~赤目の診察~

【文献】
Deborah S Jacobs : Evaluation of the red eye. Up To Date ONLINE 18.2: last updated June 16, 2009 .

【要約】
赤目に関する疫学的データはほとんどなく、私たちが赤目患者のマネージメントをするにあたってのガイドとなる、エビデンスに基づいたデータもない。
《病歴》
以下の質問は全ての患者にするべきである。
・視力は影響を受けていますか?
 – 読書時の文字の大きさと距離、形態認識できるか、光が分かるか。
・異物感がありますか?
  –患者が自発的には目を開けられない、または開けていられないとことが客観的な異物感の証拠となり、これは角膜が関与していることを示す。比較して、「ザ ラザラ」、または「目に砂が入ったみたい」というのは主観的な異物感で、必ずしもコンサルトを必要とするような角膜の問題を示唆しない。
・羞明(輝所恐怖症)がありますか?
 –羞明の客観的サインは帽子を被り、サングラスをかけ、悪い方の目を光をさえぎるように手で覆うか、頭を下げて光源や窓から目を背ける。検者が来るのを待つ間、検査室のライトを消して欲しいと要求する。
・外傷がありますか?
・コンタクトレンズをしていますか?
 –コンタクトレンズ使用の眼脂と赤目は、角膜炎の疑いが増す。
・涙以外で一日中続く分泌物がありますか?
《身体診察》
ペンライトを用いて
・瞳孔はライトに反応するか?
 –閉塞隅角緑内障の場合、瞳孔は中間位に固定される。その場合、ライトには反応せず、4~5mm径で固定される。
・瞳孔のサイズがとても小さいか(1~2mm)?
 –角膜の擦過傷、感染性角膜炎、虹彩炎の場合には瞳孔がピンポイントとなる。
・膿性眼脂があるか?
 –膿性眼脂は細菌性結膜炎か細菌性角膜炎を示唆する。
・毛様体の充血あるか?
 ―より重症な病状に特徴的。毛様体の赤みは、角膜輪部 (角膜が強膜に移行する部位)に最も顕著で、眼球赤道に向かうにつれ軽減していく。
・角膜に白点や混濁、異物があるか?
 –角膜の白点や混濁は感染性角膜炎を示唆する。これはたいていフルオロセインの助けがなくても見ることができる。
・前房蓄膿や前房出血があるか
《評価》
表。ここをクリックして下さい。
《要約》
もし視力・視野に影響なく;瞳孔が反応し;異物感や羞明がなく;角膜混濁がなく、前房蓄膿がなく、前房出血がなければ、プライマリケア医が最初の診断をつけて、治療を開始してよい。
以下に緊急に眼科コンサルトが必要な兆候をあげる。
片側性の赤目で患者は一般的に嘔気や嘔吐の不調を訴える。(急性閉塞隅角緑内障を示唆)
赤目に関連してひどい目の痛みや視野欠損を訴える。
角膜浸潤物やフルオレセインで染色される混濁がある。(ときに潰瘍と呼ばれる)
前房蓄膿

【開催日】
2010年11月24日

~プライマリ・ケアでの高齢者の持続するめまいの原因~

【文献】
Ottto R. Maarsingh,MD: Causes of Persistent Dizziness in Elderly Patients in Primary Care. Annals of Family Medicine:196-204, 2010.

【要約】
《目的》
 めまいの患者の多くはプライマリ・ケアで診察を受けているが、ほとんどの研究は2次・3次医療機関のものである。我々の目的はプライマリ・ケアでの高齢者のめまいの亜型を明らかにし、めまいの原因を評価することであった。
《方法》
 2週間以上持続するめまいで家庭医に受診している高齢者で、横断研究を行った。
 全ての患者は包括的な評価を受けていた。
 患者のデータは、家庭医、老年科医、高齢者住宅の医師からなる委員会で再検討され、めまいの原因を結論づけた。
《結果》
2006年6月から2008年1月まで、65歳から95歳の417名の患者。
前失神(Presyncope)が最も多い亜型で69%であった。
その他認められた亜型は回転性めまい(vertigo,41%),平衡感覚の障害(disequilibrium,40%),その他のめまい(other dizziness,2%),不明(委員の意見の一致を見なかったもの:no consensus,4%)。
44%の患者において、めまいの症状が複数の亜型に属していた。
心血管疾患が最も多い原因で57%であった(表)。

