心血管疾患死亡率の要約効果サイズは0.98(95%信頼区間0.94-1.03、P=0.51)であり、総タンパク摂取量と心血管疾患死亡率の間に有意な関連性は認めなかった。研究間で有意な不均一性は見られなかった。動物性タンパク質の摂取と心血管疾患の死亡率との関連性は、290,542人の参加者と13,667人の死亡者を含む8つの論文で調査され、有意な関連は認めなかった(要約効果サイズ1.02、95%信頼区間0.94-1.11、P=0.56)。研究間で有意な不均一性はなかった。植物性タンパク質の消費については10件の論文で検討され、425,781人の参加者と14,021人の死亡で、心血管疾患と逆の関連がみられた(要約効果サイズ0.88、0.80-0.96、P=0.003)。研究間で有意な不均一性はなかった。
タンパク質と癌死亡率について、12件の論文で、合計292,629人の参加者、22,118人の死亡者で関連を調べた。タンパク質の最高摂取量と最低摂取量を比較した癌死亡率の要約効果サイズは0.98(95%信頼区間0.92-1.05、P=0.63)であり、明確な関連性はなかった。研究間で中程度の不均一性がみられた。9件の論文で、動物性タンパク質の消費と癌死亡率についても同様の結果がみられた。合計274,370人の参加者、21,759人の死亡で、要約効果サイズ1.00、95%信頼区間0.98-1.02、P=0.88。植物性タンパク質の消費についても同様で、9件の論文で検討された。合計274,370人の参加者、21,759人の死亡、要約効果サイズ0.99、95%信頼区間0.94-1.05、P=0.68。こちらは研究間の有意な不均一性はみられなかった。

Discussion:
今回のシステマティックレビューとメタアナリシスで、総タンパク質の摂取量と全ての原因による死亡率の間に有意な逆の関連があることが分かった。総タンパク質、動物性タンパク質の摂取量と心血管疾患および癌死亡率との間に有意な関連は見られなかった。植物性タンパク質の摂取は、全ての原因と心血管疾患による死亡リスク低下と関連していた。
この研究の限界として、残存または測定されていない交絡因子がタンパク質摂取と死亡率との関連の大きさに影響を与えた可能性がある。ほとんどの研究は潜在的な交絡因子を制御していたが、他の栄養素の食事摂取を考慮に入れなかった研究や、総エネルギー摂取量とBMIを共変量と見なさなかった研究もあった。タンパク質のほとんどの食物源に存在する食物脂肪の量や種類など、他の栄養素を制御できないことは、タンパク質摂取と死亡率の独立した関連に影響を与える可能性がある。さらに、このレビューの一部の研究では、用量反応メタアナリシスに含めるのに十分な情報が報告されていなかった。また、今回含まれたコホートでは食物摂取頻度アンケート、食物回収、記録を含む食物評価のさまざまな方法が使用され、タンパク質摂取量の単位は研究ごとに異なっていた。食事評価における測定誤差は避けられず、タンパク質摂取との関連を過小評価する傾向があったと思われる。さらに、動物性タンパク質の摂取量に関する結論は、食事が炭水化物に富み、動物源の消費が少ない、低所得層または中所得層への一般化がより低い可能性がある。

【開催日】2020年9月2日(水)

体積骨密度および骨強度に対する高用量ビタミンD補給の効果

-文献名-
Lauren A. Burt, PhD. Effect of High-Dose Vitamin D Supplementation on Volumetric Bone Density and Bone Strength A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019 Aug 27;322(8):736-745.

