Multimorbidity発生の予測

―文献名―
Luke T.A.Mounce,PhD et al. Predicting Incident Multimorbidity. Ann Fam Med 2018;16:322-329. https://doi.org/10.1370/afm.2271.

―要約―
PURPOSE
多疾患併存は有害な結果に関連するが、その発生の決定要因に関する研究は不十分である。私たちは社会人口統計学的、健康的、個人的な生活習慣(例えば、身体活動、喫煙、BMI)のどのような特徴が多疾患併存の新規発生を予測するかを研究した。
METHODS
10年間のフォローアップ期間を含む英国加齢縦断研究(ELSA)における50歳以上の4,564名の参加者のデータを使用した。慢性疾患がない研究参加者(n=1477)については、2002-2003年から2012-2013年の間の結果とベースライン特性の関連性を別々に調べるための離散時間ロジスティック回帰モデルを構築し、 初期の疾患にかかわらず10年以内の疾患の増加、および多疾患併存の発生に対する個々の疾患の影響を調べた。
RESULTS
多疾患併存の新規発生リスクは、年齢、財産(少ない方がハイリスク)、身体活動低下または外的統制(ライフイベントは自分ではコントロールできないと信じていること)と有意な関連性がある。
性別、教育、社会的孤立に関しては有意な関連性は認められなかった。
疾患が増加した参加者(n=4564)については、喫煙歴のみが追加の予測因子であった。
単一のベースライン疾患(n=1534)を有する参加者にとって、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息および不整脈は、その後の多疾患罹患と最も強い関連性を示した。
CONCLUSIONS
我々の知見は、影響を受けやすいグループの多疾患併存の新規発生予防を目的とした戦略の開発と実施を支援する。このアプローチは、生活習慣要因に対処する行動変容を組み込み、健康関連の統制の所在(Locus of Control)を目標とすべきである。

【開催日】2018年12月5日(水)

プライマリ・ケアにおける高齢者の入院に関連する潜在的な不適切処方の影響:縦断研究

―文献名―
Teresa Pérez, Frank Moriarty, Emma Wallace, Ronald McDowell, Patrick Redmond, Tom Fahey. Prevalence of potentially inappropriate prescribing in older people in primary care and its association with hospital admission: longitudinal study. BMJ (Clinical research ed.). 2018 Nov 14;363;k4524.

―要約―
OBJECTIVE
入院と65歳以上の高齢患者への不適切処方との関連と,入退院前後で不適切な処方が退院後に増加するかどうかについて調べることを目的とする.
DESIGN
 一般(家庭医療)診療所の診療録を後ろ向きに抽出した縦断研究.
SETTING
 2012~2015年にかけて,アイルランドにある44カ所の一般(家庭医療)診療所.
PARTICIPANTS
 診療所を受診した65歳以上の成人.
EXPOSURE
 病院への入院(入院群 v.s. 非入院群,入院前 v.s. 退院後)
MAIN OUTCOME MEASURES
 高齢者の処方スクリーニングツールScreening Tool for Older Persons’ Prescription(STOPP)ver.2の45の基準を用いて,潜在的不適正処方が占める割合を算出し,患者特性で補正を行い,層別化Cox回帰分析(明らかな潜在的不適正処方基準を満たした発生率)と,ロジスティック回帰分析(1人の患者について潜在的不適正処方が1回以上発生したか否かの2項値による)の2通りで分析し,入院との関連を検証した.患者特性と診断名に基づく傾向スコアによりマッチングを行い,感度分析も行った.
RESULTS
 分析には3万8,229例が包含された.2012年時点での平均年齢は76.8歳(SD 8.2),男性が43.0%(1万3,212例)だった.年に1回以上入院した患者の割合は,10.4%(2015年,3,015/2万9,077例)~15.0%(2014年,4,537/3万231例)だった.
 潜在的不適正処方を受けた患者の割合は,2012年の45.3%(1万3,940/3万789例)から2015年の51.0%(1万4,823/2万9,077例)の範囲にわたっていた.
 年齢や性別,処方薬数,併存疾患,医療保険の種類とは関係なく,入院は明らかに潜在的不適正処方基準を満たす割合が高かった.入院補正後ハザード比(HR)は1.24(95%信頼区間[CI]:1.20~1.28)だった.
 入院患者についてみると,潜在的不適正処方の発生率の尤度は,患者特性にかかわらず,退院後のほうが入院前よりも上昇した(補正後OR:1.72,95%CI:1.63~1.84).なお,傾向スコア適合ペア分析でも,入院に関するHRはわずかな減少にとどまった(HR:1.22,95%CI:1.18~1.25).
CONCLUSION
 高齢者にとって入院は,潜在的な不適正処方の独立関連因子であることが明らかになった.入院が高齢者の不適正処方にどのような影響を及ぼしているのか,また入院の潜在的有害性を最小限とする方法を明らかにすることが重要である.

