金銭的インセンティブは会社の業績を上げるか?

― 文献名 ―
 ジェフリー・フェファー.ロバート・I・サットン.「事実に基づいた経営」.155-190.東洋経済新報社.2006.

― この文献を選んだ背景 ―
  先日のFMS-EoでのHCFMを高機能組織とするためのハード面整備の議論の中で,人事考課の話題が言及された.医療の分野では人事考課という考え方について,どのような判断材料をもっているべきなのか.この点についての組織知を拡張したいと考え本文献を選択した.

― 要約 ―

【事例の紹介】
(事例の要約)「金銭的インセンティブは,単純で,明確で,誰もが納得し,ズルができない指標があって,どんなやり方をしてもその指標を上げることだけを考えればよい」という局面でこそ有効である.
1.サフェリテ・グラスの実践(アメリカの自動車用ガラスの最大手)
 金銭的インセンティブシステムで44%生産性が向上した.サファリテのいくつかの特徴はインセンティブシステム成功の重要な鍵と思われる.ⅰ)仕事は定型の作業として覚えることができ,独立して作業できる.チームワークは必要なく,個人ベースのインセンティブでチームワークが損なわれることはなかった.ⅱ)品質をモニターすることが容易であったため,従業員は仕事の質を犠牲にして早さを求める分けにはいかなかった.ⅲ)従業員のゴールは単純明快で一元的だった.ガラスを落とさないように気をつけながら,できるだけ早く組み込めばよかったのである.「出来高が簡単に測れ,品質の問題もすぐわかり,誰がやったか明確」ということが,個人のインセンティブを使うのに適していた.インセンティブシステムの失敗は,インセンティブが機能しなかったのではなく,機能しすぎた場合が多い.

2.ゴミ回収ドライバーにインセンティブシステム導入(ニューメキシコ市アルバカーキ市)
 「5時間で回収を終わったドライバーは,5時間分の時給と,3時間分のインセンティブ報酬を受け取ることができる」というもの.結果は,2002年に最もインセンティブ報酬を受け取った24人のドライバーのうち,15人は埋め立て場にいつも重量制限をこえたトラックで現れていた.また,気をつけていれば予防可能な事故が頻発するようになった.予想外の結果として,「安全性の低下,オペレーションコスト,法的責任,顧客不満の上昇」が認められた.

【金銭的インセンティブが行うこと】
1.インセンティブによる動機付け効果
 やる気が高まったとしても,上がるのは努力量であって,少なくとも短期的には能力まで向上するわけではない.努力量を上げさせようとする仕組みは,基本的に努力をすればするほど良い結果が得られることを前提としている.この仕組みは従業員がどうしたら仕事を効果的にできるかが分かっており,会社の仕組みや技術が業績の本当の問題ではない時に初めて機能する.
 金銭をやる気の源泉にする仕組みは,仕事の成果は個人次第であり,個人の行動が組織の業績につながることを前提としている.しかし,ある電力会社の幹部は報酬が会社の業績とリンクしていたのだが,電力会社のコストや単価は気温で決まり,フロリダの夏はあつければあついほど電力が消費された.この幹部はフロリダにやってきた夏に報酬が大幅アップした.彼は「フロリダの気候をコントロールできるならインセンティブシステムは有効だろう」と皮肉を漏らしていた.このように,もし業績が社員のせいでなかったり,社員の努力が業績につながらなかったりというように前提が成り立たなければ,金銭的インセンティブによってやる気が上がったとしても,業績には何の結果ももたらさないし,もたらしようがない.逆に,金銭的インセンティブを目指して一生懸命働いたのに,結果が出ないのを見た社員は,逆に欲求不満となりやる気をなくす.

2.社員に組織の価値感を示す情報効果
 社員は評価制度をみて経営が何を本当に重要と考えているのかを知る.インセンティブによって行動が協力にコントロールできるという面ではよいのだが,経営層がその行動の意味するところや,微妙な影響をよく理解していなければ裏目に出る.問題は,企業のビジネスモデルが,1つか2つの行動だけが重要だというような大変シンプルなものでない限り,典型的な金銭的インセンティブは何が重要かを伝えるには,単純すぎる限られたツールであるということだ.かといって,複数の基準があるインセンティブシステムは,複雑すぎて行動をうまくコントロールできない.個人の成績が複数の相互に絡み合った面を持ち,組織の業績を上げるために知恵と判断が必要な場合には,単純なシグナルは往々にして間違う.例え仕事が複雑でないとしても,社員がどのようにして目標を達成するか,すべての可能性を考えることは不可能である.仮にそれができたとしても,長くて分かりにくいルールや条件のリストができ,システムはあちこちが抜けて機能しなくなる.

