感染を伴った小児湿疹に対する経口および外用抗生剤治療の是非

―文献名―
Francis NA, Ridd MJ, Thomas-Jones E, et al. Oral and Topical Antibiotics for Clinically Infected Eczema in Children: A Pragmatic Randomized Controlled Trial in Ambulatory Care. Ann Fam Med. 2017;15(2):124-130.

―要約―
Introduction
 湿疹のある患者では皮膚から70%に黄色ブドウ球菌が検出され、悪化の際は広く外用抗生剤が処方されている。しかし2010年の湿疹への抗生剤加療についてCochrane reviewでの最新情報では、関連研究の多くは規模が小さく、質に欠けていることが示され、著者は湿疹の悪化へ抗生剤が使用されることに疑問を抱いた。
 そのため臨床的に湿疹に感染を伴ったと判断される小児に対して、標準治療であるステロイド外用に追加して経口や外用抗生剤を投与することが湿疹の主観的な重症度を軽減するうえでより効果的かどうかを判断するため本研究を実施した。

Method
 英国の外来診療のセッティングで3群間の盲検化ランダム化比較試験を行った。感染徴候を伴う湿疹のある3か月から8歳の小児患者に対し、経口と外用の偽薬(対照群)、外用の偽薬と経口抗生剤、外用抗生剤と経口の偽薬のいずれかをそれぞれ無作為に1週間処方を受けた。ただしpotentもしくはvery potent外用ステロイドや抗生剤の最近の服用歴、重症感染の徴候を認める、また重篤な併存疾患をもつ事例は除外された。1次アウトカムを湿疹の主観的重症度尺度であるPatient Oriented Eczema Measure(以下、POEM)とし、2週間後のPOEMスコアを共分散分析を用い比較した。
 サンプルサイズはα=0.025、90%の検出力としたとき、20%が追跡からもれることを想定し517人と設計した。2014年4月時点での解析結果からは225人が必要とされた。

Result
 2013年7月から2014年12月まで94の医療機関が参加し、33か所で1名以上の参加者が得られた。目標のサンプルサイズに満たなかったものの113名の参加者が無作為割り付けされた。3群間で患者背景に有意な違いはなかった(Table1)。研究開始時の平均POEMスコアは対照群で13.4(標準偏差5.1)、経口抗生剤群で14.6(5.3)、外用抗生剤群で16.9(5.5)であり、2週後はそれぞれ6.2(6.0)、8.3(7.3)、9.3(6.2)であり、抗生剤の効果は経口剤で1.5(95%信頼区間:-1.4-4..4)、外用剤で1.5(-1.6-4.5)と有意差を認めなかった(Table2)。
上野先生図1

Discussion
 本研究ではプライマリケアで小児の感染を伴った湿疹はmildからmoderateのステロイド外用で速やかに改善し、経口や外用抗生剤の追加は無益であることがわかった。当初設定したサンプルサイズには満たなかったものの、抗生剤使用の介入効果の信頼区間下限(-1.4と-1.6)でも臨床上重要な最小のPOEMの差に満たず、これらの結果は偶然によるものではないと考える。また2次分析でも一貫して同様の傾向がみられた。
 本研究は感染を伴った湿疹に対して経口および外用抗生剤の効果を評価した最大の研究である。感染を伴った湿疹は明確な定義は存在しないため、実際的な適格基準を設けた。黄色ブドウ球菌は開始時で70%にしか認めなかったが、すべての患者で医師は感染を起こしていると考えており、現在の診療に直接反映される結果ではないだろうか。
上野先生図2

【開催日】
 2017年5月17日(水)

高齢者の潜在性甲状腺機能低下症

―文献名―
D. J. Stott, et al. Thyroid Hormone Therapy for Older Adults with Subclinical Hypothyroidism. NEJM. April 3, 2017

―要約―
Introduction
 65歳以上の成人の8~18%は潜在性甲状腺機能低下症の状態にあり、男性よりも女性に多い傾向にある。高齢者における潜在性甲状腺機能低下症は、多くの問題にかかわっている可能性があり、甲状腺ホルモンは、心血管系、認知機能を含む脳神経系、骨や筋骨格系など多彩な影響を及ぼす。疲労感は、甲状腺機能低下症の重要な症状の一つであるが、甲状腺機能低下症の患者は、無症状、または非特異的な症状を呈する。
潜在性甲状腺機能低下症のレボチロキシン投与によるランダム化比較試験は、過去に行われているが、規模が小さく限られたエビデンスしか示されておらず、その効果やリスクには議論の余地がある。そこで、潜在性甲状腺機能低下症の高齢者に対するレボチロキシン投与の臨床的な意義を明らかにするために研究を行った。

