~平穏死のすすめ~

【文献名】
 石飛幸三: 「平穏死」のすすめ 口から食べられなくなったらどうしますか 講談社,2010.

【要約】
  90歳の認知症患者で、一般に誤嚥を防ぐために胃瘻の手術を勧めるが、本人は意思表示できず、家族も迷う。しかし、迷った挙句に「しなければいけないの では…」と胃瘻を選択。すると、そこからは毎日計算されたカロリーの栄養補給が行われるようになる。長年にわたり人生の苦難を乗り越えてきたのに、さらに 経管栄養を受け続けなければならない。しゃべれず、寝返りを打つことすらできない方は、どんな思いでいるのか。
 胃瘻を造設すると、時に内容物が逆流して誤嚥性肺炎となり、膀胱機能の衰えからたびたび尿路感染も起こしやすくなる。いったいなんのための栄養補給なのか。
 医師の責任は生かすことばかりでなく、どのように死を迎えさせるかにもある。
 例えば栄養補給。90歳を過ぎても点滴で1日当たり1,000kcalが投与されるが、しばしば食道への逆流が見られる。老いた体が死を迎える準備をしているため、栄養を必要としなくなってきている。元気な人ならば「今日は食べたくない」と言える。
 5年前に勤務し始めたころは、胃瘻や経鼻胃管の栄養補給が必要な人に、1日に平均1,000kcal,1,400mLの水分を入れていたが、今思えば多すぎ。そのせいで、肺炎の発生率が高かったと思う。量を減らしてからは、肺炎による死亡は3分の1程度に減少。
  104歳の女性では、心不全を疑ったので2年前に1,200kcal/1,400mLだった1日の経管栄養を800kcal/1,000mLに減らした。 家族は「別の病院で最低1,000kcalは必要と聞いた。少なすぎる」と言ったが、減らしたままにし、それでもあえぐ気配があり、さらに600kcal まで落とした。すると心不全の徴候がおさまり、笑顔が見られた。
 女性は2か月後に経管栄養注入後に嘔吐し,呼吸困難で病院搬送され,亡くなった。
  一般の人に対する医療は、看取りが必要な高齢者に当てはまらない。これまでの経験から、寝たきり高齢者には提唱されているエネルギー量よりはるかに少なく ても大丈夫ではないかと思うようになった。96歳で身長146cm,体重36kgの女性には通常計算で810kcalが必要とされるが、誤嚥を繰り返すた め600kcalに減らしても、元気な状態が1年以上続いている。
 認知症患者に対する胃瘻造設はその有用性をむしろ否定する論文も出ている。
 老衰のために限界が来て、徐々に食が細くなって、ついに眠って静かに最後を迎えようとしているのを、どうして揺り起こして、無理矢理食べなさいと口を開けさせることができるのか。もう寿命が来た。静かに眠らせてあげよう。これが自然というもの。これが平穏死。

【開催日】
2010年6月23日(水)

~「ケアの継続性」はアウトカムとコストに貢献するのか?(批判的総説)~

【文献名】
John Saults, Jenifer Lochner: Interpersonal Continuity of Care and Care Outcomes: A critical Review. Annals of Family Medicine: 159-166, 2005.

【この文献を選んだ背景】
家庭医療関連の執筆のために「継続性」で文献検索して見つけ、これはMustの文献だと思ったから。

【要約】
目的
個人間のケアの継続性(1人の医師との継続性)と診療のアウトカムとコストとの関連について調べる。

方法
MEDLINE を使用して表題または副題に「ケアの継続性」で検索。2424の論文を抽出し医学に限ったり英文論文のみなどの除外規定で379となり、そこから全文読め る142本から継続性の定義や測定を行っている41本をreviewした。内ケアのコストについて調べた20本もreviewした。
Reviewは独立した二人の医師で行い、アウトカムと医療費についてそれぞれ5つのcheck項目を設定し0点-2点で評価し、その合計点で論文一覧についてのエビデンスシートを作成し分析した。
分析の中で「入院率」はアウトカムとコストの両方を測定する特有のアウトカムとして設けられると発見した。一方で「予約患者の未受診」「救急外来の受診」「頻回の受診」はコストを測定するものの、アウトカムの質を測定していないとみなした。