-要約-
背景
12ヶ月以上にわたって許容上限摂取量以上でビタミンD投与の効果を評価した研究はほとんどないが、米国成人の3%が少なくとも4000IU/dayのビタミンD摂取を報告している。

目的
体積骨密度(BMD)および強度に対するビタミンD補給の用量依存効果の評価
デザイン
カナダ・カルガリーの単一施設で2013年8月〜2017年12月までに実施された3年間の二重盲検RCT。
55〜70歳までの311人の骨粗鬆症のない健康な成人、25[OH]Dのベースラインレベルは30〜125nmol/L。

介入
400IU(n = 109)、4000IU(n = 100)、10000IU(n = 102)での3年間のビタミンD3の1日量。
カルシウム摂取は、食事で1200mg/day未満の人に提供。

結果
HR-pQCT(high-resolution peripheral quantitative CT:DEXAより正確に骨密度を測定し、かつ骨強度を測定できるもの)で橈骨・脛骨の骨密度(BMD:bone mineral density)を評価、および要素解析による骨強度の推定。
無作為化された311人の参加者(53%が男性、平均年齢62.2歳)のうち287人(92%)が研究を完了。
25(OH)Dのベースライン、3か月、3年後の値は、400IUグループで76.3、76.7、77.4nmol/L。
4000IUグループで81.3、115.3、および132.2。
10000IUグループで78.4、188.0、および144.4。
終了時での橈骨の骨密度は400IUグループと比較して、4000IUグループ(−3.9 mg HA/cm3 [95% CI, −6.5 to −1.3])および10,000IUグループ(−7.5 mg HA/cm3 [95% CI, −10.1 to −5.0]) で低かった。
体積BMDの平均変化率は-1.2%(400 IUグループ)、-2.4%(4000 IUグループ)、および-3.5%( 10000 IUグループ)であった。
400 IUグループとの脛骨の骨密度の差は、4000IUグループで-1.8 mg HA /cm³(95%CI、-3.7〜0.1)、10000 IUグループで-4.1 mg HA /cm³(95%CI、- 6.0〜-2.2)、平均変化値は-0.4%(400IU)、-1.0%(4000IU)、および-1.7%(10000IU)であった。

結論と関連性
健康成人では、1日あたり4000IUまたは10,000IUのビタミンDを3年間投与すると、400IUと比較して骨密度が統計的に有意に低かった。脛骨では、10000IUでのみ有意に低かった。橈骨でも脛骨でも骨強度には有意差はなかった。調査結果は、骨の健康のための高用量ビタミンD補給の利点を支持しなかった。有害かどうかはさらなる研究が必要である。

参加者のフロー
JC201912大西1

母集団
JC201912大西2

<除外>
骨粗鬆症(骨量低下は含む)
血清25(OH)値の高値、低値
血清Ca値の高値、低値
半年以内に高容量ビタミンD服用
2年以内に骨粗鬆症の治療介入
ビタミンD代謝に影響する疾患(サルコなど)
腎障害
吸収不良
2年以内の腎結石
日焼けサロンに通っている

A(血清25(OH)D)、B(副甲状腺ホルモン)、C(タイプ1コラーゲンCテロペプチド)の分布
JC201912大西3

JC201912大西4

血清25(OH)D値は高容量投与で上昇するが、副甲状腺ホルモン、骨代謝マーカーには影響なし

Primary Outcome <骨密度の変化>
JC201912大西5
投与すれば投与するほど骨密度が下がっている

服作用頻度
JC201912大西6
高Ca血症と高Ca尿症で有意差あり

【開催日】2019年12月4日(水)

帯状疱疹予防における生ワクチン(ZVL)と組換えワクチン(RZV)の比較

-文献-
McGirr A, et al. The comparative efficacy and safety of herpes zoster vaccines: A network meta-analysis. Vaccine. 2019
May 16;37(22):2896-2909.

