特発性肺線維症の早期診断におけるfine crackles

―文献名―
Onofre Moran-Mendoza, Thomas Ritchie, Sharina Aldhaheri. Fine crackles on chest auscultation in the early diagnosis of idiopathic pulmonary fibrosis: a prospective cohort study. BMJ Open Resp Res: first published as 10.1136/bmjresp-2020-000815 on 7 July 2021.

―要約―
Introduction:
特発性肺線維症(IPF)は、原因不明の間質性肺疾患(ILD)であり、通常60歳以上で発症し、予後は不良で、診断時からの生存期間の中央値は2~3年である。IPFは、原因不明の呼吸困難を伴うすべての成人患者で考慮されるべきであり、一般に咳、二基底性吸気性ラ音、ばち指を呈する。IPFの診断と治療の開始は2年以上遅れることがあり、その結果死亡率が高くなることが示されている。現在、ニンテダニブとピルフェニドンの2つの利用可能な抗線維化薬があり、これらは病気の進行を遅らせ、死亡率を低下させる可能性がある。IPFが疑われる患者を専門医に早期に紹介することで、早期の治療と予後の改善に繋がる可能性がある。
高解像度胸部CTは、ILDを診断するための最良の非侵襲的検査だが、スクリーニングとして使用するには費用がかかり、実用的ではない。胸部聴診によるfine cracklesは、現在、IPFを早期に診断するための唯一の現実的な手段であることが示唆されている。これまで、IPFの早期診断におけるfine cracklesの役割を評価した研究はない。
今回、IPFおよび他のILDの早期診断におけるfine cracklesの有用性を評価する目的で研究を行った。

Method:
カナダのオンタリオ州にあるキングストン健康科学センターのILDクリニックに紹介されたすべての患者の胸部聴診におけるクラックル音の存在と種類を前向きに評価した。この研究に含まれる患者は、IPFの事前診断がなく、一部の患者は無症候性であるか、呼吸機能検査で正常とされていた。ILDの最終診断が確立される前に、様々なレベルの経験を持つ臨床医が胸部聴診を行い、他の臨床医の評価と最終診断を知らされていない標準化されたデータ収集フォームにcracklesの存在と種類を記録した。
Cracklesの存在と種類は、各患者の最初とその後の来院時に、臨床医によって次のように記録された:(a) no crackles, (b) fine crackles, (c) coarse crackles, (d) fine cracklesとcoarse cracklesの両方。cracklesの識別は、診断(IPFと非IPF)、およびcracklesの識別に影響を与える可能性のある患者と臨床医の特性によって層別化された。

Results:
ILDクリニックに紹介された290名のILD患者を評価した。最初の所見では、IPF患者の93%と非IPFのILD患者の73%が聴診でfine cracklesを認めた。IPFの患者では、咳(86%)、呼吸困難(80%)、拡散能の低下(87%)、総肺活量の低下(57%)、強制肺活量の低下(50%)よりもfine cracklesが一般的だった。その後の来院時の診察では、最初にfine cracklesを認めた患者の90%で、同じタイプのcrackle音が確認された。重回帰分析では、fine cracklesの識別は、肺機能、症状、肺気腫、COPD、肥満、または臨床医の経験による影響を受けなかった。

Discussion:
本研究の結果、無症候性の患者や呼吸機能検査で正常だった患者を含む、ほとんどのIPF患者にfine cracklesが存在し、肺気腫、COPD、肥満の患者、または胸部聴診を行った臨床医の経験に関係なく、適切に識別できることが示された。胸部聴診のfine cracklesは、IPFや他のILD患者の早期診断と治療に繋がる可能性のある、高感度で堅牢なスクリーニングツールである。

【開催日】
2021年7月14日(水)