ペアレント・トレーニング

―文献名―
「むずかしい子を育てるペアレント・トレーニング」 野口啓示著 明石書店

―要約―
はじめに
 しつけとは、親の愛情を子どもに伝えるための方法である。しかし、しつけには子どもの成長に悪い影響を与えるものと、良い影響を与えるものの2つがあることが分かってきた。子どもに悪い影響が出てしまうしつけは、多くの場合叩いたり、怒鳴ったりといった罰を伴うしつけである。これらは、子どもにしてはいけないことを伝えるというより、親は怖いといった恐怖心を伝えてしまう。それにより子どもの成長に一番大事な親子関係にダメージを与えてしまう。親子関係が悪くなると、親と子のコミュニケーションが悪化し、その結果子どもの問題行動は増加する。その状況は親の苛立ちを強め、罰を伴うしつけを生み出しやすくなる。それによって親子関係はさらに悪化するというバッドサイクルに陥ってしまう。このサイクルが始まると、抜け出すのはなかなか難しく、抜け出すための方法が必要になる。
 この本では、アメリカで生まれたペアレント・トレーニングを日本流にアレンジした10の方法を紹介する。

1.わかりやすく伝えよう [具体的な言い方のすすめ]
 例えば、「今からレストランに行くから、ちゃんとしているのよ」「今日はいい子にしていてね」という表現はどうか。これで子どもが親のしてもらいたいことを理解するのは難しい。「レストランでは走り回らないで、座って食べる」というように、具体的にしてほしい行動を伝えることが重要である。

2.ほめることで悪い面をやっつけよう [良い面を増やして悪い面を減らす方法]
 人はほめられると嬉しくなる。その体験は行動を維持するのに大きな力を発揮する。ほめ方のコツは、①ほめ言葉をかける、②何が良いかを伝える、③理由を説明する、④もう一度ほめ言葉をかける、というステップを意識すると良い。

3.がんばり表を使って子どものやる気を引き出そう
 ほめることに役立つのが「がんばり表」である。具体的な行動を取り上げ、目標をはっきりさせる。それができたら表に○をつける。①子どもが喜んでする行動、②ときどきする行動、③ほとんどしない行動、の3つに分ける。がんばり表を作るポイントは、①子どもが喜んでする行動をうまく取り入れることである。子どもが達成しやすい目標をあげて成功体験をさせて、本当にできてほしい②や③の行動を少しずつ達成させていく。

4.前もってのお約束 [ころばぬ先の練習]
 何かが起こる前に、前もって子どもに言ってきかせる方法を紹介する。ここでは4つのステップで、子どもと約束をする。①子どもにしてほしいことを説明する、②理由を説明する、③練習、④お約束、である。練習をすることで、ただ口で説明するより子どもが教えられたことをするようになる。また、親がしてほしいことを子どもが理解しているのかを確認することができる。

5.まずは落ち着こう [不安感を減らして落ち着きを取り戻すプラン]
 親の苛立ちが強くストレスの高い状況から抜け出すため、落ち着きを取り戻すヒントを紹介する。叩いたり、怒鳴ったりするような状況の時は、我を忘れた状態になっていることが多い。それは状況にうまく対処できないのではないかという不安感が強い時に起こる。そのため少しでも不安感を下げるためのリラックス方法を考えておく。ここでは3つのステップを使う。
①状況の整理   「次に(       )が起こったとき」
②体の変化を察知「私が(       )を感じたら」
③リラックス     「私は(       )をして落ち着きを取り戻します」
この( )を埋めて、落ち着きを取り戻すプランを作成する。

6.行動を分析しよう
 子どもの問題行動を分析する。ポイントは、子どもの問題行動が起こった前後の状況を観察し、何が起こっていたのかを見ることである。子どもの行動が起こる前の状況はどんな状況だったのか、どんな刺激があったのか。それによってどんな行動に至ったのか。行動の後にどんな結果があったのか。結果によって行動は強められたり、弱められたりする。
 実際に行動を変えるためには、良い結果と悪い結果をうまく使い分ける。良い結果を使うのは、前述した「ほめる」「がんばり表を使う」という方法でできるが、悪い結果を使うのはどうか。叩く、怒鳴る、という方法は多くの場合有効ではなく、子どもが「しまった」と思えるものを使う。①特権を取り去る方法(子どもの楽しみに制限を加える)、②責任を取らせる方法(汚したら掃除をするなど、したことを償わせる)などが有効である。

7.怒鳴ったり叱ったりしないで子どもをしつける方法
 これまで紹介した方法を用いて、子どもをしつける。①共感的な表現を使って、問題行動をやめさせる、②悪い結果を使い、「しまった体験」をさせる、③子どもにしてほしいことを説明する、④練習、という4つのステップを使う。