結果
ケアの継続性と診療のアウトカムとの関連(Table1)
・40の研究の41本の論文が評価された。介入試験7、コホート研究14、比較研究17、症例対症研究2。
・その中では81項目の診療のアウトカムが報告された。
・51のアウトカムは著しい改善との関連を認め、扁桃摘出の紹介基準と産婦人科医との併診でHRTを受けた2つの研究では寧ろアウトカムが低下するという結果であった。28のアウトカムが著しい関連がない、もしくはmixed associationであった。
・ケアの継続性とアウトカムとの関連を多く認めたものは、予防医療の提供(12の研究で22のアウトカム)・入院率(9の11)・医師患者関係の質(5の5)、慢性疾患管理の指標(4の8)、産科ケア(4の16)であった。
・ また、継続性を測定する方法は10通りあった。主なものは患者のサーベイ(10の研究)、usual provider continuity:UPC(6)、Index provider index(5),continuity of care index:COC(5)などであった。
・介入研究ではいずれも継続性を提供できる診療所と継続性のない診療所に割り付けた研究であったが、継続性の測定方法の信頼性が低く、そのエビデンスの質は危ういものであった。

ケアの継続性とケアのコストとの関連(Table2)
・20の研究の22本の論文が評価された。何れも医療費の低下との関連を認めていた。
・内訳は、介入試験5、比較研究3、症例対症研究2、コホート10であった。
・ケアの総医療費を調べたもの、メディケアの総医療費を調べたものはそれぞれ一つだけで、その他の研究では別の変数となっていた。入院率(10の研究)、受診回数(4)、救急外来受診(4)、予約したが受診しなかった率(4)、検査の使用(4)。
・20の研究で継続性が8通りの方法で測定されていたが、3つの研究では継続性そのものの測定がなく、4つの介入試験のうちの3つでは、継続性の有り無しの診療所に割り付けられたにも関わらず、その継続性の測定が行われていなかった。
・一つの研究では、継続性が増すほど、「処方箋の発行」と「専門科への紹介」の増加に著しく関連していた。

結論
・継続性はいくつかのアウトカムの改善と関連していた。
・特に、予防医療の提供のアウトカムと入院率の低下とは関連を認めていた。
・継続性と慢性疾患管理のアウトカム質との関連ははっきりしなかった。
・継続性の研究は、継続性をどのように定義し測定するかという不一致の限界がありながら、継続して行われているが、近年の研究ではコンセンサスが出来つつある。

【考察とディスカッション】
・「継続性」は家庭医療のコアプリンシプルでありながら、先人達がその定義や測定に苦労しながら研究していたことに共感を覚えた。
・また5年前にこの様な論文が出ていることで「継続性」は古典のような概念ではなく、今でも十分にHotなテーマでずっと研究が続いているテーマであることを知ることができた。
・入院率という測定しやすいアウトカム、している・していないで測定する予防医学の提供で継続性との関連が出やすく、これは家庭医の強みとして強調できる点だと感じた。
・関連でなく因果を調べるための介入研究で、継続性の測定がなく論文のエビデンスが低めてしまったことが残念であった。
・今後は言及のあった慢性疾患の管理でよりよりアウトカムが集積されるほうが健康政策や専門医志向と言われている国民性に対しては影響力を持つと感じたが、指摘の限界をどう乗り越えるかが今後の世代の宿題となった。
・インデックスなどの測定可能な指標を作って研究することは非常に重要である。先行研究として取り上げられることになる。

【担当者】
松井善典(更別村国保診療所)

【開催日】
2010年6月16日

~無症候性のABI低下患者へのアスピリンは血管イベント予防に効果がない~

【文献】
F Gerald R. Fowkes, Jacqueline F. Price Marlene C. W. Stewart at el: Aspirin for Prevention of Cardiovascular Events in a General Population Screened  for a Low Ankle Brachial Index. JAMA; 303 841-848, 2010.