100922

その次が末梢前庭疾患で14%、精神疾患は10%であった。
薬の副作用が原因と思われたものは23%であった。
62%の患者は複数の原因を合併していた。
《結論》
以前の多くの研究に反して、心血管疾患がプライマリ・ケアでの高齢者のめまいの最も多い原因となっていた。25%は薬の副作用が原因として考えられ、これも以前の研究で報告されているよりも多かった。

【開催日】
2010年9月22日(水)

~発作性心房細動の手持ち薬による治療~

【文献】
A John Camm, Irina: PRACTICE Change page – Some patients with paroxysmal atrial fibrillation should carry flecainide or propafenone to self treat. BMJ Volume334, pp637, 2007.

【要約】
《臨床的問題》
 発作性心房細動による、動悸、めまい、倦怠感、胸痛がある患者に、
プロパフェノン(プロノン;クラス1c群)またはフレカイニド(タンボコール;クラス1c群)の内服による自己治療’ポケットに薬’のアプローチ法を提案す る。最近のNational Institute for Health and Clinical Excellenceや国際的なガイドラインで提案されている。
《エビデンス》
 この自己治療の方法を行った212のケースで、厳重な管理のもと経口プロパフェノンにて安全に除細動された場合、病院外での自己治療でも十分に治療に反応することが示された。
実 現可能性を示すキーとなる研究では、病院にて発作性心房細動に対し、経口のフレカイニドまたはプロパフェノンの投与で治療に成功した210の患者が、頻脈 に気づいたら5分以内に一回量を内服するよう適切な薬を渡された。症状が穏やかで比較的心房細動の発作が少なく(病歴12年以下)、発作開始が明確な患者 が選ばれた。さらに48時間以内に不整脈が始まり、平均脈拍数が70回/分以上、収縮期血圧が100mmHg以上の者に限って選ばれた。重度の心疾患が背 景にある患者、予防的抗不整脈薬が投与されている患者、電解質異常がある患者は除かれた。これらの210の患者は、各々の過去のコントロールデータと比較 された。心房細動発作の発生する回数は、それ以前とさほど変わりがなかったが(54.5回v59.8回/1ヵ月)、救急外来を受診する回数は減少した (4.9回v45.6回/1ヵ月、P<0.001)。観察期間中の入院回数も著しく減少した。(1.6回v15回、P<0.001) 《変化への障害》 プロパフェノンもフレカイニドも、患者が発作時に自己治療で使用することは認められていない。自己治療は、左室肥大を伴わない穏やかな心血管疾患の患者や、 心筋梗塞の発症がないよくコントロールされた虚血性心疾患の患者に拡大適用できる。しかし予防的に抗不整脈薬を使ってはいけないし、CHADS score(C=congestive cardiac failure 1点;H=hypertention 1点;A=angina 1点;D=diabetes 1点;S=stroke 2点)が2以上の場合には長期間の抗凝固薬が必要とされる。この治療を勧めるかどうかは心臓専門医次第である。病院におけるこの種の治療のエビデンスは信 用のおけるものだが、過去をコントロールとした一つの研究が、病院外で行うこのテクニックを立証している。 《診療をどのように変えるか?》 ・選択された発作性心房細動の患者に、一回内服分のフレカイニド(300mg)またはプロパフェノン(600mg)を携帯し、動悸がひどくなった場合に自己治療できるという情報提供をすべきである。 ・ 適する患者としては、構造的な心疾患がなく、心房細動のエピソードで症状を経験しているが、発作は頻回ではないこと(一年に3~4回まで)。発作が6時間 以上続くこと、血行動態が安定しており収縮期血圧が100mmHg以上で安静時脈拍が70回/分以上であること。患者がいつ、どのように薬を内服するのか が理解できる必要がある。 ・薬の選択は、以前に病院の管理下で治療に成功したものでなければならない。そのため、フレカイニドまたはプロパフェノンは、救急外来での発作性心房細動の治療のプロトコールの一部となっていなければならない。 ・治療は動悸が30分程度を超えて持続するようなら開始すべきである。薬を内服した後は、発作が止まるまで、又は4時間は座っているか、横になっていてもらう。もし、脈拍が明らかに速くなったり、めまいや失神が起こる場合にはすぐに病院にきてもらう。 ・もし自己治療が失敗した場合は、抗不整脈薬の予防的投与やカテーテルアブレーションなど他の方法を考え、自己治療のアプローチはあきらめる。 【開催日】 2010年9月1日(水)

