~外来でうつ病の認知行動療法マニュアル活用しよう!~

【文献】
『うつ病の認知療法・認知行動療法治療者用マニュアル/患者さんのための資料』
厚生労働省研究費補助ここの健康科学研究事業「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」
『実践家のための認知行動療法テクニックガイド』北大路書房 坂野雄二監修

【要約】
A.総論
・理論背景
私たちは自分が置かれている状況を絶えず主観的に判断し続けている。通常は半ば自動的にそして適応的に行っている。しかし強いストレスを受けるなど特別な状況下ではその判断に偏りが生じ非適応的な反応を示すようになる。
・実践
自動思考と呼ばれる、様々な状況で自動的に沸き起こってくる思考やイメージに焦点を当てて治療を進めていく。面接は30分以上で原則は16~20回行う。またホームワークとして面接で話し合ったことを実生活で検証しつつ認知の修正を図ることが必須となる。
・ゴール
治 療のゴールは自律性の回復である。ただ、自ら治ろうという意思が満ちていない場合、CBTがまだ早い段階の患者もいるので、無理に適応しないことも重要で ある。自律性を回復するということは①自己への気付き:外部情報の入力を適切にできる②思考の柔軟性と多様性の獲得③自信をつけて継続して日常生活で行う ことができる、というステップを一緒に見つけていく作業である。
・治療の流れ
①患者を一人の人間として理解し、患者が直面している問題点を洗い出して治療方針を立てる
②自動思考に焦点を当て認知のゆがみを修正する
③より心の奥底にあるスキーマに焦点を当てる 
④治療終結
・マニュアルに沿わないで対応する場合
自殺・自傷に関する問題。治療継続に影響しうる現実上の問題(経済的な問題、身体的健康問題、被虐待など)、治療や治療者に対する陰性感情。

B.1回目外来
目標:
●ラポール形成。
●うつ病(患者用資料P2-4 利用)・認知行動療法を理解してもらう。(患者用資料P5-7を利用)
●治療構造になじんでもらう(時間配分、ホームワーク①パンフ読んでくる②活動記録の作成)
活動記録の例は、患者用資料P8参照。縦軸に時間、横軸に日付が入っている。
ここでホームワークの意義:治療セッションの30分以外の時間も治療に生かせる。日々の困ったことを一緒に話し合う手助けになることを説明する。
●問題点の整理(困っている事に対し、出来事→認知・自動思考→気分・行動の仮説モデルたてる)

C.2回目外来
目標:
●ラポール強化
●治療構造になじむ
「今回はHWの振り返りと、今お困りのことついて伺い、治療の方向性を考えていきましょう」
ここでHWをしていなくても責めない。(治療者マニュアルP10 HWを振り返る参照)
具体的にセッション内で一緒にプリントを作成しつつ、方法になじんでもらうのも有効。
●問題点の整理 気分の楽・つらいを、患者自身の行動や考えの変化と結び付ける。

D.3~4回目外来
目標:
●治療目標を設定 全般的目標と具体的な目標(測定可能)を立てる(治療者マニュアルP11表)
認知面の介入が必要な目標・・・セルフモニタリングの利用。
現実的な問題解決が必要な場合・・・「問題解決」「対人関係を改善する」モジュール利用。
●治療構造になじむ
●症例の概念化

E.認知面を重視する外来(5~6回目外来)
目標:
○出来事→認知・自動思考→気分・行動の把握
状況:          同僚の前で上司から怒られた
ふと浮かんだ考え: 上司からバカにされた,みんなも私を馬鹿な奴と思った
気分:          悔しい
気分と思考を分けることがはじまり。気分は一語で記載する。
このシートをみつつ、多くの場面に共通してみられる考え方の特徴を見つけしていく。
つらい気持ちにさせる考え方の癖:全か無か/白か黒かの極端な考え方。悪いほうの予測がエスカレートする。嫌なことしか見えない考え方。自分を苦しめるしばりつける考え方。何でも自分のせいだと考える。過度の一般化。自分に対する固定的なラベリング。

F.7~12回目外来
目標:
●認知の偏りに気づく(治療者マニュアルP15~16)
 反証をみつけていく
 第三者の立場「他の人が同じような考え方をしていたら、何と言いますか?」
 過去や未来の自分「元気なときだったら、違う見方をしないでしょうか?」
 経験を踏まえて「以前にも似た経験はありませんか?その時はどうなりました?」
 もう一度冷静に「その考え方の癖(自動思考)は100%正しいですか?」    
●行動実験を積極的に利用する
 問題解決モジュール(治療者マニュアルP23-25)を利用して行動計画をたてていく。
 上手な自己主張の仕方を学ぶ(治療者マニュアルP26-27)

G.13~14回目外来
目標:
●スキーマを整理する:将来のストレッサーへの抵抗力向上。再発リスク軽減に寄与。
スキーマとはの説明。(患者用資料P15)
スキーマに気づくような質問
「いつも決まってそのように考える何か心の中にあるルールや法則のようなものがあるでしょうか?」
「価値観や人生のモットーのようなものはありますか?」
「大きな影響をうけた人物や体験やはありますか?そこから得られた信念は?」どんな影響ですか?」
ホームワークとして心の法則リストを作成してもらう。
元気なときの心の法則
・自分について
・人々について
・世界観について
うつのときの心の法則
・自分について
・人々について
・世界観について
終結を意識し始める。

H.15~16回目外来(患者用資料P22参考)
目標:
●終結と再発予防
うつの再燃の可能性と、その対応を説明する。
・治療全体のふりかえり
治療が終了後も、身に付けたスキルを使用すること。「どのような事が役立ったと思いますか?」
「治療を始めた時に比べて、うつが随分よくなりましたね。一体何が良かったのでしょうか?」
気分や状況が改善したのは、患者自身の考え方や行動を変化させた結果であることを強調する。
「私がアドバイスした点もありましたが、考え方や行動を実際に変えたのは○さんですよね?」
・セッションで扱ったツールや技法のおさらい
・治療が終了する不安を尋ねる。
・悪化した際の対処方法を検討する。「治療で身に付けた使えそうな方法は何でしょう?」

【開催日】
2010年8月11日(水)

~痛風の診断精度を上げましょう~

【文献】
A Diagnostic Rule for Acute Gouty Arthritis in Primary Care Without Joint Fluid Analysis
Hein J. E. M. Janssens, MD; Jaap Fransen, PhD; Eloy H. van de Lisdonk, MD, PhD; Piet L. C. M. van Riel, MD, PhD; Chris van Weel, MD, PhD;Matthijs Janssen, MD, PhD
Arch Intern Med. 2010;170(13):1120-1126.