【要約】

結論
 無症候性のABI低下患者におけるアスピリンは血管イベントを減少させない。

論文のPECO
P:
50-75歳で心血管疾患を持っていない男女28980人にABIを行い、0.90以下だった3350人をトライアルへ。
E:
アスピリン100mg
C:
プラセボ
O:
Primary;    初回の致死的・非致死的心血管イベント、脳卒中、血管再灌流の治療
Secondary; ①上記のPrimary+狭心症+間欠性跛行+TIA ②総死亡

妥当な文献か?二重盲検のRCTでITT分析されている。追跡期間の中央値は8.2年

メリット・デメリットの程度は?
Primary、Secondary共に、介入群と比較郡にて有意差を認めなかった。
                   Hazard Ratio    RRR     NNT
Primary endpoint      1.03(0.84-1.27)     -0.3%    -333
Secondary endpoint
 ①全ての血管イベント   1.00(0.85-1.17)     0.1%     840
 ②総死亡           0.95(0.77-1.16)     0.6%     169

Adverse eventとしては、Major hemorrhage(脳出血、SAH、消化管出血、その他)が介入群の方がHR 1.71(0.99-2.71)で多かった。
NNHは125

【開催日】
2010年6月16日

~BNPに基づいて治療を行っていくことは心不全管理に有用か?~

【文献】
Pfisterer M et al. BNP-guided vs symptom-guided heart failure therapy: the Trial of Intensified vs Standard Medical Therapy in Elderly Patients With Congestive Heart Failure (TIME-CHF) randomized trial. JAMA. 2009 Jan 28;301(4):383-92.

【要約】
背景
心 不全の治療において、Nt-BNPに基づいて行う治療が症状に基づいて行う治療よりも優れているかどうかは定かではない。種々の研究があるようだが、どれ もサイズが小さかったり、フォローアップ期間が不十分であったり、詳細が論文に記載されていなかったりと問題があった。
さらに高齢者は心不全の症状も顕在化しにくくあてにならない。それにもかかわらず薬に対しての有害事象なども多いため非常に治療が難しいが、高齢者に対する心不全管理に対してのエビデンスも乏しい。

目的
心不全において、Nt-BNPに基づく治療と症状に基づく治療の結果を18か月で比較すること。

デザイン,セッティング,患者
randomised controlled multicenter trial
対象者…収縮障害性心不全(EF<45%)であり、NYHA2度以上で1年以内に心不全で入院歴があり、Nt-BNPが正常上限の2倍以上である60歳以上の患者499人。Baselineに差はない。
(強いて言えば、年齢別の比較で75歳以上のほうが
症状が重症であり、BNPも高値であるにもかかわらず、EFが良いくらい)
追跡期間…18カ月
場所…スイスとドイツの15か所の外来診療センター
期間…2003年1月~2008年6月

介入
NYHA2度以下の症状に抑えるように治療していく群(症状に基づいた治療群)
BNPが正常上限の2倍以内とNYHA2度以下に保つよう治療していく群(BNPに基づいた治療群)
(75歳未満では 400pg/ml以下、75歳以上では、800pg/ml以下)