3.正しい人材をひきつけ,間違った人材を排除する選別効果
 同僚と競争して勝つことに興味を感じる人材は,高い業績が高い報酬に繋がる会社を選ぶ.しかし,自社のインセンティブシステムにひかれて応募してきた者が本当に採りたかった人材かどうか別問題である.「金に釣られて入社する奴は,金に釣られて辞める」(タンデム・コンピュータ 元CEO トレイビッグ).また,インセンティブシステムは報酬格差を生むが,これは人間関係を壊すかもしれない.報酬や評価に格差をつけることは,成績が客観的に測定でき,かつ成績が共同作業でなく個人だけの努力の結果であるときに意味がある.正しい人材は必要な協力を行うべきであるという考えに基づけば,ちょっとした協力が不可欠な仕事の場では報酬格差はほとんどいつもマイナスの影響を与える.大学教員の調査では,学部内の給料の格差は,仕事の満足度の低下,協力の低下,研究生産性の低下に繋がっているとの結果もでている.29チーム,延べ1500人のプロ野球選手の調査では,基本給,過去の成績,年齢,経験の全てを勘案しても,選手間の格差が大きいチームほど選手の成績が悪いことが分かっており,格差の大きいチームほど勝率が低い.野球はメンバー間の調整や協力が比較的少ないにも関わらずである.

全ての組織でこの3つのメカニズムが働いている.しかし同時に,動機付け,情報を与え,ひきつけようとした社員に対して,予想外に業績を下げる効果が働くことも多い.金銭的インセンティブが業績を上げるというのは,危険な「半分だけ正しい」常識である.間違った報酬システムは,社員が「自分は公平に扱われているか」「組織が自分を本当に大切に考えているか」を理解するシグナルとなることを考えると,大変危険である.

― 考察とディスカッション ―

 医療には,①多職種による協力が不可欠,②目指すべき目標が複数あり複雑(経営指標,患者の健康,安全性,倫理的要素など),③これらにおいてやる気と目標指標達成の間に直線関係が必ずしも成立しない,④各職種の業務量が単純に医療機関の売り上げにつながるという関係にない,などの特徴がある.インセンティブシステムが人間関係を壊し,間違った行為(非倫理的,コンプライアンス低下)を誘発するリスクについて,十分検討しておかなければならないだろう.また,インセンティブシステムを各職種に適用しても医療機関の売り上げに直接結びつく構造にないため(i.e.診療報酬は医師の医療行為によって規定されているし,患者の動員は外部環境にも依存する),システムの原資を獲得する土台がないことにも留意が必要である.

開催日:平成26年2月19日

レボチロキシン(チラーヂンS)の内服時間

― 文献名 ― 
 Thien-Giang Bach-Huynh, Bindu Nayak, Jennifer Loh, Steven Soldin, and Jacqueline Jonklaas

Timing of Levothyroxine Administration Affects Serum Thyrotropin Concentration
J Clin Endocrinol Metab. 2009 October; 94(10):905-3912.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2758731/

― 要約 ―

Context: レボチロキシンは、食事による吸収阻害を防ぐため朝食前に内服されている。TSH濃度はレボチロキシンの効果の指標である。

Objective: レボチロキシンのTSH濃度に対する効果が、食事摂取と関連した内服のタイミングで変化するかを検討する
Design: 参加者はランダムに6つに振り分けられ、それぞれが8週間のレジメンを3ターム行うクロスオーバーデザインで実施される。3タームのレジメンはそれぞれ朝食前・就寝前・朝食時での内服。TSH・freeT4・freeT3濃度が各レジメンで測定される。
参加者のレボチロキシンの投与量は変更せずに実施された.
Primary outcomeは、他のレジメンと朝食前のレジメンとのTSH濃度の相違。

Setting: academic medical centerで実施された

Participants: 甲状腺機能低下症または甲状腺癌の治療のためレボチロキシンを内服している患者

Results: 65人の患者が参加。朝食前内服の平均TSH濃度は1.06 ± 1.23 mIU/L。朝食時内服の平均TSH濃度は有意に高かった(2.93 ± 3.29 mIU/L). 就寝前内服の平均TSH濃度もまた優位に高かった(2.19 ± 2.66 mIU/L)。

Conclusion: 朝食前以外のレジメンでは、TSH濃度が高く、またばらつきが大きかった。特定のTSHの目標値が望まれ、それにより医原性の潜在性甲状腺疾患を避けるならば、朝食前のレボチロキシン内服により最も狭い目標範囲でのTSH濃度が確保されるだろう。

