~カルテを利用した教育方法についての検討~

【文献】
Warren Rubenstein:Medical Teaching in Ambulatory Care 2nd Ed:P66-72, 2003

【要約】
TEACHING STRATEGIES
・患者:ケースディスカッション、ケースレビュー、直接観察
・カルテ:カルテレビュー、カルテを素にした再想起、標準化されたカルテcheck(今回はここ)
・教育技術:ロールプレイ・シュミレーション、短く教訓的なプレゼン

カルテを利用したもの
カルテレビュー
1説明:
 カルテごとに病歴、所見、検査、治療の記載について順に見て、必要なときに議論をする。
 同時に読みやすさ、フォーマット、長さ、徹底具合も見ることが出来る。
2適応:
 外来を一人でこなせるが、外来後にはレビューが求められる程度の学習者に適応がある。
学生や初期のレジデントの場合では内容をカルテの書き方にのみ集中するほうが良い。
3利点:
 指導医のcheckによるケアの安全性の確保
 書かれたカルテの質を保証する
 言葉だけの報告に依存し難い
 事例を議論や教育の資源とすることができる
 カルテの書き方や電子カルテの使い方の指導が可能となる
4限界:
 研修医のカルテ記載の質と量に依存する
 問診や身体診察のスキルは評価できない
5手間:
 通常業務への妨げは最小限
 患者を診終わってからの時間を設定
6例示:省略
7コツ:
 教育的好機を常に意識しておく
 この方法を利用するということは診療カルテを重視しているというメッセージを発している
 質の保証のための大切なツールになる

カルテを素にした再想起
1説明:
 1対1の教育セッションであり、少なくとも30分は必要となる。
 いくつかの患者のカルテを学習者に選んでもらい、ランダムに二つほど選ぶ。
 カルテを一冊選んで渡し、段階を追った形式で患者を思い起こしレビューするよう依頼する。
 カルテは、何が起こったか詳細に思い出すためだけでなく、その外来中にどのような思考状態だったのかという想起も刺激する。以下のように聞いてみる。
 「この時点でどう考えていましたか?」「なぜこれらの質問をしたのですか?」
「どうしてそう決めたのですか?」「なぜそこで止まったのですか?」
「他に考えていたことは?」「この時点でのもっともらしい診断は?」
「このオプションを選んだのはなぜ?」
これらを診察(病歴、診察、鑑別診断、重症度、疫学、アクションプラン、検査の選択、治療)のそれぞれの段階で行い、次の段階に行く前に思考過程を問うことを続ける。想起を支援し続けることが必要で、責めてはいけない。
2適応:
 学習者の臨床的な根拠と意思決定プロセスを理解し、改善するための評価や支援に利用できる。
 特にマネージメント不足、一歩遅れてしまう、安定した意思決定が出来ないように見えるなどの患者のケアに困難を抱えた学習者には有用である。
3利点:
 意思決定プロセスをレビューするための強力な教育方略となる。
 カルテそのもので「実際に何が起きたのか?」を詳細に知るための手がかりとなる 
4限界:
 時間が必要
 通常のカルテレビューとは異なった特別な時間を必要とする
 (記憶の問題で)診療後48時間以内には行ったほうが良い
 学習者に不安を与える得る方略なので、指導医-学習者の信頼関係が必要とされる
5手間:
 通常の患者ケアのcheck以外の余計な時間が必要なる
 時間は通常診療もしくは個人の時間が消費される
6例示:
 ここ二日で診た印象的な患者さんを4例選んでもらう。そこから2例選ぶ。学習者の仮説を評価しながら、次回は仮説意外での短い議論となるための準備をする。
7コツ:
 偶然のバイアスが入るが、2週間に一回以上は行わないようにする
 問題のある学習者のみならず、高いレベルの学習者にも意思決定プロセスを教えるため利用される時にはビデオレビューと並行して開催することができる

標準化されたカルテcheck
1説明:
 カルテレビューを完成させるもう一つの方法。
 自分のペースで行うカルテのオーディットで15-30分あれば可能である。
 事前に後日開催することを説明し、checkリストの基準を作って、カルテのどこをcheckするのかを案内しておく。十分で包括的な病歴聴取が出来ているのかの有効で信頼性のある方法となる。
 そのために自分の診療所で良質なcheckリストをつくる事は良いプロジェクトとなるし、カルテレビューの際に、どんな情報を重視しているのかを伝える方法となる。
2適応:
 通常業務内に顔のあわす機会が少ない場合の教育方法
 余分な時間に学習者がいなくても、学習者の仕事ぶりをレビューすることができる
3利点:
 指導医のcheckによるケアの安全性の確保
 書かれたカルテの質を保証するものとなる
 時間を選ばない
 Checkリストは、教育者が行うべき特定のcheckの備忘録として機能する
 記載された情報によって、学習者のケアのマネージメントやカルテの記載を支援してくれる
 学年のすすんだシニアレジデントに対して、自律して働いた後で評価をすることを可能にする
 直接観察よりは時間が短くてすむ、しかし教えるべき修正点の情報を集める必要がある
4限界:
 教育者による精密な吟味と、レビューの結果をまとめて伝える機会で、カルテレビューよりは時間がかかる。
 学習者のカルテ量に依存する
 問診や身体診察のスキルは評価できない
5手間:
 Checkリストの考慮と準備の時間、実際のレビューの時間が必要となる。
6例示:省略
7コツ:
 もととなるCheckリストを事前に渡しておく。
 不意な評価ではなく、計画された学習経験とする。

【日付】
2010年7月21日(水)