-要約-
背景:
・米国およびカナダでは、50歳以上の帯状疱疹予防に以下の2つのワクチンが認可されている(本邦と同様)
   生ワクチン(Zoster Vaccine Live; ZVL) 単回投与
   組換えワクチン(Recombinant Zoster Vaccine; RZV) 2回投与
・ZVLおよびRZVのランダム化比較試験(RCT)は、それぞれプラセボと有効性、安全性を比較している
・2つのワクチンの有効性、安全性を直接比較した試験はない
・この研究では、ネットワークメタ分析(NMA)を使用して2つのワクチンの有効性と安全性を比較した

方法:
・以下のPICOで文献検索、系統的レビューされた(21の全文出版物と4の会議抄録)
 P:帯状疱疹の既往ない50歳以上の成人(免疫不全者で実施された研究は除外)
 I:ZVL、RZVいずれかの帯状疱疹ワクチン接種(用量、スケジュール、準備、投与経路を問わない)
 C:他の帯状疱疹ワクチン、プラセボ、介入なし(異なる用量、スケジュール、準備、投与経路を評価する研究を含む)のいずれか
 O:有効性・・・帯状疱疹の発生率、帯状疱疹後神経痛(PHN)の発生率ほか
    安全性・・・完全な中止、重篤な有害事象、局所反応、全身反応
・詳細な実現可能性評価により、NMAは有効性(帯状疱疹およびPHNの発生率)および安全性(重篤な有害事象および注射部位反応、全身反応)の結果で実現可能であることが示された
・年齢はワクチンの有効性(VE)の既知の効果修飾子であるため、VE分析は年齢ごとに層別化された

結果:
・帯状疱疹への有効性は、60歳以上(Fig. 2A)、70歳以上(Fig. 2B)の両方の年齢層において、RZV(筋注)がZVL(皮下注)よりも有意に優れていた。PHNへの有効性も60歳以上(Fig. 2C)、70歳以上(Fig. 2D)の両方にて同様だった。
・RZVは、ZVLおよびプラセボのほとんどと比較して、注射部位および全身反応が大幅に増加ししたが、定義とデータ収集手順は研究間で異なっていた。重篤な有害事象については、ZVLまたはプラセボとの間に統計的に有意差は見られなかった。

20191109後藤

結論:
・RZVはZVLと比較して、60歳以上の成人の帯状疱疹およびPHNの発生率を大幅に低減する
・RZVは局所・全身反応が多いが、重篤な有害事象についてはRZVとZVLの間に違いはみられなかった

研究の限界:
・研究の数が少なかったため、結果は慎重に判断する必要あり
・少数の研究がNMAの結果に影響を与えた可能性がある
・研究の不均一性の結果、安全性の結果について95%CIが非常に広かった
・利益相反あり

【開催日】2019年11月6日(水)

トランスジェンダーのケア

-文献名-
DAVID A. KLEIN, MD, MPH; SCOTT L. PARADISE, MD; and EMILY T. GOODWIN, MD, Fort Belvoir Community Hospital, Fort Belvoir, Virginia Am Fam Physician. 2018 Dec 1;98(11):645-653.

-要約-

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導入:米国では約15万人の若者と140万人の成人がトランスジェンダーとして特定されています。社会文化的な需要が進むにつれ、臨床医はおそらくトランスジェンダーの人々の増加に気づくでしょう。
しかし、大規模な観察研究のデータは、トランスジェンダーの24%が医療環境での不平等な治療を報告し、19%が治療の拒否を報告し、33%が予防的介入を求めていないことを示唆しています。
約半数のレポートは、彼らがトランスジェンダーケアの基本的な教義を彼らの医療専門家たちに教えたと報告しています。
用語の定義:トランスジェンダーは、経験、表現される性別が出生時に割り当てられた性別と異なる人を表します。性同一性障害は、トランスジェンダー及び性多様性の人が経験する機能苦痛または問題を表します。
ICD-11の診断にある性不適合は、その人の経験する性別と割り当てられた性別の間の矛盾を表していますが、違和感または治療のための好みを意味するものではありません。
トランスジェンダーと性の不一致という用語は、一般的に性的指向、性的発達、外的性別表現とは異なります。
最適な臨床環境:臨床医が信頼関係の確立と維持に重点を置きトランスジェンダーの患者にとって安全で快適な環境を確立することが重要です(Table1)。
臨床医は「私は性多様性の人々のケアの経験が限られていますが、あなたが私の診療に安心を感じてもらえることが大事で、最適なケアができるよう頑張ります」と患者に伝えることはできます。
トランスジェンダー、性多様性に親和性のある資料のある待合室はより歓迎かもしれません。
問診票を更新して、性別に依存しない言語を含め、トランスジェンダーの患者の特定に役立つ2段階の方法(選択した性別と出生時に割り当てられた性別を特定する2つの質問)を使用できます。
文化的に繊細な用語やトランスジェンダーの話題、個人の偏見の評価における臨床医やスタッフのトレーニングは患者の反応に寄与するかもしれません。
また、地域のトランスジェンダーの患者の代弁をすることができます。