~痛風の診断精度を上げましょう~

【文献】
A Diagnostic Rule for Acute Gouty Arthritis in Primary Care Without Joint Fluid Analysis
Hein J. E. M. Janssens, MD; Jaap Fransen, PhD; Eloy H. van de Lisdonk, MD, PhD; Piet L. C. M. van Riel, MD, PhD; Chris van Weel, MD, PhD;Matthijs Janssen, MD, PhD
Arch Intern Med. 2010;170(13):1120-1126.

【要約】
背景と目的
 急性の痛風性関節炎の患者の多くは、プライマリケアで診断と治療を受けているが、診断時に関節滑液の分析が行われないことも少なくない。今回、家庭医の診断の精度を調べ、関節液採取なしに痛風を診断するための臨床スコア表を作成した。

方法
  2004年3月24日から2007年7月14日まで、オランダ東部の家庭医93人のもとを訪れた、単関節炎で急性痛風性関節炎の疑いが非常に強い患者 381人を、症状発現が初回かどうかにかかわらず登録した。医師の診断とは別に、全員を対象に受診から24時間以内に関節液を採取した。
 381 人の平均年齢は57.7歳、74.8%が男性だった。それらの中で、顕微鏡観察により関節液に尿酸ナトリウム結晶が認められ、痛風と確定したのは216人 (56.7%)。ただし、受診時に採取された標本が陽性と判断されたのは209人で、7人は追跡中に結晶陽性となったため、その時点で痛風と確定した。
 したがって、プライマリケアで関節液を採取し結晶を指標とする診断を行った場合の感度は0.97(受診時に結晶陽性の209人/結晶陽性の216人)、特異度は0.28(医師の診断が非痛風で結晶陰性の46人/追跡終了後も結晶陰性の165人)となった。
  家庭医が関節滑液の分析なしに痛風と診断した患者は328人(86.1%)。医師の診断の陽性予測値は0.64(受診時に結晶陽性の209人/医師の診断 が痛風だった328人)、陰性予測値は0.87(医師の診断が非痛風で結晶陰性の46人/医師の診断が非痛風だった53人)。これらから計算すると陽性尤 度比は1.3、陰性尤度比は0.1となった。したがって、プライマリケアでの痛風診断の精度は中程度と判断された。
 医師から痛風と告げられた 328人を結晶陽性患者と陰性患者に分けてベースラインの特性を比較したところ、有意な差が見られたのは、男性の割合(陽性群は89.5%、陰性群は 62.2%)、高血圧(52.6%、30.3%)、心血管疾患(30.6%、14.3%)など。これらの統計学的に有意な要因と、あらかじめ定義した変数 を組み込んで、多変量ロジスティック回帰モデルを作成、プライマリケアを訪れる単関節炎患者の尿酸ナトリウム結晶陽性の予測精度=診断精度を、ROC曲線 を描いて分析した。
 最適なモデルは以下の変数を含んでいた。性別が男性、自己申告による関節炎発作歴、24時間以内に症状が最も悪化、関節部の 発赤、第一中足指節関節に症状あり、高血圧または心血管疾患あり、血清尿酸値が5.88mg/dL超。このモデルのROC曲線下面積は0.85(95%信 頼区間0.81-0.90)となった。
 著者らは、日常診療において簡便なモデルにするために、回帰係数を簡単な臨床スコアに変換、以下のような診断用スコア表を作成した。

