~電子カルテ導入の影響について~

【文献】
Gradual Electronic Health Record Implementation: New Insights on Physician and Patient Adaptation. Ann of Fam Med ;2010;8:316-326.

【要約】
目的
電子カルテ導入が医師患者関係や患者の行動にどのような影響を与えているかを検証する。

方法
家庭医の外来診療所において、電子カルテの導入前5か月・移行期の10ヶ月間・導入後3または6か月後に以下の調査を行った。
①170人の患者について、外来を直接観察して、時間を計測した。
②出口で患者へ電子カルテを用いた外来についてインタビューを行った。
③診療所の看護師・看護助手・事務職員を集めてフォーカスグループディスカッションを行った。
④診療所の看護職員と医師に対して、観察(構造化されていない)とインタビューを行った。
 ※電子カルテ;Logicianという商品;血液・画像・病理・患者の地理的情報の結果が参照できる。

分析
Immersion-Crystallization discussionと代替仮説の検索を用いた。

インタビュー・FGDの結果の要約
①患者の評価
 ・導入前は、情報技術に対する不安の表出がみられたが、医師への信頼や医師患者関係の安全性を実感して、電子カルテに肯定的な意見が出るようになった。
②医師・医療従事者の評価
 ・導入後は、電子カルテの懸念事項への不安は解消され、電子カルテの利点が理解されるようになり、更には予想していなかった利点も見出された。
 ・特に、医師はコンピューターという第三者が外来に入るようになって、快適そうに見えた。仕事の能率化が実感されることで看護師や事務職員の電子カルテへの抵抗感も次第に改善した。
 ・予想していなかった利点として、その場で参照できる情報(薬の毒性や避妊法、検査のリマインダーなど)による作業の能率化や、医師が診察室から出る時間の減少が挙げられた。
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結果の詳細
A導入前;この時点では、電子カルテに記載されるのは問題点リストと薬のリストのみであった。
①患者の視点
 ・ほとんどの患者が電子カルテがあることに気づいていなかった。
 ・患者の回答の殆どは紙でも電子カルテもどちらでもよいというスタンスだった。
 ・患者は電子カルテが導入されると、医師の仕事内容、筆跡、情報の蓄積と検索、信頼度、正確性、医師同士のコミュニケーションを改善し、外来中に医師が診察室を出ることが減ると予想した。
 ・患者はしばしば、セキュリティや技術上の問題を理由に、電子カルテの導入について中立的な意見であった。
②医療職種の意見
 ・事務職は、文字の判別性、データの正確性、カルテの捜索・ファイリングが必要なくなることを期待していた。
 ・医師が電子カルテ導入の障壁になると考えられていた。
 ・看護師は、タイピング能力不足や、子供が壊さないかなどを心配していた。また、移行期の仕事増大を懸念していた。

B移行期;医師のカルテ記載は、紙/電子カルテどちらでも可。看護師はバイタル・予診は紙と電子カルテ両方に記載した。
①患者の意見
 ・電子カルテの存在についてどれくらい気がつくかは人によってまちまちだった。
 ・スピードやそのアクセスの良さはいいと感じていた。その一方でセキュリティへの不安を感じていた。
 ・患者によっては、紙でも電子カルテでもどちらでもいいという姿勢を持つ人もいた。
②医療職種の意見
 ・看護師は記録の抜け落ちや重複があったが、時間がなかったり、やり方を知らないからであるという意見が出た。
 ・看護師は、医師のアイコンタクトや診察が減ることや、患者が医師の記載した内容を見ることによる悪影響や、守秘義務が守られない可能性(院内の他のスタッフがカルテをみる可能性など)、コンピューターの故障を心配していた。
 ・時間が節約できることや、リマインダーによって検査の漏れが防げる点を評価していた。
 ・また、、患者が診療により責任を持つようになる(データに興味を持ったりなどから)のではという予想があった。
 ・医師は、患者がみている中で患者の問題点を記載しないといけないことに不快さを感じていた。

C完全導入後;院内・院外のネットワークとつなぐことが可能となった。
①観察結果
 ・外来の時間は変化がなかった。情報を収集するために使う時間は少なくなった。
 ・医師はアイコンタクトが減る事を危惧しており、実際に電子カルテの時にカルテを見る時間の方が、紙カルテの時にカルテを見る時間よりも長かったがが、患者は医師のアイコンタクトや外来の質に満足していた。
②患者の意見
 ・安全性、情報へのアクセスの早さ、能率、情報共有、それから、「現代らしい」スタイルについて良く評価していた。
 ・セキュリティ面については評価が分かれていた。
③医療職種の意見
 ・看護師からは、作業の能率化、医師の記載が正確になった、データの参照が早くなった、新たなテンプレートのお陰で医師の入力が早くなった、医師のカルテ記載へのインセンティブにもなるという肯定的な意見が出た。
 ・患者がコンピューターの画面に興味を示すことで、より診療に積極的になる、と評価する者もいた。

