アスピリンとワーファリンを併用している安定した心房細動患者ではアスピリンの中止を

【文献名】
1.    Gregory Y H Lip: Change Page: Don’t add aspirin for associated stable vascular disease in a patient with atrial fibrillation receiving anticoagulation. BMJ: 2008; 336: 614.

【要約】

【キーポイント】
• 安定している慢性心房細動、安定している心血管疾患患者においてはワーファリンにアスピリンを追加しても脳梗塞や心血管イベントの予防には有効ではない。ワーファリンとアスピリンの併用は、出血のリスクを高くする。
•  安定している心房細動患者では、アスピリンとワーファリンを併用している場合、中止するべきである。

【臨床的課題】
慢性心房細動患者においては、ワーファリンのような抗凝固薬は、脳梗塞の予防に有効である。しかし、陳旧性の心血管疾患や陳旧性脳梗塞をもつ慢性心房細動の患者において、抗凝固薬にアスピリンのような抗血小板薬が加えられていることも多い。

【変化のためのエビデンス】
抗凝固薬とアスピリンを用いている心房細動患者において、ワーファリンのみで治療している患者とアスピリンにPT-INR<1.5の抗凝固療法を行っている患者、ワーファリンのみで治療している患者とアスピリンにPT-INR2.0-3.0の抗凝固療法を行っている患者で比較し、ランダム化試験を行った。 アスピリンにPT-INR<1.5の抗凝固療法を行っている患者においては、ワーファリン単独患者と比較し違いはなかった。アスピリンにPT-INR2.0-3.0の抗凝固療法を行っている患者においては、一つの研究では、アスピリンに抗凝固療法を行っている群においてワーファリン単独患者と比較し出血が有意にみられたため中止となった。ワーファリンを用いた中等度からハイリスクの心房細動患者、経口トロンビンインヒビターを用いた中等度からハイリスクの心房細動患者に対して、それぞれアスピリンを加えた群と加えなかった群を比較した2つの大規模RCTを後ろ向きに分析したところ、アスピリンを加えた群と加えなかった群で、脳梗塞や心血管イベント(死亡もしくは心筋梗塞)において効果に差がなかった。特に、アスピリンとワーファリンを用いている心筋梗塞患者の割合はワーファリン単独患者とほぼ変わりがなかった(0.6% and 1.0% a year respectively)。しかし、アスピリン追加使用患者は、ワーファリン単独患者に比較し、出血のリスクが高まっていた(major bleeding 3.9% and 2.3% a year respectively; P<0.01) いくつかのコホート研究においても、PCIを受けている抗凝固薬を使用中の患者(only a proportion of patients had atrial fibrillation)において抗血小板薬を追加することにより、出血のリスクが上昇することが指摘されている。心房細動をもつ患者10093名を対象にしたあるコホート研究においては、抗血小板薬治療が出血のリスクを上昇させることが指摘された(relative risk 3.0)。 【変化への障壁】 心房細動患者や冠血管疾患患者にアスピリン+ワーファリンを用いることについては、アスピリンは冠血管疾患のような血小板の多い血栓をきたす疾患に用いる、ワーファリンは心房細動のようなフィブリンが多い血栓をきたす疾患に用いる、という事実がベースとなっていることから認識されている。 この原則は特に、アスピリンにクロピドグレルを12カ月投与することが推奨されている急性冠疾患やPCIを受けた心房細動患者 で認識されている。予防効果に対するエビデンスはまだ不足しており、3剤併用療法の出血リスクについても重要視されていないが、脳梗塞のリスクが高い心房細動患者の場合にはワーファリンは処方される。また、人工弁をもつ心房細動患者においては、ワーファリン+アスピリン療法が推奨されている。’不安定’な冠血管疾患や弁疾患をもつ心房細動患者においては、併用療法のリスクに対する長期的利益はまだ知られていない。 しかし安定した冠血管疾患においてワーファリンは有用な抗凝固薬となりうるが、アスピリンの追加は時にリスクに比較し出血のリスクが高くなる。しかしアスピリン追加療法の利点は少ないが、これはすべての抗血小板薬にも適応される訳ではない。例えば、中等度からハイリスク患者に対して、抗血小板薬であるCOX阻害薬と、アセノクマロール(クマリン系抗凝固薬:本邦未承認)やこれらの併用療法を行った群を比較したある無作為試験では、抗凝固薬単独療法に比べCOX阻害薬とアセノクマロールを併用した群に比較し、一次アウトカムは低い結果となり、出血の副作用は抗凝固薬と併用療法に有意な差はなかった。 【どのように私たちの診療を変えるべきか?】 臨床家は、心房細動患者や安定した心血管疾患患者においてのアスピリンとワーファリンの併用療法が、脳卒中や心血管イベントの予防につながっておらず出血のリスクを増大させていることに気づくべきである。もしアスピリンを使用している心房細動患者が弁膜症の診断を受けワーファリンによる治療が必要となった場合には、アスピリンは中止されるべきであり、ワーファリンをINR2.0-3.0の範囲で使用するべきである。一方、アスピリンとクロピドグレル(ワーファリン以外の薬剤)の併用療法は、心房細動の脳卒中のハイリスク患者において、アスピリンとワーファリンの併用療法と同じではない。そのため、ガイドラインでは特にアスピリンとワーファリンの併用療法について中止することを強調するべきである。 【考察とディスカッション】 ワーファリンとアスピリンの併用を行っている患者がみられたため、今回この文献を読んでリスクを考慮しながらアスピリンの中止ができることを理解できた。 安定した心房細動患者に対してワーファリン単独療法とアスピリン+クロピドグレルの併用療法についても同時に調べたところ、以下のような文献を見つけた。 the ACTIVE Writing Group on behalf of the ACTIVE Investigators: Clopidogrel plus aspirin versus oral anticoagulation for atrial fibrillation in the Atrial fibrillation Clopidogrel Trial with Irbesartan for prevention of Vascular Events (ACTIVE W): a randomized controlled trial. The Lancet, Volume 367, Issue 9526, Pages 1903 – 1912, 10 June 2006. Primary endpoint を脳塞栓とした研究で、心房細動の患者に対してワーファリン単独の方がアスピリン+クロピドグレルのよりも優れているという結果であった。 【開催日】 2011年2月16日(水)












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