ありのままを物語る:完全ではない医療実践の多様な物語から学ぶ

ー文献名ー
Bearman M, Molloy E, Varpio L. Narrative candour: Learning from diverse stories of imperfect medical practice. Med Educ. 2025;1‐8.

‐要約-
<序論>
医学教育ではストレスやバーンアウトを引き起こすことが多く、研修医の苦悩に寄与する要因となる。この論文では物語理論を基盤に、これまでの「英雄的な医師の神話」と「例外主義の言説」がこれらの苦悩にどのように寄与するかを考察し、「ありのままで率直な」小さな物語を活用することでこれらの神話を相殺し、より協力的で包摂的な教育実践を促進する可能性を提言している。

<理論的枠組み>
従来の「英雄的な医師」の神話は自己犠牲と卓越性を促進しますが、同時に日常の行為や医療チーム全体の貢献を覆い隠しています。医師の多様な役割を評価するためには、より多様な物語が必要かもしれません。代替的な物語(カウンターナラティブを含む)は、日常の臨床教育における支配的な物語に挑み、通常は聞き逃されがちな声を強調することで、新たな視点を提供し、慣習を打破する貴重な洞察をもたらす可能性があります。

<概念化 >
「物語の率直さ」は、実践における理想的でない物語を明らかにすることで学習を促進する教育アプローチとして提示されます。これは、非公式な実践の相互作用、正式なカリキュラム、儀式的な機会において適用可能です。日常の不完全な4つの物語——例えば、医師が主人公ではない瞬間、偉大さのない感動、解決されない問題—は、物語の率直さを現実のものとする手段として提示されます。

これらの物語は四つの機会で伝えられる可能性があります:正式な表彰式(例えば卒業式)でコミュニティのベテランメンバーによって語られる、同輩と共有される、日常の医療提供の非公式な物語に組み込まれる、など。

<結論>
物語の率直さは、医師を複雑で多様な人間として理解し、単なる「例外的な英雄」のステレオタイプを超越するため、個人、関係性、そしてより広いコミュニティに大きな影響を与える可能性がある。

本文抜粋
この論文では教育者にとってどのような種類の代替手段が利用可能かを理解するためにカウンターナラティブというアイデア・概念を用いた。医学教育において、ストーリーテリングは、医療現場の多様で地域に根ざした経験を矛盾した質感のある例証として提供することで、英雄的な医師神話を直接覆すことが可能となる。
これまでも医学教育における物語の力は、すでに広く認識され、医療専門家の物語に焦点を当てることで、ナラティブの力を教育に活用できると提言しきてきたが、私たちは「物語の率直さ」という新しい概念を提案します。これは、人間が等しく共有する不完全さへの共感を育むための手段です。同時に、教育者の物語が実践における不完全さを明らかにすることで、信頼性を失わせる可能性があることにも留意します。

物語の率直さは、個人やコミュニティを形作る可能性のある「小さな物語」の力に支えられた教育技術として概念化されています。 教育と学習の場面で小さな物語がどのように機能するかを考える上で、私たちは知的な率直さというアイデアからインスピレーションを得ています。これは医療現場における小さな物語、つまり理想的とは言えない、不確実で、未解決で、不安定で、おそらくは平凡な物語を明らかにすることだと私たちは考えています。このような小さな物語は、無私の超人を中心とした医療現場の核となる考え方に反します。この教育的アプローチは、創発的で、手探りで、脆弱な思考を明らかにすることに焦点を当てています。

<4つの率直な物語>
5.1 日常の不完全さの物語
小さな失敗の物語を語ることに焦点を当てること。

5.2 医師が脇役として登場する物語
医師は、自らが主人公ではない物語を語ることがあります。主人公が全くいない物語もありますが、代わりにチームが協力してケアを提供する物語もあります。時には、並外れたチーム、つまり全体が個々の部分の総和をはるかに超える特別な仕事関係についての物語を語る価値があるのです。

5.3 偉大さを伴わずに感動を与える物語
日常生活の平凡な瞬間(花を買う、交通をナビゲートするなど)が認識と反省の強力な瞬間となり得る。匿名の人々とささやかながらも力強い瞬間を共有することなど、医師としての日常業務をきちんとこなすことが十分であり、かつ重要であるという物語を共有しています。

5.4 解決のない物語
多くの医師にとって、劇的な解決は日常的な経験ではありません。また医師はしばしば物語の結末を知りません。簡単には終わらない物語を提供することで、私たちは患者の状態がしばしば不明確(曖昧)であり、場合によっては予測不可能(不確定)である臨床診療の現実を反映しています。

<率直な物語を共有する4つの機会>
6.1 卒業式、表彰式、その他同様の公式行事
6.2 上司、メンター、その他の経験豊富な臨床医からの日常の話
6.3 ピア共有フォーラム
6.4 教育シナリオ

< 率直な語りによって何が生まれるのか?>
物語の率直さによって人間の弱さが臨床業務の必要な部分であることを強調し、それによって、特に疎外された人々の恥、罪悪感、燃え尽き症候群を軽減できるのではないかと提案します。また関係性のレベルでは、物語の率直さが信頼を築く可能性を示唆しています。語り手と受け手を人間らしく見せることができ、年上の同僚に対する認識論的権威を変える可能性もあります。最終的には医療の文化的慣行に影響を与えたいということです。学習者は卓越性を目指して例外主義ではなく努力することができ、他の人の成功が自分の失敗ではないことを理解できるようになります。

<制限事項と今後の課題>
今後の研究者は経験的データがほとんどない新たな現象を探求し、モデル化することができる。このアイデアが経験的に研究され、将来の研究を通じて確認、反論、または拡張される可能性がある

<結論>
私たちは、医師の英雄神話と医学教育に蔓延する例外主義の言説に立ち向かう必要があると提言します。物語の率直さは、それらが課す制約を緩和し、同時に、協力、支援、苦闘、そしてありふれた日常業務といった多様な物語を価値あるものにするための余地を生み出すのに役立つと提言します。小さな物語を通して、謙虚さを尊重し、協力的な信頼を築き、そして集団的価値観を変えるという困難な作業を実現できるのではないかと提言します。