Methods
 研究デザインは、レボチロキシン投与群とプラセボ群による二重盲検化ランダム比較試験で、少なくとも65歳以上で、潜在性甲状腺機能低下症(TSH値 4.60~19.99mIU/L、遊離チロキシンは基準値範囲内のもの)の状態にある737人の成人を対象に行った。368人がレボチロキシン投与(開始用量50μg/day、体重50kg未満の場合は25μg/day)を受け、TSH値に応じて調整された。369人は、プラセボ群に割り当てられて疑似的な用量の投与を受けた。2つの主要アウトカムは、1年間における甲状腺機能低下症スコアと、甲状腺関連QOL質問紙による疲労スコア(いずれも0~100点で、点数が高いほど症状や疲労が強いことを示し、臨床的に重要な最小の差は9点とされる)とした。

Results
 患者年齢の平均値は、74.4歳で、396人(53.7%)は女性だった。TSH値の平均値(±SD)は、6.40±2.01mIU/Lだった。1年間で、レボチロキシン投与群は、レボチロキシンの中央値50μgの投与において、3.63mIU/Lに低下したのに対し、プラセボ群では、1年間で5.48mIU/Lへと低下(P<0.001)した。
1年間の変化として、甲状腺機能低下症スコアの有意な変化は認めなかった。(プラセボ群0.2±15.3、レボチロキシン投与群0.2±14.4)レボチロキシン投与による副次的なアウトカム(QOLスコア、握力、血圧、BMI、腹囲)についても有益な差はみられなかった。また、事前に想定された重大な有害事象についても認められなかった。

Discussion
 今回の試験は、統計的に主要アウトカムを評価するには十分な症例数だったと考えられる。小さな規模の観察研究などでは、甲状腺機能低下症スコアや疲労スコアの変化を示していたが、いずれも短い観察期間におけるレボチロキシン投与による治療効果の比較だった。過去には、高齢者を対象とした質の高いランダム化比較試験は行われていたが、症例数が120人以下で、十分な規模とは言えなかった。潜在性甲状腺機能低下症では、情報処理能力が低下すると示唆されているが、今回の試験で行った文字コードテストの結果からは、明らかな差は示されなかった。同様に血圧、体重、腹囲、BMI、ADL(Barthel Index)、IADLでも治療効果の差は認めなかった。また、レボチロキシン投与群における有害な甲状腺機能亢進症の発現は認めず、プラセボ群においても、心房細動、心不全、骨折、骨粗鬆症など想定されていた有害事象については認めなかった。過去の観察研究においても、治療による有害事象のリスク上昇は示されていない。
今回の研究の限界としては、治療目標を一部の権威者が示しているTSH値(0.40~2.50mIU/L)ではなく、最近の高齢者に対するレボチロキシン治療のガイドラインに示されているTSH値(0.40~4.60mIU/L)を採用していることが挙げられる。限界の2つ目としては、TSH値が10mIU/Lを超えていた少数の対象者については、サブグループ解析が十分にできておらず、治療効果のメリットについては明らかにできなかった。限界の3つ目としては、対象者の症状の程度が軽く、より症状の強い場合の可能性については除外できていない。4つ目としては、甲状腺の抗体値を測定していないため、抗体の有無による差と、抗体を有している場合に長期間の治療で差が生じた可能性は評価できていない。最後に心血管イベントや死亡率に及ぼす効果を評価するには至っておらず、治療による心血管系への保護作用や有害性の可能性は、除外できていない。

【開催日】
 2017年5月17日(水)

ビタミンDによる上気道感染症予防

―文献名-
Adrian R Martineau et al. Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory tract infections: systematic review and meta-analysis of individual participant data. BMJ 2017;356:i6583