D外来での医師の変化について
①診察室にコンピューターという第三者が入ることで患者とのコミュニケーションに変化が生じた。
 ・体とコンピューターの位置や、言葉でのコンピューターの説明、患者との情報の共有方法などを工夫していた。
 ・特に導入後は、モニターを患者にも見えるように配慮して、モニターとアイコンタクトを同時に行うようにしていた
 ・非言語的コミュニケーションがより多くなった。使っていない腕を患者の方へ伸ばしたり、足や膝だけ患者の方へ向けたり、診察台に寝ている時も、膝は患者に垂直に向かっていた。
 ・医師によっては、患者の言葉などをカルテにタイプして繰り返すようになったため、患者がより外来に集中し、自分の言葉を訂正する余裕が持てるようになった。
②医学的情報の共有が促進された。
 ・即座に情報が見れるため能率がまし、患者との情報の共有がよりなされるようになった。これに対して、紙カルテ時代に情報を患者と見ると言うことは殆どなかった。(移行期は情報を患者に見せる医師はまだ少なかった。)

【開催日】
2010年8月4日(水)

~家庭医は一回の診察でいくつの問題に対応しているのか?~

【文献】
John W.Beasley MD,et.al: How Many Problems Do Family Physicians Manage at Each Encounter? A WReN Study .Ann Fam Med. 2004 Sep-Oct;2(5):405-10.
文献へのリンク

【要約】

目的
 実は家庭医がどれくらいのproblemを同時に扱っているかはしっかりと調べられてこなかった。
 この論文の目的は、一回の診察で家庭医がいくつのproblemを扱っているかを明らかにすることと、それが実際にカルテと請求にどれくらい反映されているかを比較することである。実際にここには解離があり、家庭医のケアの複雑な側面を明確にしたい。

方法
Wisconsin Research Network(WReN)の29人の医師を対象とした。29人の内訳としては、9人が教育を行う医療機関勤務、20人が地域の医療機関勤務で、その20人の中で12人が僻地勤務であった。患者は18歳以上とした。
医師は連続して診た患者20人に対しての各人の診療の後にproblem logを記載してもらった。problem logはカルテのコピー、請求書のコピーとした。
●Problemは情報を収集し、かつ、意思決定を下した問題と定義した。
  ・例えば咳についてカルテに記載はあるが、それ以上何もなされていなければ咳は検査、治療が必要なかったと判断される。
  ・例えば糖尿病性の神経症のように部分症であるproblemも別に扱われていれば、糖尿病とは分けてproblemとする。
  ・既にある問題(糖尿病)も、他の問題(足関節捻挫)で緊急時の対応をした診察の際に扱われなければproblemとしならない。
  ・もともと分かれていた問題、例えば咳、胸痛も最終的に問題として肺炎などに統合されれば、1つのproblemとする。
 ・患者とは別の人物に対しての問題(例えば夫のうつ)もproblemとして扱う。
●カルテを調査していく際には、
 ・十分に記載がないとリスト化はしない。
 ・例えば既往に狭心症があっても、それ以上記載がなければだめ。
●請求書を調査していく際には、
 ・診察の際に提出される請求書に記載があるかどうかで判断する。

患者カルテと請求のために提出された診断名をこれらのproblem logにある情報と比較した。

結果

100802

女性 351人 problem 3.1個  男性 213人 problem 2.9個 (P=0.27)
  定期受診 3.2個  定期受診以外 2.4個(P<0.01)   7%が患者以外の人物と関連したproblem   精神的な問題、薬物、中毒などの問題はあまり請求書には反映されていなかった。(仮説通り)    例えば、高血圧はlogでは96回出てきて、請求書には74回記載あり(77%)。    精神的問題などはlogで137回出てきて、請求書には58回の記載のみ(42%) (P=0.02) 医師は一回の診察で平均3.05個の問題を扱ったと報告し、カルテ上には2.82個、請求上は1.97個であった。全ての対象患者の中で37%が3個以上の 問題があり、18%が4個以上であった。65歳以上の患者においては、平均3.88個であった。糖尿病患者では、平均4.60個であった。 限界  最も明確な限界点は、医師の自己記入方式をとっていることである。  医師らは本研究の仮説を理解しながらの診療を行っている。  カルテ記載しか見ていないことで、漏れがあるかもしれない。 レビューを一人でしか確認していない点も限界あり。 Problemの数をどのように決定していくのがよいのかという標準的手法が確立していない。 一つの州での研究ということで一般化できない可能性あり。 結論  家庭医療では多くの健康問題を並行して扱っているが、請求上のデータは正確に反映されていない。結論としては、家庭医療と、質評価の方法やガイドラインの推進、教育、研究、管理運営、資金などとが釣り合っていないことが分かった。 本研究などの結果を踏まえ、いくつかの領域では概念を再構築する必要がある。 ①質評価やガイドラインでは疾患特異的な項目だけを診るように縮小していくのではなく、患者全体に着眼するようにすべきである。 ②医師の教育、とくにプライマリケア領域に進む医師に対する教育は、従来の単一疾患orientedな教育モデルではないものにすべきである。 ③家庭医療におけるリサーチは単一疾患の問題に対するものではなく、全人的問題に着目するようにすべきである。 ④Administratorsとfunderはケアは多くの問題をはらんでいるということに注目すべきである。 【開催日】 2010年7月28日(水)

~家庭医の診療の包括性に対する予測因子~

【文献】
Wong E, Stewart M. Predicting the scope of practice of family physicians. CAN FAM Physician 2010:56:e219-24.

