長期療養施設においてCovid-19が発症した場合の影響

-文献名-
T.M. McMichael and Others Epidemiology of Covid-19 in a Long-Term Care Facility in King County, Washington n engl j med 382;21 nejm.org May 21, 2020

-要約-
Introduction:
長期療養施設は,入居者が高齢で慢性基礎疾患を有する割合が高く,またヘルスケア従事者が地域の施設間を移動するため,Covid-19 集団発生によって重篤な転帰をとるリスクが高い環境である.
Method:
ワシントン州キング郡の高度看護施設で Covid-19 の確定例 1 例(2.19から発熱と呼吸器症状、2.24入院、2.28確定、3.2に死亡)が確認された 2020 年 2 月 28 日以降,シアトル・キング郡公衆衛生局は,米国疾病対策予防センターの支援のもと,症例調査,接触者の追跡,曝露者の検疫,確定例・疑い例の隔離,現場での感染予防・制御の強化を開始した.
Results:
3 月 18 日の時点で,入居者 101 例,ヘルスケア従事者 50 例,訪問者 16 例の計 167 例の Covid-19 確定例が,この施設と疫学的に関連していることが明らかになった.入居者の症例の大部分が Covid-19 に一致する呼吸器疾患を有していたが,7 例には症状が確認されなかった.入院率は施設入居者 54.5%,訪問者 50.0%,スタッフ 6.0%であった.入居者の致死率は 33.7%(101 例中 34 例)であった.3 月 18 日の時点で,キング郡では 30 ヵ所の長期療養施設で Covid-19 の確定例が 1 例以上同定されている.
conclusion
Covid-19 集団発生が急速に拡大する状況において,長期療養施設では,あらかじめ行う措置として感染している可能性のあるスタッフと訪問者を同定・除外し,感染している可能性のある患者を積極的に監視し,適切な感染予防対策を講じることが,Covid-19 の持ち込みを防ぐために必要である.
Discussion:
施設から1人のCOVID19が発症し累計167例の発症と34例の死亡例が認められた。インフルエンザなどの感染と同様にCOVID19に対する施設の感染に対する脆弱性が認められた。症状がある間、複数施設で働くスタッフとある施設から別の施設への患者の移動は感染を複数の施設へ広げる可能性がある。施設内外への入居者の移動は医学的脆弱性を持つ集団にとって深刻な脅威となる。高齢者施設においてインフルエンザワクチンと抗ウイルス薬投与がインフルエンザ拡散防止に効果的であるが、このような介入はCOVID19には利用できないため、患者の移動に関しては慎重に対応するべきだ。
施設でのCOVID19の早期発見と予防のため入居者、ケアワーカー、訪問者の体温や症状のスクリーニング、社会的距離、移動やグループ活動の制限、スタッフに対する感染予防と個人防護具使用の教育、個人防護具を確保するための計画が重要である。スタッフ教育に加えて実践的なトレーニング、感染防止に対する職員のアドヒアランスを強化する監査システムを作る必要がある。スタッフの欠勤や過重労働などの大きな混乱があるとこれらのシステムに影響が出る可能性がある。

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【開催日】2020年6月3日(水)