【開催日】2025年8月6日

エビデンスを嫌う人たちへの対応を考え直す

‐文献名-
エビデンスを嫌う人たち 科学否定論者は何を考え、どう説得できるのか
リー・マッキンタイア著 西尾義人訳 国書刊行会 2024年5月初版

‐要約-
はじめに
著者は、科学哲学・科学史家で、現在某トン大学哲学・科学史センター研究員。
科学否定論についての本で、そのような人々とのより良い向き合い方について考察している。科学否定論とは科学で広く支持されている事実や証拠、合意を否定する考えを示す。例えば、地球温暖化をはじめとする気候変動は人類の活動のせいではない、ワクチンは有効どころか有害である、などである。また民間療法を信じるあまりに標準治療の効果を否定したり、極端なものになると、地球は球体ではなくただの平面であるという、フラットワース説まである。この本では、一連の科学否定論の否定や論破ではなく、理解することを諦めて「危きに近寄らず」とばかり彼らから遠ざかるわけでもない。その逆に、科学否定論者ひとり一人に会い、共感し、敬意をもって傾聴し、対話し、信頼関係を育む、こうした親身な姿勢が、彼らとのより良い向き合い方へのつながる、というのが主旨である。

科学否定論の5つの共通項
科学否定論の歴史は、20世紀前半にタバコがアメリカ全土へ普及していた。それが1950年台の喫煙と肺がんの因果関係を示す研究が増えはじめ、それに対してタバコ産業界が、巨額の資金をバックにして、喫煙と肺がんの因果関係に疑問を呈するキャンペーンを繰り広げた。キャンペーンの目的は、何もないところに論争を作り出す、ことであった。
1) 証拠のチェリーピッキング:自分に都合良い証拠や文献だけをつまみ食いすること。
2) 陰謀論への傾倒:闇の勢力が世間には秘匿された陰謀を企てていると信じ込むこと。
3) 偽物の専門家への依存:専門家として権威を持つように見せかけつつ、科学的合意と矛盾したことを述べる人物を信  頼すること
4) 非論理的な推論:藁人形論法*や飛躍した結論等の誤った推論のこと
5) 科学への現実離れした期待:科学に「完璧な証明」をもとめ、不確実性がわずかに残る説や合意は信頼すべきではな いと判断すること 
*藁人形論法の例:「温室効果ガスが増加した原因は人間活動だけではない」という意見が、否定論者から出されるが、それに反対する気候科学者はいない。重要なのは温室効果ガスの主な原因が、人間の活動にあるかどうかであって、他の原因の存在が人為的な気候変動に対する反対意見になる、と考えること
このような5つの特徴は、相互に絡み合うことで科学否定論者の信念をより強固なものにしている。

科学否定論者の考えを変えるにはどうしたらいいか
彼らに情報不足や不合理な点を自覚してもらい、彼らの証拠集めや推論方法がいかに不適切であるかを教えればきっとわかってくれるはず、という方法は限界がある。筋金入りの科学否定論者となると、科学の否定が、自分のアイデンティティになっている場合もあり、そのような場合は、自分の主張に不利な証拠に触れることは、これまでの価値観やコミュニティへの帰属意識に脅威をもたらし、より一層、アイデンティティを守ろうとして科学否定にのめり込んでいくこともある。
そこで、まずは彼らに「共感・敬意・傾聴」を示し、信頼関係を構築した後に、それに基づく対話をすることである。質問してみたり、客観的な証拠を見せるなどして、疑いの種をまく。誰がどうやって証拠を提示するか、という視点がポイントである。

【開催日】2025年7月2日

「家庭医療ものがたり、その5」治療的自己を磨く思考法

-文献名-
Ventres, William B., et al. “Storylines of family medicine V: ways of thinking—honing the therapeutic self.” Family Medicine and Community Health 12.Suppl 3 (2024)

-要約-
「ストーリーライン・オブ・ファミリー・メディスン」 は、アメリカや世界の家庭医や医学教育者が解説する家庭 医療のさまざまな側面を、テーマごとにリンクさせた12部構成のエッセイと、それに付随するイラストからなるシリーズである。V:「治療的自己を磨く思考法」では、著者が 以下のセクションを紹介している:
家庭医が、患者のwell-beingを支えるためには、患者との出会いの場(診療現場)を治療手段とする必要があり、以下の3点が必須である。①診療における思いやりとヒューマニズム(人道主義)の重要性を理解すること ②医師-患者間の関係性の場という診療のありようを認識し、観察すること ③単に興味深いやり取りの列挙ではなく、常に注意を払いながら、思慮深く塾考することを通じて、家庭医自身の「治療の引き出し」を向上するため、前述の①②を省察すること
読者がこれらのエッセイを振り返ることで、自らの治療的主体性をより深く感じることができますように。

「行為の中の省察」 以下のことを実践することで、そのスキルを高めることができる(Fig.1)。

患者を世界で最も大切な人であるか のようにケアする意図を持つ。
診察中、患者の感情、言葉、非言語的コミュニケーションを常に意識する。
個人的な考え、感情的な反応、身体的な反応に注意する。
診療を終了し、他の要求に移ろうと思っているときでも、思い込みや偏見、先入観がないかチェックする。
来院の流れを管理し、患者の懸念や見解を引き出し、必要な情報を収集し、 適切な検査を行い、 時間を管理し、その他の重要な仕事に取り組む 。
患者や自分ではどうすることもできない状況、リソース、事情に注意しながら、患者に何を勧めるかを評価し、見極め、交渉し、説明する。

患者や医師が経験する感情は、臨床的な気づきを高めたり、損なったりするものであることを認識することが重要である。目標は患者の感情を無視することでも、自分の感情を抑制することでもない。むしろ、診察室に流れる感情の流れを認識し、認め、好奇心を持つことで、そして同時に、それらと強く同一視しすぎないことで、医師は否定的な感情を和らげ、落ち着かせ、空間を開き、共感と思いやりの表現を促進することができる.