【開催日】2018年12月5日(水)

Top 20 POEMs of the Past 20 Years

―文献名―
Mark H. Ebell, et al. Top 20 POEMs of the Past 20 Years: A Survey of Practice-Changing Research for Family Physicians. ANNALS OF FAMILY MEDICINE. 2018; VOL. 16, NO. 5 SEPTEMBER/OCTOBER: p436-439.

―要約―
1994年に、Slawson, Shaughnessy, and Bennettにより発表された論文によって、the key concepts of “information mastery”が確立された。従来のevidence-based practiceでは、研究のinternal validityの評価が重要視され、relevanceやapplicationは置いていかれていた。Information masteryによってpatient-oriented outcomesに注目が集まった。relevant clinical questionについての研究で、patient-oriented outcomesを出してpracticeを変えうるような論文は、POEM(patient-oriented evidence that matters)と呼ばれるようになった。
1998年に、筆者らはPOEMの定義に当てはまる論文を同定するために毎月100以上のclinical medical journals を集めたsystematic reviewを始めた。それぞれの論文は、primary care expertによってフォーマットに従って要約され、簡潔なbottom-line recommendation for practiceを提供した。それらはEssential Evidence Plusの購読者にメールされたりAFPに掲載されたりポッドキャストで配信されたりした。1998〜2017の20年間で、5,664のPOEMs (mean=283/y, range=230-368)が集まった。20週年を記念して、各年のPOEMsを選んだ。

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They can be broadly divided into 3 groups:
(1) POEMs that recommend a novel, effective intervention,
(2) those that recommend abandoning an ineffective practice, and
(3) those that recommend abandoning a potentially harmful practice.

We observed greater challenges in choosing the best POEMs in recent years, largely because it is difficult to know whether a 3-year-old study will withstand the test of time and the rigors of replication in real-world settings. This judgment is even more difficult because of the increasing amount of industry-sponsored research published in journals and the relatively small amount of public funding for research to support the study of real-world problems in real-world settings.

It would be difficult for any clinician in any specialty or discipline to read all of the journals publishing studies of potential importance, not to mention critically evaluate the validity of individual relevant articles. Clinicians regularly reading POEMs can confidently change practice with the knowledge that they are using the very latest, most relevant, and valid information to provide for the very best care for their patients. The current POEMs are oriented toward primary care, including obstetrics and general hospitalists. We hope to encourage the development of POEMs for other specialties and disciplines in medicine, as well as such other health care disciplines as dentistry and veterinary medicine.

【開催日】2018年11月21日(水)

エダラボン(ラジカット®)のALS進行抑制効果

―文献名―
K.Abe. et al. Safety and efficacy of edaravone in well defined patients
with amyotrophic lateral sclerosis: a randomised,
double-blind, placebo-controlled trial. Lancet Neurol 2017; 16: 505–12

―要約―
★Introduction: ALSの原因はいまだ分かっていないが、フリーラジカルによる酸化ストレス(3-Nitrotyrosine、coenzyme Q10、8-hydroxydeoxyguanosine、4-Hydroxy-2,3-nonenal)が疾患の進行に関与しているとされている。エダラボンはフリーラジカルを消去する作用があり、動物実験では運動ニューロンの脱落を阻止することが分かっている。エダラボンはALSの進行を改善させる働きがあると予想され、対プラセボの第3相試験を行ったが、主要アウトカムであるALSFRS-Rスコアに有意差はみられなかった。エダラボンが疾患の進行を遅らせるのに効果があるかもしれない患者層があるかどうかを調べる目的で多重比較検定を行った。するとALSFRS-Rスコアが全項目2点以上、努力性肺活量80%以上、重症度分類1度、2度、罹病機関2年以内の条件がエダラボンの効果があることが示唆された。