【要約】
背景と目的
 急性の痛風性関節炎の患者の多くは、プライマリケアで診断と治療を受けているが、診断時に関節滑液の分析が行われないことも少なくない。今回、家庭医の診断の精度を調べ、関節液採取なしに痛風を診断するための臨床スコア表を作成した。

方法
  2004年3月24日から2007年7月14日まで、オランダ東部の家庭医93人のもとを訪れた、単関節炎で急性痛風性関節炎の疑いが非常に強い患者 381人を、症状発現が初回かどうかにかかわらず登録した。医師の診断とは別に、全員を対象に受診から24時間以内に関節液を採取した。
 381 人の平均年齢は57.7歳、74.8%が男性だった。それらの中で、顕微鏡観察により関節液に尿酸ナトリウム結晶が認められ、痛風と確定したのは216人 (56.7%)。ただし、受診時に採取された標本が陽性と判断されたのは209人で、7人は追跡中に結晶陽性となったため、その時点で痛風と確定した。
 したがって、プライマリケアで関節液を採取し結晶を指標とする診断を行った場合の感度は0.97(受診時に結晶陽性の209人/結晶陽性の216人)、特異度は0.28(医師の診断が非痛風で結晶陰性の46人/追跡終了後も結晶陰性の165人)となった。
  家庭医が関節滑液の分析なしに痛風と診断した患者は328人(86.1%)。医師の診断の陽性予測値は0.64(受診時に結晶陽性の209人/医師の診断 が痛風だった328人)、陰性予測値は0.87(医師の診断が非痛風で結晶陰性の46人/医師の診断が非痛風だった53人)。これらから計算すると陽性尤 度比は1.3、陰性尤度比は0.1となった。したがって、プライマリケアでの痛風診断の精度は中程度と判断された。
 医師から痛風と告げられた 328人を結晶陽性患者と陰性患者に分けてベースラインの特性を比較したところ、有意な差が見られたのは、男性の割合(陽性群は89.5%、陰性群は 62.2%)、高血圧(52.6%、30.3%)、心血管疾患(30.6%、14.3%)など。これらの統計学的に有意な要因と、あらかじめ定義した変数 を組み込んで、多変量ロジスティック回帰モデルを作成、プライマリケアを訪れる単関節炎患者の尿酸ナトリウム結晶陽性の予測精度=診断精度を、ROC曲線 を描いて分析した。
 最適なモデルは以下の変数を含んでいた。性別が男性、自己申告による関節炎発作歴、24時間以内に症状が最も悪化、関節部の 発赤、第一中足指節関節に症状あり、高血圧または心血管疾患あり、血清尿酸値が5.88mg/dL超。このモデルのROC曲線下面積は0.85(95%信 頼区間0.81-0.90)となった。
 著者らは、日常診療において簡便なモデルにするために、回帰係数を簡単な臨床スコアに変換、以下のような診断用スコア表を作成した。

性別が男性⇒スコア2.0
自己申告による関節炎発作歴あり⇒スコア2.0
24時間以内に症状が最も悪化した⇒スコア0.5
関節部の発赤あり⇒スコア1.0
第一中足指節関節に症状あり⇒スコア2.5
高血圧または心血管疾患あり⇒スコア1.5
血清尿酸値が5.88mg/dL超⇒スコア3.5

 それぞれ該当しない場合はスコア0として合計を求めると、最大値は13.0になる。
 医師が痛風と診断した328人の患者をスコア合計が4以下、4超8未満、8以上の3群に患者を分けると、各グループの結晶陽性患者の割合は2.2%、31.2%、82.5%となった。
 さらに受診者381人全員を対象にこの方法でROC曲線下面積を求めると、0.87(0.84-0.91)になった。臨床スコア4以下、4超8未満、8以下の3群に患者を分けると、各群の結晶陽性患者の割合は2.8%、27.0%、80.4%となった。

結論
 したがって、スコアの合計が4以下であれば痛風の可能性はほとんどないと言える。一方、8以上なら痛風治療を開始してもよいだろう。スコアが4から8の間の患者については必要に応じて関節液の分析を行うべきだ、と著者らは述べている。

【開催日】
2010年8月11日(水)