結果
Primary end point
・Hospital free survival(在宅生存率)はBNPに基づく心不全治療群と症状に基づく治療群とで同等(41% vs 40%;HR,0.91[95% CI,0.72-1.14];P=0.39)
・18か月にわたる追跡期間中のQOL測定基準は改善したが、2群間の改善は同等であった。
Secondary end point
全年齢における比較
・HF Hospital free survival(心不全に関する在宅生存率)で両群間に差があった
(72% vs 62%;HR,0.68[95% CI,0.50-0.92];P=0.01)
年齢別(60-75歳、75歳以上の2群)における比較(Figure6,7.)
・60~75歳においてBNPに基づく治療群で結果が改善したが、75歳以上では改善しなかった。(P<0.02)   結果とは…在宅生存率,死亡率、心不全に関する在宅生存率 <参考> 心不全に対する治療的介入率  Baseline1カ月3か月6か月 sympton-guided group77%61%53%52% BNP-guided group86%95%91%90% しかし、症状の改善も、BNP値も両群とも有意差がなかった。(Figure3.) 症状の程度(NYHA分類)とBNP値との関係性についてFigure4.に記載があるが、かなり幅があることが分かる。これによりBNPに基づく治療群では薬物の利用される率が増えてしまうことを示唆する。 有害事象に関して 両群間に有意差なし。(腎機能障害、低血圧も有意差なし。)  しかし、年齢を加味すると、 75歳以上の患者で10.5% vs 5.5%; P=0.12 60-75歳の患者で3.7% vs 4.9%; P=0.74 結論 BNPに基づく心不全治療群は症状に基づく治療群と比較し、臨床的なアウトカムやQOLを改善しなかった。 【開催日】 2010年6月9日

~虚血性心疾患の一次予防としてアスピリンは使わない~

【文献】
Barnett H, Burrill P, Iheanacho I: Don`t use aspirin for primary prevention of cardiovascular disease. BMJ; 340 920-922, 2010. (PRACTICE – Change Page)

【要約】
総括
 現在1次予防としてアスピリンを内服している全ての患者に対して、治療が正当化されるかを再考するべく、個別に評価するべきである。

アスピリンの1次予防効果を検証するMetaanalysis 2009 LANCET
・ 6つのRCTで95000名の参加者
・ アスピリンは重篤なIHD発症を0.07%/年の減少させる(I:0.51% v.s. C:0.57%)
・ そのほとんどは、非致死的なMIの発症率低下の貢献
 絶対リスク減少 0.05% (I:0.18% v.s. C:0.23%  NNT:2000)
・しかし、重大なGI出血や頭蓋外出血のリスクは、0.03%上昇(I:0.10% v.s. C:0.07%  NNT:3300)
・ 全死亡率、IHDによる死亡率、脳卒中については両群間で差異はなし
・ また、リスク低下の程度は年齢・性別・血圧、DM歴、IHDリスクには関係しない

他のSystematic Review 2004~2010年に発表
・ HT患者で抗血小板薬を1次や2次予防として内服しているケース → プラセボと比較して、脳卒中や「全虚血性疾患発症率」を低下させない
・ DM患者においてアスピリンの予防効果を検証したReviewでは、主要な心血管イベントや全死亡率の低下をもたらすことはなかった
・ 効果を示すreviewでもGI出血のリスクと相殺されている

結論
・ 1次予防としてのアスピリンの効果は、致命的な心血管イベントの絶対リスク減少に関して、小さいもしくは重度な頭蓋内や頭蓋外出血のリスクと相殺されると考えられる。
・ 現在入手可能な研究では、健康成人に対する1次予防としてのアスピリンのルーチン使用を正当化するようには考えられず、これは、性別・年齢・血圧・心血管系リスク・DMの有無にかかわらない。

変化への抵抗
・ 2005~2008年に発行されたいくつかの診療ガイドラインは心血管系リスクの高い患者やDM患者へのアスピリンの1次予防としての使用を推奨している
・ ガイドラインを変更した学会もあったが、残念ながら最近イギリス高血圧学会は推奨の姿勢を変えずに示した

どのようにして実践を変えるべきか?
・ 現在1次予防としてアスピリンを内服している患者については、一人一人を再評価し、中止あるいは継続の判断を、十分に患者へこのようなエビデンスを説明した後に、実施すべきである。