8.危機介入 [親子で身につけるセルフコントロール]
 親が落ち着くための方法は5で説明したが、そのテクニックを子どもにも教える。興奮してくると人の言うことは聞こえなくなるので、親とともに子どもも落ち着きを取り戻す必要がある。ここでのステップは「まずは落ち着く」の第1ステップと、「セルフコントロールを教えるフォローアップ」の第2ステップの2つからなる。

9.子どもの発達と親の期待
 子どもの発達と親の期待がぴったりと合っていれば、そこにストレスはない。しかし、なんだか怒ることが増えているなと感じたら、一度立ち止まって、親としてどのような期待を子どもにしているのか考えてみると良い。
 子どもが言われたことをできない状況には、言われたことが理解できていない状況、実行する力がない状況の2つがある。具体的な表現を使って親の期待を詳しく教えること、そして教えたことを実際にさせてみて、教えたとおりにできるのか確認することで、その期待が適切なものであるのか確認できる。

10.問題解決法 [子どもとの話し合いをうまく行うための方法]
 問題を解決するために、子どもとの話し合いをうまく行うための方法を紹介する。ここでは①子どもが抱える問題を整理する、②どうしたら良いかの案を整理する、③メリットを考える、④デメリットを考える、⑤どうするかを決める、というステップを使う。

【開催日】
2014年12月17日(水)

日本のホスピス利用者における健康・病いの信念体系としての「体力」

―要約―
Ikumi Okamoto. Tairyoku as a belief system of health and illness: a study of cancer patients in Japan. Anthropology & Medicine. December, 2008, Vol.15, No.3, 239-249

―要約―
【背景】(※担当者要約)
筆者のホスピスにおけるフィールドワーク中の観察内容がきっかけになっている。ホスピス利用者はしばしば「体力」をつけるための活動を行ったり、「体力」という概念をもとに治療の意思決定をしているが、ホスピススタッフは必ずしもそれを理解・評価していないこともある。ホスピスでは、まず死が避けられないことを受け入れるからこそ残された時間を可能な限り意義深く送ることができるという「哲学」があり、実際に死を受け入れられるような働きかけが行われる。しかし、患者は必ずしもそのような哲学通りの生き方をしてはおらず、癌を治すような試みも自主的に行っている場面が見られる。
この研究では、日本のホスピスという文脈における「体力」の概念を明らかにして、死を目前にした患者の中ではどのように用いられているのかを探索し、更にはこの「体力」という概念を用いて、ホスピスにおけるスタッフと患者の治療に対する意見の違いに対する理解を深めることを目指す。

【方法】
・参与観察;札幌にある28床のホスピス、1999-2000年に11ヶ月実施し、89人の患者を観察した。データは、1. PCUの外来・回診・病状説明の場面への参加、2. 患者・家族・スタッフとの対話、3. 患者記録の検証 から集めた。

【「体力」の概念】
・辞書的には体力は、「防衛体力」と「行動体力」の二つの意味があるが、ホスピスの文脈では殆どが、前者の意味で使われる。
・「体力」は、中国語で言う「気」と非常に近い意味で使われている。
・患者の語りからは、「体力」は相互に密接に関連する4つの要素すなわち、gentle exercise、nutrition、rest、calm state of mindの影響を受けることが伺われる。この4要素の釣り合いが「体力」の維持に重要であると考えられている。これは過去の研究で指摘されている、日本的な健康・病気に対する考え方、「体のそれぞれの部分は全て相互に関係しており、さらに社会的・物理的環境の影響を受ける」を支持する概念とも言える。

【体の状態を知る目安としての「体力」】
・患者・家族は、体の状態を測る際に、体力の概念をしばしば用いる。より体力がある場合、より良い・強い状態だと感じるし、治療を受けることを選択する。
・また、医学的治療を選択する際には、短期的な体への影響や効果よりも長期的な体力への影響の方が重視される。

【治癒力としての「体力」】
・多くの患者が、体力があると治癒力があると考えており、治療不可能な癌があると知っていてもそれを伺わせる発言が多くある。体力は、何か内なるものと考えられており、癌が内臓まで至っていなければ体力への影響は小さく、食べることで体力を蓄えられると考えられている。
・上述の4要素のうち、栄養は最も重視されているようで、それは患者が、食事をとることが直接エネルギーを得るため、体力を蓄えるために最も効果的な方法だと捉えているからのようである。

【医学的介入による「体力」の向上】
・体力の低下は患者にとってはすなわち迫った死を意味するため、脅威である。患者・家族ははじめは非医学的な方法で体力を得ようとするが、手を尽くしてもうまくいかないとわかると体力を増やすための医学的支援を得ようとする。(末期がん患者がTPNで体重を保とうとする事例、意識がない患者の症状の原因が癌による多臓器不全よりむしろ食べられなくなったことと捉えていると推察される家族の事例の記述あり)