★Method:a randomized, double blind, parallel-group, placebo-controlled study
【選択基準】 20-75歳、ALS重症度分類1、2度、12週間の観察機関の間にALSFRS-Rスコア変化が-1~-4点、ALSFRS-Rスコア全項目2点以上、努力性肺活量80%以上、El Escoria改訂Airlie House診断基準で「Definite」「Probable」、罹患期間が2年以内
【除外基準】ALSFRS-Rが呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全で3点未満、ALS発症後の脊髄手術歴、クレアチニンクリアランス50ml/min以下 (既にリルゾールを内服していた患者は継続することができるが、観察期間後にリルゾールを追加することはできないとした)
【方法】ランダム化の前に12週間の観察期間を設けて選択基準を満たす被験者についてラジカット群、プラセボ群に二重盲検下で割り付け、24週間(6サイクル)の治療を行った。第1サイクルは14日間連日投与した後14日間休薬し、第2サイクル以降は14日間のうち10日間投与した後14日間休薬した。
【End point】
主要エンドポイント:開始から6サイクル終了後のALSFRS-Rスコアの変化
副次エンドポイント:努力性肺活量、Modified Norris Scale、ALSAQ-40スコア、ALS重症度、握力、つまむ力、死亡または一定の病勢進行までの期間

★Result:投与開始時と第6サイクル終了時のALSFRS-Rスコア変化量における最小二乗平均は2.49点でエダラボン群の方がプラセボ群よりスコアの低下が緩やかだった。(95%CI 0.99-3.98 p=0.0013)
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副次エンドポイントで有意差がでたのはModified Norris ScaleスコアとALSAQ-40スコアだった。少しでも副作用を起こした症例はエダラボン群で58症例(84%)、プラセボ群で57症例(84%)、重症副作用はエダラボン群で11症例(16%)(嚥下障害、呼吸障害、構音障害)、プラセボ群で16症例(24%)だった。

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【開催日】2018年11月21日(水)

家庭医療におけるポイントオブケア超音波検査(POCUS)

―文献名―
Paul Bornemann, Tyler Barreto. Point-of-Care Ultrasonography in Family Medicine. American Family Physician. 2018; 98(4): 200-202.

―要約―
論説 家庭医療におけるポイントオブケア超音波検査
ポイントオブケア超音波検査(POCUS)は、臨床医によってベッドサイドで行われる超音波検査プロトコル
POCUSプロトコルにより表1の問いに答えることができる。

比較的短いトレーニング期間の後に行うことができる
・家庭医レジデントを対象としたPOCUSの使用可能性(feasiblity)の研究
 ポータブルエコーを使用した16時間のトレーニング
 使用法の学習が容易で診断効率と精度が向上し、患者満足度が上がる
 参加者の86%が毎日の実践においてPOCUSを引き続き使用することに同意するか強く同意した

OCUSは医療費を削減する可能性を示すエビデンスが増えている
・救急における尿管結石疑いの評価でエコーとCTを比較した研究
 POCUSによる初期検査で転帰の変化なしに59%のCT検査数が減少
・静脈アクセス、胸腔鏡検査、関節症への手技などにおいて超音波検査が合併症を減らす。

POCUSは多くの場面で身体診察やレントゲン写真より優れている
・POCUSを使用する場合、ジェネラリストの左心室収縮機能の評価は循環器科医と同等に正確
 医学生でも診断精度を50%から75%に高めることができる。
・POCUSは、蜂窩織炎と膿瘍を鑑別するための身体検査よりも優れている
 マネジメントを14%~56%の症例で変更させる。
・POCUSは、胸水、肺水腫、肺炎および気胸を含む多くの肺の診断において、身体診察またはCXpより優れている。

