なぜポートフォリオは成功と失敗をはらむのか?

-文献名-
Erik Driessen, Jan van Tarwijk, et al. Portfolios in medical education: why do they meet with mixed success? A systematic review: Med Edu 2007; 41: 1224-1233

-要約-
Introduction:
 直近の20年以上にわたり、知識を身に着けることからコンピテンシーへと医学教育のカリキュラムは大きな転換期を迎えている。10-15年前に医学教育のすべての段階でPFが紹介され、PFは学習者がいかにタスクを実施し、コンピテンシーを身に着けていくかのエビデンスのある教育として使用されている。1990年代初期に医学教育の世界で紹介されて以降、PFは教育研究の対象となっているが、部分的な失敗も含めた成功となっている。

Method:
 PubMed(1966-2007)、EMBASE(1989-2007)からportfolをキーワードに用いて検索を行った。Psych InfoとERICではPortfolおよびmedical educationをキーワードに検索を行った。検索は英語とドイツ語の出版物に制限した。
選択基準として、以下の3点を満たすものとした。1.医学教育を目的としたポートフォリオの利用に焦点が当てられている。2.卒前、卒後、生涯教育を対象。3.経験的データである。また看護などの他の専門職、管理者、経営、教育のためのポートフォリオやログブックといったポートフォリオにまつわる道具、評価されたデータのない文献は除外した。
データ抽出には修正版BEMECのコーディングシートを使用し、介入の結果はKirkpatrickの階層で評価した。評価者間の信頼性は、平均化したドメイン準拠の信頼係数ないしκ係数で推定した。複数の評価者間の信頼性はスピアマン-ブラウン公式を用いて推定された。

Results:
 1939の文献が検索され、適格基準を満たしたものは30件だった。内訳は臨床に入る前の卒前医学教育が9件、卒前のクリニカルクラークシップに関するものが7件、卒後医学教育が9件、生涯学習に関するものが5件だった。
 19の文献での評価はKirkpatrickのlevel1の結果であり、level3のパフォーマンスの改善を評価したものは2件だけだった。患者のアウトカムを評価した文献はなかった。
 ポートフォリオの目標をLearningとAssessmentの2つが挙げられた。
上野先生図①

Goal 1. Learning
 生涯教育でのPFの利用は成功と失敗を含んだ結果となっている。いくつかの文献ではPFはreflective learningを刺激する可能性が報告され、生涯教育の計画や推移を見守るうえで助けになる。
 日々の仕事の負荷が課される中で、PFを維持していくには時間がとられるという側面もあり、かけられる時間の欠如は生涯教育、卒後教育において問題となっている。
 MathersらはPFに関して、実現可能性を高めるために書類を減らして「よりスマートにする」よう提言している。
 PFの書式も重要で、明確でありながら個々の学習者のユニークな学びを描写できる柔軟な構造が有効である。多くの学習者はどのような種類の情報を記載することが求められているかを知りたがっていた。
 多くの研究でメンターによる十分な支援が不足していることを報告していた。また準備と導入の不足に関連する問題も報告されている。

Goal 2. Assessment
 PF評価の妥当性を調査された研究では、確かに振り返る能力の妥当な試験と証明されていた。6つの研究ではPFの評価者間信頼性を推定しており、その平均は0.63だった。評価者が増えると上昇する傾向にあり、2,3,4名の評価者でそれぞれ0.77、0.84、0.87となった。小集団で評価したり、実際の評価の前後に評価者間で議論したり、ルーブリックを使用することを提案している。

Discussion:
この文献はPFに関する最初のシステマティックレビューである。評価者間信頼性は、PFが主観的である性質から予測されたものと矛盾した結果であった。PFは総括的評価と形成的評価を目的に使うことができるだろう。
効果的に扱うため、適切な導入とメンタリング、背景と方略を結びつけ、学習者と教育者の双方に情報提供を行い、学習者の自由を損なわない明確なガイドラインを提供し、学習者とメンターの限られた時間の中で使い勝手の良さが求められる。
今後はPFの有効性や使い勝手の良さ、全人的評価に用いることができるか、メンターに求められるコンピテンシーについてさらなる研究が求められる。

【開催日】
 2016年10月5日(水)