「薬物としての医師-バリント・ グループ」 患者との感情的に困難な出会いを振り返るピア主導のグループディスカッション ある臨床医が、悩みの種である患者の症例を、現実には悩みの種である患者との関係を、グループの仲間に提示する。グループは定期的に会合を開き、1人か2人のグループリーダーが、症例提示に対する感情的な反応を明確にするようグループメンバーに促しながら、続くディスカッ ションを導く。グループメンバー間の信頼が深ま るにつれて、しばしば人間的な関心の深い部分が浮かび上がってくる。

「思いやりの醸成」心理学的には、医療において思いやりを持つということは、(1)病気と苦しみのつながりを理解すること、(2)個々の患者や集団の苦しみを認識することを意味する。
「医師としてヒューマニステックなアプローチ」家庭医学の教育と実践に人文科学を取り入れることは、様々な形で可能である。文学、演劇、詩 、オペラ、映画、そして音楽でさえも、人生の困難に直面したときの個人的価値観の考察を促すのに役立つ。23–26物語、つまり個人的な語りは、感情豊かな議論や倫理的推論の出発点として役立つ。 27芸術は、そのあらゆる感覚的な形態において、 感情と想像力の両方を刺激することができ、内省と対話を通して、意識を研ぎ澄まし、共感を高め、患者ケアの感情的側面と認知的側面をひとつの賢明な治療プロセスを促進することができる。

「家庭医療における親密さ」家庭医療の仕事は、しばしば親密なものである。なぜか?患者とともに働くということは、精神的な親密さ、希望、そして必然的に喪失を意味するからである。
例)コロナ禍でのオンライン診療をしていたリンパ腫で治療していた80歳男性。妻が膵臓癌でホスピスに入院して独居となり喪失体験を抱えていた。その後、対面診療となり、直接接することができて両者で喜んだが、男性患者は喪失体験を抱えたまま自宅で突然死した。家庭医は死亡診断書に、死因不明と書く前に、本当の死因は妻の喪失、だったのでは、と省察した。また患者が亡くなる度に、家庭医はさまざまな感情でいっぱいになるが、亡き患者たちの主治医になれたことに感謝している。

「苦しみのさまざまな顔」 医学の最大の目的は苦しみを和らげることである。患者の苦しみを認識することで、私たちはケ アと希望を提供することができる。それは治療への希望であることもあるが、症状のコントロール 、苦痛の緩和、精神的なサポートへの希望であることもある。苦しみを理解することで、私たちは患者が意味を再発見し、受容を獲得し、全体性を再構築するのをよりよく助けることができる。

苦しみは、生活のあらゆる領域、あるいは複数 の領域に現れる。それは、(1)厄介な症状、(2)機 能の喪失、(3)役割や(4)人間関係への脅威、(5)苦 悩に満ちた思考や(6)感情、(7)患者のライフストーリーの物語の混乱、(8)患者の精神的あるいは知的な世界観との葛藤などから生じる。これらの苦しみの8つの領域は、臨床ケア、教育、研究のために、生物医学的、社会文化的、心理行動学的、 実存的という4つの軸で整理することができる。この包括的なモデルは、調査を整理するのに役立つ。臨床医にとっては、「システムのレビュー」で はなく、より深い「苦しみのレビュー」として役立つ。
「苦しみを乗り越える」 医学の基本的な目標は、可能な限り治療し、常に慰め、苦しみを和らげ、患者を癒すことである。治癒に関する生物医学的な議論の大半は、組織の修復と病気の診断、治療、治癒に焦点を当てている 。病気とは病気以上のものであり、理解とは診断以上のものであり、ケアとは治療以上のものであ る。 ナラティヴ・メディスンのスキルを用いれば、患者が自分の物語を編集し、人生に新たな意味を見出し、受容を見出し、全体性の感覚を再構築できるよう、対話を導くことができる. このように患者をケアすることは困難なことである。しかし、患者の重病体験を探求し、彼らの心の傷の物語を編集する手助けをする医師は、しばしばこのケアが自分のキャリアの中で最も充実した仕事であることを発見する。
「物語を聴くことの力」 家庭医が、語りを聞き、語ることは、患者から 患者へと奔走し、人々の苦しみや喜びを目の当たりにする中で、普段は処理できない感情を解放するのに役立つ。それは、家庭医自身を「なぜ」、つまり私の診療の目的に根付かせ続ける治療的プロセスであり 、私自身の職業上の物語における本当の主役が誰であるか(もちろん、患者である)を常に思い出させてくれる。

【開催日】2024年7月10日

医師の燃え尽きと、キャリアエンゲージメント、患者ケアの質との関係

―文献名―
Associations of physician burnout with career engagement and quality of patient care: systematic review and meta-analysis
BMJ 2022;378:e070442 | doi: 10.1136/bmj-2022-070442

―要約-
Introduction
・ バーンアウトはemotional exhaustion(感情的疲労), depersonalization(脱人格化), a sense of reduced personal accomplishment(個人的達成感の低下の感覚)の3要素を含む症候群
・ USでは10人中4人の医師がバーンアウトの症状を1つ以上有すると言われ、UKでは1/3の研修医が高いレベルでバーンアウトを経験しているという
・ 医師は、他の医療従事者を含む他の労働者よりもバーンアウトを経験する可能性が2倍高いとの報告も
・ Covid-19パンデミック下でそれらは更に広がったとも言われている
・ バーンアウトした医師はワークライフバランスが悪く、キャリアの満足度が低いことは指摘されていたが、キャリアエンゲージメントとの関連は未検討であった
・ また、医療従事者のバーンアウトが患者ケアの質の低下につながることは指摘されていたが、対象の異質性が高かった
・ バーンアウトとキャリアエンゲージメント、患者ケアの質の関連を調べることは、医療期間の効率性の側面からも重要であり、ひいては行政・政策立案期間がバーンアウトに度の程度資本を投入するかの判断にも重要である