【「体力」と西洋医学】
・患者は西洋医学的治療は体力を消費し、病気(癌)と戦うための積極的な方法と捉えており、急性期で最も有効で、漢方などの代替医療は体力を温存し、健康を保つための回復的方法で健康促進で最も有用と捉えている。日本人は急激で重症な病状に対しては、迅速で悪い所に焦点を当てた治療を行うことで全体のバランスを取り戻すという考え方を持つことで、健康に対する「holistic」な考え方と西洋医学が整合性を持って存在している可能性がある。

【医療職の「体力」の概念に対するスタンス】
・ホスピスのスタッフは、患者が持っている体力の治癒的意味についてあまり好意的ではない。これは恐らくは、こうした患者・家族の振る舞いは現代医学では認められず、ホスピスは患者が癌と戦う場所ではないからであろう。またホスピススタッフにとってはホスピスに入所した患者は避けられない死を受け入れることが最初の優先事項となる。

【緩和ケアにおける「体力」の役割】
・こうしたホスピススタッフの意図に反して、ホスピスに入所した患者は快適さと鎮痛を得るため、状態が改善したと感じ、体力を蓄えるための行動に出ることがある。
・これはホスピススタッフの意図とは反しているが、この「体力」についての患者の物語は、死を受け入れる中で重要な役割を持っていると言える。つまり、様々な努力をしても体力が減っていく事実が人生の終末期を実感させるため、「体力」の物語はホスピス入所から死を完全に意識する状況までの橋渡しをしていると考えられ、「体力」の概念は患者が疾患の進行と死が迫ることに納得することを助けているのである。
・よって、体力を蓄えることに繋がる(と患者・家族が見なす)西洋医学的な介入はホスピススタッフからは無意味に思えても、患者・家族にとっては重要と言える。更に、患者・家族が体力をモニターできることは、患者の自律性を保つために重要である。「体力」という概念は、患者が自分らしく生きることの援助になっていると見なすことができる。

【開催日】
2014年12月17日(水)

継続性の効果

―文献名―
Dong Wook Shin, et al. Impact of continuity of care on mortality and health care costs; a nationwide cohort study in Korea. Annals of family medicine. 2014, vol. 12, no. 6, p. 534-541.

―要約―
【目的】
 ケアの継続性は、質の高いプライマリ・ケアの中核要素と考えられているが、死亡率と医療費に及ぼす影響についてはまだ明らかになっていない。そこで、新たに心血管リスクとなる疾患と診断された患者の死亡率、医療費、健康アウトカムに対するケアの継続性の影響を調べることを目的とした。

【方法】
 韓国の国民健康保険加入者のうち3%を無作為に抽出し、コホート研究を行った。 2003~2004年に高血圧、糖尿病、高コレステロール血症あるいはその合併症と新たに診断された、合計47,433人の患者がエントリーされた。ケアの継続性の指標としてmost frequent provider continuity(MFPC)、modified, modified continuity index(MMCI)、continuity of care index(COC)を設定し、これらの指標と5年以上のフォローアップで起こったアウトカムとの関連を評価した。アウトカムの評価には全死亡率、心血管死亡率、心血管イベントおよび医療費が含まれた。

【結果】
 COCの中央値以下の群と中央値以上の群に分けて比較したところ、多変量調整済ハザード比は、全死亡率1.12(95%Cl, 1.04-1.21)、心血管死亡率1.30(1.13-1.50)、心筋梗塞の発症1.57(1.28-1.95)、脳梗塞の発症1.33(1.27-1.63)であった。他の継続性の指標からも同様の結果が得られた。ケアの継続性の低さは入院患者と外来患者の入院・通院期間と医療費の増加とも関連していた。

【結論】
 新たに高血圧、糖尿病、高コレステロール血症と診断された患者において、ケアの継続性の低さは、全死亡率、心血管死亡率、心血管イベントおよび医療費の高さと関連していた。そのため長期にわたる患者-医師間の信頼関係をサポートするように医療制度をデザインしていく必要がある。

Appendix1. Continuity of care indices
ex) patient 1 visited 3 providers (ABAACAAA), patient 2 visited 4 providers (ABCBADEA)
1) most frequent provider continuity(MFPC):もっとも受診頻度の高い医師への受診密度 
ex) patient 1: 6/8, patient 2: 3/8
2) modified, modified continuity index(MMCI):医師のバラつき具合
ex) patient 1: (1-3/8.1)/(1-1/8.1), patient 2 (1-5/8.1)/(1-1/8.1) 
3) continuity of care index(COC):それぞれの医師への受診頻度と医師のバラつき具合を併せたもの
ex) patient 1: [(62+12+12)-8]/[8*(8-1)], patient 2: [(32+22+12+12+12)-8]/[8*(8-1)]

【開催日】
2014年12月10日(水)

とらわれた過去から開放させるには、どのようにアプローチしたらよいのか?

