75歳以上の高齢者に対する一次予防目的でのスタチン投与の是非

―文献名―
Rafel Ramos, et al. Statins for primary prevention of cardiovascular events and mortality in old and very old adults with and without type 2 diabetes: retrospective cohort study. BMJ 2018;362:k3359.

―要約―
【背景】
75歳以上の高齢者に対する心血管疾患(CVD)あるいは心血管死の二次予防目的でのスタチン投与は一定確立されている。一方で、75歳以上、とくに85歳以上の高齢者に対する一次予防目的でのスタチン投与はエビデンスが不足している。
【目的】
スタチンが75歳以上の高齢者のCVD発症あるいは全死亡の一次予防に寄与するかどうか評価する。
【方法】
後ろ向きコホート研究
【セッティング】
スペインの大規模データベース「Database of the Catalan primary care system (SIDIAP)」の2006-15年分
【主要アウトカム】
CVD発症と全死亡
【結果】
臨床的にCVDの既往がない46,864名(平均77歳、63%は女性、追跡期間中央値5.6年)が登録された。(Fig.1)
糖尿病がない被検者のスタチン使用によるハザード比は、75-84歳ではCVD発症0.94 (95%CI 0.86-1.04)、全死亡0.98 (0.91-1.05)、85歳以上ではCVD発症0.93 (0.82-1.06)、全死亡率 0.97 (0.90-1.05)だった。糖尿病がある被検者のスタチン使用によるハザード比、75-84歳ではCVD発症0.76 (0.65-0.89)、全死亡0.84 (0.75-0.94)、85歳以上ではCVD発症0.82 (0.53-1.26)、 全死亡1.05 (0.86-1.28)だった。(Table.4)
同様に、年齢によるsplinesを用いた連続スケール効果解析で、糖尿病のない74歳以上の被検者におけるスタチンのCVD発症と全死亡に対する利益欠如を裏付けた。糖尿病がある被検者では、スタチンのCVD発症と全死亡に対する予防効果が示されたが、この効果は85歳以上では実質的に減少し、90歳以上では消失した。(Fig.2)

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【開催日】2019年5月22日(水)

家庭医療の後期研修中に学術活動を増やすための持続可能なカリキュラムとは?

―文献名―
Sajeewane Manjula Seales et al.
Sustainable Curriculum to Increase Scholarly Activity in a Family Medicine Residency.
Fam Med. 2019;51(3):271-5.

―要約―
背景と目的
学術活動(以下SA)は,家庭医療の後期研修プログラムのためにACGMEの準拠要件である。しかし専攻医に学術活動に参加させることは困難である。しかし2010年にジャクソンビル海軍病院の家庭医療レジデンシー(NHJ―FMR)は、専攻医のSAのアウトプットを劇的増加させるリサーチカリキュラムを開発した。この研究の目的は,そのアウトプットが経時的に持続可能かどうかを測定することである。
方法
NHJ-FMRプログラムにおける2012~2013の学年から2016~2017の学年(N=185)の間のレジデントのSAについての後ろ向き記録レビューを実施した。リサーチカリキュラムへの以下の介入が2010~2012年度に実施された:
・研究コーディネートの指導医ポスト(FRC)
 →理想的には研究の経験が豊富でリーダシップスキルがある人材だが、我々のFRCは限られた研究経験であり、准教授レベルでFRCのポストは0.1FTEであった。
・SAポイントシステム(Table1参照)
・同僚支援を行う研究コーディネーターのポスト
 →PGY2やPGY3で特に研究への関心が高い人材で、同僚の研究の動機付けやメンタリングを行う役割。
  彼らは半日の研究日をもつ
・SAのアウトプットは、専攻医の年間のプロジェクトの合計、年間の質プロジェクト(地方会や全国学会での発表もしくはピアレビュー雑誌への投稿)もしくはピアレビューのプロジェクトを計算し、回帰分析とマン・ホイットニーのU検定(ノンパラメトリック検定)を行った。

結果
専攻医一人あたりのプロジェクトの年間件数は、2012~2013年度の0.34件から、2016~2017年度の1.05件に増加した(Fig1)。また専攻医一人あたりの質改善プロジェクトは、統計的に有意な経時変化を示した。(F(1,9)−18.98,P<0.05,R2 of 0.6784:Fig3)介入前の年数と介入後の年数を比較すると、専攻医の平均の質プロジェクトでは統計的有意はなかった(P<005) 結語 このカリキュラムのモデルは、研修プログラムで実施できる学術活動の成果を高めるために独自性かつ信頼性の高い介入を重視している。 毎年の研究コーディネーターの異動にもかかわらず,SAの量と質は5年間で増加している、介入後に増加している。 この研究は専攻医主導の(教育)文化の変化を実証し、他のプログラムへの適応性に関する今後の研究の証拠となる。 ディスカッション ピアレビューのメンターシップは専攻医の文化を変え、研究が修了のためのチェックボックス項目から、それぞれの専攻医にとっての教育的な経験となった。この研究の限界は、記録に基づいているデザインであることと、単一プログラムであること。そして軍隊のプログラムであるが、軍隊であることの特徴はなく、ACGMEに準拠してAMFMの要件を満たす非軍隊のプログラムにも応用しやすい。  JC(松井0522)

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【開催日】2019年5月22日(水)