大人の発達障害

―文献名―
青木 省三, 村上 伸治.大人の発達障害を診るということ 診断や対応に迷う症例から考える.医学書院, 2015

―要約―
背景:
 幼少期から「少し変わった子」だと気づかれながらも診断や支援を受けてこなかった例、また多少の徴候はあっても気づかれずに児童期を過ごし、青年期や成人期に学校や職場などで対人関係などの問題が生じ抑うつなどの様々な症状を呈して精神科を受診する例が増えている(そのような例は、大半は児童期に児童精神科や発達障害を専門とする小児科医の診断を受けてない)。

目的:
「発達障害的なところがあるが診断してよいか迷うようなグレーゾーン」の患者について、その患者の中の発達障害特性に気づくことで患者理解が進み、その特性に応じた適切な対応が出来ること。

内容:
<特徴>
●発達障害特性は、状況に応じて変化する。
 例)ストレスの強弱によって、イライラやこだわり行動や独り言が強く現れたり見えにくくなったりする。
   「ある職場では発達障害, 別の職場へ行けば定型発達」
●発達障害と定型発達は、その間に明確な境界線を引くことが出来ない。
安藤先生図

<診断>
●発達障害の診断とは、白黒をつけることではなく、患者の行動を予測できるようになることである(灰色診断)。
 その人の発達障害特性はどのようなものであり、生活障害としてどのように現れるかを詳しく把握する。
 それにより、今後本人が遭遇するであろう生活上の困難を予測し、きめ細かい支援を行うことが出来る。
●生活上の具体的なエピソードから発達障害特性を一つずつ同定し、灰色診断を行う。
 発達障害に関する本を2-3冊、本人や家族に読んでもらう。その記載に似たエピソードを話してもらう。

<支援>
●常に周りに相談しながら生きていく人生を提案する。
●全ての人が必要としているのは「解説者」である。
 障害者手帳や障害者就労などの公的支援は、必要がある人もいれば必要がない人もいる。
 発達障害特性を持つ人は、目の前の状況を正しく理解できないことがあるため苦労する。
 同時通訳のように状況を解説してくれる人が必要である。本人に関わる全ての人が解説者になりうる。
●周りに相談できる人になってもらう。
 予後を決めるのは障害の重さではなく、助けてもらうパターンを身につけたかどうか、である。

<その他>
●現在の精神医学体系は、定型発達であることを前提に診断分類を行ってきた。
 発達障害特性を基盤にする事例は、非典型的病像を呈しやすい。
 →統合失調症/うつ病/不安障害などと並列して発達障害があるのではなく、全ての精神疾患のベースに発達障害があると考えたい。

―考察とディスカッション―
 誰もが定型発達と発達障害それぞれの要素を持ち合わせているため、はっきりとした「発達障害」の診断をつけなくても、個々の患者さんの特性を把握しそれに合わせて患者さんと付き合い必要な支援を提供していくとよい、という内容は普段の臨床経験から考えると腑に落ちるものでした。

ディスカッションポイント
 ① 発達障害の特性を持ち合わせている患者さんとの面接について、どのような経験があるか。
 ② ①の際、面接の際に気を付けていることや工夫していることは何か。

【開催日】
 2016年2月3日(水)












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