薬剤溶出ステントを用いたPCI後の抗血小板薬2剤治療の期間

-文献名-
Duration of dual antiplatelet therapy after percutaneous coronary intervention with drug-eluting stent: systematic review and network meta-analysis. BMJ 2019; 365: l2222

-要約-
【Introduction】
アスピリンとP2Y12受容体阻害剤(チクロピジン、クロピドグレル)を使用した2重抗血小板療法(DAPT)は、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の患者ケアの基礎となっている。薬剤溶出ステント(DES)移植後の患者に対するDAPTの推奨期間は、急性冠症候群(ACS)では12ヶ月以上、安定した冠動脈疾患の患者では6ヶ月となっている。だが、DES技術の改良と強力なP2Y12受容体阻害剤の出現により、DAPTから単一の抗血小板療法へ切り替える最適なタイミングは議論の余地がある。
過去の研究では、12ヶ月以上のDAPTは、3~6ヶ月のDAPTと比較して非優越性が証明された。さらに、DAPTの期間が短い方が、出血に関連した死亡率の低下により、全ての原因による死亡率が低くなった。にも関わらず、研究では短期DAPTが従来の標準期間に取って代わることができるとは結論づけられなかった。さらに、3ヶ月のDAPTがACS患者の虚血リスク増加と関連していることも示唆された。
本研究ではネットワークメタアナリシスにより、DAPTの継続期間をより定量化し、包括的な評価を行った。

【Method】
データベース:Medline、Embase、Cochrane Library for clinical trials、PubMed、Web of Science。ClinicalTrials.gov、Clinicaltrialsregister.euも検索した。
基準:対象者はDESを使用したPCI後にDAPTを受けた成人(18歳以上)。介入はDAPTの候補期間(短期;6ヶ月以下、標準期間;12ヶ月、長期;>12ヶ月)。他の候補期間との比較を行った。結果には死亡、心筋梗塞、脳卒中、出血が含まれる。除外基準:≦1ヶ月のDAPT、非無作為化試験の分析、横断研究、症例報告・症例シリーズ、進行中の試験、または元の研究のデータが不十分な場合。

【Results】
2010年~2018年までの17の研究、46,864名の参加者が含まれた。DAPTの最短期間は3ヶ月で、最長期間は48ヶ月。全体として13,234名の参加者が短期DAPTに、18,473名が標準期間DAPTに、15,157名が長期DAPTに割り当てられた。全てのランダム化比較試験で、完全な臨床的および人口統計学的特性が報告された。
短期DAPTと比較して、長期DAPTは大出血(オッズ比1.78、95%信頼区間1.27~2.49)、非心臓死(オッズ比1.63、95%信頼区間1.03~2.59)が多くみられた。標準期間DAPTは出血率の高さと関連していた(オッズ比1.39、95%信頼区間1.01~1.92)。他の主要エンドポイントでは顕著な差は見られなかった。感度分析により、短期または標準期間DAPTと比較して、18ヶ月以上のDAPTでは非心臓死および出血リスクがさらに増加することが明らかになった。サブグループ解析では、新しい世代のDESが移植された患者では、長期DAPTで短期DAPTよりも全ての原因による死亡率が高くなった(オッズ比1.99、95%信頼区間1.04~3.81)。ACSに対して新世代のDESを使用された患者について、短期DAPTは標準期間DAPTと同様の有効性と安全性を示した。

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Fig2:Network meta-analysis results of all endpoints between two pairs of duration of DAPT

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Fig3:Network meta-analysis results of all endpoints between two pairs of duration of DAPT

【Discussion】
DAPTの最適な期間は、個人の虚血および出血のリスクを考慮に入れる必要があるが、この研究は、直接および間接比較からの根拠を組み合わせて、DESを使用したPCI後のほとんどの患者で短期DAPTを考慮することができることを示唆している。
本研究の限界として、第一にクロピドグレルをベースにDAPTの期間を評価したため、プラスグレルやチカグレロールなど他のP2Y12阻害剤を適用した場合は結論が異なる可能性がある。第二に、プールされた定義で異なる試験の結果分析を行った点である。第三に、心臓死など、いくつかの試験ではいくつかのエンドポイントが報告されなかったため、頻度主義とベイズ主義の枠組みでの結果のわずかな相違が部分的に説明された可能性がある。

【開催日】2019年12月11日(水)