プライマリ・ケアにおける 「レガシー処方」 の現状

―文献名―
Dee Mangin, Jennifer Lawson, et al. Legacy Drug-Prescribing Patterns in Primary Care. Ann Fam Med 2018;16:515-520.

―要約―
【目的】
ポリファーマシーは、プライマリ・ケアにとって重要な臨床課題である。3ヵ月以上処方する可能性があるがしかし無期限で処方すべきではない薬剤が適切に中止されないと、ポリファーマシーの原因となるため,著者らはこのような処方をレガシー処方と名付けた。レガシー処方となり得る薬剤としては、抗うつ剤、両剤併用療法、プロトンポンプ阻害剤(PPI)などが挙げられる。本研究では,これらの薬剤群におけるレガシー処方の割合を評価した。

【方法】
カナダ・オンタリオ州ハミルトンにあるMcMaster University Sentinel and Information Collaboration(MUSIC)Primary Care Practice Based Research Networkよりプロスペクティブに収集したデータを用いて,集団ベースの住民を対象としたレトロスペクティブコホート研究を行った。2010~2016年にMUSICデータセットに登録されたすべての成人患者(18歳以上)を対象とした(N=50,813)。抗うつ薬(15か月以上の処方)、ビスフォスフォネート(5.5年以上)、PPI(15か月以上)のレガシー処方の割合を算出した。これらの薬剤群それぞれの処方期間の設定はエビデンスに基づき設定した.

【結果】
調査期間中にレガシー処方を受けていたことのある患者の割合は,抗うつ薬で46%(8,119名中3,766名),ビスフォスフォネートで14%(1,592名中228名),PPIで45%(6,414名中2,885名)であった(Table1)。これらの患者の多くは調査時点においてもレガシー処方を継続していた(抗うつ薬61%,PPI65%,ビスフォスフォネート77%)。レガシー処方全体の平均処方期間は、非レガシー処方に比べて有意に長かった(P<.001)。抗うつ薬とPPIが同時に処方されているレガシー処方が多く,処方カスケードの可能性を示唆していた(Table2)。 【結論】
レガシー処方という現象の存在が明らかになった。これらのデータは、レガシー処方が不必要なポリファーマシーの原因となる可能性を示しており、プライマリ・ケアにおけるシステムレベルでの介入の機会を提供し、患者に大きなな利益をもたらす可能性がある。

【開催日】
2021年10月13日(水)