― 考察とディスカッション ―

この研究では8週間のレジメンなので、長期間の効果は不明であった。
しかし、自分自身では飲みやすさから食後で処方してしまうことが多いので、調整がより困難な患者さんに対しては、朝食前(それが難しければ就寝時)に処方変更することを検討したい。

開催日:平成26年2月19日

教育者の12の役割 -組織と指導医個人の教育の振り返り・討論のために-

― 文献名 ―
 Ronald M. Harden and Joy
Crosby. AMEE guide No.20 The good teacher is more than a lecturer – the twelve
roles of the teacher. Medical Teacher. 2000;22:334-347

― この文献名を選んだ背景 ―
 我々は家庭医指導医として、日々家庭医療診療と同時に医学生・研修医教育にも当たっている。我々が自らの役割や活動を振り返る時に、家庭医療診療に関しては、ACCCCやPCCM/統合ケア/癒し、地域包括ケアといったように比較的なじみのある枠組みが多く、容易に自らの活動の全体像を思い浮かべることができる。しかし、医学生・研修医教育についてとなると、学習者の個別事例ベースの振り返りや、卒前・卒後という見方はあるものの、全体像や具体的活動を俯瞰する枠組みは意外になじみがないのではないだろうか。今後フェローシップにおける応用も考えている、教育者としての活動を俯瞰するにあたり有用なフレームワークを紹介したい。

― 要約 ―

・モデルの背景
 自己主導型学習、問題解決型学習といったカリキュラムの考え方や、ポートフォリオなどのパフォーマンス評価、ITなどの技術の影響など、医学教育において様々な変化が起こっている。特に学習者中心性を強調する流れは、教育者の役割を大きく変えつつある。こうした変化の中で、求められている教育者の役割が何なのかについてフレームワークを提案している。

・モデルの作成プロセス
3つの情報源、すなわち①ある医学校のカリキュラムの作成・実行において求められる教師のタスクの分析②12人の医学教育者の3ヶ月の日記とそこでの教師の役割についてのコメントを分析した研究③MedlineとTIME(Topics in Medical Education)databaseの検索で同定された教育者の役割についての文献と医学教育の教科書(Cox &Ewan(1988)とNewble&Cannon(1995)を含む)の分析 を統合してモデルを作成した。各々の役割が実際に教育者にとって重要かどうかについてアンケート調査によるRatingが行われ、実際にいずれの役割も重要であるという評価を得た。

・モデルの全体像;上記プロセスから、医学教育者の役割を12のカテゴリーに分類し、配置したのが図1のモデルである。個々の役割の説明の前に、全体像を簡単に説明する。まず、12の役割は医学の専門性を要するものと、教育の専門性を要するものに大きく分けられる。図の右側に医学の専門性を要する役割を、左側に教育の専門性を要する役割が分布している。同じように、12の役割は学習者に直接介入するために必要なものと、遠隔であるいは間接的に介入するために必要なものにも分けられる。図の右上により近くでの役割、左下がより遠くでの役割が分布している。

・個々の役割の説明;12の役割は6つのカテゴリーに分けられる。重要なのは一人の教育者が全ての役割を一人で発揮する必要な無いということである。個々の教育者に傾向や濃淡はあっても問題はない。また、個々の役割は完全に分割可能ではなく、同時に複数の役割を発揮する場面もある。

A情報提供者
1講師(lecturer);いわゆる「教室で行う講義」を実施する役割
2臨床あるいは現場の教員(Clinical or practical teacher);外来や回診におけるプリセプティングにおける役割。具体例として自身の臨床における思考過程を学習者と共有すること(ここにはreflective practitionerとしての能力も問われる)や病歴・身体診察を説明し、伝達することも含まれる。

Bロールモデル
3現場でのロールモデル(On-the-job role model);医師としての振る舞いを通じて教育する役割。具体的には、専門性に対する熱心さや臨床推論能力を示すこと、医師患者関係の構築、患者を全人的な視点で見ることができることなどが当てはまる。
4教育のロールモデル(Teaching role model);教育者として学習者に接する際の振る舞いや態度。

Cファシリテーター
5学習のファシリテーター(The learning facilitator);学習者の自己主導型学習や振り返りを促す役割。例えば話しやすい環境作りや、学習者の考えを引き出すこと、様々な学習資源・資料を学習者が使いこなせるようガイドすることも含まれる。
6メンター(Mentor, personal adviser or tutor);現場における教育や評価からは、離れた部分で学習者とかかわり、支援的な(そして、依存ではない)関わりから学習者の成長を促す役割。(※他の役割と一部重複する部分がある。)

D評価者
7学生の評価者(The student assessor);学習者に対して形成的・総括的評価を行う役割。
8カリキュラムの評価者(The curriculum assessor);カリキュラムを評価する役割。