POCUSはイメージングへのアクセスを迅速化し増やすことができる
・POCUSを用いた腹部大動脈瘤のスクリーニングは、感度99-100%。4分未満で完了できる。
・POCUSによる下肢DVTのスクリーニングは、感度95%、特異度96%。4分未満で完了できる。

POCUSには様々なベネフィットがあるため、家庭医療における使用への関心が高まっている
・プログラム責任者らへの2014年の調査
  POCUSの公式カリキュラムを取り入れたレジデントプログラムは2%しかなかったが、
  29%が(非公式の?)カリキュラムを前年度から開始しており、
  11%がカリキュラムを開始する準備をしていた。
・2016年、AAFP(American Academy of Family Physicians)代表者会議の決議
  すべての家庭医療プログラムがPOCUSを研修に組み入れることを推奨
  POCUS研修を組み入れた継続的な医学教育をAAFPが増やしていく
・AAFPにより、大学医学教育におけるPOCUSカリキュラムガイドラインが作成された(添付資料)

後藤先生図1

腹部大動脈瘤スクリーニング
 ・瘤はあるか?
心臓
 ・左室収縮機能障害はあるか?  ・左室肥大はあるか?
 ・心嚢液はあるか?  ・体液量過剰ではないか?
DVT
 ・DVTはあるか?
肝胆道
 ・胆石はあるか?  ・胆嚢炎はあるか?  ・肝脾腫はあるか?
 ・脂肪肝はあるか?  ・腹水はあるか?
筋骨格
 ・骨折はあるか?  ・靭帯あるいは腱の病変はあるか?
 ・関節液はあるか?  ・手根管症候群を示唆する正中神経腫大はあるか?
産科
 ・子宮内妊娠はあるか?  ・胎位は正常か?
 ・胎児心拍はあるか?  ・妊娠期間は?
眼科
 ・網膜剥離はあるか?  ・硝子体出血はあるか?
 ・頭蓋内圧亢進を示唆する視神経腫大はあるか?
手技の際のガイド
 ・針、カテーテル、気管内チューブは適切な場所にあるか?

 ・気胸はあるか?  ・肺炎の所見はあるか?
 ・胸水はあるか?  ・肺水腫の所見はあるか?
皮膚軟部組織感染症
 ・膿瘍はあるか?
甲状腺
 ・甲状腺に病変はあるか?
泌尿器科
 ・水腎症あるいは腎結石の所見はあるか?残尿はどれくらいか?

【開催日】
 2018年11月8日(水)

アドバンス・ケア・プランニングの効用

―文献名―
Karen M. Detering The impact of advance care planning on end of life care in elderly patients: randomised controlled trial. BMJ. 2010; 340: c1345.

―要約―
【目的】
 高齢患者に対する人生の最終段階におけるケアに対するアドバンス・ケア・プランニングの影響を調べること

【方法】
 デザイン:Prospective randomised controlled trial.
 セッティング:オーストラリアメルボルン大学の単一施設研究
 参加者:80歳以上の医療入院患者309名を対象とし6ヶ月もしくは死亡するまで追跡調査した
 介入 :参加者は通常ケアか通常ケア+アドバンス・ケア・プランニング(the Respecting Patient Choices model 文献12のトレーニングを受けた
     看護師またはヘルスケアワーカーが主治医などの協力のもと実施)を受けるため無作為に割り付けられた。アドバンス・ケア・プランニング
     は患者が患者の目的、価値観、信念を将来の治療選択の考慮と代理意思決定者の任命と希望の文章化に反映することのサポートを目的として
     いる。
 アウトカム測定:主要アウトカムは患者の人生の最終段階における希望が知られており尊重されているかどうかであった。他の結果には、入院患者
         および家族の満足度、および死亡した患者の親族におけるストレス、不安、うつ病のレベルが含まれていた。
 