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評価:
病歴
トランスジェンダー患者を評価する場合、臨床医は性別の違和感または不一致の大きさ、期間、および安定性を評価する必要があります。治療は状況に合わせて最適化する必要があります。臨床像(例えば
、精神病)が混乱していたり性肯定ケアをより困難にする(例えば、制御されていないうつ病、重要な薬物使用)状況です。患者の社会環境のサポートと安全性は性肯定のために評価を必要とします。
これは、理想的には学際的な注意を払って達成され、完全に評価するために、数回の受診が必要な場合があります。
プライマリケア臨床医は、性同一性障害を評価しホルモン療法を管理することにより患者の性別関連のケアに積極的な役割を取るか、または良い状態であるか観察しプライマリケアと紹介を提供する補助的な役割を果たすか選択することができます(Figure1)。
臨床医は、自分自身をホルモン療法の門番と見なすべきではありません。むしろ患者が自分の健康管理について合理的で教育に基づいた決定を下せるように支援する必要があります。

身体診察
トランスジェンダーの患者は、継続的な不快感または過去の否定的な経験のために、身体診察中に不快を感じる場合があります。
診察は患者の現在の解剖学的構造と受診の特定のニーズに基づくべきである、そして、説明し寄り添い患者の快適さのレベルによって中断されるべきです。
性発達の違いは、通常、性の違和感や性の不一致よりもずっと早く診断されます。ホルモン療法されていない場合は、出生時に割り当てられた性別と一致しない性別の特性を評価するために、初期検査が必要になる場合があります。
このような所見は、内分泌科医または他の専門医への紹介を必要とする場合があります。

メンタルヘルス:
トランスジェンダーの患者は通常メンタルヘルスの診断の割合が高いです。しかし、患者の精神的懸念がトランスジェンダーであることに二次的であると仮定しないことが重要です。
プライマリケアの臨床医は、うつ病、不安障害、PTSD、摂食障害、薬物使用、親密なパートナーの暴力、自傷行為、いじめ、不登校、ホームレス、高リスクの性的行動、および自殺傾向のためのルーチンのスクリーニングを検討すべきです。
臨床医は、トランスジェンダーの人々の基本的なメンタルヘルスのニーズに対応し(例えばうつ病や不安に対する第一選択治療)、必要に応じて患者を専門医に紹介する必要があります。
トランスジェンダーはトラウマ的経験の有病率が高いため、ケアはトラウマインフォームドであるべきで(すなわち、安全、支援および信頼性に焦点を当てる)、ケアとレジリエンスに関連する患者の人生経験によって導かれるべきです。
人の性自認を出生時に割り当てられた性別に合わせるための努力、治療は非倫理的でAAFPのポリシーを含む現行のガイドラインやエビデンスに対応していない治療です。