―文献名―
ビル・オハンロン著・前田泰宏監訳.可能性のある未来につながる新しい4つのアプローチ トラウマ解消のクイック・ステップ,2013

―要約―
イントロダクション
トラウマを扱っている書籍の多くは、人に与えられたダメージに焦点を置いている。そして、こういった「ダメージを受けた」人々は長くて困難な回復への道のりに直面するよう導かれる。こういった伝統的なアプローチはしばしば治療に何年も要する。

近年の脳の可塑性に関する研究で、脳は生涯を通じて変化し、進化し続けることが示された。これは年齢がたっても脳は変化し適応するということであり、脳は継続的に繰り返されるパターンに適応し、ついにはそれを規範として受け入れるということを示している。これはトラウマ治療においてよい面でもあり悪い面でもある。つまり、トラウマ治療により症状が改善される可能性を示している一方で、治療のために何度も何度もトラウマに注意を向ければ、脳の回路のなかにより深くトラウマを焼き付けることになるかもしれないという可能性を示唆しているのである。

トラウマと治療に関する神話と誤認
『神話1:トラウマを経験した人は皆、PTSDを発症する』
アメリカにおいて60.7%の男性と51.2%の女性がDSM-Ⅳの項目を満たす外傷的な出来事を少なくとも1回は経験しているが、PTSDの一般的な生涯有病率は7.8%だった(Breslau.1998)
『神話2:PTSDを発症した人はセラピーでのみそれを解消できる』
PTSDの発症後、最初の12ヶ月で症状が大きく改善していき、その後の6年間ではゆるやかに改善していく。治療した人としなかった人を比較した場合には、治療をした群ではPTSDの罹患期間が約半分になった(Kessler et al.,1995))
『神話3:トラウマを追体験させて、それを同化させるような援助を行う、長期の除反応セラピーが最も効果的なアプローチである』
研究ではある一つのアプローチがすべての人に対して役に立つという考えは支持されていない。今回のアプローチ方法がその一つである。
『神話4:トラウマはネガティブな結果しかもたらさない』
DSM-Ⅳの診断基準に合致する外傷的な出来事の結果として、成長体験の報告の方が精神障害の報告の数よりもはるかに多く、また外傷的な出来事を体験していた人のほうが体験しなかった人よりもポジティブな変化を報告していた(Tedeschi & Calhoum,2004)

4つのアプローチ
① インクルーシブセラピー(Inclusive interventions)

我々は皆、可能性に満ちた未分化な状態で人生を始め、さまざまな経験から自分自身の中で「正しいもの」「正しくないもの」を区別し、「正しいもの」を取り入れ(例:『~であるべき』)、他者と自分を区別していき「統合された自己」(アイデンティティーの形成)に至る。そのプロセスの中で、トラウマ体験をすると自分自身の諸問題やそういったトラブルを体験した部分(感情、記憶、感覚等)を分離していくことがある(悲しみを感じない、など)。しばらくはそれで問題ないのだが、社会に出た際その分離された部分が突然戻ってくることがある(例:フラッシュバック、悲しみを感じない人が突然涙がとまらなくなる形等)。そもそも分離された部分は自分自身であるため、「~であるべき」「~しなければならない」などの制限的、強制的になっている部分を承認し、包含していくアプローチが必要となる。

② 未来による牽引(Future pull)
大抵のトラウマ治療は人々を過去に向かわせる。つまり失われた体験を取り戻すために以前に戻り、それを追体験することでトラウマを解消しようとするが、人はポジティブな未来と自分の中の変化に関する青写真をすでに持っている。そのため、過去を未来に方向転換させたり、望んでいない現状を望ましい未来に言い換える(例:今までは~だったんですね、本当は~を望んでいるんですね)。

③ パターンチェンジ(Pattern changing / breaking)
トラウマ体験後の問題の顕著な特徴の1つとして「体験や行動の繰り返し」がある。トラウマ体験後の経験の何らかの規則性を見つけ、小さなパターンの変化を起こす(例:ストレスが溜まったら紙に書く、リストカットしたくなったら人形を傷つける等)

④ 再結合(Reconnecting interventions)
大抵の外傷後の問題の中心的な鍵となる特徴の1つは、解離と断絶である。トラウマのサバイバーは自分自身の感覚全般から解離することが知られている。つまり、彼らは出来事が起こっているということを頭では理解しているが、防衛反応としてそういった出来事を直接的に深く体験したり、あるいは感じたりするということができない(例:離人症)。そのため、個人やコミュニティ、自然やアートなどと再び結びつけることが有効である。
地震の期間中に誰かと一緒にいることがPTSDの防止となる(Armenian, H. At.2000)
PTSDの患者の中で、集団的治療をした人たちは、個人で治療した人たち(31.3%)よりも有意に高い率で回復した(88.3%)。

【開催日】
2014年12月10日(水)

適度な飲酒のリスクについて

―文献名―
Association between alcohol and cardiovascular disease: Mendelian randomisation analysis based on individual participant data. BMJ 2014;349:g4164 doi: 10.1136/bmj.g4164