E計画者
9カリキュラムの計画者(The curriculum planner);カリキュラム全体を計画し、実行する役割。
10コースの計画者(The course planner);コース(=カリキュラムの一部)を計画し、実行する役割。

F教材開発者
11教材の考案者(The resource material creator);ITをはじめとした技術の進歩により生じたものも含めて、様々な教育リソースを考案し、作成する役割。
12学習の手引きの開発者(The study guide producer);学習の手引き(学習者に学習目標や学習資源、学習の仕方や、自己評価の方法を伝える資料。初期研修の歩き方、的な本が該当。)を作成する役割。

― 考察とディスカッション ―

 著者は、このフレームワークを、指導医養成における評価やPF作成、指導医の生涯学習、組織としての教育者リソースの評価や、教育者を雇用する際の人財募集や契約に役立てられる可能性を述べている。
例えばこの図を見ながら、以下のような問いを討論してみると良いように思う。

Aフレームワークそのものに対して
 ・我々のコンテクストを考えた際に、この12の役割以外に何か思いつくものはあるだろうか?

B自らの指導医としての活動を振り返って
 ・指導医として、自分が最も行っている役割(そして、求められている役割)はどれだろうか?
 ・指導医として、自分が最もなじみのない役割(または、他の人に任せている役割)はどれだろうか?

C自らの組織を振り返って
 ・北海道家庭医療学センターにはどの役割がどの程度必要だろうか?
 ・北海道家庭医療学センターの指導層全体を見た時に、最も充実している役割はどれだろうか?
 ・北海道家庭医療学センターの指導層全体を見た時に、最も欠けている役割はどれだろうか?

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図1 教育者の12の役割

 開催日:平成26年2月12日

運動は下肢の変形性関節症患者の疼痛を軽減する

<文献名>
 Exercise Relieves Pain in Patients with Lower-Extremity Osteoarthritis
    2013 October 24 BMJ

<この文献を選んだ背景>
 
 変形性膝関節症の患者は日々の診療の中で多い。治療や痛みの軽減のための鎮痛剤、膝関節注射、大腿四頭筋訓練、減量という説明を行うが、他に推奨する何かがないかと思っていたため。

<要約>
 運動によって、膝関節や股関節の変形性関節症(osteoarthritis:OA)を有する患者の疼痛が軽減され、身体機能が改善されることを示すエビデンスが増えている。今回のメタアナリシスではランダム化試験60件(参加者8,200人超、フォローアップ期間の中央値15週)を対象として、運動介入が運動しない場合よりも有効であるかどうかが調べた。また、さまざまな運動介入の比較も行われた。
 膝関節のOAを有する患者に関する試験が44件、股関節のOAを有する患者に関する試験が2件、膝関節、股関節、その他の関節のOAを有する患者に関する試験が12件であった。評価の対象とされた運動の種類は、強化運動、柔軟運動、有酸素運動、およびこれらの運動の水中バージョンであった。疼痛の軽減(視覚的な疼痛尺度[visual pain scales])によって測定)については、強化運動、強化運動と柔軟運動の併用、水中バージョン以外の併用(強化運動と柔軟運動と有酸素運動の併用)、水中での強化運動、水中での強化運動と柔軟運動の併用で、運動なしの場合よりも有意に高い効果がみられた。疼痛が軽減する確率がもっとも高かったのは、水中での強化運動と柔軟運動を併用した場合であり、その次に高かったのは、強化運動のみの場合であった。身体機能の改善については、強化運動、強化運動と柔軟運動の併用、水中バージョン以外の各運動の併用で、運動なしの場合よりも有意に高い効果がみられた。

開始日:平成26年1月22日

生涯学習のための5つのドメインとその能力・資質とは?

<文献名>
Royal college of Physicians and Surgeons of Canada:CanMeds Train-the-Trainer Scholar-lifelongLearner Program.2008

<要約>
導入
生涯学習(Life Long Leraning)のコンポーネントは研修医教育から始まる以下の2つの現実として伝えること
 1つは「専門家は生涯を通じて変容することを求められること」
 もうひとつは「学習スキルと学習資源は変化し続けること」に基づいている。
 そして、生涯学習に必要な能力は「自己モニタリング」と「学習資源の活用」である。
良い臨床家であるための5つのドメインは、
 1 臨床を含めた業務において学習のマネジメントの方法や戦略を持っていること
 2 自分自身の業務を熟知・活用し、学習の優先順位が付けられること
 3 業務を向上させうる可能性やイノベーションのポイントを教えてくれるシステムを持っていること
 4 疑いや問いから質問を形成・変化させ学習機会に結びつけること
 5 継続的に自らの業務を評価し向上させること
である。これに沿ってドメイン毎に必要な能力や資質を以下の通り記載する