【要約】
目的
 診療所で働く家庭医の診療の幅と関連する要因を同定する
デザイン
・ 2001年のカナダ家庭医療学会による全国家庭医勤務調査の横断調査に対する2次的な単変量及び多変量解析
セッティング
・ カナダ
参加者
・ 診療のほとんどを診療所で実施する家庭医
1次アウトカム
・ 診療の地理的条件、及び、診療所を基盤とする家庭医によって提供される12の医療サービスの数で表現される診療の幅スコア(SPS:Scope of practice score)
・ 12の医療サービス
麻酔
慢性疾患のマネジメント
救急医療
施設在住の高齢者に対する診療
在宅医療
入院ケア
緩和ケア
予防医療
患者が他の医療機関・福祉サービスを利用する際の調整
メンタルヘルス(精神療法とカウンセリング)
外科サービス(一般外科、外科補助、小外科)
周産期ケア(出生前、分娩、分娩後)

結果
・ 多変量解析モデルでは参加者の中でのSPSの多様性の35.1%を説明することができた。州の違いや地域が郡部かどうかという要素が、SPSの多様性の 30.5%を説明していた。男性、若年、グループ診療、入院ベッドへのアクセスの良さ、臓器別専門医へのアクセスの悪さ、大学などでの教育ユニットにおけ る診療、混合型診療報酬支払い、専門研修終了後の更なる系統的教育、診療現場での多様な医療職種の参加は高SPSと相関があった。

結論
・ 地理的要因が家庭医診療の幅の最大の要因であった。医師自身の要因、周辺の医療資源の使いやすさ、診療組織自体の要因はいずれも関連は弱かった。地理的要 因が診療の幅にどのようにそしてなぜ影響しているのか、そして、住民のニーズと独立した診療の幅の広さが住民に利益を与えるのかどうかを調べることが重要 である。この研究は、家庭医療を刷新しようとする努力の中でも、混合型診療報酬支払い、多様な医療職種の参加を促進する試み、グループ診療を養成する試み を支持していると考えられる。

【開催日】
2010年7月28日(水)

~睡眠時無呼吸症候群の診断~

【文献】
Overview of obstructive sleep apnea in adults UpToDate 18.1

【要約】
イントロダクション
閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSA)は一生治療が必要となるよくある慢性の疾患である。
 特徴的な症状としては、
・睡眠時の不定期な異常な呼吸パターン(閉塞性無呼吸、低呼吸、覚醒と関連する努力性の呼吸)
・睡眠の中断による日中の症状(眠気、倦怠感、集中力の低下)
・いびきや不穏、息を吹き返すような鼻息のような睡眠中の不快な症状である。
 長年の睡眠中の低酸素血症や繰り返す覚醒により臓器障害をきたす。心血管系のリスクのある患者、AHI(the apnea hypopnea index) (一時間当たりの無呼吸低呼吸のイベント) が30以上の患者は死亡のリスクが高くなる。

疫学
 26%の成人がOSAの高いリスクを持っていると見積もられている。2~5%のみが昼間の眠気など少なくとも1つの症状を持ち、AHIが5以上と診断されている。AHIが5以上あっても無症状であることが一般的。
 ・年齢:18~45歳で増加する。
 ・人種:35歳以下のアフリカ系アメリカ人に多い。アジア系はアメリカ人と同等。
 ・性別:女性の3~4%、男性の6~9%

リスクファクター
・肥満:BMIや首回り、ウエストとヒップの比が増加するとOSAが進行する。
・顔面や上記道の軟部組織の異常:上顎骨の異常、小さな下顎骨、幅広い顔面、扁桃肥大、アデノイド
・現在の喫煙者は過去に一度も喫煙した事のないひとに比べて3倍。
・鼻腔粘膜の腫脹
・DM患者

臨床症状
・いびき、日中の眠気:最も共通の症状
・睡眠中の不穏、大きないびきによって終結する静かな時間、集中力低下、夜間の狭心痛、呼吸困難感、喘ぐ感じ、息が詰まる感じ

診断
・ポリソムノグラフィ:first lineの検査
・ポータブルモニタリングも受け入れられる検査

100721

重症度
・軽症:AHIが5以上15以下。HTや肺性心、多血症は一般的にはない。30%の患者が治療に反応する。
 ・中等度:AHIが15以上30以下。REM睡眠中や仰向けでのAHIが増加する。日中の活動性低下、自動車事故の増加がみられる。HTが見られるようになる。肺性心に伴う日中の症状はふつうみられない。CPAPにより、日中の眠気、QOL、血圧が改善する。
 ・重症:AHIが30以上。日常生活の活動に障害ときたすような昼間の眠気。心不全、呼吸不全症状、夜間の狭心痛、多血症、肺性心による症状が出現する。座っている時に寝てしまい、事故のリスクが高くなる。治療によって症状は軽快する。