―要約―
飲酒は様々な病気に関係することが知られている。非飲酒者と少量~中等量の飲酒者の比較観察研究で飲酒者の心血管リスクが低いことが示されていることから、適度な飲酒は心血管や脳卒中のリスクを下げると言われてきた。しかし、非飲酒群には健康状態が悪い、生活習慣、社会的因子のために飲酒できない人も含まれていると考えられる。これまでの研究でこのような交絡因子の影響を排除できていない。しかし飲酒と心血管リスクの関係を調べるRCTの実施は困難で行なわれていない。
今回、全く飲酒できない、または少量しか飲酒できない遺伝的多型を有する人とそうでない人を対象としてメンデルランダム化メタアナリシスを行なった。病歴の影響は受けないことから、交絡因子の候補の影響を小さくできると考えた。

対象:
アルコールデヒドロゲナーゼ1B(ADH1B)遺伝子の一塩基多型(rs1229984)を有する人と有さない人。(rs1229984の保有者は飲酒量が少ない。)
56件の疫学研究の261991人を分析、平均年齢58歳(26-75歳)女性が48%
心血管イベントは20259件、脳卒中10164件、2型糖尿病は14549件報告されていた。

主要アウトカム:
冠動脈疾患の罹患率と脳卒中
ADH1Brs1229984保有者と飲酒量で層別化

 ADH1Brs1229984Aアレル保有者における1週間の飲酒量(ユニットで換算)は、この多型を持たない人々に比べて17.2%(95%信頼区間15.6-18.9)少なく、大量飲酒する可能性は低く(オッズ比0.78、0.73-0.84)、禁酒していると自己申告する可能性が高かった(オッズ比1.27、1.21-1.34)。また、γGTP値も低かった(-1.8%、-3.4から-0.3)。
rs1229984Aアレル保有者の収縮期血圧は非保有者に比べて有意に低く(-0.88mmHg、-1.19から-0.56)、インターロイキン-6値は低く(対数変換した値の平均差は-5.2%、-7.8から-2.4)、腹囲は細く(-0.34cm、-0.59から-0.10)、BMIは低かった(-0.17、-0.24から-0.10)。HDLコレステロール値には、アレル保有者と非保有者の間に有意差は見られなかった。
rs1229984Aアレル保有者の冠疾患リスクは非保有者より低かった(オッズ比0.90、0.84-0.96)が、分析対象を非飲酒者に限定すると多型の影響は見られず、あらゆる飲酒者ではオッズ比は0.86(0.78-0.94)となった。飲酒量で層別化してもオッズ比に有意差は見られなかった(P=0.83)。
虚血性脳卒中リスクはrs1229984Aアレル保有者で低かった(オッズ比0.83、0.72-0.95)。

飲酒量が少なくなる遺伝子多型を保有する人々は、これを持たない人々に比べて心血管危険因子のプロファイルが良好で、冠動脈疾患リスクと虚血性脳卒中リスクは低かった。結果からは、飲酒量が少ない人々でも、さらに飲酒量を減らせば心血管リスクは低下することを示唆している。そのため適度な飲酒は心血管リスクを下げるという概念に疑問を呈すと著者は述べている。

【開催日】
2014年12月3日(水)

生まれ順という視点~自己洞察や家族志向型ケア、人財マネージメントへ

―文献名―
「相性が悪い!」 島田裕巳著 新潮新書 2003年

―要約―
<兄弟姉妹を区別する文化>
 私たち日本人は、兄と弟、姉と妹をつねに明確に区別して考えます。ところが欧米では、BrotherやSisterという言葉がありますが、兄elder brother 弟younger brotherという言葉があります。
言葉の使い方が異なる。日本の場合、自分の兄にむかって「兄さん」と呼びかけるが、欧米では「elder brother」と呼びかけることはない。John,Paulとはファーストネームで呼ぶのが普通である。兄弟や姉妹の中で上か下かあ余り意識されていない。Brother ,sisterという言葉は、修道士や修道女の間でもつかわれ、神のもとでは皆平等で同じ立場である、という考え方がある。
 中国では、兄は「ゴアーゴアー」、弟「ディーディー」姉「ジェジェ」妹「メイメイ」であって使い方は日本と同じ。韓国語では更に、兄と姉は弟からみるか妹からみるかで言い方が異なる。弟からみた兄は「ヒョン」、妹からみると「オッパ」、弟からみた姉は「ヌナ」で妹からみると「オンに」
日本、中国、韓国の東アジアの国々では、兄と弟、姉と妹をはっきり区別している。

