ケアの継続性 ~どう学び、どう教えるか?~

【文献】
Karen Schultz:Strategies to enhance teaching about continuity of care.
Can Fam Physician Vol. 55, No. 6, June 2009, pp.666 – 668

【要約】
 ケアの継続性の教育においてはその重要性や長所と共に、長期的な治療関係における困難な側面と、それを扱うための対処についての教育も重要である。
以下は、ケアの継続性の多面的な要素について教育するための方法である。
ケアの継続性の6つのコンポーネントの教育方略
1.長期的な継続性 :時間経過のある診療の経験
《長所》
やったことの結果をみることができる、先送りせず困難な状況を扱うことを学ぶ
《実施計画》
(1)自分で同じ患者さんをフォローアップするための方法を伝える。
(2)受付にそのレジデントがいないときに予約しないように頼む。
(3)ローテーションの中間の振り返りで、一連の受診についてFeedbackを与える。

2.情報の継続性 :過去のケアの情報へのアクセス
《長所》
患者ケアの効率と安全性が向上する
レジデントが患者の経緯を知っていることで患者の満足度が向上する
《リスク》
記録が不完全(特に今後のプランに関して)
《実施計画》
(1)最初の診療計画を立てるために検査室(電子カルテの前)での仕事を指示する
(2)もし可能で適切であれば、特に複雑な患者についての知識をローテの初期に伝え、総合的なアセスメントを立てておく
(3)初回の診療時にレジデントに患者の背景情報を伝える
(4)引き継ぎのサマリー記載を依頼する(書く方、受け取る方双方にメリットあり)

3.地理的な継続性 :多様なセッティングでのケアの経験
《長所》
環境を手掛かりに患者を理解するための洞察が増える
治療的関係が強化される
《リスク》
時間、安全性
《実施計画》
(1)レジデントに往診や施設訪問の要請に応えてもらう
(2)病棟訪問を担当してもらう
(3)来診の度に患者についてもらう(リハビリや検査などにも)

4.多職種間の継続性 :ケアが多職種で提供され、調整されていることを知る
《実施計画》
(1)診療の一連の行為/診療に携わったり手伝ったりする
(2)患者についての全ての紹介状を見せる

5.家族・地域の継続性 :様々な家族、コミュニティにケアが提供されていることを知る
《長所》
患者について更なる洞察を提供する
《リスク》
秘密保持、家族・コミュニティに吸収される?
《実施計画》
(1)長期的な診療をしている患者リストを作成し、その家族のメンバーをみる
(2)夫婦や育児などについての外来予約を取る

6.関係性の継続性 :医師患者関係を確立する
《長所》
仕事のやりがいの増加、仕事の満足度の増加、患者ケアのアウトカムの向上、訴訟リスクの軽減、自信が生じ医師自身の効果を実感する
《リスク》
い つもの決まったやり方で自己満足になる、患者の健康・マネージメント・仕事と生活のバランスの摩擦についての心配や不安が高まる、(運転、犯罪、児童保護 などで)伝えるべきことへの葛藤が生じる、患者が亡くなったり障害を負ったときに医師にも悲嘆反応が生じる、患者の依存が生じる、境界についての問題が生 じる
《実施計画》
(1)意識的に、継続性が鍵となる(治療的関係性を必要とする)患者を担当してもらう
(2)自身が(継続性の長所短所・短所への対応を見せる)ロールモデルとなる
(3)困難な患者のケアを支援・促進する

【開催日】
2010年11月10日(水)