ドメイン1「(診療・教育・研究・経営全ての)業務に関する学習をマネジメントする」
  a情報リテラシー
    効果的な学習戦略(どのように学ぶかを知る)
  アクセスする雑誌・ウェブ・データベースを選定する
  何を深く読むか、何を入念に調べるのかを選択する
 
 b学習のマネジメント
    LLLのワークステーション(PCにあるもの)をセットアップする
  省察を投稿し学習ポートフォリオを作成し続けCVやMOCに連携させる
 
 c熟達化の認識
    CVを確立し維持する
  あなたのCVと活動プロフィールが免許や認証の維持と連携することを理解する
  免許や認証の維持のために要求されているものを埋める

ドメイン2「あなたの業務を知る」
  4つのドメイン:診療、教育、研究、管理、がある
 a専門家としての特定の役割と責務についての情報にアクセスし記録をつける
 b専門家としての学習ニーズを同定するために診療情報を活用する
  c持続的に専門家としての成長戦略を立案し修正するために診療情報を利用する

ドメイン3「(業務の)活動それぞれを探るようにチェックする(=Scanning)」
  a業務の範囲で発展段階にあるもの探り、新たな地平と創造を行う
  bガイドラインが診療に統合できるかをプロとして検証し、業務の範囲で根拠に基づいた創造と変化を行う
 cもはや効果的でなく、時に有害となっている古い診療を把握し止めること
  
ドメイン4「業務中の、業務についての、業務のための、問い・疑いから学ぶ」
 a生涯学習のために基礎となる不確実性の解決や解明の力を育成し理解する
 b疑問の生成や分類などのツール・戦略を同定し、個人や組織が公式化させた疑問になるために活用する
 c現実的な疑問の記録や継続的なログそして解決のためのカギとなる戦略を同定し、最終的に業務に組み込むための学習に具体化させる
 d日々の自然な業務と最終的には生涯学習として、個人と組織に探求を促進させる好奇心を再び持たせそれを醸成する

ドメイン5「業務評価と業務の向上」
 a個人のパフォーマンス、そして組織のパフォーマンス評価のためにどのようなツールが用いられているか?
 bそれらのツールはどのように個人の評価に用いられているのか?

 cその評価のプロセスではどのように活動を向上させ学びを促進させているか?

<考察とディスカッション>
 省察のメモは行っているものの、自然にとれる活動のログ(岡田先生でいうところのユビキタスキャプチャー)
についてはまだまだであると感じた。研究のためのセコムカルテの新たなシステム構築が行われているが、
個人の生涯学習にも活用できるための工夫も盛り込みたいと感じた。
 また学会レベルでこれらのシステムを構築することが生涯教育委員に求められており生きている間に完成
させたいとも痛感した。

開催日:平成26年1月22日

Episode of Care という考え方

- 文献名 -
 Episode of Care; A Core Concept in Family Practice
 Henk Lamberts,MD,PhD The Journal of Family Practice,Vol.42,No.2(Feb),1996

 - この文献を選んだ背景 -
 10月、ICPCを搭載した電子カルテシステムをオランダにて視察した。その際に「エピソード」として我々家庭医が扱う疾患を捉える概念を知ることができ、それが電子カルテシステムを利用したICPCデータベースの根幹を担っていることがわかった。それについてPubMedで調べている際に、この文献を見つけて読む事にした。

 - 要約 -
 
141008

 - 考察とディスカッション -
 家庭医療の学会である「日本プライマリ・ケア連合学会」の設立はイギリス・オランダから比べると40年以上遅い。本文献は16年前のものあるが、現在の日本における診療所プライマリ・ケアの記述研究へ重要な示唆を与えている。私たちが年齢や性別ごとにどのような健康問題を扱い、それがどのような診断になり、どのようにフォローされているのか。家庭医療診療所で提供されている医療そのものを記述するためには、ICPCと”Episode”が両輪になると感じた。それを発信していくことの宛先は、国民や住民、ひいては他の臓器別専門医や医療従事者など医療界の方達であり、包括性(幅広い臓器や心理社会背景も含めて)や継続性、不確実性などを客観的に示していくことになるであろう。皆さんはこのようなツールをつかってやりたい研究テーマなどはあるでしょうか?

