アルツハイマー病の非薬物療法

【文献名】
山口智春,山口春保.アルツハイマー病の非薬物療法.日老医誌 2012;49:437-441

【要約】
 適切な薬物療法とともに、患者の抱える不安や喪失感を理解し、介護環境を知り、適切なリハやケアを提供し、家族介護者を指導し支えるといった、他職種で協働する非薬物療法が求められている。診察室での本人や家族への接し方など、主治医や家族介護者が本人に関わる行為の全てが非薬物療法であると包括的に捉える。脳活性化リハビリテーションの5原則はリハ・ケアばかりでなく診療にも活かせる。

八藤先生図

脳活性化リハビリテーションの5原則
● 快刺激
 ―快刺激により笑顔が生まれることで、脳内にドパミンが多量に放出され、学習意欲・やる気の向上につながる。スタッフ側も笑顔になることで、笑顔が笑顔を生み出す。また、快適な環境の設定も重要である。

● ほめる
 ―対象者をほめる・受容する。ほめられることは人間にとって最大の報酬であり、ドパミン神経系の賦活により、意欲向上につながる。他人をほめることも大切であり、自己効力感や尊厳を高める。

● コミュニケーション
 ―他者と楽しい時間と場を共有することで、安心感が生まれる。特に進行と共に困難となる社会交流については、それを踏まえた上で受容的に関わり、非言語的コミュニケーションも含め社会的相互交流の場を維持する。

● 役割
 ―対象者が社会的役割を主体的に担うことができるようにかかわる。主体的役割の存在はその人が生きている拠り所となるものであり、疾患に関係なく人間として共通するものである。

● 誤りを避けて正しい方法を習得(errorless learning)
 ―認知症では誤りを基に試行錯誤からの学習は困難だけでなく、混乱を招きネガティブな感情のみが記憶に残りやすく、学習の妨げにもなる。能力に応じたサポートで不要な失敗を避けつつ、正しい方法を繰り返し、成功体験とポジティブな感情で終わらせる。満点主義が基本。

【開催日】
2015年9月16日(水)