Restless X syndrome:新たな疾患群~体の様々な領域において、夜間、動かしたくなる衝動を伴う異常感覚~

ー文献名ー
Rurika Sato et al. Restless X syndrome: a new diagnostic family of nocturnal, restless, abnormal sensations of various body parts. Diagnosis (Berl). 2023 May 15;10(4):450-451.

ー要約ー
① RLSに関して
・RLSは1995年に診断基準が提唱された、比較的新しい疾患概念である。
・現在ではコモンな疾患であり、有病率は9.6%という報告がある。
・RLSのillness scriptは、主に夜間に生じ、睡眠の支障となり、安静で増悪し、下肢を動かす・触る・刺激すると軽減する不快な感覚である。
・病因としては中枢神経系でのドパミンの異常が想定されている。
・症状の言語化が難しいことが多く、訴えは多彩となり得る。
・確定診断につながる身体所見や検査所見は存在せず、病歴聴取が重要である。

②下肢以外のRLS?

・近年、RLS症状が下肢に限局しない例がサブタイプとして存在するのではないか、といわれてきた(Fig.1)。

・元来、RLSは診断エラーが多い疾患であったことも考慮し、我々は、”legs” 以外にも症状が生じ得る、ということを想起しやすいようにRestless “X” syndrome(RXS)という疾患概念を提唱する。
・RXSのillness scriptは、RLSのlegsをXに変更することになる。すなわち、主に夜間に生じ、睡眠の支障となり、安静で増悪し、X(=身体のあらゆる部位)を動かす・触る・刺激すると軽減する不快な感覚である。
・我々が経験した、実際の症例:
restless genital syndrome:夜間に増悪し、歩行で軽減するペニスの異常感覚
restless chest syndrome:夜間に増悪し、仰臥位での深呼吸で軽減する呼吸苦 (起坐呼吸とは異なる)
・RLSの治療としては、少量(0.125mg)のプラミペキソール(商品名:ビ・シフロ^ル)が有効で即効力もあることが知られる(1晩目から有効で、眠りを改善する)
・同様に、RXSにおいても(上記2症例では)、プラミペキソール0.125mg開始48hr以内に症状は改善傾向となった。

・動かす以外に、各部位で、下記のような寛解因子が報告されている(Table.1)

*語句:
scrunching the nose 鼻にしわを寄せる
Tongue thrusting or nibbling 舌を突き出す、かじる
cuddle pillow 抱き枕
rolling over 寝返り
urinating 排尿

・RLS患者は自殺の高リスク群といわれており、RXSにおいても早期診断が患者のアウトカム向上につながる可能性がある。

③ まとめ
・RXSという形で疾患概念をグルーピングすることで、診断にあたっての認知負荷を軽減し、疾患認知度・診断率の向上につながることを期待したい。

【開催日】2024年2月7日(水)