Method

・ 登録されたプロトコル(Reporting Checklist Observational Studies (MOOSE))にしたがってシステマティックレビューを実施
・ Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses (PRISMA) guidanceに準拠
・ あらゆるセッティングにおいて働く医師を含んだ定量的観察研究を対象とした
・ バーンアウトと、キャリアエンゲージメント(仕事満足度、キャリア選択後悔、離職意思、プレゼンティズム(疾病就業=心身の不調を持ったまま出勤すること)や欠勤で示される生産性の低下、キャリア開発)の関連を報告した
・ さらに、バーンアウトと患者ケアのアウトカムの質(投薬エラーを含む患者安全インシデント、確立した定義に基づく低いプロフェッショナリズムによる最適ではない患者ケア、患者満足度)の関連についても検討した
・ データベース開設から2021年5月までのMedline、PsycINFO、Embase、CINAHLを検索し、英語の引用文献を調べた。
・ 各研究のStudy characteristics、physician characteristics、バーンアウト(測定項目)、報告方法を含むアウトカム指標に関するデータを抽出。The outcomes of interestは総合的なバーンアウトと感情的疲労、脱人格化、個人的達成感を含むバーンアウトの3つの尺度のいずれかについて評価されたものであった
・ 総合的なバーンアウトのスコアが報告されていない場合は、3つの解釈度のスコアをプールすることでburn outを算出した
・ ログオッズをプールしながらDerSimonian-Lairdランダム効果を使用し、これらの結果を指数化してオッズ比とし、フォレストプロットでデータを表示した。10以上の研究を含むメタアナリシスでは、出版バイアスを評価するためにファネルプロットとEggerのテストを用い、異質性の量を表すために、予測区間を算出した。
・ その後地域、セッティング、デザイン、年齢、性、専門分野、バーンアウト尺度等の変数を用いてメタ回帰を行った。
Results

・ 239,246名のphysicianを含む170のstudyが適格基準を満たした。
【Study characteristics】
・ 170の研究の内77件(45%)が米国、48件(28%)が欧州
・ 107件(63%)は病院を拠点、プライマリ・ケアのセッティングは29件(17%)
・ 研究全体の医師数の中央値は312人、年齢中央値は42歳、112件(66%)の研究ではほとんどが男性医師であった

・ 医師の専門は、42(25%)が様々なspecialtyの混合、32(19%)が内科、21(12%)が外科(外傷、形成、神経外科)、19(11%)が救急・集中治療、11(6%)が一般開業医、8(5%)がインターンまたは研修医
・ 最も一般的なburn outの測定法は、22項目のMaslach Burnout Inventory完全版であった

【Meta- analysis of association of burnout with career engagement and quality of patient care】
<キャリアエンゲージメント>
・ 仕事満足度:burn outは、満足している場合と比較し、満足度低下と約4倍(3.79, 95%信頼区間3.24~4.43, I2 =97%, k=73 study, n=146,980 physicians) 関連していた(=burn outを有すると、満足度低下する可能性(リスク)が3倍高い)
・ キャリア選択後悔:burn outは、キャリア選択への満足と比較して、その後悔と約3倍関連(3.49, 2.43~ 5.00, I2 =97%, k=16,n=33,871 )
・ 離職意志:バーンアウトは、現在の職にとどまる意向と比較して、離職意向と3倍の増加と関連(3.10, 2.30 to 4.17, I2 =97%, k=25, n=32,271, figure3)
・ 生産性の低下:バーンアウトは、生産性の持続と比較して、小さいながらも有意な生産性の低下と関連(1.82, 1.08~3.07, I2 =83%, k=7, n=9,581)
・ キャリア開発:2つの研究だけが、良いキャリア開発と比較して、全体的なバーンアウトとキャリア開発の懸念との間に有意なプールされた関連を報告した(3.77, 2.77 to 5.14, I2 =0%, k=2, n=3,411)
<患者ケア>
・ 患者安全インシデント:バーンアウトは、患者安全インシデントを起こさない場合と比較して、患者安全インシデントのリスクが2倍になることと関連していた(オッズ比 2.04, 95%信頼区間 1.69 to 2.45, I2=87%, k=35, n=41 059; figure 5)
・ プロフェッショナリズム:バーンアウトは、プロフェッショナリズムの維持と比較して、プロフェッショナリズムの2 倍以上の低下と関連していた(2.33, 1.96~2.70, I2 =96%, k=40,n=32,321)
・ 患者満足度:バーンアウトは、患者満足度の最大3倍の低下と関連していた(2.22, 1.38~3.57, I2 =75%, k=8,n=1,002)

<メタ回帰>
・ 単変量回帰の結果、全体的なバーンアウトと低い仕事満足度との関連は、プライマリケアセッティングと比較して病院勤務医(1.88,0.91~3.86,P=0.09)、より具体的には一般内科と比較して救急医療と集中治療(2.16,0.98~4.76,P=0.06)、31~50歳の人と比較して50歳以上の医師でより強い関連が見られた(2.41, 1.02~5.64, P=0.04 )。この関連は、開業医で最も弱かった(0.16、 0.03~0.88、 P=0.04)。 しかし、これらの関連は多変量回帰では有意性を保てなかった
・ 単変量回帰の結果、バーンアウトと患者安全インシデントの関連は、若い医師(20~30歳、1.88、1.07~ 3.29、P=0.03)、救急や集中治療の現場で働く医師(2.10、1.09~3.56、P=0.02)または研修中の医師で大きいことが判明した
・ バーンアウトとキャリア選択の後悔との 関連を単変量回帰で調べた結果、救急医療・集中治療を専門とする医師(2.89, 0.97~14.89, P=0.10)、神経内科(2.52, 0.82~7.80, P=0.10)で最も大きいことが判明した

※参考:22項目のMaslach Burnout Inventory完全版の測定項目

(https://www.researchgate.net/figure/Maslach-Burnout-Inventory-Item-Stems-and-Frequency-With-Which-Items-Load-on-Expected_tbl1_200010233)

Discussion
<研究の限界>
・ 対象国や性別の多様性の少なさ
・ アウトカムの定義にばらつきがあったためか、患者安全、プロフェッショナリズム、仕事への満足度など、いくつかのアウトカムで大きな異質性が見られた
・ これらのアウトカムを評価するために使用されたツールやアンケートはかなりばらつきがあり、このばらつきによって意味のあるサブグループ分析や感度分析を行うことはできなかった
・ 最大限データの標準化を行ったものの、集計データのばらつきによって、プールされた効果量にある程度の不正確さが存在する可能性はある
・ メタ回帰においては、医師の専門領域など、一部のグループでは参加者が少なかった

【開催日】2023年3月8日(水)

家庭医のストレス対処法

-文献名-
J. LeBron McBride. Making Family Practice Doable in Everyday Life. Fam Pract Manag. 2003 Apr;10(4):41-44.

