-文献名-
濱口秀司.デザイン思考を超えるデザイン思考.ハーバードビジネスレビュー.2016年4月号:P27〜39.
-この文献を選んだ背景-
システム思考と対をなすデザイン思考についてここ3年ほど独学を進めてきた。一定の理解を得ていたが、実践ではいまひとつ納得がいかない部分があり、それはユーザー観察からのインサイトの発見だった。提起購読しているHBRに上記の文献があり、この点について新しい見方を提唱していたので読んでみた。
-要約ー
<デザインの歴史>
D:広義のデザイン。設計を意味し、ビジネスにおける問題解決やコンセプト・戦略・マーケティングの設計を指す
d:狭義のデザイン。商品やロゴ、広告や添付における形や美的スタイル
G:Group 組織やグループで作り上げる
g:genius 一人の天才が作る
左上はレオナルドダヴィンチのような、究極的にマルチなアーティスト兼戦略家。この人はほとんどいない。
左下はいわゆるデザインファーム。デザイン学校の成績優秀者が独立し始める。
右下は25年前から狭義のデザインを個人の才能ではなくチームで作ろうとしてきた会社のこと。これがIDEOが代表。グループで作るのでプロトコルが必要であり、そこで注目されたのが「ユーザー中心デザイン」。天才でない人にも良いものをデザインできる体制になった。ニーズの本質を見つける、ユーザーベースで考える、ひな形を作る、行動観察調査をするなど。
右上は、ここ10年くらい、一部のデザインファームがビジネス上の問題解決などを設計する手法としてデザインを捉え始めた。これがデザイン思考である。つまりデザイン思考とは、「デザイナー以外のためのユーザー中心デザイン」と言える。
<イノベーションの3要件>
1)見た事、聞いた事がない
2)実行可能である
3)議論を生む(賛成と反対の意見どちらもある)
ニーズの本質から生まれてくる一般的なデザイン思考は、0から1を生むよりは、1を改善・改良するのに適しているが、イノベーションには適していない。
<イノベーションに適したデザイン思考>
既存のデザイン思考=DTn (Design Thinking driven by needs)
新しいデザイン思考=DTf (Design Thinking driven by framework)
DTnは最後のアイデアが面白いかどうかを判断する時に、何らかのフレームワークを用いて判断してる。ステップDTfは作り手が持つバイアスを、
フレームワークを探すことで見つけ、そのバイアスを破壊するアイデアを考える。
詳細:
1)バイアスを破壊するアイデアを生む
構造がないと破壊できない。
例ⅰ)複数のアイデアをa,b二つの軸で分ける。このa,bが根源的なバイアスであればそれを破壊するアイデアは検討がつけやすい。
例ⅱ)ブレスト
ブレストの3要素=アイデア ブレスト 両者の連結
Lv1:どんどんアイデアを出し、最も面白いアイデアを多数決で決める方法(I2I=Idea to Idea;chaotic)。
デメリット:イノベーティブなアイデアは賛否を分けるものなので多数決で決められない。
メリット:直感的な良さが出る。
Lv2:Lv1で出てきた面白いアイデアを何かの軸で面白い理由を明確にする。それをさらに抽象化する(P2I=Perspective to Idea;
structured)。論理的な良さを加える。
Lv3:Lv2の複数の抽象化された切り口を組み合わせて構造化し包括的なモデルを作る。
例:切り口を二つ選び、それぞれの切り口の軸をクロスさせ4マスを作るなど
Lv3+:そこで出てきた包括的モデルの中で、今まで見たことのない、作られたことのないところはどこか考える(破壊する)
2)ニーズを付加する
生まれたアイデアのユースケースを想定する、想定外のニーズが付加される場合もある
3)意思決定を行う
不確実性を伴う意思決定が必須。
ⅰ)プロトタイプを作成し、100人の潜在顧客に見せて、購買意向を持つか否か。ユーザー需要性調査ではない(どんな機能が欲しいか、
いくらがいいかなど、ではない)。値段も仮店舗も宣伝も設定した上で「本当に買うのか」に絞って調査する。
ⅱ)ディシジョンマネジメントを行う(正味現在価値を算出する)。
-考察とディスカッション-
Q1:皆さんが何か新しいプロジェクトを動かしたり、新しいプロダクトを作り出したりする時に、どんな思考過程で実施していますか?
Q2:その思考過程によってイノベーティブなアウトカムは得られていますか?
Q3:デザイン思考は(DTn及びDTfどちらでも)、皆さんの思考過程と親和性はありますか?
Q4:デザイン思考はイノベーティブなアウトカムを得るために有用だと思いますか?
【開催日】
2016年3月23日(水)