【結果】
 309名のうち154名が介入群に無作為に割り付けられた。125名(81%)にアドバンス・ケア・プランニングが実施され、108名(84%)が希望を表明したか代理意思決定者を指名した。6ヶ月で死亡した56名のうち介入群(25/29,86%)はコントロール群(8/27,30%;P<0.001)に比べ人生の最終段階における希望がより知られ、従われる傾向にあった。介入群では亡くなった患者家族のストレス(介入群5、コントロール群15、P<0.001)、心配(介入群0、対照群3、P=0.02)、抑うつ(介入群0、対照群5、P=0.002)がコントロール群と比較して有意に少なかった。患者と家族の満足度は介入群と比較してより高かった。
 
【結論】
 調整されたアドバンス・ケア・プランニングは人生の最終段階におけるケアを改善する。アドバンス・ケア・プランニングは遺族の不安、抑うつ、心的外傷後ストレスを軽減する。アドバンス・ケア・プランニングは入院後の患者と家族の満足度を改善する。
 
【Discussion】
 ・意思表示能力がない患者(認知症など)のアドバンス・ケア・プランニングについては評価していない
 ・単一施設研究のため地域の文化的、システム的な影響があるかもしれない
 ・6ヶ月以内での追跡は出来たがそれ以降の追跡は出来ていない

村井先生図1

村井先生図2

村井先生図3

村井先生図4

村井先生図5

【開催日】
2018年11月7日(水)

家庭医療・古典シリーズ  家庭医の外来の「ルーチン、ドラマ、セレモニー」とは一体何か?

-文献名-
Miller WL. Routine, ceremony, or drama: an exploratory field study of the primary care clinical encounter. J Fam Pract. 1992 Mar;34(3):289-96.

-要約-
<サマリ>
背景:家庭医の診療ではしばしば家族システム理論と生物心理社会モデルを用いるが、忙しい外来診療においてはそれらの適応の仕方には違いがある。
方法:4人のグループ診療のうちの2名の家庭医によって日々の診療マネジメントの例示を同定しする。共同での質的研究を使ってその過程を探索する。鍵となる人物となる2名の家庭医と看護師の管理者への半構造化インタビューも用い、人類科学的なインタビュー技術を用いてテーマ分類を行なった。結果として生じた臨床上の出会いの類型化と意思決定の分類を参与観察と鍵となる人物からのレビューを用いて評価を行なった。最終結果は医師患者関係の過去の文献との比較で行った。
結果:3つの臨床上の出会いの類型が同定された。
 ●ルーチン:単純、単回、短時間外来、契約上の診療、生物医学モデルのみで対応
 ●セレモニー:誓約的、儀式的なスタイル
 ●ドラマ:精神的な問題を含め、衝突や感情を扱う状況 
結論:臨床上の出会いを分類することは、家庭医にとって家族システムの考え方を忙しい日々の診療に統合するための助けとなるであろう。これらの発見は今後の未来の研究、臨床研究、教育など多くのものに応用できる。
――――――――――
<結果の詳述>
外来の4つの定型分類
 ●1、ルーチン:『型通りの単純作業』
  ➢「シンプル」「簡単」「ありふれた風邪」「飯の種」
  ➢日常の感染症、小外科、保険書類関係、保証を提供するもの
  ➢解決するのが容易で比較的身体的問題のみの外来

 ●2、ドラマ:『不穏で緊迫した感情が蠢く場面』
  ➢「複雑」「困難」「問題」「話が終わらない外来」「悪い知らせを伝える」
  ➢不確実性が高い場面、衝突が生じる場面、医師―患者の合意が難しいとき、家族内の対立、アドヒアランスの不良、がんや糖尿病、ダウン症の告知
  ➢時間がかかる脅威を感じる外来で、その後も頻回の受診を必要とする。家族図が助けとなる。
  ➢早期にこれはドラマだという認識を持つと、患者さんが帰る間際の「先生、実は」という状況を減らすことができ、またその外来の最後に今後に続く何回もの受診の価値を伝えることができる。
  ➢問題解決は必要としない

