小児在宅医療の展開

―文献名―
「改訂2版 医療従事者と家族のための小児在宅医療支援マニュアル」MCメディカ出版 2010年  船戸正久、高田哲 編著

―要約―
推薦のことばより抜粋
子どもの本質は成長と発達にあるが,その基盤は家庭・社会の場における人間交流と生活・学習体験である.病院や施設で提供できるものには大きな限界があり,そのため入院生活を極力避けることが子ども医療の鉄則である(「病院における子どもに関するヨーロッパ憲章 第1項」,EC議会採択,1986).つまり在宅医療の推進は小児医療提供のあり方の原点とつながっている.

P15 表 病院(医療)と在宅(家庭)の利点と欠点

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これらのリスクとベネフィットをよく理解したうえで,在宅への移行を行うか否かの「自己決定」または「子供の最善の利益」に基づく家族の判断が重要となる.

 P24 小児の在宅医療
患者調査によると,小児(0~14歳)の通院・往診を含む外来受診数は全年齢の10.2%であるが、往診に限ると全年齢の1.7%に過ぎず、訪問診療に限ると全年齢の0.5%に過ぎない.
また、小児の在宅医療に関する医療機関側の認識は,71.4%がその供給体制は「不十分」であるが、約88%が「ニーズがある」と答えている.実際に小児の在宅医療を提供する医療機関がとっている連携については,「緊急入院に対応するための連携」(65.6%),「夜間・24時間診療体制を確保するための連携」(56.3%)が多く,在宅医療を行う医療機関の約6割が「小児のほうが成人に対する在宅医療より困難な点がある」と回答している.一方,患者側の認識は,一般の患者と比べて小児患者の「在宅療養できる」割合が78.1%と高く、「在宅療養できない」割合は7.5%とかなり低い.

P168 家族が望む援助より抜粋
私たちの望みは,たんの吸引等の「医療行為」が必要な子どもたちの「命」と「思い」を大切にしたサポートであり,どんな障害があっても地域の中で自立して当たり前に生活できる社会の実現である.

P191~ 在宅療養支援診療所の役割より抜粋
超重症児のうち,70%が在宅療養中であるが,訪問診療を受けている子どもはわずか7%,訪問看護を受けている子どもでも18%で,ホームヘルパーを利用しているのはわずか12%に過ぎない.また,全体の15%が,急性疾患で入院した後,そのまま入院を続けていると報告されている.

全国の11,928ヶ所の在宅療養支援診療所に小児在宅医療に関するアンケートを実施したところ,1409ヶ所からの回答があり,その中で19歳までの小児を在宅で診療したことのある診療所は367ヶ所で,26%であった.19歳までの小児を10人以上診療したことのある診療所は31ヶ所で,2.2%であった.まだまだ小児在宅医療が,在宅療養支援診療所の中で浸透していないのが現状といえる.

困難な問題を多く抱えた小児在宅医療だが,その困難さを超えて実施する意義は,どのようなものか.それは子どもが自宅で家族とともに生活することを実現するということに尽きる.多くのケースで,自宅で家族とともに生活するとき,子どもたちから,病院では見られない成長,発達の力が引き出され,家族は安定する.小児在宅医療が,病院の稼働率や,医療財政の面からのみでなく,第一義に子どもと家族のQOLの面から推進されるべきであると考える.

【開催日】
2014年7月2日(水)