<日常の表現として>
 二人の息子を抱える母親は、上の子どもに対しては「お兄ちゃん」と呼びかける。父親が自分の父親のことを子どもにいうときに「お父さん」といわずに「おじいさん」と呼んだりします。夫婦間でも妻が夫のことを「お父さん」と呼び、夫は妻のことを「お母さん」と呼びます。母親にとって、長男が自分の兄であるわけはありませんし、父親に取っての祖父は、こどもにとっての曾祖父になるはずです。どれもおかしな言い方なのですが、それが疑問をもたれずに使われているのは、そこに一定の規則があるからだ。「すべての家族のなかの最年少者が基準となっている」
 日本社会において、兄弟姉妹の中で何番目に生まれたかが重要になってくるのも、こうした家族や親族をどう呼ぶかという問題がかかわってきて、日常の暮らしの中でも大きな影響を与えている。
特に第一子の場合、家族内で「お兄ちゃん」「おねえちゃん」と呼ばれることが多く、自然と自分は家の立場なのだと自覚を持つようになります。それは夫婦についても「お父さん」と呼ばれる夫は、妻に対しても父親的な役割を果たすことが期待され、「お母さん」と呼ばれる妻にとっても、夫にとって母親としての役割を果たすことが求められる。クラブやバーの女性が、客から「ママさん」と呼ばれるのもその延長線上でのことでしょう。
「お兄ちゃん」と呼ばれてきた兄は、家族から離れた他人との人間関係でも、やはり兄であり、その場を仕切るようになっていく。

<そこにどういう人間関係があるか>
 上に生まれた人間は下に生まれた人間を甘やかし(面倒をみる側)、下の人間は上の人間に甘えます(面倒をみられる側)。重要なのは長男か長女かではなく、第一子か真ん中っ子か、末っ子なのかという点です。
第一子:仕切り屋、自分が思っていることでも口に出さない(プライドが許さない)、決断が唐突。
真ん中っ子:二刀流、甘える側・甘えさせる側のどちらもやれる。自意識が過剰。
末っ子:何でも口に出す、自分が考えたとおりに面倒をみようとする。言われればその通りにしてしまいがち。本音と建前の区別がうまくできないことあり。
一人っ子:妄想家

【開催日】
2014年11月19日(水)

Rivaroxabanについて

―文献名―
1) Manesh R. Patel, et al, Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation, N Engl J Med. 2011 Sep 8;365(10):883-91. doi: 10.1056/NEJMoa1009638. Epub 2011 Aug 10.
2) Masatsugu Hori, et al, Rivaroxaban vs. warfarin in Japanese patients with atrial fibrillation – the J-ROCKET AF study -, Circ J. 2012;76(9):2104-11. Epub 2012 Jun 5.
3) Masatsugu Hori, et al, Safety and efficacy of adjusted dose of rivaroxaban in Japanese patients with non-valvular atrial fibrillation: subanalysis of J-ROCKET AF for patients with moderate renal impairment, Circ J. 2013;77(3):632-8. Epub 2012 Dec 8.

―要約―
1) Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation
BACKGROUND:
The use of warfarin reduces the rate of ischemic stroke in patients with atrial fibrillation but requires frequent monitoring and dose adjustment. Rivaroxaban, an oral factor Xa inhibitor, may provide more consistent and predictable anticoagulation than warfarin.

METHODS:
In a double-blind trial, we randomly assigned 14,264 patients with nonvalvular atrial fibrillation who were at increased risk for stroke to receive either rivaroxaban (at a daily dose of 20 mg) or dose-adjusted warfarin. The per-protocol, as-treated primary analysis was designed to determine whether rivaroxaban was noninferior to warfarin for the primary end point of stroke or systemic embolism.