-要約-
Introduction
 急性上気道感染症は頻度が高く、死亡率も高い重要な疾患である。過去の観察研究において、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度が低いことと急性上気道感染症の罹患率に関連性があることが示されていた。また、ビタミンDは上気道炎への抗菌・抗ウイルスペプチドを刺激し、感染予防に働く可能性があると言われていた。ビタミンD補給が急性上気道感染症のリスクを減らせるか、といったRCTが多数されており、現在までに5つの集計データメタアナリシスが実施されている。そのうち2つは統計学的に有意な効果を報告し、3つは有意な効果を報告しなかったこれら5つの試験のうち4つで、統計的に有意な異質性があると報告している。COPD患者の中でもビタミンDのベースラインが低い患者については補給による利益は大きく、また年齢やBMIなどはビタミンD補給による25-ヒドロキシビタミンDの応答に影響すると言われている。今回、この異質性を説明する要因を特定するために、ビタミンD補給による急性呼吸器感染症予防に関する25のRCTすべてにおいて、個々の参加者データのメタアナリシスを行った。

Method
 デザイン:ランダム化比較試験からの個々の参加者データのシステマティックレビュー、およびメタアナリシス
 データソース:Medline, Embase, the Cochrane Central Register of Controlled Trials, Web of Science, ClinicalTrials.gov, the International Standard Randp,osed Controlled Trials Number registry
 試験選考のための基準:ランダム化、二重盲検、プラセボ比較によるビタミンD3あるいはビタミンD2補給の試験であり、倫理委員会に承認されており、急性上気道感染症の発生率に関するデータが前向きに収集されているもの。

Results
 25のRCT(計11321名の参加者、0歳から95歳まで)が同定された。参加者データは10933名(96.6%)で得られた。ビタミンD補給により、全ての参加者の急性呼吸器感染証のリスクを減らした(調整オッズ比0.88、95%信頼区間0.81-0.96、P値<0.001)。サブグループ解析では、追加のボーラス投与なしで、毎日あるいは毎週ビタミンDを摂取した者に保護効果が認められた(調整オッズ比0.81、0.72-0.91)が、1回以上のボーラス用量を受けた者では効果が見られなかった(調整オッズ比0.97、0.86-1.10、P値=0.05)。毎日あるいは毎週ビタミンDを摂取した者のうち、保護効果がより強かったのはベースラインの25-ヒドロキシビタミンDレベル<25nmol/L(調整オッズ比0.30、0.17-0.53)であり、25-ヒドロキシビタミンDレベル≧25nmol/L(調整オッズ比0.75、0.60-0.95、P値=0.006)より高かった。ビタミンD摂取による有害事象の発生率には差がなかった(調整オッズ比0.98、0.80-1.20、P=0.83)。 結論:ビタミンD補給は安全に実施でき、急性呼吸器感染症に対する保護作用は全体に認められた。中でも、ビタミンD欠乏が強い者、ボーラス投与を受けていない者が最も利益を受けていた。 中島先生図1

中島先生図2

【開催日】
 2017年3月22日(水)

プライマリ・ケアでの家族性高コレステロール血症のスクリーニング

-文献名-
David S. Wald, et al. Child–Parent Familial Hypercholesterolemia Screening in Primary Care.N Engl J Med 2016;375:1628-37.

-要約-
押見先生の本(www.amazon.co.jp/dp/4758309604)にあった10のステップに沿ってみます。

Step1:結論を類推しながらタイトルを確認する
スクリーニングの推奨についての論文だろう

Step2:研究規模を知るために研究グループ名と著者の所属機関を確認する
松島先生図1
Wolfson Institute of Preventive Medicine, Barts and The London School of Medicine and Dentistry(http://www.wolfson.qmul.ac.uk/about-us)1991年設立
North East Thames Molecular Genetics Laboratory, Great Ormond Street Hospital(http://www.gosh.nhs.uk/)こども病院
どちらもイギリス、ロンドン

Step3:結論の真髄を見る(conclusion)
Child–parent screening was feasible in primary care practices at routine child immunization visits.
 プライマリ・ケア医をワクチンで受診したときにスクリーニングは可能
For every 1000 children screened, 8 persons (4 children and 4 parents) were identified as having positive screening results for familial hypercholesterolemia and were consequently at high risk for cardiovascular disease.
 1000人の子をスクリーニングして、4人の子と4人の親がFHと診断された。

Step4:Backgroundを見て研究の新規性・独自性を確認する
・What is known?
 FHは常染色体優性遺伝の疾患で、1000人に2人の頻度(BMJ2007より)。2007年のBMJのメタアナリシスで、FHのPopulation-Based child-parent screeningが提案されている。1-9歳児でコレステロールを測定し、高コレステロール血症があった場合に両親も測定する。20-39歳のFH患者は、同世代の健常者の100倍心血管イベントを起こしやすい。両親と、思春期になった子にはスタチンが勧められる。
 FHの診断は遺伝子検査で行うが、全ての遺伝子変異が同定されているわけではない。またFH変異があってもコレステロール値が高くない場合もある。以前のメタアナリシスの見積もりでは、総コレステロール(T-Chol)のカットオフは中央値の1.53倍(multiples of the median;MoM)≒99.9パーセンタイルで、1〜9歳児のFH患者を88%拾い上げられる
・What is unknown, Purpose of the study
 We assessed the efficacy and feasibility of such screening in primary care practice.