性別が男性⇒スコア2.0
自己申告による関節炎発作歴あり⇒スコア2.0
24時間以内に症状が最も悪化した⇒スコア0.5
関節部の発赤あり⇒スコア1.0
第一中足指節関節に症状あり⇒スコア2.5
高血圧または心血管疾患あり⇒スコア1.5
血清尿酸値が5.88mg/dL超⇒スコア3.5

 それぞれ該当しない場合はスコア0として合計を求めると、最大値は13.0になる。
 医師が痛風と診断した328人の患者をスコア合計が4以下、4超8未満、8以上の3群に患者を分けると、各グループの結晶陽性患者の割合は2.2%、31.2%、82.5%となった。
 さらに受診者381人全員を対象にこの方法でROC曲線下面積を求めると、0.87(0.84-0.91)になった。臨床スコア4以下、4超8未満、8以下の3群に患者を分けると、各群の結晶陽性患者の割合は2.8%、27.0%、80.4%となった。

結論
 したがって、スコアの合計が4以下であれば痛風の可能性はほとんどないと言える。一方、8以上なら痛風治療を開始してもよいだろう。スコアが4から8の間の患者については必要に応じて関節液の分析を行うべきだ、と著者らは述べている。

【開催日】
2010年8月11日(水)

~睡眠時無呼吸症候群の診断~

【文献】
Overview of obstructive sleep apnea in adults UpToDate 18.1

【要約】
イントロダクション
閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSA)は一生治療が必要となるよくある慢性の疾患である。
 特徴的な症状としては、
・睡眠時の不定期な異常な呼吸パターン(閉塞性無呼吸、低呼吸、覚醒と関連する努力性の呼吸)
・睡眠の中断による日中の症状(眠気、倦怠感、集中力の低下)
・いびきや不穏、息を吹き返すような鼻息のような睡眠中の不快な症状である。
 長年の睡眠中の低酸素血症や繰り返す覚醒により臓器障害をきたす。心血管系のリスクのある患者、AHI(the apnea hypopnea index) (一時間当たりの無呼吸低呼吸のイベント) が30以上の患者は死亡のリスクが高くなる。

疫学
 26%の成人がOSAの高いリスクを持っていると見積もられている。2~5%のみが昼間の眠気など少なくとも1つの症状を持ち、AHIが5以上と診断されている。AHIが5以上あっても無症状であることが一般的。
 ・年齢:18~45歳で増加する。
 ・人種:35歳以下のアフリカ系アメリカ人に多い。アジア系はアメリカ人と同等。
 ・性別:女性の3~4%、男性の6~9%

リスクファクター
・肥満:BMIや首回り、ウエストとヒップの比が増加するとOSAが進行する。
・顔面や上記道の軟部組織の異常:上顎骨の異常、小さな下顎骨、幅広い顔面、扁桃肥大、アデノイド
・現在の喫煙者は過去に一度も喫煙した事のないひとに比べて3倍。
・鼻腔粘膜の腫脹
・DM患者

臨床症状
・いびき、日中の眠気:最も共通の症状
・睡眠中の不穏、大きないびきによって終結する静かな時間、集中力低下、夜間の狭心痛、呼吸困難感、喘ぐ感じ、息が詰まる感じ

診断
・ポリソムノグラフィ:first lineの検査
・ポータブルモニタリングも受け入れられる検査

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重症度
・軽症:AHIが5以上15以下。HTや肺性心、多血症は一般的にはない。30%の患者が治療に反応する。
 ・中等度:AHIが15以上30以下。REM睡眠中や仰向けでのAHIが増加する。日中の活動性低下、自動車事故の増加がみられる。HTが見られるようになる。肺性心に伴う日中の症状はふつうみられない。CPAPにより、日中の眠気、QOL、血圧が改善する。
 ・重症:AHIが30以上。日常生活の活動に障害ときたすような昼間の眠気。心不全、呼吸不全症状、夜間の狭心痛、多血症、肺性心による症状が出現する。座っている時に寝てしまい、事故のリスクが高くなる。治療によって症状は軽快する。