 ●セレモニー:『儀式・祭事』
  ➢内容から2つに分かれる。
 ●3−1、移行期セレモニー(特別な機会での式事:結婚式、お葬式的な?)
  ➢新しいドラマの最初の幕開け、「予定の破壊者」であり「隠されている時間爆弾」。
  ➢ルーチンの中でドラマであると早期に認識し、以下の4つのステップを踏むことが重要 
    1.医者が患者を信頼していることを患者に知ってもらう
    2.医師は患者が最も恐れていることを取り扱う
    3.「一生のお願いだから聴診器を当ててください」への診察の実施
    4.医師は、希望を与えて、次回までに何か出来ることを提供する 
  ➢移行期の説明を受け、不安について学び、家族との再会・和解を開始し、さらに害が生じないように長期間の診療を準備
 ●3−2、維持期セレモニー(定例”Do”式事:朝礼、お歳暮的な?)
  ➢プロトコールに沿った対応、いつも通りの対応、
  ➢これも医師の快適さ・不快さでさらに2つに分かれる。
    ✧3-2-a.維持期好意的セレモニー 
     ●慢性疾患の管理・マネジメント、患者とのホラ話・噂話の交換 
    ✧3-2-b.維持期絶望的セレモニー
     ●「腹を立てている患者」、「孤独な患者」と評される。
     ●不要なビタミンB12注射や疼痛緩和注射などの不快な定期マネジメント(出来上がってしまったパターン)
 ●移行期も維持期も両方ともに、定められ繰り返される型や構成となっている。儀式的であったり、良し悪し関係なくパターン化された繰り返しのプロセスである。(McWhinneryは、シャーマン的な振る舞いと表現)

【開催日】2018年10月24日(水)

診療範囲の幅広さは家庭医の燃え尽きの少なさと関連する

-文献名-
Amanda K.H. et al. Burnout and Scope of Practice in New Family Physicians. Annals of Family Medicine. Vol.16, No.3. May/June 2018.

-要約-
【目的】
家庭医はその診療範囲や診療の場の幅広さから、最も燃え尽きが多い診療科のうちの一つと報告されている。一方で、燃え尽きと家庭医の幅広い診療の関連についての先行研究はない。
【方法】
2016年にAmerican Board of Family Medicine (ABFM)が施行したNational Family Medicine Graduate Surveyの対象者で、外来で継続的な診療を行っている1,617名を二次解析した。先行研究を参考に燃え尽きの定義は「週に1回以上燃え尽きを感じることがあるとの自己申告」とした。
 まず、家庭医の診療領域を8領域、よくある手技を17種類、診療の場を9種類にまとめた(Table 1・2)。そして、二変量解析(Table 3)とロジスティック回帰分析(Table 4)により、燃え尽きと診療範囲の幅広さの関連について調査した。
【結果】
41.9%が燃え尽きを申告した。対象者は平均35.9歳で、58.6%が女性。1日平均診療患者数は20.3名で、74.2%が時間外電話対応を行い、52.2%が週末または夜間に診療を行っていた。診療領域または手技の数の平均値は7.7であった(Table 2)。
燃え尽きは男性で少ない傾向があり(燃え尽きあり37.2% vs 燃え尽きなし44.4%, P=.004)、女性は男性より関連が強かった(OR=1.32, 95% CI 1.07-1.62, P=.009)。一方で、1日平均診療患者数・時間外電話対応件数・週末または夜間診療件数は関連がなかった(Table 3・4)。
 また、燃え尽きは「自施設以外に1つ以上診療の場がある」と少ない傾向があり(燃え尽きあり48.4% vs 燃え尽きなし57.6%, P=.001)、とくに病院と在宅は関連が強かった。入院医療(OR=0.70, 95% CI 0.56-0.87, P=.0017)、産婦人科診療(OR=0.64, 95% CI 0.47-0.88, P=.0058)、「診療領域または手技の数が多いこと」は燃え尽きの少なさと有意に関連したが、小児救急は関連がなかった(Table 3・4)。
【考察】
 本研究の限界は、横断研究のため因果の逆転があり得ること、自己申告形式のため「社会的望ましさバイアス」または「思い出しバイアス」があることであり、さらなる研究が望まれる。
【結論】
幅広い診療範囲(とくに入院医療・産婦人科医療・在宅医療)を提供している若手家庭医は、燃え尽きの申告が有意に少なかった。本研究の知見は、包括性は燃え尽きの少なさと関連し、これは医師の健康を維持しつつ良質で低コストなケアへのアクセスを改善するという文脈において重要である。