ヘルスメンテナンス:
予防医療は、トランスジェンダーとシスジェンダー(つまり、トランスジェンダーではない)の人とで同様です。
微妙な推奨事項は、患者の現在の解剖学、薬物使用、および行動に基づいています。
高脂血症、糖尿病、喫煙、高血圧、肥満のためのスクリーニングの推奨事項はUSPSTFから入手できます。臨床医はVTEおよび代謝性疾患の兆候と症状に注意する必要があります。
ホルモン療法はこれらの状態のリスクを高める可能性があるためです。骨粗鬆症のスクリーニングはホルモン治療に基づきます。
がん検診の推奨事項は、患者の現在の解剖によって決定されます。乳房組織を持つトランスジェンダーの女性と完全な乳房切除を受けていないトランスジェンダーの男性は、シスジェンダーの人のガイドラインに基づいてマンモグラフィのスクリーニングを受けるべきです。子宮頸部および前立腺癌のスクリーニングは、現行のガイドラインおよび解剖的存在に基づいてなされるべきです。
予防接種(例HPV)および性感染症(HIVを含む)のスクリーニングと治療に関する推奨事項は、性行為に基づいてCDCとUSPSTFが提供しています。
HIV感染前および曝露後予防、治療基準を満たす患者のために考慮されるべきです。

ホルモン療法:
女性化および男性化するホルモン療法は、経験のある性から第二の性への発達を促進するための部分的に不可逆的な治療です。すべての性別の人がホルモン治療を必要とするわけではありません。
しかし、治療を受けた人は一般に、QOL、自尊心、不安の改善を報告しています。患者が不可逆的な外見の変化、生殖能力、および社会的な状況だけでなく、他の潜在的な利点とリスクを理解した後、治療に同意する必要があります。(詳細は割愛)
手術およびその他の治療:性の違和感を最小限に抑えるために、性適合外科的治療は必要とされない場合があり、ケアは個別化する必要があります。(詳細は割愛)

トランスジェンダーユース
すべてではありませんが、ほとんどのトランスジェンダーの成人は、子供の頃から性同一性の安定性を報告しています。しかし、性多様な思春期前の子供たちのなかには、ゲイ、レズビアン、またはバイセクシャルとして識別し、または性同一性がより明確になってきたときトランスジェンダーとは別にアイデンティティを持つこともあります。思春期前の性多様性の子供のために広く受け入れられている治療プロトコルはありません。臨床医は優先的に(支持的に「成り行きを見守る」アプローチとは対照的に)性同一性の健康的な探索を個別化する肯定的なケア戦略に子供や家族のメンバーの支援に焦点を当てることができます。
これは、トランスジェンダーの若者の発達に精通しているメンタルヘルスの臨床医への紹介を正当化するかもしれません。
トランスジェンダーの思春期の若者は、サポートのための心理療法にアクセスし、性同一性を探索し、性の不一致の社会感情的な側面に適応し、潜在的な治療に対する現実的な期待について話し合うための安全な手段が必要です。
臨床医は回復力を付与することが示されているサポーティブな家族や社会環境を代弁すべきです。いじめや被害にあうサポーティブでない環境は、心理社会的機能と幸福に悪影響をもたらし得ます。
トランスジェンダーの青年は、二次性徴の開始時に苦痛を経験する場合があります。臨床医は、患者が性的成熟のステージ2または3に達したときに思春期を抑制するために、性腺刺激ホルモン放出ホルモン
(GnRH)の開始または適時の紹介を考慮する必要があります。この治療は完全に可逆的であり、将来の肯定は簡単かつ安全にすることができ、性同一の安定性を確保するための時間ができます。ホルモン
治療は、思春期の発症前には保証されません。
GnRHアナログ治療のための同意には利益とリスクに関する情報が含まれるべきである。治療を開始する前に、内因性思春期の進行を必要とする可能性のある不妊治療について患者に紹介する必要があります。
一部の人は、外見(衣服、髪型など)または行動を性同一性と一致させることを好みます。社会的肯定のリスクと利益を比較検討する必要があります。初経後のTransmasculineの若者は、追加の避妊効果を
提供する月経抑制を受けることができます。乳房結合は、乳房組織を隠すために使用される場合がありますが、痛み、皮膚刺激、または皮膚感染を引き起こす可能性があります。
複数の研究が、思春期抑制とその後の性一致ホルモン療法後の心理社会的結果の改善を報告しています。治療の遅れは精神ストレスおよび性関連虐待を増強するかもしれません。
したがって、成り行きを見守るアプローチで性一致ホルモン治療を差し控えることにはリスクがないわけではありません。
トランスジェンダーの人、家族、臨床医向けの追加リソースは、eTable Cに示されています。

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FIGURE 1.
Considerations in the care of transgender and gender-diverse persons in primary care.