RESULTS:
In the primary analysis, the primary end point occurred in 188 patients in the rivaroxaban group (1.7% per year) and in 241 in the warfarin group (2.2% per year) (hazard ratio in the rivaroxaban group, 0.79; 95% confidence interval [CI], 0.66 to 0.96; P<0.001 for noninferiority). In the intention-to-treat analysis, the primary end point occurred in 269 patients in the rivaroxaban group (2.1% per year) and in 306 patients in the warfarin group (2.4% per year) (hazard ratio, 0.88; 95% CI, 0.74 to 1.03; P<0.001 for noninferiority; P=0.12 for superiority). Major and nonmajor clinically relevant bleeding occurred in 1475 patients in the rivaroxaban group (14.9% per year) and in 1449 in the warfarin group (14.5% per year) (hazard ratio, 1.03; 95% CI, 0.96 to 1.11; P=0.44), with significant reductions in intracranial hemorrhage (0.5% vs. 0.7%, P=0.02) and fatal bleeding (0.2% vs. 0.5%, P=0.003) in the rivaroxaban group. CONCLUSIONS: In patients with atrial fibrillation, rivaroxaban was noninferior to warfarin for the prevention of stroke or systemic embolism. There was no significant between-group difference in the risk of major bleeding, although intracranial and fatal bleeding occurred less frequently in the rivaroxaban group. (Funded by Johnson & Johnson and Bayer; ROCKET AF ClinicalTrials.gov number, NCT00403767.) 2) Rivaroxaban vs. warfarin in Japanese patients with atrial fibrillation – the J-ROCKET AF study – BACKGROUND: The global ROCKET AF study evaluated once-daily rivaroxaban vs. warfarin for stroke and systemic embolism prevention in patients with atrial fibrillation (AF). A separate trial, J-ROCKET AF, compared the safety of a Japan-specific rivaroxaban dose with warfarin administered according to Japanese guidelines in Japanese patients with AF. METHODS AND RESULTS: J-ROCKET AF was a prospective, randomized, double-blind, phase III trial. Patients (n=1,280) with non-valvular AF at increased risk for stroke were randomized to receive 15 mg once-daily rivaroxaban or warfarin dose-adjusted according to Japanese guidelines. The primary objective was to determine non-inferiority of rivaroxaban against warfarin for the principal safety outcome of major and non-major clinically relevant bleeding, in the on-treatment safety population. The primary efficacy endpoint was the composite of stroke and systemic embolism. Non-inferiority of rivaroxaban to warfarin was confirmed; the rate of the principal safety outcome was 18.04% per year in rivaroxaban-treated patients and 16.42% per year in warfarin-treated patients (hazard ratio [HR] 1.11; 95% confidence interval 0.87-1.42; P<0.001 [non-inferiority]). Intracranial hemorrhage rates were 0.8% with rivaroxaban and 1.6% with warfarin. There was a strong trend for a reduction in the rate of stroke/systemic embolism with rivaroxaban vs. warfarin (HR, 0.49; P=0.050). CONCLUSIONS: J-ROCKET AF demonstrated the safety of a Japan-specific rivaroxaban dose and supports bridging the global ROCKET AF results into Japanese clinical practice. 3) Safety and efficacy of adjusted dose of rivaroxaban in Japanese patients with non-valvular atrial fibrillation: subanalysis of J-ROCKET AF for patients with moderate renal impairment BACKGROUND: In the Japanese Rivaroxaban Once-daily oral direct factor Xa inhibition Compared with vitamin K antagonism for prevention of stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation (J-ROCKET AF) study, rivaroxaban 15 mg once daily was given to patients with creatinine clearance (CrCl) ≥ 50 ml/min (preserved renal function), and was reduced to 10mg once daily in patients with CrCl 30-49 ml/min (moderate renal impairment). The aim of this subanalysis was to assess the safety and efficacy of the adjusted dose of rivaroxaban compared with warfarin in a cohort with moderate renal impairment. METHODS AND RESULTS: Compared with patients with preserved renal function, those with moderate renal impairment (22.2% of all randomized patients) had higher rates of bleeding and stroke events irrespective of study treatment. Among those with moderate renal impairment, the principal safety endpoint occurred at 27.76%/year with rivaroxaban vs. 22.85%/year with warfarin (hazard ratio [HR], 1.22; 95% confidence interval [CI]: 0.78-1.91) and the rate of the primary efficacy endpoint was 2.77%/year vs. 3.34%/year (HR, 0.82; 95% CI: 0.25-2.69), respectively. There were no significant interactions between renal function and study treatment in the principal safety and the primary efficacy endpoints (P=0.628, 0.279 for both interactions, respectively). CONCLUSIONS: The safety and efficacy of rivaroxaban vs. warfarin were consistent in patients with moderate renal impairment and preserved renal function. 【開催日】 2014年11月19日(水)

家庭医のトレーニングにおける核となる技術

―文献名―
Stephen J. Wetmore, et al. Defining core procedure skills for Canadian family medicine training. Can Fam Physician 2005;51:1364-1365.

―この文献を選んだ背景―
寿都では、寿都町民の健康を守るために我々家庭医に求められる事は何かという壮大な命題から、様々な課題、研究テーマを模索している。その中で、我々家庭医に求められている医療行為(手技)は何か、郡部や都市部、外来や入院、訪問などの様々なセッティングでの違いはあるのかということに興味を持ち、現在、文献を調べている。その中で、少し古いが、その事に関する文献を見つけたので紹介する。

―要約―
【目的】
家庭医療のトレーニングに適した核となる医療行為のリストの作成

【デザイン】
デルファイ法を用いた郵送、あるいはEメールでの調査

【セッティング】
カナダの無作為に選ばれた家庭医療クリニック

【参加者】
都市部、小さな町、郡部診療の家庭医、学術の家庭医で。3~36年の家庭医としての経験がある家庭医

【介入】
カナダの家庭医療トレーニングプログラムの卒業生が学び、彼らのコミュニティでその医療行為をうまく行う事が出来る事を期待されている158の医療行為を評価する。家庭医療のトレーニングに適した核となる医療行為のリストの作成。2つ目の調査では、最初の調査で得られた核となる医療行為と、さらに高度な医療行為を評価する。