 開催日:平成25年12月18日

① 小児期の肥満,その他の心血管リスクファクター,そして早期死亡 ② 炭酸飲料消費量の減量による小児期の肥満予防:クラスターランダム化試験

- 文献名 -
① Paul W. Franks, Ph.D., Robert L. Hanson, M.D., M.P.H., William C. Knowler, M.D., Dr.P.H., Maurice L. Sievers, M.D., Peter H. Bennett, M.B., F.R.C.P., and Helen C. Looker, M.B., B.S., 
Childhood Obesity, Other Cardiovascular Risk Factors, and Premature Death, 
N Engl J Med 362;6 nejm.org February 11, 2010
② Janet James, Peter Thomas, David Cavan, David Kerr, Preventing childhood obesity by reducing consumption of carbonated drinks: cluster randomised controlled trial, BMJ. 2004 May 22; 328(7450): 1236.

 - この文献を選んだ背景 -
上川町の保健師さんとの定例会議で小学生の肥満が話題になり,北海道ブロック支部の地方会でも別海町における小児の肥満対策の発表があったので,小児期の肥満について自分なりに調べてみた.まず,小児期の肥満が介入すべき問題なのか?ということと,介入する方略として論文にまとめられているものを調べてみた.研究デザインとしても興味深かったので,今回は2つの文献を取り上げた.

 - 要約 -
① Childhood Obesity, Other Cardiovascular Risk Factors, and Premature Death
BACKGROUND
The effect of childhood risk factors for cardiovascular disease on adult mortality is poorly understood.

METHODS
In a cohort of 4857 American Indian children without diabetes (mean age, 11.3 years; 12,659 examinations) who were born between 1945 and 1984, we assessed whether body-mass index (BMI), glucose tolerance, and blood pressure and cholesterol levels predicted premature death. Risk factors were standardized according to sex and age. Proportional-hazards models were used to assess whether each risk factor was associated with time to death occurring before 55 years of age. Models were adjusted for baseline age, sex, birth cohort, and Pima or Tohono O’odham Indian heritage.

RESULTS
There were 166 deaths from endogenous causes (3.4% of the cohort) during a median follow-up period of 23.9 years. Rates of death from endogenous causes among children in the highest quartile of BMI were more than double those among children in the lowest BMI quartile (incidence-rate ratio, 2.30; 95% confidence interval [CI], 1.46 to 3.62). Rates of death from endogenous causes among children in the highest quartile of glucose intolerance were 73% higher than those among children in the lowest quartile (incidence-rate ratio, 1.73; 95% CI, 1.09 to 2.74). No significant associations were seen between rates of death from endogenous or external causes and childhood cholesterol levels or systolic or diastolic blood-pressure levels on a continuous scale, although childhood hypertension was significantly associated with premature death from endogenous causes (incidence-rate ratio, 1.57; 95% CI, 1.10 to 2.24).

CONCLUSIONS
Obesity, glucose intolerance, and hypertension in childhood were strongly associated with increased rates of premature death from endogenous causes in this population. In contrast, childhood hypercholesterolemia was not a major predictor of premature death from endogenous causes.


② Preventing childhood obesity by reducing consumption of carbonated drinks: cluster randomised controlled trial
OBJECTIVE
To determine if a school based educational programme aimed at reducing consumption of carbonated drinks can prevent excessive weight gain in children.

DESIGN
Cluster randomised controlled trial.

SETTING
Six primary schools in southwest England.

PARTICIPANTS
644 children aged 7-11 years.

INTERVENTION
Focused educational programme on nutrition over one school year.

MAIN OUTCOME MEASURES
Drink consumption and number of overweight and obese children.

RESULTS
Consumption of carbonated drinks over three days decreased by 0.6 glasses (average glass size 250 ml) in the intervention group but increased by 0.2 glasses in the control group (mean difference 0.7, 95% confidence interval 0.1 to 1.3). At 12 months the percentage of overweight and obese children
increased in the control group by 7.5%, compared with a decrease in the intervention group of 0.2% (mean difference 7.7%, 2.2% to 13.1%).

CONCLUSION
A targeted, school based education programme produced a modest reduction in the number of carbonated drinks consumed, which was associated with a reduction in the number of overweight and obese children. 

 - 考察とディスカッション -
①の文献では,対象が限定されたコホート研究であり,一概に日本人の小児に適応することはできないが,人種の系統としては近いと考えられるため,小児期の肥満は介入すべき問題と考えられた.②の文献は,フェローで行う研究のヒントになりそうな研究デザインで,地域コミュニティケアの取り組みとしても興味深く感じられた.
そこで,各サイトでの小児期の肥満に対する取り組みなどについて,共有やディスカッションをしたいと思った.