-要約-
Healerであろうとする者は、感情的にも肉体的にも霊的にも仕事のストレスに傷つき潰されることがあり得る。
怒った患者・managed careの否認・Medicareのaudit・日々の業務で求められる事…これらは家庭医療の実践を難しいと思わせるストレッサーとなる。しかし、あなた自身の内面に取り組むことによって、あなたの人生をよりよいものに出来る。次の10項目は、実現するのはたやすくはないが、個人的かつ職業的に大きな恩恵をもたらす可能性がある。

1. 「デッドゾーン」を復活させる
 生きていくために、自分自身の一部(感情・情熱・他人との関係性など)をシャットダウンしている、
 つまり「デッドゾーン」を作り出している場合がある
 →可能な介入:
  あなたの人生のpositiveな経験を積極的に思い出そう
   ・何がその経験をpositiveにさせたのか?
   ・何がその経験を可能にしたのか?
   ・今現在、その類の経験へのバリアはあるか?

2. 「呼び声(calling:天職??)」を取り戻す
 プラトーは、個々人はそれぞれ特別な呼び声と共にこの世界にやってきたと考えた
 家庭医として、自分の仕事を満足いくものにしたいなら、自分自身の呼び声を見つける,または再発見する必要がある
 →可能な介入
  なぜあなたが医療を行おうと考えたかを振り返ろう
  ・この分野を追求しようとあなたを駆り立てたのは何か?
  ・あなたが患者の人生によい影響をもたらしたことを、患者が伝えてくれた時のことを考えよう
  ・患者からの感謝の言葉やカードを読み直そう、または、彼らのpositiveな物語を集め始めよう

3. 意味を振り返る
 個々人の精神衛生は、態度や人生哲学や人生における意味に基づいている。
 あなたの人生や仕事の意味を振り返る時間を持つことは重要である
 →可能な介入
   医療がとてもストレスフルな時、その意味についてあなたは人生の他のどの領域を考えるか?
   このような関与は、あなたが人生の他の難しい領域との直面を要する意味や目的をあなたに与えてくれ得る

4. 「超越」を思い出す
 単調な日々や時折起こる危機を超越していく必要がある
 (乗り)超えていく人生はあなたが生き残る手助けとなる
 ある人にとっては「超越」とは霊的なことであったり、
 またある人にとっては普通の出来事から普通でないことに気づいたりユーモアを見出したりすることであったりする
 →可能な介入
  ・あなたの人生の信仰面や精神面へ体系(構成?)を与え得る宗教団体はあるか?
  ・神や大きな力や医師として仕事をする際の影響力を感じたのはいつか?
  ・普通の出来事が普通でない意味をもつことを日々振り返る
  ・冗談や漫画やユーモラスな人生経験を集め、職場の同僚と共有しよう

5. 焦点を取り戻す
 あなたがmanaged careや他のストレッサ―の気晴らしに焦点を当てる際は、家庭医療の美しい部分を見つけるためだけに家庭医療を振り返るだろうが、それでは焦点がぼやける
 家庭医には「contact zone」と呼ばれるものが必要
 「contact zone」は、医師と患者がやり取りや交渉を行う神聖な空間である
 →可能な介入
  ・数人の患者を選び、その患者と「contact zone」を創造する計画を立てよう
  ・彼らの医療以外の側面について関心を寄せるよう努力しよう

6. 避難場所を探す
 医療外で避難場所や聖域を見出すのは重要である
 自然の中や教会・寺院・モスクなどより儀礼的な場でそれを見出すかもしれない
 どこであろうと、その場所はあなたが人生の異なる声を聴くに足る期間、あなたの精神を鎮めることを許すべきである
 →可能な介入
  ・自然保護区を散歩し、草木や地形の詳細に焦点を当てよう

7. 規律を更新する
 多くの医師は、患者には生活習慣の改善を求めたりするが、自身の生活の中ではその規律を実践しない
 しかし他の人々と同様、あなたも健康的な習慣を必要としている。ストレスがあるならなおさらそうである
 →可能な介入
  あなたがあなた自身の医師であれば、あなた自身に対してどんな生活習慣改善が必要と伝えるか?
 
8. 忍耐を強化する
 抑圧された願望を満たそうと多額の債務に陥った研修医が散見される
 経済面も含め、人生は一歩ずつであることを肝に銘じておく必要がある。進歩は小さな一歩から始まる
 →可能な介入
  ・医学以外のものを呼んだり、1日15分だけでもリラックスしたりしよう
   あなたは職業人として、また個人としてより忍耐強くなる自分自身に気づくだろう

9. 反応性を減らす
 ストレッサーに対して反応的(反発的?)にでなく積極的に取り組むべきである
 反応的になると、防御的な立ち位置となり、機能不全の反応を起こし得る(不安・怒り・物質乱用・自殺…など)
 →可能な介入
  あなたを怒りや反応性をよりpositiveな方向へ導いてくれるカウンセラーと面談しよう

10. 自己認識を回復する
 医師が自分自身を癒すためには、まず自分自身を知ることが必要である
 →可能な介入
  もしあなたがあなた自身に苦労するなら、信頼できる友人とそれを少しずつ共有しよう

-考察とディスカッション-
家庭医のストレス対処についての10の項目でした

皆さんが
 ①仕事上のストレスを対処するときに気を付けていること、
 ②家庭医を続けていくために工夫していること

はどんなことでしょうか?