【開催日】
2010年7月21日(水)

~カルテを利用した教育方法についての検討~

【文献】
Warren Rubenstein:Medical Teaching in Ambulatory Care 2nd Ed:P66-72, 2003

【要約】
TEACHING STRATEGIES
・患者:ケースディスカッション、ケースレビュー、直接観察
・カルテ:カルテレビュー、カルテを素にした再想起、標準化されたカルテcheck(今回はここ)
・教育技術:ロールプレイ・シュミレーション、短く教訓的なプレゼン

カルテを利用したもの
カルテレビュー
1説明:
 カルテごとに病歴、所見、検査、治療の記載について順に見て、必要なときに議論をする。
 同時に読みやすさ、フォーマット、長さ、徹底具合も見ることが出来る。
2適応:
 外来を一人でこなせるが、外来後にはレビューが求められる程度の学習者に適応がある。
学生や初期のレジデントの場合では内容をカルテの書き方にのみ集中するほうが良い。
3利点:
 指導医のcheckによるケアの安全性の確保
 書かれたカルテの質を保証する
 言葉だけの報告に依存し難い
 事例を議論や教育の資源とすることができる
 カルテの書き方や電子カルテの使い方の指導が可能となる
4限界:
 研修医のカルテ記載の質と量に依存する
 問診や身体診察のスキルは評価できない
5手間:
 通常業務への妨げは最小限
 患者を診終わってからの時間を設定
6例示:省略
7コツ:
 教育的好機を常に意識しておく
 この方法を利用するということは診療カルテを重視しているというメッセージを発している
 質の保証のための大切なツールになる

カルテを素にした再想起
1説明:
 1対1の教育セッションであり、少なくとも30分は必要となる。
 いくつかの患者のカルテを学習者に選んでもらい、ランダムに二つほど選ぶ。
 カルテを一冊選んで渡し、段階を追った形式で患者を思い起こしレビューするよう依頼する。
 カルテは、何が起こったか詳細に思い出すためだけでなく、その外来中にどのような思考状態だったのかという想起も刺激する。以下のように聞いてみる。
 「この時点でどう考えていましたか?」「なぜこれらの質問をしたのですか?」
「どうしてそう決めたのですか?」「なぜそこで止まったのですか?」
「他に考えていたことは?」「この時点でのもっともらしい診断は?」
「このオプションを選んだのはなぜ?」
これらを診察(病歴、診察、鑑別診断、重症度、疫学、アクションプラン、検査の選択、治療)のそれぞれの段階で行い、次の段階に行く前に思考過程を問うことを続ける。想起を支援し続けることが必要で、責めてはいけない。
2適応:
 学習者の臨床的な根拠と意思決定プロセスを理解し、改善するための評価や支援に利用できる。
 特にマネージメント不足、一歩遅れてしまう、安定した意思決定が出来ないように見えるなどの患者のケアに困難を抱えた学習者には有用である。
3利点:
 意思決定プロセスをレビューするための強力な教育方略となる。
 カルテそのもので「実際に何が起きたのか?」を詳細に知るための手がかりとなる 
4限界:
 時間が必要
 通常のカルテレビューとは異なった特別な時間を必要とする
 (記憶の問題で)診療後48時間以内には行ったほうが良い
 学習者に不安を与える得る方略なので、指導医-学習者の信頼関係が必要とされる
5手間:
 通常の患者ケアのcheck以外の余計な時間が必要なる
 時間は通常診療もしくは個人の時間が消費される
6例示:
 ここ二日で診た印象的な患者さんを4例選んでもらう。そこから2例選ぶ。学習者の仮説を評価しながら、次回は仮説意外での短い議論となるための準備をする。
7コツ:
 偶然のバイアスが入るが、2週間に一回以上は行わないようにする
 問題のある学習者のみならず、高いレベルの学習者にも意思決定プロセスを教えるため利用される時にはビデオレビューと並行して開催することができる

