終末期緩和ケア患者の感染症に対する抗菌薬の使用について

―文献名―
Joseph H. Rosenberg, Jennifer S. Albrecht, Erik K. Fromme, et al. Antimicrobial Use for Symptom Management in Patients Receiving Hospice and Palliative Care: A Systematic Review
J Palliat Med. 2013 Dec 1; 16(12): 1568–1574

―要約―
Introduction
 米国でも高齢化により緩和ケアの必要性が高まっている。終末期患者は高い感染のリスクがあり、約27%の患者が死亡する週に抗菌薬が投与されている。この状況にも関わらず終末期患者における抗菌薬の投与が、予後の延長と症状緩和に寄与するかについては明らかではない。2002年に終末期患者に対する感染のSystematic Reviewがあったが、その中では症状の改善に関する論文は1つだけであった。この10年で終末期患者における抗菌薬の使用を検討するいくつかの論文が発表されている。今回はそれらの文献を体系的にレビューし、症状の改善に対する既存のデータを要約した。これにより今後の終末期患者の抗菌投与の有無の判断について役立てることが目的である。

Method
 PubMedで2001年1月1日~2011年6月30日までの間に発表された終末期患者の抗菌薬使用についての文献のSystematic Reviewであり、palliative care、infection 、antibiotic等の文字で検索した。癌を含む終末期患者における、抗菌薬使用率と使用後の症状の改善を測定した文献に限定して分析した。創傷、口腔ケア、衛生環境、薬物動態に焦点を当てたものは除外としている。対象としている論文は記述研究である。データベース以外の検索はしておらず、funnel plotなし。文献の評価については、1人目の著者は文献が基準を満たしているのかを評価し、2人目、3人目の著者が選ばれた文献をレビューし、4人目の著者が評価者の内容に偏りがないかチェックしている。

Results
 PubMedで984の文献を検索し、基準を満たす文献は11個であった。table1は患者数、主病名、療養環境、国、研究方法、反応性、抗菌薬使用率について記載している。table2は抗菌薬に対する症状の改善について記載されており8個の文献が当てはまっている。全体での抗菌薬による治療の効果については、21.4%(95%CI:13.2%-31.7%)~56.7%(95%CI:52.7%-60.6%)と様々であった。点滴投与のみの研究は2つあり、効果はそれぞれ52.9%(95%Cl27.8~77.0%)、75.9%(95%Cl:52.7~60.6%)であった。また臓器別の抗菌薬の効果について記載された論文が3つあり、その中の2つの文献によると尿路感染症では60~92%、呼吸器感染症では0~53%、菌血症では0%の効果であった。

Discussion
 今回の研究の課題としては、抗菌薬使用群と非使用群との比較対照した研究ではない。抗菌薬の使用状況と症状の改善を同時に測定している事に異質性がある。現時点ではランダム化比較試験の研究はない。症状の改善という点でも有効な症状測定ツールを使用しておらず、主観的な評価を用いている(ただ、症状の評価自体が主観的であり測定が難しい)。解熱剤等の抗菌薬以外の治療の効果が除外されていないので、抗菌薬の独立した効果かは不明。抗菌薬の副作用についても考慮していない。
ホスピスでは感染症の診断自体があいまいな場合が多い。今回の研究では数が限られているため
ファネルプロットを用いた出版バイアスの評価も行わなかった。
今回の研究結果はこの分野における質の高い研究の必要性を再確認するものであった。
今後研究を行う際は、有効な症状測定ツールを活用する。抗菌薬治療群と非治療群とを分けて評価する。感染症を定義付ける。副作用も調査する。他の薬剤使用等の症状管理状況の交絡因子をきちんと除いたプロスペクティブな研究が必要である。

【開催日】
 2017年5月24日(水)












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