【開催日】
2010年7月21日(水)

~うつ病治療薬の選択と治療上の注意点~

【文献】
Initial treatment of depression in adults。UpToDate ONLINE18.1

【要約】
総論 
抗うつ薬の試験の文献を評価するときには、Publication biasを考慮しなければならない。(政府または独立したスポンサーがわずかで、製薬会社と出所不明が多い。)

薬の選択 
・ほとんどのシステマティックレビューにおいて結論づけられていることには、臨床的にもQOLにおいても、治療コストについても、特定の抗うつ薬のなかで、どれを特別選ぶべきかということはない。
・何の薬を使うかということよりも、患者が受け入れられる薬を使って治療することと、症状を寛解させるのに十分な容量を使用するということのほうが、重要である。
・SSRIsがプライマリケアではしばしば第一選択として使われている理由としては、副作用が少なく、過量投与でも、危険が少ない点である。

the American College of Physicians (ACP)からの2008年臨床診療ガイドラインでは、以下の12の第二世代抗うつ薬から治療を開始することを強く勧めている。

ブプロピオンbupropion(NDRI;ウェルブトリン) 国内未
シタロプラムcitalopram(SSRI;セレクサ) 国内未
デュロキセチンduloxetine(SNRI;新☆サインバルタカプセル)
*一日一回投与のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
エシタロプラムescitalopram(SSRI;レクサプロ) 国内未
フルオキセチン fluoxetine(SSRI;プロザック) 国内未
フルボキサミンfluvoxamine(SSRI;デプロメール、ルボックス)
ミルタザピン mirtazapine (NaSSa;新☆レメロン、リフレックス)
*ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬
ネファゾドンnefazodone(SNRI;サーゾーン) 国内未
パロキセチンparoxetine(SSRI;パキシル)
セルトラリン sertraline(SSRI;ジェイゾロフト)
トラゾドンtrazodone(SARI;デジレル,レスリン)
ヴェンラファキシン venlafaxine(SNRI;エフェクサー) 国内未
☆ネファゾドンnefazodone(SNRI;サーゾーン)には肝細胞毒性あり

・過去に受け入れの良い薬で治療に成功した患者は、うつ病が再発した際には、同じ薬を再開すべきである。
・薬の選択の際には、臨床医の使いやすさ(慣れ具合)、価格、好みと副作用を考慮すべきである。

副作用
・第二世代を評価した203の試験のシステマティックレビューではmirtazapine and paroxetineが他の第二世代抗うつ薬に比べて、体重増加がおこりやすい。
・ うつ病自体が、糖尿病を進展させるリスク要因である。65歳以上の1000人を10年追跡した前向き研究では、うつ病の人は、抗うつ薬による治療に関わら ず、うつ病を持たない人に比べて2倍以上糖尿病に罹患する率が高かった。(hazard ratio 2.3, 95% CI 1.3-4.1) 
・ ケースコントロール試験において、うつがあり、糖尿病がないおよそ166,000人の患者のうち、抗うつ薬の中等量~高用量の長期間(2年以上)の使用 が、顕著に糖尿病のリスク増に関係した。(incidence rate ratio 1.8, 95% CI 1.4-2.5)
糖尿病のリスク 増加の見積もりは、amitriptyline (incidence rate ratio: 1.43, 1.03-1.98), fluvoxamine (incidence rate ratio: 4.91, 1.05-23.03), paroxetine (incidence rate ratio: 1.33, 1.02-1.73), and venlafaxine (incidence rate ratio: 2.03, 1.18-3.48)
・他の副作用については一般的な内容であったので割愛。

