アルブミンとCRPはPEG増設後の短期予後の予後予測に役立つ。(欧州の前向きコホート)

【文献名】
John Blomberg,et al.Albumin and C-reactive protein levels predict short-term mortality after percutaneous endoscopic gastrostomy in a prospective cohort study. Gastrointest Endosc. 2011 Jan;73(1):29-36. 

【要約】
<背景>
PEG増設は多くの合併症を伴う可能性がある手技である。合併症のリスクに関して患者に説明をするために、重要なリスクファクターは理解しておく必要がある。

<目的>
年齢、BMI、アルブミン、CRP、PEG造設の適応となった病態、併存症がPEG増設後の死亡率、もしくは胃瘻周囲の感染に与える影響を評価すること。

<デザイン>
2005年から2009年までの前向きコホート研究。PEG増設後の感染症に関しては14日間追跡死亡率は30日間

<セッティング>
大学病院
【対象】PEG造設に至った484人の患者(参照:characteristicsはTable.1)
【介入】PEG 
【主要アウトカム】①30日間の死亡率と②PEG挿入後14日間の胃瘻周囲の感染率。
【結果】
①30日間の死亡率
484人の患者のうち、58人(12%)が30日以内に死亡した。
以下の項目が死亡率増加と関連した。
アルブミン<30g/L(日本では3.0g/dlの表記が一般的、基準値>36g/L)(HR, 3.46; 95% CI, 1.75-6.88)
CRP≧10mg/L(日本では1.0mg/dlの表記が一般的、基準値<3mg/L)(HR, 3.47; 95% CI, 1.68-7.18) 年齢≧65歳(HR, 2.26; 95% CI, 1.20-4.25) BMI<18.5(HR, 2.04; 95% CI, 0.97-4.31) 低アルブミンとCRP高値の両方を認める患者は死亡率は20.5%、それらを認めない患者は2.6%で 7倍の調整死亡率の増加があった(HR, 7.45; 95% CI, 2.62-21.19) ②PEG挿入後14日間の胃瘻周囲の感染率 453人の患者を評価した。 年齢、BMI、アルブミン、CRPでは差がなかった。 適応疾患で、脳梗塞の患者で他の疾患患者より感染リスクが低かった。 併存疾患では差がなかった。 <Limitations> 若干のデータを採取ができていない。 胃瘻周囲の感染に関して、フォローアップできなかった患者の内訳は20人が死亡、 9人はフォローできず、2人はカテーテルを抜去してしまったためであるが、 それらの患者がよりCRPが高かったり、アルブミンが低いなどの問題を抱えていた可能性 もあるため、関連が薄い方向へ結果が導かれた可能性がある。 サンプルサイズが大きいにもかかわらず、弱い関連も見出すことができなかった。 <まとめ> 低アルブミンとCRP高値の両方を認める場合(ここが新奇性があるとのこと)には、PEG増設後の短期間での死亡率増加につながり、適応を決める際には考慮すべきである。 【考察とディスカッション】 患者やその家族にとって胃瘻を増設するということは、生物医学的にも、心理社会的にも大きな問題である。その際に、当然のことながら予後を念頭に入れてディスカッションする必要がある。このような予後予測因子についての具体的な研究を原著で確認できたことは有意義であった。しかし、本研究では追跡期間が30日間と短期である。調整すべき要因が多くはなるが、家庭医としては中長期予後の予測因子の研究も望まれるところである。 以下、全体でのディスカッション 低アルブミンとCRPの高値であった場合、PEGを造設するのかしないのか? 造設せずに他の栄養法を選択した場合、または栄養を取りやめた場合、PEGを造設した場合と比較してどうなるのか? 造設した場合このアウトカムを避けるために何かすべきなのか? など、実際の臨床の現場に適用するには難しい部分が多い研究である。 110518

【開催日】
2011年4月20日