~Motivational Interviewing(動機づけ面接法)とは?(その1)~

【文献】
動機づけ面接法 基礎・実践編
ウイリアム・R・ミラー、ステファン・ロルニック 著   松島義博、後藤恵 訳

【要約】
なぜ人はかわるのだろう?
・  「動機づけ」への関心は、「なぜ人は変わらないのだろう」と考えるときに始まる。これは、健康管理に携わる人々、教師、カウンセラー、両親および福祉行 政や司法組織で働く人々に共通する疑問である。明らかに、していることがうまくいっていない、あるいは自己破壊的で、第三者の立場から見れば他により良い 方法があるにもかかわらず、なお当事者が同じ行動を繰り返している。このような嗜癖行動は、破壊的であると本人がわかっていても、あえて続けているのが特 徴である。罰を重くしてもそれを防ぐことはできない。人間は、必ずしも賢明で、常識的であるとは限らない。
・ しかし、人が変わることも少なくない。そのため創造的で魅力的な問いは「なぜ人は変わることができるのか?」である。時とともに人は、新しい生き方に順応していく。
・  なぜ人は変わるのであろうか?援助職に携わる人は、援助・カウンセリング・治療・助言や啓蒙活動の結果、人が変わると考えがちである。しかし、変化は自 然におこる。以下のような多くの推定への疑問やいくつかの嗜癖行動の研究などから、「動機」を人が変化する基礎と捉えることができる。
① 正式な介入(カウンセリングや治療)によって生じる変化は、特殊な変化の形式というよりは、むしろ自然の変化を反映している。それにもかかわらず、どの程度の変化が起こるかは、治療者との人間関係に非常に強く影響される。
② 比較的短時間(新しい対処技術を習得したり、性格の変化を経験するには短すぎる時間)のカウンセリングでさえ、変化が起こりうる。
③ 行動の変化は、治療の初期の段階で起こり、平均的には治療の時間や回数はあまり関係がない。
④ どの臨床家に治療を受けるかは、治療の中断・継続・持続および治療結果に対する、重要な決定因子である。
⑤ 特に共感的なカウンセリングは変化を促進し、共感性がなければ変化を妨害される。
⑥ 自分が変化できると信じる人は回復してゆく。カウンセラーが変化を信じていると、実際に回復する。改善の見込みがないと言われた人たちは回復率が低い。
⑦ 「変化を語る」言葉は重要である。変化への動機を反映した言葉や決意の表明は、その人の回復を予見させる。一方、変化に反対する言葉は回復に支障をきたす。どちらの言葉も人間関係(カウンセリング)に深く影響される。
・ 「変化の動機づけは、基本的に不快の回避による」と信じている人たちがいる。十分に深い間んを与えれば、人が変わるというのである。この見方によれば、人が変わらないのはまだ十分に苦しんでいないから、ということになる。
・  人の建設的な行動の変化は、その人の内的価値、重要なこと、大切にしているものに触れた時におこる。人はしばしば行き詰まるものであるが、それは必ずし も、自分の状況の不利な価値を認めないからではなく、むしろ2つの方向を感じている(両価的感情)からである。人が、その迷いの森から抜け出すには、その 人の経験とその人自身の立場から見て、本当に大切なことに従って、道を探さなくてはならない。

アンビバレンス(両価性)
・  両価性は一般的な人間的経験であり、変化の正常な過程の1段階である。この両価的葛藤を病的状態と誤って解釈し、その人の動機、判断力、知識、精神状態 に問題があると結論するのは、安易な方法である。なぜなら、その人を教育し、正しい行動をとるように説得するだけでよい、ということになるからである。実 際、人が変わっていく過程で、両価的状態を経験し行き詰まりの気持ちを経験するのは、普通のことである。
・ 両価性の中で身動きが取れないとき、 問題は持続し、重篤化する。人が変わるためには、この両価的葛藤を解決することが中心的課題であり、両価的状態を検討することは行き詰まりの核心に触れる ことである。これを解決するまでは、変化は遅々として進まず、たとえ変化しても長続きはしないであろう。
・ 「葛藤」は多くの心理学理論の重要な概念で、主に以下のように分類される。
① 「接近-接近葛藤」…同じくらい魅力的なものから1つだけを選ぶときに経験する葛藤
② 「回避-回避葛藤」…2つの嫌のことから1つを選ぶときに経験する葛藤
③ 「接近-回避葛藤」…この葛藤は人を身動きできない状態にさせる特別な性質をもち、強いストレスとなる。この状態では、人は1つの対象に引きつけられると同時に、抵抗感をもっている。(愛さずにいられない、でも愛したら生きてゆけない)
④  「二重接近-回避葛藤」…2つの対象のそれぞれに、心を奪われるほどの好意と同時に強烈な抵抗感を抱き、その間で引き裂かれる。対象Aに接近するとAの 短所が次第に見えてきて、逆に対象Bの長所がすばらしく思えてくる。そこで、方向転換して対象Bに接近し始めると、今度はBの欠点がはっきり見えてきて、 Aが魅力的に見えてくる。
・ 「接近-回避葛藤」を、自分ひとりの力で解決するのは至難の業であろう。人が変わるには、両価性の解決が鍵であり、 事実両価性が解決されれば、変化は容易に起こる。しかし、ある特定の解決法を強要する(直接的説得や、特定の行動に対して罰を与えるなど)と、逆説的反応 が引き起こされ、減らしたい行動をかえって増やすことさえある。

変化を促進する
・ 人間は「ものごとを正したい」という、本能的な願望をもっているようである。介護や医療、教育などの職業に携わっている我々は特に「ものごとを正したい」傾向が強く、この傾向が我々を自分の職業に引きつけたのかもしれない。
・  両価的状態にある人が両価性の板挟みにあるとき、「ものごとを正したい」反応をもっている人に一方の解決法を助言されると、自然に反対の立場を強く主張 する。そして自分の言葉を聞くことにより、さらに反対の行動が引き起こされてしまう。そのため両価的状態にある人に対しては「正したい」反応をなるべく控 えることが大切であることが分かる。これは氷の上で車を運転する場合に覚えなくてはならないことに似ている。 
・ 変化に対する「重要性の認識」 の根本には、矛盾がある。矛盾がなければ、動機も生じない。矛盾は、現在の状況と望んでいた状況の違いであり、現在起きていることとこうであってほしいと 希望していた目標との違いである。これは、2つの「認識」の違いと考えることもでき、この矛盾の度合いが大きければ、変化の重要性も大きくなる。
・  矛盾と両価性は、明らかに重なるところがある。矛盾がなければ両価性は生じない。そこである人たちにとって、変化への第一歩は「両価的状態になること」 である。矛盾が拡大すると、初めて両価性が強くなる。そこで矛盾が拡大し続ければ、変化の方向へと両価性が解決される可能性がある。このように理解すれ ば、現実には両価性は変化への障害物ではなく、むしろ変化を可能にするものである。
・ 抵抗や反発を招く言葉のやりとりがあるように、クライアン トが「変化を語り」初め、実際に変わっていくような対話もある。動機づけ面接法(Motivational Interviewing)とは、クライアント中心主義的であると同時に、両価性を探索し解決することによって、心の中にある「変化への動機」を拡大す る、指示的な方法である。
・ 動機づけ面接法は、ある状況で使えば効果があると立証されている。しかし今までの研究データでは、なぜ、どのように して、この方法が効果を現すのかという点は明らかにされていない。またこの方法は、すべての問題行動やカウンセリングに効果的な特効薬であるというわけで はない。他のカウンセリング技法とともに使える、1つの方法である。「この面接方法はどのような人たちには不向きか」という限界も明らかではないが、治療 を強いられ腹を立てている人には、動機づけ面接法が特に効果的で、治療初期で抵抗が少なく怒りのレベルが低い人には動機づけ面接法よりも認知行動療法など が効果的であると報告されている。
・ 基本的に動機づけ面接法は、変化を触発することを目的としている。ある人にとってはそれだけで十分である が、継続した援助が必要な場合には動機づけ面接法の後で、他の治療法を用いて治療を継続するのが自然である。しかし、驚くべきことに、後に続く治療法が動 機づけ面接法の原則と一致していなくても効果があると報告されている。したがって、最も効果的な統合的治療法は、初めの相談で動機づけ面接法を治療への導 入としてもちいることであろう。また、治療中に問題が生じた時などの「動機づけ」の課題が生じるたびに、背景にある動機づけ面接法を用いて新しい課題の解 決を図ると良い。