【開催日】2019年10月9日(水)

高齢女性における歩数および歩行強度と全死因死亡率との関係

-文献名-
I-Min Lee,MBBS,ScD,Eric J. Shiroma,ScD, Masamitsu Kamada,PhD,et al. Association of Step Volume and Intensity With All-Cause Mortality in older Women. JAMA Intern Med.Published online. May 29,2019.

-要約-
Importance:
1日1万歩を目標に歩くことは健康のために必要だと一般に信じられているが、この歩数は科学的な根拠が限られている。さらに、1日あたりの歩行数にかかわらず、歩行強度がより強い方が健康ベネフィットがあるのかどうかも不明である。
Objective:
1日あたりの歩数および歩行強度と全死因死亡率との関係を研究すること
Design, Setting, and Participants:
この前向きコホート研究には、2011年から2015年までの間で7日間、覚醒時間中に加速度計を装着することに同意したWomen’s Health Studyからの18,289人の米国人女性が参加した。17,708人のがデバイスを装着して返却し、17,466のデバイスからデータが正常にダウンロードされた。このうち、1日10時間以上、4日間以上装着した16,741人のデータが解析に供され、2018年から2019年に解析が行なわれた。
Exposures:
1日当たりの歩数といくつかの歩行強度の尺度(1分間ケイデンスピーク、30分ケイデンスピーク、5分間ケイデンス最大、意図的に歩行した40歩/分以上での歩行時時間)
Main Outcome and Measures:全死因死亡率
Results:
・選択基準を満たした16,474人の女性の平均年齢(SD)は72.0歳(5.7)だった。
・平均歩数は5,499歩/日で、時間割合は0歩/分が51.4%、1-39歩/分が45.5%、40歩/分以上(意図的な歩行)が3.1% だった。
・平均4.3年の追跡期間中に、504人が死亡した。
・各四分位における1日あたり歩数の中央値は、2,718 、4,363、5,905、8,442であった。
・交絡因子を調整後、各四分位の全死因死亡率に関連したハザード比(HR)はそれぞれ、1.00(基準)、0.59(95%CI:0.47-0.75)、0.54(95%CI:0.41-0.72)、0.42(95%CI:0.30-0.60)だった(p<0.01)。
・スプライン解析では、約7500歩/日までは1日当たり平均歩数が増えるにつれてHRが減少したが、それ以上では平坦になった。
・歩行強度については、強度が強いほど死亡率が有意に低かったが、1日あたり歩数を調整後は全ての関連が弱められ、ほとんどが有意ではなくなった。
Limitation
この結果が、より活動的でない集団やもっと活動的な集団にも当てはまるかは明らかでない。

 

【開催日】2019年6月12日(水)

軽度高血圧を有する、心血管リスクの低い患者に対する降圧薬投与の功罪

-文献名-
James P. Sheppard et al. Benefits and Harms of Antihypertensive Treatment in Low-Risk Patients With Mild Hypertension: JAMA Internal medicine. 2018; 178(12): 1626-1634.
-要約-
◎背景
心血管リスクを低い、軽度の高血圧患者の薬物療法を支持するエビデンスには決定的なものが存在しない。以前の論文は有効性を保証するに至っておらず、ガイドラインでも矛盾が指摘されていた。

◎目的
心血管リスクの低い、軽度の高血圧患者における降圧治療が、死亡や心血管疾患のリスクを下げるかを確認すること。

◎研究デザイン
後ろ向きコホート研究。1998年1月から2015年9月までの間に、未治療の軽度の高血圧(未治療下で140-159/90-99mmHg)を有する18歳から74歳までの患者が対象。既に心血管リスクを有しているものは除外し、途中で関心outcomeを発症したものは除外した。
※ 心血管リスクとは、心血管イベントの既往、左室肥大、心房細動、糖尿病、慢性腎臓病、若年での冠動脈疾患の家族歴、である。
Primary Outcomeは全死亡率、Secondary Outcomeは①心血管イベントによる入院もしくは死亡、②癌による死亡(Negative control)、③有害事象(低血圧、失神、徐脈、電解質異常、転倒、急性腎障害)である。