標準化されたカルテcheck
1説明:
 カルテレビューを完成させるもう一つの方法。
 自分のペースで行うカルテのオーディットで15-30分あれば可能である。
 事前に後日開催することを説明し、checkリストの基準を作って、カルテのどこをcheckするのかを案内しておく。十分で包括的な病歴聴取が出来ているのかの有効で信頼性のある方法となる。
 そのために自分の診療所で良質なcheckリストをつくる事は良いプロジェクトとなるし、カルテレビューの際に、どんな情報を重視しているのかを伝える方法となる。
2適応:
 通常業務内に顔のあわす機会が少ない場合の教育方法
 余分な時間に学習者がいなくても、学習者の仕事ぶりをレビューすることができる
3利点:
 指導医のcheckによるケアの安全性の確保
 書かれたカルテの質を保証するものとなる
 時間を選ばない
 Checkリストは、教育者が行うべき特定のcheckの備忘録として機能する
 記載された情報によって、学習者のケアのマネージメントやカルテの記載を支援してくれる
 学年のすすんだシニアレジデントに対して、自律して働いた後で評価をすることを可能にする
 直接観察よりは時間が短くてすむ、しかし教えるべき修正点の情報を集める必要がある
4限界:
 教育者による精密な吟味と、レビューの結果をまとめて伝える機会で、カルテレビューよりは時間がかかる。
 学習者のカルテ量に依存する
 問診や身体診察のスキルは評価できない
5手間:
 Checkリストの考慮と準備の時間、実際のレビューの時間が必要となる。
6例示:省略
7コツ:
 もととなるCheckリストを事前に渡しておく。
 不意な評価ではなく、計画された学習経験とする。

【日付】
2010年7月21日(水)

~うつ病治療薬の選択と治療上の注意点~

【文献】
Initial treatment of depression in adults。UpToDate ONLINE18.1

【要約】
総論 
抗うつ薬の試験の文献を評価するときには、Publication biasを考慮しなければならない。(政府または独立したスポンサーがわずかで、製薬会社と出所不明が多い。)

薬の選択 
・ほとんどのシステマティックレビューにおいて結論づけられていることには、臨床的にもQOLにおいても、治療コストについても、特定の抗うつ薬のなかで、どれを特別選ぶべきかということはない。
・何の薬を使うかということよりも、患者が受け入れられる薬を使って治療することと、症状を寛解させるのに十分な容量を使用するということのほうが、重要である。
・SSRIsがプライマリケアではしばしば第一選択として使われている理由としては、副作用が少なく、過量投与でも、危険が少ない点である。

the American College of Physicians (ACP)からの2008年臨床診療ガイドラインでは、以下の12の第二世代抗うつ薬から治療を開始することを強く勧めている。

ブプロピオンbupropion(NDRI;ウェルブトリン) 国内未
シタロプラムcitalopram(SSRI;セレクサ) 国内未
デュロキセチンduloxetine(SNRI;新☆サインバルタカプセル)
*一日一回投与のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
エシタロプラムescitalopram(SSRI;レクサプロ) 国内未
フルオキセチン fluoxetine(SSRI;プロザック) 国内未
フルボキサミンfluvoxamine(SSRI;デプロメール、ルボックス)
ミルタザピン mirtazapine (NaSSa;新☆レメロン、リフレックス)
*ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬
ネファゾドンnefazodone(SNRI;サーゾーン) 国内未
パロキセチンparoxetine(SSRI;パキシル)
セルトラリン sertraline(SSRI;ジェイゾロフト)
トラゾドンtrazodone(SARI;デジレル,レスリン)
ヴェンラファキシン venlafaxine(SNRI;エフェクサー) 国内未
☆ネファゾドンnefazodone(SNRI;サーゾーン)には肝細胞毒性あり

・過去に受け入れの良い薬で治療に成功した患者は、うつ病が再発した際には、同じ薬を再開すべきである。
・薬の選択の際には、臨床医の使いやすさ(慣れ具合)、価格、好みと副作用を考慮すべきである。

副作用
・第二世代を評価した203の試験のシステマティックレビューではmirtazapine and paroxetineが他の第二世代抗うつ薬に比べて、体重増加がおこりやすい。
・ うつ病自体が、糖尿病を進展させるリスク要因である。65歳以上の1000人を10年追跡した前向き研究では、うつ病の人は、抗うつ薬による治療に関わら ず、うつ病を持たない人に比べて2倍以上糖尿病に罹患する率が高かった。(hazard ratio 2.3, 95% CI 1.3-4.1) 
・ ケースコントロール試験において、うつがあり、糖尿病がないおよそ166,000人の患者のうち、抗うつ薬の中等量~高用量の長期間(2年以上)の使用 が、顕著に糖尿病のリスク増に関係した。(incidence rate ratio 1.8, 95% CI 1.4-2.5)
糖尿病のリスク 増加の見積もりは、amitriptyline (incidence rate ratio: 1.43, 1.03-1.98), fluvoxamine (incidence rate ratio: 4.91, 1.05-23.03), paroxetine (incidence rate ratio: 1.33, 1.02-1.73), and venlafaxine (incidence rate ratio: 2.03, 1.18-3.48)
・他の副作用については一般的な内容であったので割愛。

用量
・少量から開始することで、抗うつ薬の副作用を最小限にすることができる。
・一週間ごとに最大量まで漸増する。
・薬はたいてい朝に内服する。内服後、8時間から12時間は穏やかな興奮作用があり、眠りを阻害する可能性がある。
・SSRIは、寛解を達成するためには典型量より高用量を必要とする。
・三環形抗うつ薬は、より少量でも高容量と同程度に効果があるようす。