【開催日】
 2016年7月6日(水)

医師の服装の重要性

―文献名―
Hiroshi Kurihara,  Takami Maeno, and Tetsuhiro Maeno.Importance of physicians’ attire: factors influencing the impression it makes on patients, a cross-sectional study.Asia Pac Fam Med. 2014; 13(1): 2.Published online Jan 8, 2014. doi:  10.1186/1447-056X-13-2

―要約―
【目的 】
患者さんに信頼感を抱かせる医師の服装の重要性を、患者像・好み・服装が印象に影響を与える要素を通して明らかにする。

【方法】
自己記入する質問票を、日本内の5か所の薬局において20歳以上の患者さんまたは介護者に配布し実施。調査は2日間連続で各薬局で行った。医師に対する信頼感を見積もるために、6項目、すなわち医師の服装・発言(話し方・音量・トーンなど)・年齢・性別・肩書き(教授・PhDなど)・評判を質問した。そして参加者に、男女の医師における5つの異なるタイプの服装(白衣・スクラブ・semiformal・smart casual・casual)の写真を提示し、5点のリッカートスケールを用いて各服装の妥当性を質問された。

【結果】
薬局へ来た1,411人の患者さんまたは介護者のうち、530人が質問に回答し、491人が全てに解答しその後の分析に利用された。発言は医師への信頼感を決定する最も重要な因子(平均点 4.60)であり、評判(4.06)・服装(4.00)がそれに続いた。
服装に関しては、医師の性別に関わらず、白衣は最も妥当なスタイルと判断され、スクラブがそれに続いた。スクラブに対する好みのみが年齢・性別・地域に有意に影響された(P<0.05)。二項ロジスティック回帰分析を用いて、我々はスクラブの妥当性の高低における年齢の影響を評価した(高:スケール 3-5点, 低 1-2点)。20-34歳と比較し50-64歳と65歳以上の年齢でスクラブが妥当でないと答えた人が優位に多かった(調整オッズ比:男性医師 4.30と12.7, 女性医師 3.66と6.91)。

【考察】
服装は医師に対する患者さんの信頼感を抱かせる重要な因子の一つである。白衣は医師にとって最も妥当な服装と考えられ、スクラブがそれに続く。しかし、年齢層の高い方は、低い方と比較してスクラブはより妥当でないと感じる傾向にある。

【開催日】
2014年10月8日(水)

ソーシャルメディアにおける医療者のプロフェッショナリズム

- 文献名 -
 Jeanne M. Farnan, MD et al: Online Medical Professionalism: Patient and Public Relationships: Policy Statement From the American College of Physicians and the Federation of State Medical Boards. Ann Intern Med. 2013;158(8):620-627.

- この文献を選んだ背景 -
 最近世間のSNSなどの利用度が急激に増し、自分自身も時に利用することもある。
便利な反面、怖さもあるこのようなツールに対して米国から医師に対する指針が発表されたため、参考になればと思い紹介したい。

- 要約 -
 
【背景】
 Web上でのコミュニケーションツールのイノベーションはここ数年でめまぐるしい。一方で医師がどう使用するかということに対するポリシーやガイダンスはほとんどない。この文献はオンライン上での医療倫理とプロフェッショナリズムを考える上での枠組みを提案するものである。

【方法】
 この指針は米国内科学会American College of Physicians (ACP) と米国州医事評議会連合Federation of State Medical Boards (FSMB)によって作成されたものである。2011年5月~2012年10月に検討された。その後外部の査読などを加え作成されたものである。

【Positions】

① オンラインメディアを用いることは患者、医師にとって非常に教育的な利点をもたらしうる。しかし、倫理的な問題も生じうる。プロとしての、患者医師関係における信頼を維持するには関係性、信頼、プライバシー、そして人に対する尊敬の念を一貫して守ることが求められる。
 ・facebookなどでの現在、もしくは過去の患者とのやり取りはすべきではない。

② プロフェッショナルとしての立場と個人としての立場に分ける境界が不鮮明となりがち。常に2つの立場を意識し、それぞれしっかりと振る舞うべきである。
・”pause-before-posting” どう受け止められるか考えるように。
 ・研修医、学生、他のスタッフらとの関係にまで言及。関係性があいまいになりうるので注意が必要。
 ・ACPとFSMBはEメールでの患者とのやり取りは支持しない。

③ Eメールや他のコミュニケーションツールは、患者の同意を得た上で患者医師関係を構築するために医師としてのみ用いるべきである。患者ケアについてのやり取りはカルテに記載すべき。
 ・関係性ができていない患者とのEメールのやり取りはすべきではない。
 ・直接会って話をすることを補うに過ぎない。

④ 医師ランキングサイトや他の情報源などにおいて自分自身に対する利用可能な情報の正確性を定期的に評価するべきである。(self-auditing)

⑤ インターネット上のコミュニケーションは長きにわたり、時には永遠に残るものである。自分自身の医師人生において将来にわたり影響しうるものであることを認識すべきである。

【まとめ】
 今後もこのようなソーシャルメディアは変化していくであろう。今回の指針はスタートに過ぎず、今後も修正や時代への適応が必要である。医師にはそれらがどのような影響を持ちうるかを事前評価すべきであり、またそれらに対しての知識も持つ必要がある。

- 考察とディスカッション -
 専門職ゆえ、我々が与える影響力は、想像していた以上に大きいと感じた。
 様々な職種や患者との関係性がぼやけたり、医師と個人の立場が不明瞭になったりと使い方を間違うと非常に怖いツールであることも再認識できた。
 ただし、関係性がしっかりとできている間柄であれば、うまく使うとケアの質向上にも寄与しうる側面もあるようだ。 また、家庭医は特に患者や家族との関係性が濃密になりやすく、さらには地域に住んでいるとプライバシーの境界の不鮮明さも増す。しっかりとした患者との関係性を構築し、その上での適正な使用をすべきと再認識した。それができないようであれば、無理に使うことなく、基本的に医師としてのみの使用に徹するという考え方もあるように思えた。

開催日:平成25年8月7日

プロフェッショナリズム教育の効果

- 文献名 -
 Discovering professionalism through guided reflection
 Medical Teacher, Vol. 28, No. 1, 2006, pp. e25-e31
 PATSY STARK, CHRIS ROBERTS, DAVID NEWBLE & NIGEL BAX
 Northern General Hospital, Sheffield, UK

- 要約 -
[Intorduciton]  

There is increasing evidence (Sox, 2002; Papadakis et al., 2004; ABIM, 2003) that unsatisfactory performance in practice is more likely to be due to unprofessional behaviour, rather than knowledge or clinical skills. At the University of Sheffield, such an opportunity for reflection on professional behaviours arose in the Intensive Clinical Experience (ICE) within the first year of the course.

We validated our professional behaviours outcomes by mapping them against the principles of Duties of a Doctor (GMC, 2001) (Figure 1).

Figure 1. Duties of a Doctor (from Good Medical Practice GMC, 2001).