用量
・少量から開始することで、抗うつ薬の副作用を最小限にすることができる。
・一週間ごとに最大量まで漸増する。
・薬はたいてい朝に内服する。内服後、8時間から12時間は穏やかな興奮作用があり、眠りを阻害する可能性がある。
・SSRIは、寛解を達成するためには典型量より高用量を必要とする。
・三環形抗うつ薬は、より少量でも高容量と同程度に効果があるようす。

フォローアップ
・治療開始から治療に反応するまでの時間は2週間から6週間と考えられている。
・ある試験では治療開始から2週間以内の早い反応は、治療の安定した効果と寛解の継続を予測させる。
・2週間過ぎても反応がない場合、薬の量を増量しなければならない。
・最大量で8~10週間経過しても反応がない場合は、異なる抗うつ薬(同じまたは異なったクラスの)を試すか、精神科に紹介しなければならない。
・部分的な反応の場合は、bupropion(国内未) or buspirone(国内未)を追加するか、患者が薬の追加を好まなければ、他のSSRI、SNRIに換える。
治療期間
・抗うつ薬は一般的に、最初のうつのエピソード後、最短でも6-9ヶ月内服しなければならない。
・患者による薬の中断は多い。
・再発も多い。特に3回以上繰り返している例は薬の継続が望ましい。

精神科へ紹介するケース
・ファーストラインの薬を患者が受け入れられない、または効果がない場合
・思考障害を伴った重症なうつか、自殺衝動がある場合
・薬品中毒や精神依存、薬物乱用を伴っている場合
・患者が認知行動療法を強く望んでいる場合

【日付】
2010年7月14日(水)

~口腔潰瘍の評価~

【文献】
Vinidh Paleri, et. al: Evaluation of oral ulceration in primary care. BMJ 2010, 340: 1234-1238.
BMJ “Clinical review” seriesより

【要約】
このレビューの目的
口腔潰瘍の鑑別の全体像、悪性と非悪性疾患の鑑別を容易にする評価法の提供

口腔潰瘍の原因
(1)急性,非腫瘍性の口腔潰瘍
外傷(とがった歯牙、入れ歯、頬粘膜を噛む)
軽度のアフタ性潰瘍(疼痛を伴う癒合しない1cm未満の円形の潰瘍。灰白色をベースとし周囲に発赤を伴う。多くの患者において原因は不明。典型的には10日以内に治癒するが再発を繰り返したり、持続する場合もある)
薬剤(NSAIDs、降圧薬、ビスフォスフォネート、ニコランジル、化学療法)
感染(ヘルペス関連がほとんど、HIV、梅毒、結核、Actinomycosis)
(2)慢性,非腫瘍性の口腔潰瘍
外傷、重度のアフタ性潰瘍、扁平苔癬、薬剤、慢性的な感染
(3)腫瘍性の口腔潰瘍

どんな所見が悪性を疑わせるか?~Box3
(1)悪性疾患の可能性を上げる所見
・3週間以上改善しない痛みを伴わない潰瘍 ・硬結を伴い、潰瘍の周囲に炎症所見のない潰瘍
・辺縁がロールし、肥厚している潰瘍 ・タバコ、アルコール ・年齢(50歳以上)
・男性 ・前癌病変の存在 ・口腔潰瘍の病歴が過去ない ・局所に潰瘍を発症しやすい要因が存在しない
・潰瘍を発症しやすい全身の要因がない ・口腔の扁平上皮癌の病歴
(2)悪性疾患の可能性を下げる所見
・そのたびに治癒する再発性の潰瘍 ・同時に発症する複数の潰瘍 ・群発する潰瘍 
・全身疾患とくに膠原病に関連して発症した潰瘍 ・水疱形成 ・疼痛と出血を伴う歯肉に関連したもの
・局所に明らかな要因のあるもの