【開催日】
2010年8月4日(水)

~電子カルテ導入の影響について~

【文献】
Gradual Electronic Health Record Implementation: New Insights on Physician and Patient Adaptation. Ann of Fam Med ;2010;8:316-326.

【要約】
目的
電子カルテ導入が医師患者関係や患者の行動にどのような影響を与えているかを検証する。

方法
家庭医の外来診療所において、電子カルテの導入前5か月・移行期の10ヶ月間・導入後3または6か月後に以下の調査を行った。
①170人の患者について、外来を直接観察して、時間を計測した。
②出口で患者へ電子カルテを用いた外来についてインタビューを行った。
③診療所の看護師・看護助手・事務職員を集めてフォーカスグループディスカッションを行った。
④診療所の看護職員と医師に対して、観察(構造化されていない)とインタビューを行った。
 ※電子カルテ;Logicianという商品;血液・画像・病理・患者の地理的情報の結果が参照できる。

分析
Immersion-Crystallization discussionと代替仮説の検索を用いた。

インタビュー・FGDの結果の要約
①患者の評価
 ・導入前は、情報技術に対する不安の表出がみられたが、医師への信頼や医師患者関係の安全性を実感して、電子カルテに肯定的な意見が出るようになった。
②医師・医療従事者の評価
 ・導入後は、電子カルテの懸念事項への不安は解消され、電子カルテの利点が理解されるようになり、更には予想していなかった利点も見出された。
 ・特に、医師はコンピューターという第三者が外来に入るようになって、快適そうに見えた。仕事の能率化が実感されることで看護師や事務職員の電子カルテへの抵抗感も次第に改善した。
 ・予想していなかった利点として、その場で参照できる情報(薬の毒性や避妊法、検査のリマインダーなど)による作業の能率化や、医師が診察室から出る時間の減少が挙げられた。
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結果の詳細
A導入前;この時点では、電子カルテに記載されるのは問題点リストと薬のリストのみであった。
①患者の視点
 ・ほとんどの患者が電子カルテがあることに気づいていなかった。
 ・患者の回答の殆どは紙でも電子カルテもどちらでもよいというスタンスだった。
 ・患者は電子カルテが導入されると、医師の仕事内容、筆跡、情報の蓄積と検索、信頼度、正確性、医師同士のコミュニケーションを改善し、外来中に医師が診察室を出ることが減ると予想した。
 ・患者はしばしば、セキュリティや技術上の問題を理由に、電子カルテの導入について中立的な意見であった。
②医療職種の意見
 ・事務職は、文字の判別性、データの正確性、カルテの捜索・ファイリングが必要なくなることを期待していた。
 ・医師が電子カルテ導入の障壁になると考えられていた。
 ・看護師は、タイピング能力不足や、子供が壊さないかなどを心配していた。また、移行期の仕事増大を懸念していた。

B移行期;医師のカルテ記載は、紙/電子カルテどちらでも可。看護師はバイタル・予診は紙と電子カルテ両方に記載した。
①患者の意見
 ・電子カルテの存在についてどれくらい気がつくかは人によってまちまちだった。
 ・スピードやそのアクセスの良さはいいと感じていた。その一方でセキュリティへの不安を感じていた。
 ・患者によっては、紙でも電子カルテでもどちらでもいいという姿勢を持つ人もいた。
②医療職種の意見
 ・看護師は記録の抜け落ちや重複があったが、時間がなかったり、やり方を知らないからであるという意見が出た。
 ・看護師は、医師のアイコンタクトや診察が減ることや、患者が医師の記載した内容を見ることによる悪影響や、守秘義務が守られない可能性(院内の他のスタッフがカルテをみる可能性など)、コンピューターの故障を心配していた。
 ・時間が節約できることや、リマインダーによって検査の漏れが防げる点を評価していた。
 ・また、、患者が診療により責任を持つようになる(データに興味を持ったりなどから)のではという予想があった。
 ・医師は、患者がみている中で患者の問題点を記載しないといけないことに不快さを感じていた。

C完全導入後;院内・院外のネットワークとつなぐことが可能となった。
①観察結果
 ・外来の時間は変化がなかった。情報を収集するために使う時間は少なくなった。
 ・医師はアイコンタクトが減る事を危惧しており、実際に電子カルテの時にカルテを見る時間の方が、紙カルテの時にカルテを見る時間よりも長かったがが、患者は医師のアイコンタクトや外来の質に満足していた。
②患者の意見
 ・安全性、情報へのアクセスの早さ、能率、情報共有、それから、「現代らしい」スタイルについて良く評価していた。
 ・セキュリティ面については評価が分かれていた。
③医療職種の意見
 ・看護師からは、作業の能率化、医師の記載が正確になった、データの参照が早くなった、新たなテンプレートのお陰で医師の入力が早くなった、医師のカルテ記載へのインセンティブにもなるという肯定的な意見が出た。
 ・患者がコンピューターの画面に興味を示すことで、より診療に積極的になる、と評価する者もいた。