・Make the care of your patient your first concern;
・Treat every patient politely and considerately;
・Respect patients’ dignity and privacy;
・Listen to patients and respect their views;
・Give patients information in a way they can understand;
・Respect the right of patients to be fully involved in decisions about their care;
・Keep your professional knowledge and skills up to date;
・Recognize the limits of your professional competence;
・Be honest and trustworthy;
・Respect and protect confidential information;
・Make sure that your personal beliefs do not prejudice you patients’ care;
・Act quickly to protect patients from risk if you have good reason to believe that you or a colleague may not be fit to practice;
・Avoid abusing your position as a doctor;
・Work with colleagues in the ways that best serve patients’ interests

Within the postgraduate arena, the tenets of Good Medical Practice have been used to create a multi-source feedback tool to assess a range of generic skills, which cover aspects of professionalism in the workplace (Archer et al., 2005). We wished to use the portfolio approach with the purpose of marshalling evidence about the progress of students towards the specific professionalism outcomes of our course (Challis, 1999). 

[Method] 

This study aimed to discover the educational impact, validity, and feasibility of the critical incident as an assessment method for a class of students undertaking guided reflection in the context of their first exposure to health and social care professionals at work.

The ‘guided reflection’ method (Johns, 1994; Wilkinson, 1999) was adapted to prepare students to engage in reflective practice (Figure 2). We defined a ‘critical incident’ (Flanaghan, 1953) as any event that challenged them within the context of Duties of a Doctor.

Figure 2. The guided reflection template showing the steps the students had to follow.
1. List the Duties of the Doctor (as listed in Good Medical Practice) to which your incident related
2. Describe the incident in your own words
3. Illustrate the ways in which the incident challenged your values, beliefs or understanding.
4. Describe which learning resources you used to increase your understanding of the issues you described. Which were useful and which were not?
5. Describe how the situation may have been handled differently.
6. What did you learn personally from this incident?
7. What future learning do you plan to do around this incident?

[Outcome measures]

We used two outcome measures to provide data for our study. These were: (1) The quality of student reflections. (2) Student evaluation of ICE (the Intensive Clinical Experience).

[Qualitative data analysis]

A content analysis using a constant comparative approach was used to provide a basis from which a conceptual framework could emerge in relation to our research questions. Validity was assured by iterative consideration of the emerging explanations for the data. The number of times each code was evidenced in the full data set (Table 1) is given.

[Results]

The reflections were analysed and 40 codes assigned. The codes were merged into 11 sub-themes (Table 2) and from those, five themes were identified: communication; professionalism; team working; organisation of care; and student learning issues. Professionalism encompassed the greatest number of sub-themes and included reflections on the behaviour, professionalism and the quality of care given by all three professional groups. The most frequent code was ‘dignity, autonomy and patients’beliefs'(n=30).

[Discussion]

Guided reflection has a valuable educational impact on our students in the exploration of professionalism in a real work-based multi-professional setting. Reflecting on critical incidents encouraged students to understand and analyse professionalism, and recognize what it means to be a professional in the context of Duties of a Doctor.

Table 1. Frequency of codes.
—————————————-
Codes /Number of times evidenced
Dr positive communication /76
Dr negative communication /61
Teamwork positive /44
NHS/Social Services resources /33
Patient beliefs/autonomy/dignity resources /30
Dr/senior student limit of competence /12
Social Services respect /12
Social Services positive care /12
Confidentiality negative /12
Dr negative professionalism/quality of care /11
Nurse positive communication /10
Nurse negative care/behaviour/knowledge /10
Nurses positive care/behaviour /9
Respect (all professions) for patients & students negative /9
Student overcoming/acknowledging prejudice /9
Hospital negative communication /8
Dr interest of patient positive /8
Dr interest of patient negative /7
Dr positive professionalism/quality of care /7
Respect (all professions) for patients & students positive / 7
Patient or family decision? / 7
IP communication / 6
Culture/religion /6
Nurse negative communication / 5
Social Services negative communication / 5
Social Services negative care / 4
Racism / 4
Teamwork negative / 3
Power of doctors / 3
Students positive communication / 3
Dr positive behaviour / 2
Social Services ethics / 2
Student unease / 2
Institutional prejudice / 2
Social Services positive communication / 1
Dr up to date / 1
Communication problems language / 1
Student coping with death / 1
Sexism / 1
Student too much responsibility / 1
—————————————-

Table 2. Sub-themes.
—————————————-
Communication
Teamwork
Resources
Beliefs
Autonomy
Respect
Care
Competence
Confidentiality
Behaviour
Prejudice
—————————————-

Professionalism has been defined as: ’the extended set of responsibilities that include the respectful, sensitive focus on individual patient needs that transcends the physician’s self-interest,the understanding and use of the cultural dimension in clinical care, the support of colleagues, and the sustained commitment to the broader, societal goals of medicine as a profession’ (Hatem, 2003).

 The learning objectives of ICE were:

. To encourage students to develop effective communication skills with patients/clients
. To enable students to meet, talk with and question professionals involved in health and social care
. To reinforce the Professional Ethical Code for Medical Students (University of Sheffield)
. To understand the Duties of a Doctor
. To enable students to reflect on experiences gained in ICE

開催日:2012年12月12日

人にかかわる営みの本質―自分自身をどう整えるか

【文献名】

「心理療法における支持」 青木省三 塚本千秋編著 日本評論社 2005年

【背景】

元々、心理療法やカウンセリングの基本姿勢である支持療法については関心があった。たまたま今回、第8回笑い療法士発表会の特別講演として「人にかかわる営みの本質―自分自身をどう整えるか(日本臨床心理士会会長 村瀬嘉代子先生)」のプログラムがあり自己研修として聴講した。臨床医の姿勢として更なるヒントを得るため上記を読んだため共有する。