フォローアップ
・治療開始から治療に反応するまでの時間は2週間から6週間と考えられている。
・ある試験では治療開始から2週間以内の早い反応は、治療の安定した効果と寛解の継続を予測させる。
・2週間過ぎても反応がない場合、薬の量を増量しなければならない。
・最大量で8~10週間経過しても反応がない場合は、異なる抗うつ薬(同じまたは異なったクラスの)を試すか、精神科に紹介しなければならない。
・部分的な反応の場合は、bupropion(国内未) or buspirone(国内未)を追加するか、患者が薬の追加を好まなければ、他のSSRI、SNRIに換える。
治療期間
・抗うつ薬は一般的に、最初のうつのエピソード後、最短でも6-9ヶ月内服しなければならない。
・患者による薬の中断は多い。
・再発も多い。特に3回以上繰り返している例は薬の継続が望ましい。

精神科へ紹介するケース
・ファーストラインの薬を患者が受け入れられない、または効果がない場合
・思考障害を伴った重症なうつか、自殺衝動がある場合
・薬品中毒や精神依存、薬物乱用を伴っている場合
・患者が認知行動療法を強く望んでいる場合

【日付】
2010年7月14日(水)

~口腔潰瘍の評価~

【文献】
Vinidh Paleri, et. al: Evaluation of oral ulceration in primary care. BMJ 2010, 340: 1234-1238.
BMJ “Clinical review” seriesより

【要約】
このレビューの目的
口腔潰瘍の鑑別の全体像、悪性と非悪性疾患の鑑別を容易にする評価法の提供

口腔潰瘍の原因
(1)急性,非腫瘍性の口腔潰瘍
外傷(とがった歯牙、入れ歯、頬粘膜を噛む)
軽度のアフタ性潰瘍(疼痛を伴う癒合しない1cm未満の円形の潰瘍。灰白色をベースとし周囲に発赤を伴う。多くの患者において原因は不明。典型的には10日以内に治癒するが再発を繰り返したり、持続する場合もある)
薬剤(NSAIDs、降圧薬、ビスフォスフォネート、ニコランジル、化学療法)
感染(ヘルペス関連がほとんど、HIV、梅毒、結核、Actinomycosis)
(2)慢性,非腫瘍性の口腔潰瘍
外傷、重度のアフタ性潰瘍、扁平苔癬、薬剤、慢性的な感染
(3)腫瘍性の口腔潰瘍

どんな所見が悪性を疑わせるか?~Box3
(1)悪性疾患の可能性を上げる所見
・3週間以上改善しない痛みを伴わない潰瘍 ・硬結を伴い、潰瘍の周囲に炎症所見のない潰瘍
・辺縁がロールし、肥厚している潰瘍 ・タバコ、アルコール ・年齢(50歳以上)
・男性 ・前癌病変の存在 ・口腔潰瘍の病歴が過去ない ・局所に潰瘍を発症しやすい要因が存在しない
・潰瘍を発症しやすい全身の要因がない ・口腔の扁平上皮癌の病歴
(2)悪性疾患の可能性を下げる所見
・そのたびに治癒する再発性の潰瘍 ・同時に発症する複数の潰瘍 ・群発する潰瘍 
・全身疾患とくに膠原病に関連して発症した潰瘍 ・水疱形成 ・疼痛と出血を伴う歯肉に関連したもの
・局所に明らかな要因のあるもの

口腔潰瘍の患者へのアプローチ

100719

詳細な病歴が重要(急性?再発を繰り返す?慢性?最近の歯科治療?タバコやアルコール、薬剤?併存する疾患の有無)。
身体所見: 口唇、頬粘膜、口腔底、歯牙、歯肉、硬口蓋、舌、臼後三角部。潰瘍の分布や広がり、局所所見、潰瘍に関連する所見(とがった歯牙、入れ歯など)、口腔外の所見(特にリンパ節腫脹)

専門医への紹介の前に家庭医のできること
対症療法、口腔潰瘍の素地になりやすい状態(鉄、ビタミンB12、葉酸欠乏)の改善、タバコ・アルコール問題への取り組み
悪性疾患の可能性がない、低い場合もつらい症状がなかなか改善しない場合は紹介を。

口腔潰瘍はスクリーニングするべきか?
スクリーニング法は視診が適切。
現時点ではGeneral Populationに対して実施することを推奨するエビデンスは不十分。
リスクの高い人たちが受診したついでに、実施するのがcost effectiveであろう。

【開催日】
2010年7月14日

~外来での待ち時間対策~

【文献名】
待ち時間革命 前田 泉 著 日本評論社 2010.