D外来での医師の変化について
①診察室にコンピューターという第三者が入ることで患者とのコミュニケーションに変化が生じた。
 ・体とコンピューターの位置や、言葉でのコンピューターの説明、患者との情報の共有方法などを工夫していた。
 ・特に導入後は、モニターを患者にも見えるように配慮して、モニターとアイコンタクトを同時に行うようにしていた
 ・非言語的コミュニケーションがより多くなった。使っていない腕を患者の方へ伸ばしたり、足や膝だけ患者の方へ向けたり、診察台に寝ている時も、膝は患者に垂直に向かっていた。
 ・医師によっては、患者の言葉などをカルテにタイプして繰り返すようになったため、患者がより外来に集中し、自分の言葉を訂正する余裕が持てるようになった。
②医学的情報の共有が促進された。
 ・即座に情報が見れるため能率がまし、患者との情報の共有がよりなされるようになった。これに対して、紙カルテ時代に情報を患者と見ると言うことは殆どなかった。(移行期は情報を患者に見せる医師はまだ少なかった。)

【開催日】
2010年8月4日(水)

~家庭医は一回の診察でいくつの問題に対応しているのか?~

【文献】
John W.Beasley MD,et.al: How Many Problems Do Family Physicians Manage at Each Encounter? A WReN Study .Ann Fam Med. 2004 Sep-Oct;2(5):405-10.
文献へのリンク

【要約】

目的
 実は家庭医がどれくらいのproblemを同時に扱っているかはしっかりと調べられてこなかった。
 この論文の目的は、一回の診察で家庭医がいくつのproblemを扱っているかを明らかにすることと、それが実際にカルテと請求にどれくらい反映されているかを比較することである。実際にここには解離があり、家庭医のケアの複雑な側面を明確にしたい。

方法
Wisconsin Research Network(WReN)の29人の医師を対象とした。29人の内訳としては、9人が教育を行う医療機関勤務、20人が地域の医療機関勤務で、その20人の中で12人が僻地勤務であった。患者は18歳以上とした。
医師は連続して診た患者20人に対しての各人の診療の後にproblem logを記載してもらった。problem logはカルテのコピー、請求書のコピーとした。
●Problemは情報を収集し、かつ、意思決定を下した問題と定義した。
  ・例えば咳についてカルテに記載はあるが、それ以上何もなされていなければ咳は検査、治療が必要なかったと判断される。
  ・例えば糖尿病性の神経症のように部分症であるproblemも別に扱われていれば、糖尿病とは分けてproblemとする。
  ・既にある問題(糖尿病)も、他の問題(足関節捻挫)で緊急時の対応をした診察の際に扱われなければproblemとしならない。
  ・もともと分かれていた問題、例えば咳、胸痛も最終的に問題として肺炎などに統合されれば、1つのproblemとする。
 ・患者とは別の人物に対しての問題(例えば夫のうつ)もproblemとして扱う。
●カルテを調査していく際には、
 ・十分に記載がないとリスト化はしない。
 ・例えば既往に狭心症があっても、それ以上記載がなければだめ。
●請求書を調査していく際には、
 ・診察の際に提出される請求書に記載があるかどうかで判断する。

患者カルテと請求のために提出された診断名をこれらのproblem logにある情報と比較した。

結果

100802

女性 351人 problem 3.1個  男性 213人 problem 2.9個 (P=0.27)
  定期受診 3.2個  定期受診以外 2.4個(P<0.01)   7%が患者以外の人物と関連したproblem   精神的な問題、薬物、中毒などの問題はあまり請求書には反映されていなかった。(仮説通り)    例えば、高血圧はlogでは96回出てきて、請求書には74回記載あり(77%)。    精神的問題などはlogで137回出てきて、請求書には58回の記載のみ(42%) (P=0.02) 医師は一回の診察で平均3.05個の問題を扱ったと報告し、カルテ上には2.82個、請求上は1.97個であった。全ての対象患者の中で37%が3個以上の 問題があり、18%が4個以上であった。65歳以上の患者においては、平均3.88個であった。糖尿病患者では、平均4.60個であった。 限界  最も明確な限界点は、医師の自己記入方式をとっていることである。  医師らは本研究の仮説を理解しながらの診療を行っている。  カルテ記載しか見ていないことで、漏れがあるかもしれない。 レビューを一人でしか確認していない点も限界あり。 Problemの数をどのように決定していくのがよいのかという標準的手法が確立していない。 一つの州での研究ということで一般化できない可能性あり。 結論  家庭医療では多くの健康問題を並行して扱っているが、請求上のデータは正確に反映されていない。結論としては、家庭医療と、質評価の方法やガイドラインの推進、教育、研究、管理運営、資金などとが釣り合っていないことが分かった。 本研究などの結果を踏まえ、いくつかの領域では概念を再構築する必要がある。 ①質評価やガイドラインでは疾患特異的な項目だけを診るように縮小していくのではなく、患者全体に着眼するようにすべきである。 ②医師の教育、とくにプライマリケア領域に進む医師に対する教育は、従来の単一疾患orientedな教育モデルではないものにすべきである。 ③家庭医療におけるリサーチは単一疾患の問題に対するものではなく、全人的問題に着目するようにすべきである。 ④Administratorsとfunderはケアは多くの問題をはらんでいるということに注目すべきである。 【開催日】 2010年7月28日(水)

~家庭医の診療の包括性に対する予測因子~

【文献】
Wong E, Stewart M. Predicting the scope of practice of family physicians. CAN FAM Physician 2010:56:e219-24.