【要約】

人は誰しも自分の存在を受け入れられ、自分の素質に相応して自己を発揮し、主体的かつ自律的でありたいと、願う。この願いが満たされることは人として尊厳を保つ上で不可欠のものであろう。心理的援助を受ける際にも、可能な限り患者の自尊心が護られるようでありたい。その意味で、患者を温かく受容し、不安や緊張、恐怖などを取り除く際に、その苦悩に関心をよせ共感を抱きつつ「支持」することは、適用対象を選ぶことなく、心理療法的アプローチの普遍的・本質的な特性である。ところで言葉で規定することは容易であるが、いかに「支持」するか、その仕方は対象者の個別的特徴によってきわめて多様であること、さらに心理的援助関係とは、治療者の側が自分の営為は治療だ、支持的だと考えることが、相手によっても同様に受け取られなければならないという事情がある。
支持療法とは…(新版精神医学辞典より)支持的精神療法とも呼ばれ、一般的には患者の無意識的葛藤やパーソナリティの問題には深く立ち入らないことを原則とし、患者を情緒的に支持しながら援助し安定した信頼関係にもとづき、自我機能を強化するとともに本来の適応能力を回復させ現実状況への最適応を促す治療法である。したがって支持療法は、歪んだ自我の防衛機制や無意識的葛藤、パーソナリティの再統合を図る精神分析療法に代表されるような洞察療法に対比される精神療法である。つまり、これは人のこころの真相に触れることに畏れを知る謙虚さを基底とした「とりあえず現実的に対処する臨床の知と技」といえよう。しかし現実のケースでは、支持的なアプローチによって患者が自発的に自己の内面へ洞察が生じることがしばしば経験され、両精神療法は重複する部分がかなりある。

―心理療法が支持的でありえるための条件―

①患者の人格を認める、自尊心を大切にする
 社会の中で関係性と歴史をもった全体性のある存在として出会う。対等に人として遇する。

②人間の潜在可能性に注目する
 病気や病理、問題行動ばかりではなくて。

③的確な見立て
 治療者の視点から見るアセスメントに加えて、患者自身が自分や外界をどのように捉え体験しているか、本人が望んでいる方向に留意する。
④治療者にのぞまれる資質
 自分の内面に生起する考えや感情を善きことも悪しきことも素直に自覚する。あらゆることに開かれ、こころの窓を多く持つ。

⑤治療的距離
 治療者は治療過程のそれぞれの節目の特徴に応じて様々な距離でクライエントとかかわることになる。いずれの局面においても、治療者・クライエント関係はベッタリ浅く親しい関係ではなく、的確な理解に裏打ちされた信頼関係でありたいこの自分の治療的距離をいかに把握するか。これは治療の過程途上、共感と観察という二つの矛盾した態度を同時にとること、自分の半身を相手と感情を道具にしながら交流させ、他の半分は醒めた状態でこの交流の諸相を捉えていなければならない。

⑥治療者の自己覚知と言葉
 さりげない一言がインパクトをもって患者に伝わり支えとなることがある。一方、良かれと考えた治療者の言動が相手に届かずに霧散してしまうことや、相手を傷つけてしまうことがある。治療者は自分の用いる言葉の内包している意味を生き生きと具体的に思い描けるよう自分の言葉にしているであろうか。その言葉の意味を一度自分の体の中をくぐり抜けさせるような追体験してそして再度その言葉の意味を突き放して考えてみる、という過程をへて自分の言葉にすることが望まれる。平易な表現だけれども意味する内容は的確で深い、そして無理がない、そういう表現を目指していくことが求められよう。
治療者のこころの深さ、言い換えると治療者が自分を正直に洞察し、自分の課題を引き受けようとしている、その程度に応じて、相手のこころがわかるのであろう。

【開催日】2012年3月7日

ソーシャルメディアのリスクマネージメントをどうしていますか?

【文献名】

Moubarak G, Guiot A, Benhamou Y, et al. Facebook activitiy of residents and fellows and its impact on the doctor-patients relationship. J Med Ethics 2011;37: 101-104



【要約】

<目的>

FacebookがSNSとして人気を博している。研修医とフェローのFacebookの活動と、医師患者関係におけるFacebookのインパクトに関する意見について記述することを目的とする。



<方法>

2009年10月にフランスのルーアン大学病院の405名のレジデントとフェローに匿名の質問票をメールで送った。



<結果>


202名(50%)の参加者から返答が得られた。147名(73%)がFacebookのProfileを持っていた。その解答者の中で138人(99%)がプロフィールに実名を表示しており、136人(97%)が誕生日を表示、128名(91%)が個人的な写真を表示、83名(59%)が現在の大学、76名(55%)が現在の立場を表示していた。プライバシーの初期設定を61%のユーザーが変更しており、登録して1年以上している人が優位に多く(P=0.02)変更していた。もし患者が友達のリクエストをしたとしたら、152名(85%)の参加者が自動的にリクエストを拒絶するつもりであり、26名(15%)が個々人の基準によって決めるつもりで、自動的にリクエストを受け入れるつもりの人は一人もいなかった。医師がFacebookアカウントを持っていることを患者が発見したら、88名(48%)が医師患者関係が変わり得ると信じている。しかし139名(76%)が医師のProfileにオープンアクセスがある場合にのみ、その内容とは独立してその関係が変化しうると考えている。



<結論>

研修医とフェローはFacebookを使用しており、個人情報を自分のProfileに表示している。不十分なプライバシーの保護が医師患者関係に影響を与えるかもしれない。



【考察とディスカッション】

上記以外にもBMAの指針のKey pointとして

・保守的なプライバシーのセッティングを適応するよう考えるべき。web上では全ての情報が守られているわけではない。

・患者を守るための倫理的、法律的な義務が、その他のメディアと同様に適応される

・公開されたネット討論会の場で患者や同僚に対しての非公式の、個人的な、侮蔑的なコメントを投稿するのは不適切である

・ネットへ投稿する医師や医学生は、インターネットでの論争に対する立場表明をする倫理的な責任を負う

・個人あるいは専門科の能力でなされたweb上のコメントに対して名誉棄損の法律が適応される
といった項目が挙げられていた。

医師患者関係を考えた時には、患者からも見られているかもしれないという意識をもって、FacebookのProfileの設定について慎重な吟味が必要と思われた。

上記のような指針は今後日本でも出てくるかもしれず、確かに慎重になる必要を感じる。しかしその一方で家庭医仲間によるFacebook上の議論から得られる利点も日々感じている。(この論文自体もFacebookで知った。)
逆にFacebookを利用しての、良好な医師患者関係を促進できるアイデア・取り組みをされている方がいれば、是非具体的な方法を聞いてみたいと思った。



【開催日】

2011年7月19日