開催日:平成25年12月18日

アメリカ男性の朝食摂取と冠動脈疾患の危険性についての前向き研究

- 文献名 -
 Prospective Study of Breakfast Eating and Incident Coronary Heart Disease in a Cohort of Male US Health Professionals Leah E. Cahill,  et. al. Circulation. 2013; 128: 337-343

- 要約 -

【背景】
 成人において、食事をスキップすることは、体重増加、高血圧、インスリン抵抗性、空腹時脂質濃度上昇と関連する。しかしながら、食事内容にかかわらず、特定の食習慣が冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)のリスクに影響するかどうかは分かっていない。本研究の目的は、食生活と冠動脈疾患のリスクを前向きに検討すること。

【方法と結果】
 朝食を食べることを含む食習慣について、1992年に45歳から82歳のアメリカ人男性26,902人を評価した。彼らは、Health Professionals Follow-up Study に参加しており、心血管系疾患や悪性腫瘍には罹患していなかった。フォローアップの16年間に、1527もの冠動脈疾患発症が診断された。 人口統計、食事、ライフスタイルで調整した冠動脈疾患、およびその他の冠動脈疾患の危険因子の相対リスクおよび95%信頼区間を推定するためにCox比例ハザードモデルを使用した。朝食をスキップした男性は、スキップしなかった男性に比べて27%高い冠動脈疾患発症のリスクを有していた(95%信頼区間1.06~1.53、相対リスク1.27)。夜遅くに食べない人に比し、夜遅くに食べる人は55%高い冠動脈疾患発症のリスクを有していた(95%信頼区間1.05~2.29、相対リスク1.55)。これらの関連は、BMI、高血圧、高コレステロール血症および糖尿病の影響を受けていた。食べる頻度(一日あたりの食べる回数)と冠動脈疾患の危険性との間には有意な関連は認められなかった。

【結論】 
 健康の専門家の男性のこのコホートでは、朝食を食べることは、冠動脈疾患のリスク低下と有意に関連していた。

開催日:平成25年12月4日

認知症の家族の介護者のメンタルヘルスを促進するプログラム(manual based coping strategy programme)の臨床効果

- 文献名 -
 Clinical effectiveness of a manual based coping strategy programme (START, STrAtegies for RelaTives) in promoting the mental health of carers of family members with dementia: pragmatic randomised controlled trial  Gill Livingston, et. al.  BMJ 2013;347:f6276 doi: 10.1136/bmj.f6276 (Published 25 October 2013)
 
- この文献を選んだ背景 -
 認知症の家族を介護している介護者が精神的にダメージを受けるケースをよく経験する。今回、認知症の家族を介護する介護者のメンタルヘルスに関する論文を読んだので共有する。

- 要約 -
【目的】
 manual based coping strategy programmeが通常の治療と比較して、認知症の家族を介護している介護者のうつ、不安症状を軽減するかどうかを評価する。
【デザイン】
 Randomised, parallel group, superiority trial.
【セッティング】
 英国(ロンドンとエセックス)、Three mental health community services and one neurological outpatient dementia service
【参加者】 260人の認知症の家族を介護している介護者
【介入】
 manual based coping strategy programme:8回のセッションから成り、指導された心理学の専門家から提供される。認知症、介護者のストレス、感情的サポートを得る場などの精神教育、介護者の行動の理解、行動を管理するテクニック、支援がないという考えの変容、受容の受け入れ、自らの意見の主張、relaxation、将来のプランニング、楽しい活動の増加、スキル学習の維持など。これらの事を自宅でマニュアルを使いながら、relaxation CDを聞きながら学ぶ。
【Main outcome measures】
 4ヶ月後と8ヶ月後の症状 (hospital anxiety and depression total score)
<Secondary outcomes>
・depression and anxiety caseness on the hospital anxiety and depression scale;
 介護者のQOL:health status questionnaire, mental health
 要介護者のQOL:quality of life-Alzheimer’s disease
 介護者から要介護者への潜在的な虐待行為:modified conflict tactics scale
【結果】
 260人の介護者が選ばれた(Figure)。ランダムに173人が介入群、87人が通常の治療群に割り付けられた。
 8ヶ月後のhospital anxiety and depression total scoreは介入群が通常の治療群と比較してより低かった(adjusted difference in means −1.80 points (95% confidence interval −3.29 to −0.31; P=0.02) 
)(Table5)。
 うつのケースが介入群で低かった(odds ratio 0.24, 95% confidence interval 0.07 to 0.76) (Table5)。
 介護者のQOLが介入群で高かった(difference in means 4.09, 95% confidence interval 0.34 to 7.83) (Table5)。
 介護者から要介護者への潜在的な虐待行為の報告は介入群で少なかった(odds ratio 0.47, 95% confidence interval 0.18 to 1.23) (Table5)。
【結論】 
 manual based coping strategy programmeが認知症の家族を介護している介護者の不安やうつに対して効果があり、介護者のQOLを改善させている。

- 考察とディスカッション -
 認知症の家族を介護している介護者への支援プログラムが有効である事が改めて示された。寿都町では、町役場の保健師が中心となって定期的に家族会を開催しているが、今回の論文のような体系だったプログラムでの支援ではない。今後、このような支援プログラムを作成するかは議論の余地があるが、皆さんの地域の状況はいかがでしょうか? 