◎結果
▼ 19143人の治療群と未治療群に分け、追跡期間中央値は5.8年であった。降圧治療と死亡率の間に有意な証拠は診られなかった(HR=0.88~1.17)。心血管疾患との関連性にも有意差なし(HR=0.95~1.25)。
一方で、治療群では、低血圧(HR=1.30-2.20)、失神(HR=1.10-1.50)、電解質異常(HR=1.12-2.65)、急性腎障害(HR=1.00-1.88)のリスクと関連性を有した。
▼ 治療群における年齢、血圧、降圧薬の種類と、死亡率もしくは心血管イベントの発生率には有意差なし。

◎考察
▼ 過去、これらのoutcomeについて、(降圧による)有意な差を見いだせなかったとする研究や、ハイリスク群での研究はあったが、それに答える研究となっている。
▼ 新しいACC/AHAガイドラインにおける、低リスク群の軽症高血圧に対して降圧を促すことで、心血管イベントを減少させうるとするサジェストに異議を唱える結果となった。
▼ また、降圧薬の長期投与が各種の有害事象と関連していることにも言及できた。
▼ 一部有害事象は、電子媒体の不充分な記載によるところもありそうで、例えば入院まで至らなかったり主治医に報告がなされなかったりした転倒のイベントは拾えていない。
▼ 医療機関に報告がなされないようなイベントは患者個人が重要だと認識していなかったり、secondary outcomeは診断バイアスがかかっている可能性もある(治療中の患者は有害事象をより報告しやすくなるなど)。
▼ 残余交絡(residual confounders)に伴い、治療群をよりリスクの高い群とみなした可能性は否定できない
▼ propensity scoreを使用したマッチングを行っており、risk factorの記録の際にバイアスが生じている可能性もある
▼ サブグループ解析において、女性における心血管イベントの発生や、ACEi投与と心血管イベントの発生との間に関連性があるかもしれないと示されているが、重要な交互作用が考慮されていない点には注意が必要。
▼ 追跡期間の中央値が5.8年であり、より長く観察を続けた際に、薬剤投与を続けることの利点が示される可能性はある。

◎結論
測定が不可能な交絡による影響がある可能性を考える必要はあるものの、心血管リスクの低い、軽度の高血圧症の患者における治療を支持する結果は得られず、有害事象のリスクが増加しているという結果を得た。心血管リスクの高い患者で施行された試験の結果を、リスクの低い患者に一般化するガイドラインに従う場合、医師は注意すべきであることを示唆している。

(図1) 患者の特性について
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(表2) 結果
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(図1) 各群、イベントごとの発生割合
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(図2) 有害事象の発生割合
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(図3) サブ解析における治療の有効性の評価
JC201906富田5

【開催日】2019年6月12日(水)