口腔潰瘍の患者へのアプローチ

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詳細な病歴が重要(急性?再発を繰り返す?慢性?最近の歯科治療?タバコやアルコール、薬剤?併存する疾患の有無)。
身体所見: 口唇、頬粘膜、口腔底、歯牙、歯肉、硬口蓋、舌、臼後三角部。潰瘍の分布や広がり、局所所見、潰瘍に関連する所見(とがった歯牙、入れ歯など)、口腔外の所見(特にリンパ節腫脹)

専門医への紹介の前に家庭医のできること
対症療法、口腔潰瘍の素地になりやすい状態(鉄、ビタミンB12、葉酸欠乏)の改善、タバコ・アルコール問題への取り組み
悪性疾患の可能性がない、低い場合もつらい症状がなかなか改善しない場合は紹介を。

口腔潰瘍はスクリーニングするべきか?
スクリーニング法は視診が適切。
現時点ではGeneral Populationに対して実施することを推奨するエビデンスは不十分。
リスクの高い人たちが受診したついでに、実施するのがcost effectiveであろう。

【開催日】
2010年7月14日

~ある程度喘息に移行しやすい患児を見分ける方法: APIを知ってましたか?~

【文献名】
A Clinical Index to Define Risk of Asthma in Young Children with Recurrent Wheezing, Am J Respir Crit Care Med Vol 162. pp 1403-1406, 2000.

【要約】
方法
1246名の幼児とその家族を対象としたThe Tuscon Children’s Respiratory Studyと呼ばれる長期の前向き研究におけるデータを利用した。
親の喘息の既往及び2、3、6、8、11、13歳それぞれの時点での子供の呼吸および健康状態を親に質問紙で確認している。
2、 3歳の時点での喘鳴の有無とその程度(とても稀~ほぼ毎日までの5段階)で確認し、いずれかの時点で喘鳴が聞かれたら”early wheezer”とし、程度のスケール3以上で喘鳴があれば”early frequent wheezer”とした。また、6、8、11、13歳の時点で、医師によって一度でも喘息と診断されたかあるいは診断されなくても3回以上の喘鳴があれば “active asthma”とした。

Majorクライテリア:
 1.医師により診断された両親いずれかの喘息の病歴
 2.医師により(2、3歳の時点で)診断されたアトピー性皮膚炎
Minorクライテリア:
 1.医師により(2、3歳時点で)診断されたアレルギー性鼻炎
 2.(2、3歳の時点での)上気道感染と関係しない喘鳴
 3.(平均10カ月の時点での)4%以上の好酸球増多              (以上Table1)

厳密なAPIとしてはearly frequent wheezerであって、Majorクライテリアの1/2を満たすか、Minorクライテリアの2/3を満たす場合を陽性とした。
緩いAPIとしてはearly wheezerであって、同様にMajor1/2、Minor2/3を満たすものを陽性とした。

結果
緩いAPI陽性の場合は、陰性の場合にくらべて6、8、11、13歳の時点で2.6-5.5倍active asthmaになりやすく、厳密なAPI陽性の場合は、陰性の場合に比べて同様に4.3-9.8倍active asthmaになりやすい(Table5)。
厳 密な基準では特異度(=active asthmaを呈さない就学児がAPI陰性である割合)は6、8、11、13歳どの時点でも96%以上と高く、6、8、11、13歳のうち少なくともどれ か一つの時点でactive asthmaとなる陽性的中率(=API陽性の幼児が就学期にactive asthmaを持つ割合)は76%である(Table6)。
陰性的中率(=API陰性の幼児が就学時にactive asthmaを持たない割合)についても厳密な基準あるいは緩い基準ともに84%以上と高い。

【開催日】
2010年7月7日

~関節リウマチの早期診療~

【文献名】
(1) Patients with suspected rheumatoid arthritis should be referred early to rheumatology. BMJ 2008;336:215, doi: 10.1136/bmj.39381.597454.AE, (Published 26 January 2008)
(2) レジデントノート(2010年4月号 vol.12-No1、2010年5月号 vol.12-No3)