開催日:平成25年12月11日

長期療養患者に対する遠隔ヘルスケアの費用効率

- 文献名 -
 C. Henderson et al. Cost effectiveness of telehealth for patients with long term conditions (Whole Systems Demonstrator telehealth questionnaire study): nested economic evaluation in a pragmatic, cluster randomised controlled trial. BMJ 2013; 346:f1035

- この文献を選んだ背景 -
 先日、英国での家庭医療視察報告を聞き、電話での医療相談がごく一般的におこなわれていることを知った。適応を正しく定めれば、移動や待ち時間等の負担軽減や医療者の業務軽減、医療費削減につながる診療方法ではないかと感じた。そんな中、遠隔医療の費用効果を検証した研究を見つけたので、紹介する。

- 要約 -
【目的】
標準的な外来治療・支援と、それに遠隔ヘルスケア(電子ヘルスケア、telehealth)を加えた場合の費用/費用効果を検証する

【デザイン】
pragmatic, cluster randomised controlled trial に含まれた経済的評価

【セッティング】
英国の3つの地方自治体での、地域密着型遠隔ヘルスケアによる介入

【参加者】
3230 人の慢性疾患患者(心不全、COPD、糖尿病)が2008年5月から2009年12月までWhole Systems Demonstrator 遠隔ヘルスケア試験に採用された。 受容性、効果、費用効果を検証した同試験の参加者のうち、845人を遠隔医療、728人を通常医療に無作為に割り当てた。

【介入】
参加者は自分の地域で利用可能な標準的ヘルス/ソーシャルケアに加え、遠隔ヘルスケアの設備一式を受け取り、モニタリングサービスを12ヶ月間受ける。

【主要評価項目】
費用効果分析のプライマリ・アウトカムは、得られた質調整生存年(QALY)毎の増分費用効果とした。

【結果】
私達は、965人の参加者(534人が遠隔ヘルスケア、431人が通常のケアを受けていた)の費用とアウトカムの純利益分析から始めた。12ヶ月後の2群間のQUAYの調整平均差は0.012だった。介入前の3ヶ月間のヘルス/ソーシャルケアの総費用(介入の直接経費を含む)は、遠隔ヘルスケア群と通常医療群でそれぞれ、1390ポンド(1610ユーロ、2,150ドル)と1,596ポンドだった。費用効果の閾値分析(the analysis surrounding the value of the cost effectiveness threshold)における決断の不確実性を検証するため費用対効果受容曲線(cost-effectiveness acceptability curve)を算出した。一般的なケアに遠隔ヘルスケアを加えた時の質調整生存年(QALY)毎の増分費用効果は92,000ポンドだった。この値では、費用効果の可能性は低い。(支払いを希望する最高額が30,000ポンドの場合11%で、50%以上になるためには90,000ポンド以上にならなければならない。)装置の価格が80%低下するか遠隔ヘルスケアサービスを最大限に利用したと想定すれば、感度分析において遠隔ヘルスケアは通常ヘルスケアに比べわずかに高くなる(有意ではないが)。しかし、最も楽観的なシナリオ(装置の価格が80%低下し、遠隔ヘルスケアを最大限利用している)でも、この群の差異は示されなかった。(費用効率 12,000 £/QALY)

【結論】
 一般的ケアに加え遠隔ヘルスケアを使用した患者のQALYは一般的なケアのみを受けている患者と変わらず、遠隔ヘルスケアによる治療介入に関わる総費用はより高額だった。遠隔ヘルスケアを標準的な外来治療・支援に加えることに費用効果はなさそうである。

- 考察とディスカッション -
 これまでにも遠隔ヘルスケアに関する研究はいくつかおこなわれているが、アウトカムと費用の関連を検証した研究はほとんどなかった。費用軽減に繋がることを示唆する研究もあるが、質の高い研究デザインに基づいておこなわれていない。遠隔ヘルスケア利用により急性期ケア受診率が下がることを示した研究はあるが、プライマリケア外来における利用についての研究はほとんど無かった。本研究の結果は、筆者の予想に反し現時点での遠隔ヘルスケアの有用性を否定するものだったが、今後、遠隔ヘルスケアシステムの改良やコスト軽減が進むにつれこの結論が変化していく可能性はあると考える。

開催日:平成25年12月11日