【要約】
目的
 診療所で働く家庭医の診療の幅と関連する要因を同定する
デザイン
・ 2001年のカナダ家庭医療学会による全国家庭医勤務調査の横断調査に対する2次的な単変量及び多変量解析
セッティング
・ カナダ
参加者
・ 診療のほとんどを診療所で実施する家庭医
1次アウトカム
・ 診療の地理的条件、及び、診療所を基盤とする家庭医によって提供される12の医療サービスの数で表現される診療の幅スコア(SPS:Scope of practice score)
・ 12の医療サービス
麻酔
慢性疾患のマネジメント
救急医療
施設在住の高齢者に対する診療
在宅医療
入院ケア
緩和ケア
予防医療
患者が他の医療機関・福祉サービスを利用する際の調整
メンタルヘルス(精神療法とカウンセリング)
外科サービス(一般外科、外科補助、小外科)
周産期ケア(出生前、分娩、分娩後)

結果
・ 多変量解析モデルでは参加者の中でのSPSの多様性の35.1%を説明することができた。州の違いや地域が郡部かどうかという要素が、SPSの多様性の 30.5%を説明していた。男性、若年、グループ診療、入院ベッドへのアクセスの良さ、臓器別専門医へのアクセスの悪さ、大学などでの教育ユニットにおけ る診療、混合型診療報酬支払い、専門研修終了後の更なる系統的教育、診療現場での多様な医療職種の参加は高SPSと相関があった。

結論
・ 地理的要因が家庭医診療の幅の最大の要因であった。医師自身の要因、周辺の医療資源の使いやすさ、診療組織自体の要因はいずれも関連は弱かった。地理的要 因が診療の幅にどのようにそしてなぜ影響しているのか、そして、住民のニーズと独立した診療の幅の広さが住民に利益を与えるのかどうかを調べることが重要 である。この研究は、家庭医療を刷新しようとする努力の中でも、混合型診療報酬支払い、多様な医療職種の参加を促進する試み、グループ診療を養成する試み を支持していると考えられる。

【開催日】
2010年7月28日(水)

~睡眠時無呼吸症候群の診断~

【文献】
Overview of obstructive sleep apnea in adults UpToDate 18.1

【要約】
イントロダクション
閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSA)は一生治療が必要となるよくある慢性の疾患である。
 特徴的な症状としては、
・睡眠時の不定期な異常な呼吸パターン(閉塞性無呼吸、低呼吸、覚醒と関連する努力性の呼吸)
・睡眠の中断による日中の症状(眠気、倦怠感、集中力の低下)
・いびきや不穏、息を吹き返すような鼻息のような睡眠中の不快な症状である。
 長年の睡眠中の低酸素血症や繰り返す覚醒により臓器障害をきたす。心血管系のリスクのある患者、AHI(the apnea hypopnea index) (一時間当たりの無呼吸低呼吸のイベント) が30以上の患者は死亡のリスクが高くなる。

疫学
 26%の成人がOSAの高いリスクを持っていると見積もられている。2~5%のみが昼間の眠気など少なくとも1つの症状を持ち、AHIが5以上と診断されている。AHIが5以上あっても無症状であることが一般的。
 ・年齢:18~45歳で増加する。
 ・人種:35歳以下のアフリカ系アメリカ人に多い。アジア系はアメリカ人と同等。
 ・性別:女性の3~4%、男性の6~9%

リスクファクター
・肥満:BMIや首回り、ウエストとヒップの比が増加するとOSAが進行する。
・顔面や上記道の軟部組織の異常:上顎骨の異常、小さな下顎骨、幅広い顔面、扁桃肥大、アデノイド
・現在の喫煙者は過去に一度も喫煙した事のないひとに比べて3倍。
・鼻腔粘膜の腫脹
・DM患者

臨床症状
・いびき、日中の眠気:最も共通の症状
・睡眠中の不穏、大きないびきによって終結する静かな時間、集中力低下、夜間の狭心痛、呼吸困難感、喘ぐ感じ、息が詰まる感じ

診断
・ポリソムノグラフィ:first lineの検査
・ポータブルモニタリングも受け入れられる検査

100721

重症度
・軽症:AHIが5以上15以下。HTや肺性心、多血症は一般的にはない。30%の患者が治療に反応する。
 ・中等度:AHIが15以上30以下。REM睡眠中や仰向けでのAHIが増加する。日中の活動性低下、自動車事故の増加がみられる。HTが見られるようになる。肺性心に伴う日中の症状はふつうみられない。CPAPにより、日中の眠気、QOL、血圧が改善する。
 ・重症:AHIが30以上。日常生活の活動に障害ときたすような昼間の眠気。心不全、呼吸不全症状、夜間の狭心痛、多血症、肺性心による症状が出現する。座っている時に寝てしまい、事故のリスクが高くなる。治療によって症状は軽快する。

【開催日】
2010年7月21日(水)

~カルテを利用した教育方法についての検討~

【文献】
Warren Rubenstein:Medical Teaching in Ambulatory Care 2nd Ed:P66-72, 2003

【要約】
TEACHING STRATEGIES
・患者:ケースディスカッション、ケースレビュー、直接観察
・カルテ:カルテレビュー、カルテを素にした再想起、標準化されたカルテcheck(今回はここ)
・教育技術:ロールプレイ・シュミレーション、短く教訓的なプレゼン

カルテを利用したもの
カルテレビュー
1説明:
 カルテごとに病歴、所見、検査、治療の記載について順に見て、必要なときに議論をする。
 同時に読みやすさ、フォーマット、長さ、徹底具合も見ることが出来る。
2適応:
 外来を一人でこなせるが、外来後にはレビューが求められる程度の学習者に適応がある。
学生や初期のレジデントの場合では内容をカルテの書き方にのみ集中するほうが良い。
3利点:
 指導医のcheckによるケアの安全性の確保
 書かれたカルテの質を保証する
 言葉だけの報告に依存し難い
 事例を議論や教育の資源とすることができる
 カルテの書き方や電子カルテの使い方の指導が可能となる
4限界:
 研修医のカルテ記載の質と量に依存する
 問診や身体診察のスキルは評価できない
5手間:
 通常業務への妨げは最小限
 患者を診終わってからの時間を設定
6例示:省略
7コツ:
 教育的好機を常に意識しておく
 この方法を利用するということは診療カルテを重視しているというメッセージを発している
 質の保証のための大切なツールになる

