子どもの風邪に抗生剤を処方しないためには

―文献名―
Rita Mangione-smith, et al. Communication practices and antibiotic use for acute respiratory tract infections in children.Annals of family medicine. 2015;3(13):p.221-227.

―要約―
【目的】
 この研究では、小児の風邪(急性呼吸器感染症acute respiratory tract infection;ARTI)の診療における、医師のコミュニケーションと抗生剤処方および親による診療評価との関係について調査した。

【方法】
 ARTIの症状を主訴に受診した小児の診療1285件について横断研究を行った。対象となった小児は2007年12月から2009年4月までの間にワシントン州シアトル市の10の診療所に勤務する28人の小児科医のいずれか1人の診療を受けた。医師は小児の症状・身体所見・診断・治療を診察後調査票に記入し、親は医師のコミュニケーションと診療の評価を診察後調査票に記入する。多変量解析を行い、ARTIに対する抗生剤処方および親の診療評価に対してキーとなる予測因子を特定した。

【結果】(Table 1-4参照)
 子どもの症状をやわらげるために親ができることを提案すること(positive treatment recommendations)は、それ単独で、またnegative treatment recommendations(抗生剤の必要性を否定する)と組み合わせるとさらに、抗生剤処方の減少と関連することがわかった(adjusted risk ratio(aRR) 0.48; 95%CI, 0.24-0.95; and aRR 0.15; 95%CI, 0.06-0.40, respectively)。positive/negative treatment recommendationsの組み合わせを提示された親は診療に対して最高の評価をする傾向にあった。

【結論】
 positive/negative treatment recommendationsを組み合わせることが、ウイルス性のARTIの小児への抗生剤処方のリスクを減らし、同時に診療の評価を高めうる。コミュニティ・個人レベルで抗生剤耐性化の脅威が高まっており、コミュニケーションのテクニックは最前線の医師がこうした問題に取り組む上で助けとなるだろう。

―考察とディスカッション―
 今回の研究では、親が診察前に抗生剤の処方を期待しているかどうかについては評価していなかった。このため前医からの継続処方を期待している親に対象を絞ると結果が変わる可能性はあるが、第1子の風邪での初診などの機会にpositive/negativeを組み合わせて親の教育を行っていくことは重要と思われた。
 positive treatment recommendationsとしてどんな情報提供を行っていますか?

【開催日】
2015年6月3日(水)