【要約】
詳細
医療のoutcome:臨床効果 + 患者満足度

患者さんの総合満足度:影響が多い順に ①>②>③
①医師に対する満足度
②症状改善や不安・悩みの軽減
③受付・看護師・待ち時間

待ち時間=医師の診療時間×待ち患者数 (待ち時間はゼロにはならない, 患者さんもゼロは望んでいない)

対策
患者の待ち時間に対する不満=実際の体験-待ち時間期待値

・実際の体験:実際の待ち時間
 →改善の方針:待ち時間の短縮…短時間で満足度upのコミュニケーション, 時間予約制(ハイブリッド)
        待ち時間の活用…問診表(受診理由や解釈モデル), コメディカルによる問診や指導

・待ち時間期待値:診療所…予約あり 20分, 予約なし 38分
 →改善の方針:期待時間のコントロール…事前の待ち時間予告, 待合での状況報告・声かけ

【開催日】
2010年7月7日

~ある程度喘息に移行しやすい患児を見分ける方法: APIを知ってましたか?~

【文献名】
A Clinical Index to Define Risk of Asthma in Young Children with Recurrent Wheezing, Am J Respir Crit Care Med Vol 162. pp 1403-1406, 2000.

【要約】
方法
1246名の幼児とその家族を対象としたThe Tuscon Children’s Respiratory Studyと呼ばれる長期の前向き研究におけるデータを利用した。
親の喘息の既往及び2、3、6、8、11、13歳それぞれの時点での子供の呼吸および健康状態を親に質問紙で確認している。
2、 3歳の時点での喘鳴の有無とその程度(とても稀~ほぼ毎日までの5段階)で確認し、いずれかの時点で喘鳴が聞かれたら”early wheezer”とし、程度のスケール3以上で喘鳴があれば”early frequent wheezer”とした。また、6、8、11、13歳の時点で、医師によって一度でも喘息と診断されたかあるいは診断されなくても3回以上の喘鳴があれば “active asthma”とした。

Majorクライテリア:
 1.医師により診断された両親いずれかの喘息の病歴
 2.医師により(2、3歳の時点で)診断されたアトピー性皮膚炎
Minorクライテリア:
 1.医師により(2、3歳時点で)診断されたアレルギー性鼻炎
 2.(2、3歳の時点での)上気道感染と関係しない喘鳴
 3.(平均10カ月の時点での)4%以上の好酸球増多              (以上Table1)

厳密なAPIとしてはearly frequent wheezerであって、Majorクライテリアの1/2を満たすか、Minorクライテリアの2/3を満たす場合を陽性とした。
緩いAPIとしてはearly wheezerであって、同様にMajor1/2、Minor2/3を満たすものを陽性とした。

結果
緩いAPI陽性の場合は、陰性の場合にくらべて6、8、11、13歳の時点で2.6-5.5倍active asthmaになりやすく、厳密なAPI陽性の場合は、陰性の場合に比べて同様に4.3-9.8倍active asthmaになりやすい(Table5)。
厳 密な基準では特異度(=active asthmaを呈さない就学児がAPI陰性である割合)は6、8、11、13歳どの時点でも96%以上と高く、6、8、11、13歳のうち少なくともどれ か一つの時点でactive asthmaとなる陽性的中率(=API陽性の幼児が就学期にactive asthmaを持つ割合)は76%である(Table6)。
陰性的中率(=API陰性の幼児が就学時にactive asthmaを持たない割合)についても厳密な基準あるいは緩い基準ともに84%以上と高い。

【開催日】
2010年7月7日

~家族療法家の介護家族とのかかわりの視点から学ぶ~

【文献名】
「介護者と家族の心のケア―介護家族カウンセリングの理論と実践」 渡辺俊之著 金剛出版 2005年

【要約】
※注 この著者は精神科医で精神分析をベースにする流派である。本全体の要約は内容が多岐にわたり困難であり、家庭医療外来のセッティングで役立ちそうな情報を私のほうで抜粋して要約とさせて頂く。

第Ⅰ部「家族が介護を抱えるとき」
第1章 介護者の心理
・ 介護の動機付けは、要介護者への強い愛着と依存、投影性同一視(自分が本来体験したい喜びを相手に体験してもらって満足する)自己愛を満足させたい(相手 を思うようにコントロールしたい無意識)といった願望、世間体を気にする気持ち、罪悪感、償い、また純粋な愛他主義(自己犠牲をして他人のために尽くす) と幅があり、これらに介護者の人柄が影響する。そして動機付けを理解することは介護者の心理の理解の最初の鍵となる。(P15~25)
・配偶者同士の介護の場合、夫は妻に対して無意識的に母親のイメージを投影し、妻は夫に対して子供のイメージを投影することが多い。嫁が介護する場合は、家族内に無意識的な序列付けができている場合がある。(P30)
・依存する人の理由は、①元々の性格特性②退行からの回復の遅れ③依存心に潜んだ攻撃感情④病手的な自己愛。依存しない人は、①性格特性②基本的信頼感の欠如による依存への恐怖③人間関係が苦手。(35
・ 介護は『喪失との出会い』である。親の心身の機能が低下していくのをみて生活するのは悲しい体験である。介護のために自分の時間、空間、社会的役割を失 う。介護ストレスがたまると、負担感や身体疲労が生じてくる。介護者の不安は①要介護者の将来に関する不安②介護行為そのものに対する不安③取り残されて いく不安。(P45) 