カルテを素にした再想起
1説明:
 1対1の教育セッションであり、少なくとも30分は必要となる。
 いくつかの患者のカルテを学習者に選んでもらい、ランダムに二つほど選ぶ。
 カルテを一冊選んで渡し、段階を追った形式で患者を思い起こしレビューするよう依頼する。
 カルテは、何が起こったか詳細に思い出すためだけでなく、その外来中にどのような思考状態だったのかという想起も刺激する。以下のように聞いてみる。
 「この時点でどう考えていましたか?」「なぜこれらの質問をしたのですか?」
「どうしてそう決めたのですか?」「なぜそこで止まったのですか?」
「他に考えていたことは?」「この時点でのもっともらしい診断は?」
「このオプションを選んだのはなぜ?」
これらを診察(病歴、診察、鑑別診断、重症度、疫学、アクションプラン、検査の選択、治療)のそれぞれの段階で行い、次の段階に行く前に思考過程を問うことを続ける。想起を支援し続けることが必要で、責めてはいけない。
2適応:
 学習者の臨床的な根拠と意思決定プロセスを理解し、改善するための評価や支援に利用できる。
 特にマネージメント不足、一歩遅れてしまう、安定した意思決定が出来ないように見えるなどの患者のケアに困難を抱えた学習者には有用である。
3利点:
 意思決定プロセスをレビューするための強力な教育方略となる。
 カルテそのもので「実際に何が起きたのか?」を詳細に知るための手がかりとなる 
4限界:
 時間が必要
 通常のカルテレビューとは異なった特別な時間を必要とする
 (記憶の問題で)診療後48時間以内には行ったほうが良い
 学習者に不安を与える得る方略なので、指導医-学習者の信頼関係が必要とされる
5手間:
 通常の患者ケアのcheck以外の余計な時間が必要なる
 時間は通常診療もしくは個人の時間が消費される
6例示:
 ここ二日で診た印象的な患者さんを4例選んでもらう。そこから2例選ぶ。学習者の仮説を評価しながら、次回は仮説意外での短い議論となるための準備をする。
7コツ:
 偶然のバイアスが入るが、2週間に一回以上は行わないようにする
 問題のある学習者のみならず、高いレベルの学習者にも意思決定プロセスを教えるため利用される時にはビデオレビューと並行して開催することができる

標準化されたカルテcheck
1説明:
 カルテレビューを完成させるもう一つの方法。
 自分のペースで行うカルテのオーディットで15-30分あれば可能である。
 事前に後日開催することを説明し、checkリストの基準を作って、カルテのどこをcheckするのかを案内しておく。十分で包括的な病歴聴取が出来ているのかの有効で信頼性のある方法となる。
 そのために自分の診療所で良質なcheckリストをつくる事は良いプロジェクトとなるし、カルテレビューの際に、どんな情報を重視しているのかを伝える方法となる。
2適応:
 通常業務内に顔のあわす機会が少ない場合の教育方法
 余分な時間に学習者がいなくても、学習者の仕事ぶりをレビューすることができる
3利点:
 指導医のcheckによるケアの安全性の確保
 書かれたカルテの質を保証するものとなる
 時間を選ばない
 Checkリストは、教育者が行うべき特定のcheckの備忘録として機能する
 記載された情報によって、学習者のケアのマネージメントやカルテの記載を支援してくれる
 学年のすすんだシニアレジデントに対して、自律して働いた後で評価をすることを可能にする
 直接観察よりは時間が短くてすむ、しかし教えるべき修正点の情報を集める必要がある
4限界:
 教育者による精密な吟味と、レビューの結果をまとめて伝える機会で、カルテレビューよりは時間がかかる。
 学習者のカルテ量に依存する
 問診や身体診察のスキルは評価できない
5手間:
 Checkリストの考慮と準備の時間、実際のレビューの時間が必要となる。
6例示:省略
7コツ:
 もととなるCheckリストを事前に渡しておく。
 不意な評価ではなく、計画された学習経験とする。

【日付】
2010年7月21日(水)

~うつ病治療薬の選択と治療上の注意点~

【文献】
Initial treatment of depression in adults。UpToDate ONLINE18.1

【要約】
総論 
抗うつ薬の試験の文献を評価するときには、Publication biasを考慮しなければならない。(政府または独立したスポンサーがわずかで、製薬会社と出所不明が多い。)

薬の選択 
・ほとんどのシステマティックレビューにおいて結論づけられていることには、臨床的にもQOLにおいても、治療コストについても、特定の抗うつ薬のなかで、どれを特別選ぶべきかということはない。
・何の薬を使うかということよりも、患者が受け入れられる薬を使って治療することと、症状を寛解させるのに十分な容量を使用するということのほうが、重要である。
・SSRIsがプライマリケアではしばしば第一選択として使われている理由としては、副作用が少なく、過量投与でも、危険が少ない点である。

the American College of Physicians (ACP)からの2008年臨床診療ガイドラインでは、以下の12の第二世代抗うつ薬から治療を開始することを強く勧めている。

ブプロピオンbupropion(NDRI;ウェルブトリン) 国内未
シタロプラムcitalopram(SSRI;セレクサ) 国内未
デュロキセチンduloxetine(SNRI;新☆サインバルタカプセル)
*一日一回投与のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
エシタロプラムescitalopram(SSRI;レクサプロ) 国内未
フルオキセチン fluoxetine(SSRI;プロザック) 国内未
フルボキサミンfluvoxamine(SSRI;デプロメール、ルボックス)
ミルタザピン mirtazapine (NaSSa;新☆レメロン、リフレックス)
*ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬
ネファゾドンnefazodone(SNRI;サーゾーン) 国内未
パロキセチンparoxetine(SSRI;パキシル)
セルトラリン sertraline(SSRI;ジェイゾロフト)
トラゾドンtrazodone(SARI;デジレル,レスリン)
ヴェンラファキシン venlafaxine(SNRI;エフェクサー) 国内未
☆ネファゾドンnefazodone(SNRI;サーゾーン)には肝細胞毒性あり

・過去に受け入れの良い薬で治療に成功した患者は、うつ病が再発した際には、同じ薬を再開すべきである。
・薬の選択の際には、臨床医の使いやすさ(慣れ具合)、価格、好みと副作用を考慮すべきである。