【開催日】
2010年6月9日

~帯状疱疹後神経痛の新薬リリカは効果があるのか?~

【文献】
 Dworkin et al: Pregabalin for the treatment of postherpetic neuralgia A randomized, placebo-controlled trial.Neurology: 2003;60;1274-1283

【要約】
(目的)
帯状疱疹後神経痛の治療にプレガバリンの効果と安全性を評価するため
(方法)
帯状疱疹の発疹が治癒して3カ月以上痛みがある帯状疱疹後神経痛の患者に対して、二重盲検でプレガバリンとプラセボを8週間投与して比較したRCT。
173人の患者をランダムに割りつけてプレガバリンかプラセボで治療した。
Ccr>60の患者に600mg/日、30<Ccr≦60の患者に300mg/日投与。
主要な効果尺度:最終7日間の疼痛の程度の平均値。
副次的なエンドポイント:他の疼痛の尺度、睡眠障害、QOL、気分、患者と医師の全体的改善率(ratings of global improvement)。

(結果)
・プレガバリン治療群はプラセボ群と比較して痛みが相当軽減した(エンドポイント平均値:プレガバリン群3.60、プラセボ群5.29、p=0.0001)。治療の初日から治療期間を通して、プレガバリン治療群の疼痛は著明に減少した。
・McGillのPain Questionnaireのtotal score,sensory score,affective scoreでも同様に著明な改善がみられた。
・疼痛の平均値が30%以上減少したという患者の比率はプレガバリン群は63%、プラセボ群は25%。疼痛の平均値が50%以上減少したという患者の比率はプレガバリン群は50%、プラセボ群は20%でp=0.001であった。
・睡眠は、プラセボ群と比較してプレガバリン群は改善した(p=0.0001)。
・global improvementは医師、患者両方ともにプレガバリン群はプラセボ群と比較して有意な差があった(p=0.001)。
・最大投与量でプレガバリンはプラセボと比較して、軽度から中等度の副作用がより多く見られたが、受け入れられるものであった。

(結論)
帯状疱疹後神経痛の治療にプレガバリンは安全で、プラセボと比較して疼痛、睡眠障害を緩和するのに対して有効で、全体的な改善もみられる。

【開催日】
2010年6月2日(火)

~心不全へのβブロッカーの使用法~

【文献】
Wilson S C: Use of beta blockers in heart failure due to systolic dysfunction. UpToDate ONLINE18.1, 2009.

【要約】
● 収縮不全による心不全の患者にβブロッカーを使用する場合には、特にカルベジロール、酒石酸メトプロロール、ビソプロロールがHFによる入院を減らし、生存率を改善するエビデンスが出ている。
● βブロッカーの使用はある特定の患者;虚血性と非虚血性のいづれの心筋炎、安定したⅣ度の心不全、女性、黒人、糖尿病のある患者、高齢者にも有用であるというエビデンスがある。
●  最近、または以前に心不全があり、LVEF<40の患者には、βブロッカーによる治療が推奨される。(Grade 1A) 臨床医はrandomized trialsで有用性(全ての原因における死亡率を減らすことを含む)が証明されているβブロッカー(カルベジロール、酒石酸メトプロロール、ビソプロ ロール)を選択するべきである。
● 治療を開始する前に、患者には浮腫がないか、あっても軽度の状態でなければならない。βブロッカーの治療は、退院する前の安定した患者に使用すべきである。
● βブロッカーの治療はACE阻害薬やARB、アルドステロン拮抗薬と併用することにより、ますます有効性が増す。
● 一般的にはβブロッカーが導入される前に、ACE阻害薬が先に導入されている。βブロッカーが先に導入されている文献は限られている。
● 治療はごく少量から始め、目的の量までもしくは症状に限界がくるまで(心不全症状の悪化、症候性の低血圧、50回/分以下の徐脈)、決まった期間で倍量にしていかなければならない。(2週もしくは3週毎など)開始量と目標量は以下のとおり。
● カルベジロール(アーチスト)では開始量3.125mg2x、目標量が25~50mg2x(最大量は体重85kg以上の人が適応)
● 酒石酸メトプロロール(セロケン、ロプレソール)は開始量12.5mg1xまたは25mg1xで、目標量は200mg/日
● ビソプロロール(メインテート)は開始量1.25mg1x、目標量が5~10mg1x
● 治療目標量に到達するために全ての努力を行わなければならない。しかし、最良ではないにしても、低用量でも利益があるようなので、高用量が使えない場合でも投与されるべきである