第2章 介護のストレス
・身体疲労。排泄の介護が苦痛。介護者の動機づけと要介護者のニーズの不一致。要介護者と介護者関係にもともと問題がある。認知症など要介護者側の要因が強く、良好な関係が築けないとき。介護者と介護者でない家族メンバーとの関係から生じる。(P58)
・ストレスへの反応①攻撃適応:外部にむかって不満を発散させる②逃避適応:現実をさける。一人の時間をもつ。③防衛適応:抑圧・知性化・退行・身体化。(P62)

第3章 介護が提供してくれる肯定的感情
・介護によって自己評価が高まるためには、要介護者や他の家族メンバーから肯定的フィードバックが必要である。
自己評価や自尊感情が高い人は、自分だけでなく他人に配慮できるようになる。その中で、ケアとは『他人の成長を願う心理である』(P70)

第4章 さまざまな介護家族
・ 高齢者の介護家族を援助するポイントは、高齢者の家族内での役割を把握することである。障害者の場合。障害者に対する家族の考え、を把握することが重要で ある。認知症の場合、負担のかかる問題行動や精神症状を取り除いてあげることが重要である。慢性疾患をもつ子どもの家族は、ライフサイクルを念頭において 情報を提供する。精神障害者の場合、家族内にある障害者のイメージを共有する。ターミナルケアにおいて、家族が自分自身の死を受容していないと適切な介護 ができない。(P90)

第Ⅱ部 介護家族カウンセリングの基礎と実践
第5章 介護家族を理解するための家族療法の理論
第6章 介護家族カウンセリングとは
・介護者個人の心理問題(個人システム)、介護家族の構造と機能(家族システム)、家族と地域専門職の連携(地域システム)を扱い、介入が一番効果的なシステムを選択することである。(P116)

第7章 介護者への精神療法
・ 人の心には理解できないことも、共感できないこともたくさんある。何か言葉をかけるよりも、黙ってそばに座って、何もできない自分の無力感を感じ、じっと 介護者の無力を感じてあげることのほうが、共感的だと思う。援助者の心構えとして、介護者が自分なりに努力してきた生活を尊重することである。
そして彼らの努力に敬意や尊敬を払う気持ちが大切である。(P118) 
・把握すべきこと①介護者の介護能力で、これは知識と技術からなる。加齢、病気、障害についての知識。介護保険制度についての知識。介護そのもの(食事、排せつ、清潔への対応)の知識。技術。
・負担感への対応:介護における潜在的なストレッサーの発見。それをどのストレス反応(上記)を使えば負担感軽減に役立つか。(P127)
・悲哀への対応:怒りや攻撃衝動が支配的になる抗議の段階、落胆が襲ってくる絶望の段階、心から断念しあきらめる再建の段階の、どの段階にいるか?そして投げられた感情に対する自分自身の感情の処理が重要。(P134)
・ 援助者は介護者が自分に何を投影して、何を求めているかを理解し、その背景にどのような転移が生じているか心得ておくと、介護者にかかわりやすくなるだろ う。援助者は時に自分の語ることで介護者に対して、援助者の現実的な側面を伝え、安心感を伝えることも大切である。(P135)
・逆転移を形成する背景には①援助者になった動機づけ②援助者がおかれている現状や立場③介護者にむけて生じる援助者の転移④介護者が援助者に向けた転移に対する反応。(P140)
・介護者のセルフケア能力を高める:①ストレスマネージメント②家族内コミュニケーションの促進(お互い何も言わなくてもわかりあっているという神話を捨てる)③外部とのコミュニケーションとの促進(本音を打ちあける人をもつ。介護者に仲間はいるか?)(P148)

第8章 介護者への家族療法
・ジェノグラムの作成:介護の歴史を聞きながら、共有する。家族に病人や障害者はいなかったか?
当時はだれが介護していたか?「家いえ」の在り方の違いが介護に関した葛藤の根本にあることは案外多い。またジェノグラムに現在の家族の健康状態、介護や看病をサポートしてくれる家族以外の人を書き込む (P154)
・介護家族の評価:基礎データ。年齢、職業、健康状態、習慣、日常生活、経済状況、住環境。地域との関係。(P156)
・家族構造の評価:コミュニケーションの評価。送信と受信はできているか。その伝達手段は。家族メンバーの家族内・外の役割。介護に関係した役割関係。
・以上から、「目標が設定される」その家族の介護能力と価値を合わせた目標設定が大事。要介護者と介護者の幸せとは何であろうか?(P164)
・ 介入方法①教育的アプローチ:介護者における身体と精神両面の健康管理を第一と考え、そのためにどんな知識を提供すればよいか再考する。家族に対して病気 や障害の知識についてもう一度確認する作業②否定的感情の緩和:第三者の関与じたい、これに寄与する。家族とのラポール形成が重要③家族のコミュニケー ションの改善:家族会議での座り方、視線を合わせているか、など非言語的な観察も大事。
言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションの矛盾をみつけたら、その会話の受け手に体験を聞いてみる。(P160)

第9章 介護家族を支える地域サポートネットワーク
第10章 介護家族カウンセリングとコラボレーションの事例

【開催日時】
2010年6月30日