副作用
・第二世代を評価した203の試験のシステマティックレビューではmirtazapine and paroxetineが他の第二世代抗うつ薬に比べて、体重増加がおこりやすい。
・ うつ病自体が、糖尿病を進展させるリスク要因である。65歳以上の1000人を10年追跡した前向き研究では、うつ病の人は、抗うつ薬による治療に関わら ず、うつ病を持たない人に比べて2倍以上糖尿病に罹患する率が高かった。(hazard ratio 2.3, 95% CI 1.3-4.1) 
・ ケースコントロール試験において、うつがあり、糖尿病がないおよそ166,000人の患者のうち、抗うつ薬の中等量~高用量の長期間(2年以上)の使用 が、顕著に糖尿病のリスク増に関係した。(incidence rate ratio 1.8, 95% CI 1.4-2.5)
糖尿病のリスク 増加の見積もりは、amitriptyline (incidence rate ratio: 1.43, 1.03-1.98), fluvoxamine (incidence rate ratio: 4.91, 1.05-23.03), paroxetine (incidence rate ratio: 1.33, 1.02-1.73), and venlafaxine (incidence rate ratio: 2.03, 1.18-3.48)
・他の副作用については一般的な内容であったので割愛。

用量
・少量から開始することで、抗うつ薬の副作用を最小限にすることができる。
・一週間ごとに最大量まで漸増する。
・薬はたいてい朝に内服する。内服後、8時間から12時間は穏やかな興奮作用があり、眠りを阻害する可能性がある。
・SSRIは、寛解を達成するためには典型量より高用量を必要とする。
・三環形抗うつ薬は、より少量でも高容量と同程度に効果があるようす。

フォローアップ
・治療開始から治療に反応するまでの時間は2週間から6週間と考えられている。
・ある試験では治療開始から2週間以内の早い反応は、治療の安定した効果と寛解の継続を予測させる。
・2週間過ぎても反応がない場合、薬の量を増量しなければならない。
・最大量で8~10週間経過しても反応がない場合は、異なる抗うつ薬(同じまたは異なったクラスの)を試すか、精神科に紹介しなければならない。
・部分的な反応の場合は、bupropion(国内未) or buspirone(国内未)を追加するか、患者が薬の追加を好まなければ、他のSSRI、SNRIに換える。
治療期間
・抗うつ薬は一般的に、最初のうつのエピソード後、最短でも6-9ヶ月内服しなければならない。
・患者による薬の中断は多い。
・再発も多い。特に3回以上繰り返している例は薬の継続が望ましい。

精神科へ紹介するケース
・ファーストラインの薬を患者が受け入れられない、または効果がない場合
・思考障害を伴った重症なうつか、自殺衝動がある場合
・薬品中毒や精神依存、薬物乱用を伴っている場合
・患者が認知行動療法を強く望んでいる場合

【日付】
2010年7月14日(水)

~口腔潰瘍の評価~

【文献】
Vinidh Paleri, et. al: Evaluation of oral ulceration in primary care. BMJ 2010, 340: 1234-1238.
BMJ “Clinical review” seriesより

【要約】
このレビューの目的
口腔潰瘍の鑑別の全体像、悪性と非悪性疾患の鑑別を容易にする評価法の提供

口腔潰瘍の原因
(1)急性,非腫瘍性の口腔潰瘍
外傷(とがった歯牙、入れ歯、頬粘膜を噛む)
軽度のアフタ性潰瘍(疼痛を伴う癒合しない1cm未満の円形の潰瘍。灰白色をベースとし周囲に発赤を伴う。多くの患者において原因は不明。典型的には10日以内に治癒するが再発を繰り返したり、持続する場合もある)
薬剤(NSAIDs、降圧薬、ビスフォスフォネート、ニコランジル、化学療法)
感染(ヘルペス関連がほとんど、HIV、梅毒、結核、Actinomycosis)
(2)慢性,非腫瘍性の口腔潰瘍
外傷、重度のアフタ性潰瘍、扁平苔癬、薬剤、慢性的な感染
(3)腫瘍性の口腔潰瘍

どんな所見が悪性を疑わせるか?~Box3
(1)悪性疾患の可能性を上げる所見
・3週間以上改善しない痛みを伴わない潰瘍 ・硬結を伴い、潰瘍の周囲に炎症所見のない潰瘍
・辺縁がロールし、肥厚している潰瘍 ・タバコ、アルコール ・年齢(50歳以上)
・男性 ・前癌病変の存在 ・口腔潰瘍の病歴が過去ない ・局所に潰瘍を発症しやすい要因が存在しない
・潰瘍を発症しやすい全身の要因がない ・口腔の扁平上皮癌の病歴
(2)悪性疾患の可能性を下げる所見
・そのたびに治癒する再発性の潰瘍 ・同時に発症する複数の潰瘍 ・群発する潰瘍 
・全身疾患とくに膠原病に関連して発症した潰瘍 ・水疱形成 ・疼痛と出血を伴う歯肉に関連したもの
・局所に明らかな要因のあるもの

口腔潰瘍の患者へのアプローチ

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詳細な病歴が重要(急性?再発を繰り返す?慢性?最近の歯科治療?タバコやアルコール、薬剤?併存する疾患の有無)。
身体所見: 口唇、頬粘膜、口腔底、歯牙、歯肉、硬口蓋、舌、臼後三角部。潰瘍の分布や広がり、局所所見、潰瘍に関連する所見(とがった歯牙、入れ歯など)、口腔外の所見(特にリンパ節腫脹)

専門医への紹介の前に家庭医のできること
対症療法、口腔潰瘍の素地になりやすい状態(鉄、ビタミンB12、葉酸欠乏)の改善、タバコ・アルコール問題への取り組み
悪性疾患の可能性がない、低い場合もつらい症状がなかなか改善しない場合は紹介を。

口腔潰瘍はスクリーニングするべきか?
スクリーニング法は視診が適切。
現時点ではGeneral Populationに対して実施することを推奨するエビデンスは不十分。
リスクの高い人たちが受診したついでに、実施するのがcost effectiveであろう。

【開催日】
2010年7月14日

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