【メインアウトカム】
包括的な技術リストに関する医師の意見

【結果】
22人の家庭医が最初の調査に回答(回答率:92%)、14人が2つ目の調査に回答(回答率:58%)した。65の核となる医療行為と15の高度な医療行為が同定された。郡部診療の家庭医や小さな町の家庭医の方が都市部の家庭医よりもより多くの医療行為が核となるリストにランクされ、実行されていた。核となるリストに挙げられた医療行為に対する家庭医の同意は55%から100%、高度な医療行為に対する家庭医の同意は50%から64%であった。核となるリストに挙げられた医療行為のうち55の医療行為が70%以上の参加者で同意が得られた。

【結論】
新しく家庭医になる医師が彼らのコミュニティで行う医療行為を具体化することの重要性に関して、カナダの家庭医の意見として、医療行為のリストが示された。医療行為のリストは家庭医療プログラムの評価と医療行為の技術の指導のさらなる改善の助けとなるであろう。

【開催日】
2014年11月12日(水)

末期癌患者の在宅死の実現に影響を与える要因

―文献名―
S.Fukui, et.al.Late referrals to home palliative care service affecting death at home in advanced cancer patients in Japan: a nationwide survey.Annals of Oncology 2011;22:2113-2120.

―要約―
【背景】
多くの患者が在宅での死を希望しながら希望した場で死を迎えられていない。

【目的】
病院から在宅への紹介のタイミングに焦点を当て、在宅緩和ケアを受ける患者の死亡場所に影響を与える要素を明らかにする。

【方法】
日本全国の在宅ケア施設から無作為に選ばれた1000施設(訪問看護)に直近の在宅緩和ケア患者1名について回答を依頼する質問紙を用いた横断研究。合計568(名の患者について)の回答が解析された(有効回答率は69。1%)。

【結果】
多変量ロジスティック回帰分析により以下が在宅緩和ケアの死亡場所に影響を与えることが明らかになった(Table3 表示)。
(1) 患者特性
家族介護・看護者が在宅ケアを希望していること、家族介護・看護者が娘か義理の娘であること、紹介時の身体機能が完全に寝たきりであること
(2) 病院における退院前のサポート
早期の紹介(退院前8日以上)、病院のスタッフによる退院し在宅で生活し亡くなることに関する明解な説明
(3) 在宅ケアへ移行後のサポート
在宅緩和ケアチームに含まれる医師が(病院医ではなく)家庭医であること、医師や看護師が患者に対して24時間の支援を保証する契約を結ぶこと、退院後最初の1週間、訪問看護師が3回以上医師と訪問すること

【結論】
病院側のスタッフによる早期かつ丁寧にコーディネートされた円滑に機能する退院支援システムと在宅ケアチームによる退院直後の質の高い支援は患者の在宅死を増やす可能性がある。

【開催日】
2014年11月5日(水)

閉経前女性における中間尿培養と急性膀胱炎

―文献名―
Voided Midstream Urine Culture and Acute Cystitis in Premenopausal Women engl j med 369;20 nejm.org november 14, 2013

―要約―
【背景】
急性単純性膀胱炎の原因は、自然排尿中間尿の培養に基づいて判断されるが、培養結果について、とくにグラム陽性菌の増殖が認められる場合に解釈の指針となるデータはほとんどない。

【方法】
膀胱炎の症状を呈する 18~49 歳の女性に中間尿検体を提出してもらい、その後尿道カテーテルを挿入して培養用の尿(カテーテル尿)を採取した。これらのペア検体において、菌種とコロニー数を比較した。主要評価項目は、中間尿中細菌の陽性適中率および陰性適中率の比較とし、カテーテル尿中の細菌の有無を対照に用いた。

【結果】
女性226例の膀胱炎エピソード236件を解析した、評価しえたのは中間尿とカテーテル尿のペア検体 202 組であった。培養で尿路感染症の起因菌が認められたのは、カテーテル尿142検体(70%)、中間尿157検体(78%)であり、カテーテル尿4 検体では尿路感染症の起因菌が 1 種類以上認められた。間尿における大腸菌(Escherichia coli)の存在は、ごく少数であっても膀胱内細菌尿の強い予測因子であり、102 コロニー形成単位(CFU)/mL の陽性適中率は 93%(Spearman の r=0.944)であった。これに対して、中間尿における腸球菌(培養の 10%)と B 群連鎖球菌(培養の 12%)からは、コロニー数を問わず、膀胱内細菌尿は予測されなかった(Spearman のr=0.322 [腸球菌],0.272 [B 群連鎖球菌])。中間尿中に腸球菌、B 群連鎖球菌、あるいはその両方が検出された 41 件のエピソードのうち、カテーテル尿の培養により大腸菌の増殖が認められたのは61%であった。

【結論】
急性単純性膀胱炎を起こした健常閉経前女性において、自然排尿中間尿の培養により、膀胱内の大腸菌が正確に証明されたが、腸球菌や B 群連鎖球菌は証明されなかった。腸球菌や B 型連鎖球菌は大腸菌とともに分離されることが多いが、それら自体が膀胱炎を引き起こすことはまれであると考えられる。(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所から研究助成を受けた。)

【開催日】
2014年11月5日(水)