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【開催日】2018年10月24日(水)

心不全急性増悪におけるβブロッカーの中断

-文献名-
Guillaume Jondeau, et al. B-CONVINCED: Beta-blocker CONtinuation Vs. INterruption in patients with Congestive heart failure hospitalizED for a decompensation episode. European Heart Journal (2009) 30, 2186–2192

-要約-
Introduction:
<わかっていること>
・ かつては収縮期心不全自体にβブロッカーの使用は禁忌と考えられていた。
・ しかし現在では慢性期の心不全の患者においては、βブロッカーの使用は生活の質を改善し、病因・性別・関連する治療および年齢に関わらず入院率を低下させると一貫して結論づけられている。
・ βブロッカーは心拍出量を低下させ、左心室充満圧を増加させる作用を持つため、治療が心拍出量をあげたい急性期の収縮心不全に新規にβブロッカーを導入させることは禁忌である。
<わかっていないこと>
・ もともとβブロッカーを内服している患者が急性期の収縮期心不全を発症した時に、継続させるべきか中止減量させるべきか不明である。
・ 過去にRCTもなく、ESCの推奨も不明確:減量/中止させるべきかもしれないが、可及的速やかに再開を検討する。

Method:
<対象>
フランスの36施設(cardiology center)に2004年10月〜2018年10月に集められた1ヶ月以上同じ容量のβブロッカーを内服している18歳以上の成人。放射学的な証拠のある肺水腫や浮腫があり呼吸困難を伴う急性心不全で入院となり、呼吸数>24回でLVEFが12ヶ月以内に測定され、40%未満である患者を対象とする。
<除外基準>
STEMI、ドブタミンが必要と臨床医に判断された患者、2度以上の房室ブロック、心拍数が50bpm未満、βブロッカー増量中の患者、他の研究に参加している患者、妊娠中

<方法>
βブロッカーを同量のまま継続する群と中止する群に無作為に振り分け、隠蔽化された。βブロッカーは最低でも3日間の継続がされている。最初の8日間毎日、もしくは早期に退院となったケースは退院になるまでの毎日、臨床データ(脈拍、血圧、呼吸数、SpO2、肺水腫の存在、下腿浮腫、肝腫大、頸静脈怒張)を集めた。また入院時と入院3日後に血清BNP値を測定し、入院3日目と8日目に盲検化された状態で医師による2つの同一のアンケートで呼吸困難感や全身状態の評価がされた。全身状態は5段階に評価され、良い/若干良い/変わりない/若干悪い/悪いと分けられた。
研究はβブロッカー中止群と比較して、βブロッカー継続の非劣勢を実証することを目的にしている。3日後の全身状態や呼吸困難感がβブロッカー継続群のoutcomeがβブロッカー中止群と比較して、12.5%以上劣らなければ、非劣勢であると判断できる。研究はPer-protocolで評価をされており、Primary outcomeを評価するための症例数をあらかじめ推定した上で研究が開始されていた。

<End point>
• Primary Outcome:全身状態・呼吸困難感が改善した割合(医師による第3病日までの評価)
• Secondary Outcomes:全身状態・呼吸困難感が改善した割合
(i) 患者による第3病日までの評価 (ii) 医師による第8病日までの評価 (iii) 患者による第8病日までの評価、
血清BNP値(第3病日)、入院期間、再入院率(3ヶ月)、死亡率(3ヶ月)、急性発作から3ヶ月後のβブロッカーの内服患者数
Results:
患者は右図のように振り分けられ、Base lineは同等と判断されている(Table1,2)。追跡率は脱落なく100%であった。
Primary outcome:盲検化された評価者における3日目の呼吸困難感と全身状態両方の改善は服薬中断群92.3%に比較して、服薬継続群は92.8%と有意差はなかった。
Secondary outcome:同様に患者による第3病日での評価でも中止群82.7%、継続群88.4%と改善を認めている。
8日目での医師の評価は中止群:継続群で95.2%:95.4%
8日目での患者の評価は中止群:継続群で94.8%:95.2%
いずれも有意差なし(下図のFigure 2参照)。