【要約】

The clinical problem
 関節リウマチは成人の1%に存在し、進行性の関節障害をきたす。
  DMARDsによる治療は関節障害や長期的な機能に対して明確に有効であることが示されており、近年、可能な限り早期のDMARDsによる治療が言われて いる。ガイドラインでも症状出現から6週間以内の診断、12週間以内のDMARDsによる治療開始することが推奨されている。
 しかし、実際の臨床では50%程度の患者しかその期間に治療開始となっていない。

Evidence for change
<早期治療の利点> 
  ある12のメタ分析(6つのRCT、6つのコホート研究)では、DMARDsの治療の遅れと早期リウマチ患者(2年以内)のレントゲン所見の進行性に関連 性をみとめた。 早期リウマチ患者に対し、早期治療群とそれ以上治療まで時間のかかった対照群(平均9カ月の治療の遅れ)では、その3年後には早期治療群 は治療まで時間のかかった対照群よりも33%進行が抑制されていた。 また、あるメタ分析(14のRCT)では、最もDMARDsに反応性が高いのは症状 出現から1年以内の患者であると示された。
<どれくらいまでの期間が早期か>
 症状出現後12週が免疫組織学的に区別されるため、その期 間までがDMARDS開始期間として推奨される。 DMARDsによる治療を開始したあるコホート研究では、3カ月以内に治療を開始した群20症例と12 カ月以内に治療を開始した群20症例では、3か月以内に治療を開始した群の方が3年間の追跡で著明に臨床症状、レントゲン所見で効果があった。これらの発 見はとても期待できる結果であったが、今後しっかりとした大規模RCTが望まれる。

Barriers to change
 リウマチ 患者のうち、3か月以内にリウマチ専門医を受診する割合は約半分であり、関節リウマチの明確な診断クライテリアがないため、早期診断はすべての医者にとっ てチャレンジングなものである。多くの患者の関節痛が間欠痛であったり、他方ではNSAIDSによってマスクされている。しかし、近年抗CCP抗体などの ように多くの臨床症状が出現する前に有効な検査が開発されている。

Hou should we change our practice?
炎症性関節疾患が疑われたり、緊急でリウマチ専門医への紹介が考えられる患者においては、炎症性関節疾患があるかどうかを明確にしなければならない。これは、リウマチ因子やレントゲン写真でしばしば正常の場合があるため、これらの結果を待たずに行われるべきである。

関節リウマチの診断(2009 ACR/EULAR共同提案)

100623

【開催日】
2010年6月23日(水)

~無症候性のABI低下患者へのアスピリンは血管イベント予防に効果がない~

【文献】
F Gerald R. Fowkes, Jacqueline F. Price Marlene C. W. Stewart at el: Aspirin for Prevention of Cardiovascular Events in a General Population Screened  for a Low Ankle Brachial Index. JAMA; 303 841-848, 2010.

【要約】

結論
 無症候性のABI低下患者におけるアスピリンは血管イベントを減少させない。

論文のPECO
P:
50-75歳で心血管疾患を持っていない男女28980人にABIを行い、0.90以下だった3350人をトライアルへ。
E:
アスピリン100mg
C:
プラセボ
O:
Primary;    初回の致死的・非致死的心血管イベント、脳卒中、血管再灌流の治療
Secondary; ①上記のPrimary+狭心症+間欠性跛行+TIA ②総死亡

妥当な文献か?二重盲検のRCTでITT分析されている。追跡期間の中央値は8.2年

メリット・デメリットの程度は?
Primary、Secondary共に、介入群と比較郡にて有意差を認めなかった。
                   Hazard Ratio    RRR     NNT
Primary endpoint      1.03(0.84-1.27)     -0.3%    -333
Secondary endpoint
 ①全ての血管イベント   1.00(0.85-1.17)     0.1%     840
 ②総死亡           0.95(0.77-1.16)     0.6%     169

Adverse eventとしては、Major hemorrhage(脳出血、SAH、消化管出血、その他)が介入群の方がHR 1.71(0.99-2.71)で多かった。
NNHは125

【開催日】
2010年6月16日

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