日本人糖尿病患者に対する食事療法のエビデンス

-文献名-
Yamada S, Kabeya Y, Noto H. Dietary Approaches for Japanese Patients with Diabetes: A Systematic Review. Nutrients 2018; 10(8): 1080.
-要約-
【背景】
食事療法は糖尿病のマネジメントにおいて重要である。米国糖尿病学会(ADA)では地中海食、dietary approaches to stop hypertension(DASH)、ベジタリアン食、糖質制限食などいくつかの食事療法を推奨している一方で、日本糖尿病学会(JDS)では1965年以来、エネルギー制限食のみを推奨している。JDSガイドラインの食事に関する勧告は86の研究に基づいて報告されているが、そのうち83は日本人の2型糖尿病患者を対象にした研究ではなく、残りの3つもエネルギー制限食の有効性を示した研究ではない。
【目的】
日本人糖尿病患者の管理に対するエネルギー制限食(および炭水化物制限食)の影響を解明する。
【方法】
MEDLINE、EMBASE、JAMASのデータベースから検索
除外基準:(1)外国人データ、(2)非糖尿病患者データ、(3)他の食事療法アプローチ、(4)未発表データ(科学会議でのみ発表された要約を含む)、(5)症例シリーズや症例報告など、評価には不適切な研究
Funnel Plotなし(定量的データ分析は実施していない)
Mindsの勧告に従ってバイアスを評価
Yamada S、Kabeya Yのふたりで評価(意見の相違は議論およびNoto Hへの相談で解決)
【結果】
エネルギー制限食の評価:2つのRCTをレビュー(いずれも糖質制限群V.S.エネルギー制限群、nはそれぞれ24、66)
・エネルギー制限群は糖質制限群より6か月後のHbA1c改善において劣っていた。
・片方のRCTではエネルギー制限群の方が糖質制限群よりもエネルギー摂取量が高く、エネルギー制限の正味の影響は評価不能
糖質制限食の評価:3つのRCTをレビュー(上記2つに加えて、糖質制限群V.S.糖質非制限群、n=15)
・糖質制限群は糖質非制限群に比べて持続血糖モニタリング(CGM)における食後血糖の改善に優れていた。
・糖質制限食は、日本人の2型糖尿病患者における限られたエビデンスによって支持される。
【結語】
①日本人糖尿病患者に対する食事療法のエビデンスはほとんどない
②JDSが推奨するエネルギー制限食は科学的根拠に裏付けられていない → より大規模な試験が必要
③短期間のアプローチでは、糖質制限食はエネルギー制限食より効果的 → より洗練された設計の試験が必要

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【開催日】2019年6月5日(水)

75歳以上の高齢者に対する一次予防目的でのスタチン投与の是非

―文献名―
Rafel Ramos, et al. Statins for primary prevention of cardiovascular events and mortality in old and very old adults with and without type 2 diabetes: retrospective cohort study. BMJ 2018;362:k3359.

―要約―
【背景】
75歳以上の高齢者に対する心血管疾患(CVD)あるいは心血管死の二次予防目的でのスタチン投与は一定確立されている。一方で、75歳以上、とくに85歳以上の高齢者に対する一次予防目的でのスタチン投与はエビデンスが不足している。
【目的】
スタチンが75歳以上の高齢者のCVD発症あるいは全死亡の一次予防に寄与するかどうか評価する。
【方法】
後ろ向きコホート研究
【セッティング】
スペインの大規模データベース「Database of the Catalan primary care system (SIDIAP)」の2006-15年分
【主要アウトカム】
CVD発症と全死亡
【結果】
臨床的にCVDの既往がない46,864名(平均77歳、63%は女性、追跡期間中央値5.6年)が登録された。(Fig.1)
糖尿病がない被検者のスタチン使用によるハザード比は、75-84歳ではCVD発症0.94 (95%CI 0.86-1.04)、全死亡0.98 (0.91-1.05)、85歳以上ではCVD発症0.93 (0.82-1.06)、全死亡率 0.97 (0.90-1.05)だった。糖尿病がある被検者のスタチン使用によるハザード比、75-84歳ではCVD発症0.76 (0.65-0.89)、全死亡0.84 (0.75-0.94)、85歳以上ではCVD発症0.82 (0.53-1.26)、 全死亡1.05 (0.86-1.28)だった。(Table.4)
同様に、年齢によるsplinesを用いた連続スケール効果解析で、糖尿病のない74歳以上の被検者におけるスタチンのCVD発症と全死亡に対する利益欠如を裏付けた。糖尿病がある被検者では、スタチンのCVD発症と全死亡に対する予防効果が示されたが、この効果は85歳以上では実質的に減少し、90歳以上では消失した。(Fig.2)

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【開催日】2019年5月22日(水)