【開催日】
2010年5月26日

~この腰痛,長引いて医師を手こずらせる?~

【文献】
Roger C, Paul S: Will This Patient Develop Persistent Disabling Low Back Pain? JAMA; 303(13) 129501302, 2010. (Rational Clinical Examination)

【要約】
(この文献の目的)
 腰痛が長引いてこじれやすい患者を予想できるここのリスクファクターの有用性とリスク予想ツールをシステマティックにレビューすること。

(データソース)
MEDLINE,EMBASE。
(文献のInclusion Criteria)
発症して8週以内の腰痛患者をProspectiveに経過を追い、長引いてこじれてしまう腰痛の予測因子をlikelihood ratios(LRs)を計算できる形で評価しているもの。

(結果)
20の文献、10842人の患者が今回のsystematic reviewに含まれた。
<検査前確率>
過去のプライマリ・ケアセッティングにおけるリサーチでは急性の腰痛の
休職や失業保険に対する検査前確率: 11%(3~6か月後),11%(1年後)
長引く疼痛や生活機能低下,複合アウトカムに対する検査前確率: 26%(3~6か月後),21%(1年後)
<個々のリスク因子>
①人口統計的な因子(年齢、性、教育レベル、喫煙、体重)はそれぞれLRは1前後であり有用とは言えない。
②職業関連の因子
初診時にすでに失業保険を受け取っている患者では1年後のLRは1.4。
初診時に仕事に対する満足の低い患者では1年後のLRは1.5。
身体的にハードな仕事の患者では1年後のLRは1.4。
③健康状態
全体的な健康度の低い患者ではLR 1.6(3~6か月後),1.8(1年後)
精神疾患を持つ患者ではLR 1.9(3~6か月後),2.2(1年後)
過去の腰痛のエピソードではLRは1前後であり、有用ではない。
④診察所見
初診時の強い痛み LR1.7(3~6か月後),1.3(1年後)
初診時の生活機能低下 LR1.4(3~6か月後),2.1(1年後)
不適切な対処行動(痛みに対する不安を避けるような行動パターン) LR2.2(3~6か月後),2.5(1年後)
初診時神経根の症状 3~6か月後,1年後ともにLRは1.4
Nonorganic sign(身体的な痛みとは思えない身体所見)が認められる患者 LR2.5(3~6か月後),3.0(1年後)
<リスク予想ツール>
いくつかの文献は独自にリスク予測ツールを提案していたが、利用を推奨するほどの十分なエビデンスは得られなかった。

(限界)
それぞれの文献がそれぞれにリスク因子を定義し、「こじれた腰痛」とういものを定義していること。
LRを計算できない多くの研究が解析から除かれていること
腰痛の真の原因については言及していないため、そのうちのいずれかが「長引く、こじれた腰痛」と関連している可能性があること。(実際には痛みの原因を特定することは難しいため非現実的な話ではある)
解析法がそれぞれの文献でずれがある。

【開催日】
2010年5月26日

~早期臨床実習の有効性~

【文献】
 Little S, Ypinazar V, et al: Early practical experience and the social responsiveness of clinical education: systematic review. BMJ, Aug 2005; 331: 387 – 391