201810西園

201810西園2

血清BNPは継続群の入院時は1314±1214pg / mLから第3病日の882+950pg / mLに減少。同様に中止群は1387 +1124pg / mLから876 + 1382pg / mLへと有意に減少した。第8病日も血清BNPは2つの群で同等であった。
また同様に入院期間、再入院率(3ヶ月)、死亡率(3ヶ月)も有意差はなかった(上記Table3参照)。
急性発作から3ヶ月後のβブロッカーの内服患者数は有意差があり、継続群のほうが多く、19%が最大投与量を内服しており、少なくとも51%が最大量の半分の内服をしていた。

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Discussion:
この無作為試験では慢性的にβブロッカーを内服している患者において、急性増悪時に服薬を中止しなくても臨床的な改善を遅らせないことを実証している(非劣勢の実証)。
研究の限界として、
①研究がOpenラベル試験(評価者のみ盲検化されている)であり、より多くの人数が必要となりうる3ヶ月の死亡や入院などの厳しい評価項目において影響がある可能性が存在すること。
②ドブタミンを投与する意志を持った医師の対象となっている患者は除外した
③ほとんどの患者がβブロッカーの最大量投与がされておらず、その理由は明確化しなかったこと。
④この研究自体が入院時からβブロッカーを継続する意志を持って望んである研究であるため、あくまで個々の臨床状況に応じた対応は今後も必要であること。

【開催日】2018年10月17日(水)

患者と家族からみたケアの移行,受け渡し(退院支援)

-文献名-
Suzanne E M et.al. Care Transitions From Patient and Caregiver Perspectives. Ann Fam Med 2018; 16: 225-231.

-要約-
<目的】> ケアの移行/受け渡し(退院支援)を効率的に行うために協調的な対策がとられているにも関わらず,病院から自宅(home)への行程/道のりは患者と介護者にとって危険に満ちたものである.患者と介護者がケアの移行/受け渡し(退院支援)の経験や彼らが望むサービス,彼らにとって価値あるアウトカムについてはほとんど知られていない.この研究の目的は(1)ケアの移行/受け渡し(退院支援)における患者と介護者の経験を描写すること,(2)患者と介護者にとって望ましいケアの移行/受け渡し(退院支援)のアウトカムやそれに関連する健康関連サービスの特徴を明らかにすることである.

<方法>
米国内の6つの健康ネットワークから採用された138名の患者と110名の家族介護者にインタビューを行った.34の同質なフォーカスグループ(103名の患者と65名の介護者)と80のkey informant interview(質的研究において「核となる情報提供者」から問題に関する情報を収集するときに行う方法)実施した.録音された記録を文字起こしし,グラウンデッド・セオリーの手法を用いて分析し,複数のテーマとそれらの関係性を明らかにした.

<結果>
患者と介護者によりケアの移行/受け渡し(退院支援)について望まれるアウトカム3つが示された.
(1) 医療職に「Cared for:世話をされた」「Care about:かまってもらった」と感じること
(2) ヘルスケアシステムによる明解で責任ある説明をうけること
(3) ケアプランを実行する上で「準備ができて」「実行可能である」と感じること
5つのケアの移行/受け渡し(退院支援)や医療提供者の行動がこれらのアウトカム実現に関連していた.
(1) 共感的な言葉とジェスチャーを用いること
(2) 自宅(home)におけるセルフケアを支援するために患者のニーズを先読みして手を打つこと
(3) 退院計画を協同で建てること
(4) 実行可能な情報を提供すること
(5) 最小限の受け渡しにより切れ目のないケアを提供すること

<結論>
連続するケアを通じた明解な説明責任,ケアの継続性,ケアの態度が,患者と介護者にとって重要なアウトカムであった.これらのアウトカムが達成されたとき,ケアは素晴らしい,とか信頼に足ると受け止められる.一方,ケアの移行/受け渡し(退院支援)が業務的で安全でないと経験され,患者や家族にヘルスケアシステムから見放されたと感じさせていることも示された.

【開催日】2018年10月17日(水)

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