【要約】
<目的>
 地域での早期臨床体験(医学部1-2年生)がいかに医学教育に影響を及ぼすかを知る。また、そのエビデンスのレベルや限界を認識する。
<デザイン>
 1992-2001の10年間に報告された論文(経験的な研究全てが対象。各論文のデザインや方法は問わない)のエビデンスレベルと重要性をランク付けしたsystematic review。

<結果>
 早期臨床体験は、医療の行き届かない住民のために働くプライマリ・ケア医を募ることを目的としたため、地域でなされることが多かった。
 そのためこの体験は、プライマリ・ケアのレジデントを増加させた。
 また、自己認識と病人に対する共感的態度を育み、自信を持たせ、動機付けをし、満足感を与え、職業人としての自覚を促した。
 人間関係のスキルを伸ばすことにより、臨床実習の際のストレスを減らした。
 そして、自分の職業が果たす役割や責任、そしてヘルスケアシステムや住民の健康ニーズを学びやすくした。
 生物医学的・行動学的・社会科学的をより関連付け学びやすくした。
 教官や患者を動機付け、カリキュラムを良いものにした。
 ある国々では、低学年の学生が予防的なヘルスケア活動を住民に対し行っていた。
<結論>
 早期臨床体験は医学生の学びを促し、彼らの学びや将来の仕事に対する適切な態度を育み、医学教育カリキュラムを社会ニーズに向けさせた。
 この利点は介入研究のエビデンスとしては得られそうにないが、それでもより多くの医学校が導入するだろう。

【開催日】
 2010年5月19日

~薬剤溶出性ステント挿入後の抗血小板薬併用の期間~

【文献】
 S.-J. Park and others: Duration of Dual Antiplatelet Therapy after Implantation of Drug-Eluting Stents. N Engl J Med 2010; 362:1374-82. 

【要約】
<背景>
 薬剤溶出性ステントを留置した患者に対して、抗血小板2剤併用療法を12か月を越えて行った場合の潜在的な利益とリスクは明らかでない。
<方法>
 Patient: 薬剤溶出性ステントを留置した虚血性心疾患の既往のある患者。
 Exposure: アスピリンに加えてクロピドグレルを併用投与する群。
 Comparison: アスピリンを単独投与する群。
 Outcome: 心筋梗塞または心臓が原因の死亡に差があるか?
  この研究はREAL-LATEとZEST-LATEというランダム多施設の二つの試験にエントリーされた患者を融合したもの。治療に関してはオープンラベ ルだが、データ集積と解析はブラインド化している。ITT解析にて、2剤併用群で99.4%、アスピリン単独群で99.3%がフォローされている。

<結果>
 追跡期間の中央値19.2カ月。2年後の主要転帰の累積リスクは2剤併用群で1.8%、アスピリン単独群で1.2%だった。(ハザード比1.65、95%CI0.80-3.36、P0.17) 
 心筋梗塞、脳卒中、ステント血栓症、結構再建術の再施行の必要性、重大な出血、全死因死亡の各リスクには両群間で有意差は認められなかった。
  しかし2剤併用群ではアスピリン投与群と比べ心筋梗塞・脳卒中・全死因死亡の複合リスク(ハザード比1.73、95%CI0.99-3.00、 P0.051)と、心筋梗塞・脳卒中・心臓が原因の死亡の複合リスク(ハザード比1.84、95%CI0.99-3.45、P=0.006)について、有 意でないものの上昇がみられた。
<結論>
 薬剤性ステントを留置した患者に抗血小板2剤併用療法を12か月を超えて行っても、アスピリン単独療法を行った場合と比べて、心筋梗塞・心臓が原因の死亡の発生率の低下に有意な有効性は認められなかった。
 これらの結果については、より長期の追跡を行う大規模な無作為化試験にて、確認あるいは反証する必要がある。

【開催日】
 2010年5月19日