Step5:Methodsから研究方法を同定し、PICOを用いて仮説を検証する
・エビデンスピラミッドのどこに位置するのか
 診断の有益性を見る、横断研究?
・PICOは?
 なし

<Methods>
 2012年3月〜2015年3月 イギリスの92箇所のgeneral medical practicesでおよそ13か月で子供の予防接種で来院した時に、親にスクリーニングを受けるか確認
13097児の親のうち11010児の親(84%)が同意した。
 予防接種の時に、heel-stick capillary blood sampleを採取し、コレステロール値の測定とFH変異の有無を確認した。良好な検体は10118児で得られた。T-Chol, HDL, TGはthe Cholestech LDX point-of-care analyzer (Alere)で測定された。
coefficients of variation(変動係数)、、、
 LDLはthe Friedewald equationで計算。最終的に10095児が解析された。
 計測されたFH変異は、FH48という48種類のもの、c.10580G→A (p.Arg3527Gln) mutation in APOB、c.1120G→T (p.Asp374Tyr) mutation in PCSK9
 DNAはthe QuickGene-810 (AutoGen)で抽出されTaqMan single-nucleotide polymorphism (SNP) genotyping (Life Technologies) on the Fluidigm Biomark platformで測定された。FH48はないがTCが高値(230mg/dl以上)のものはthe BigDye Terminator, v. 3.1, Cycle Sequencing Kit (Applied Biosystems)を用いてSanger sequencing of LDLR (all exons, boundary and promoter regions), APOB (exon 26), and PCSK9 (exon 7)を調べた。それでも異常がない場合は、3か月以降経ってから再度コレステロール値を調べた。

 高コレステロールがありFH変異があるか、3か月以降に再度高かった場合をスクリーニング陽性とする。その親も同じ変異をもてば陽性とする。変異がない場合、両親のうち高コレステロールな方をスクリーニング陽性者とする。

Step6:比、信頼区間、P値を確認して結果を評価する
松島先生図2
(私見)
・心筋梗塞の家族歴がある率が、日本での実感と比べてかなり高い。
・母親の年齢の中央値が31歳、父親が34歳、英国も晩婚化しているのか。

松島先生図3
 FH+は全員ヘテロ型だった

松島先生図4
 FH変異+のうち1/3は正常値(1/6は正常中央値以下)

松島先生図5
 FHと診断された親はスタチン内服を開始した。
 診断についてネガティブな印象を持った親はいなかった。予防接種の妨げになることもなかった。

Step7:考察部分からパラグラフリーディングスキルを用いて結果の解釈と限界を同定する

・Summary of Main Findings
・Interpretation
 コレステロール値が高くない児でも遺伝子検査をおこなったことでわかったこと
  FH変異+のうち1/3は正常値(1/6は正常中央値以下)
  同じ変異を持っていてもコレステロール値には幅がある→高コレステロール血症の発言には他の因子が重要
   →ホモ型とヘテロ型の違い
   →家族性高コレステロール血症の定義自体が難しい:変異を重要視するのか、コレステロール値を重要視するのか
 その解決法として提案しているのは、FHを早発冠動脈疾患のリスク要因として捉えること。
 (例えばBRCA1の変異は、疾患でなく、乳がんや卵巣癌のリスクとして捉えられている)
 Figure4に示すpopulation-based screening policyによって、偶然の高コレステロール血症を除外でき、
 未知の変異も含んだ高コレステロール血症を拾い上げ、冠動脈疾患リスクを下げることができる。
・Generalizability
 この研究では全員に遺伝子検査を行ったが、実際は限られた人(1.35MoMの高コレステロール血症の人)しか適応にならない。
 Reflex DNA testing(http://www.lmsalpha.com/features/ReflexDNA)が出来れば、広まるかもしれない
・Conclusions
 このやり方が導入されるかどうかは不明だが、有用である。

Step8:Editorial(編集後記)を使って研究領域での論文の価値を同定する
 両親世代は健診や医療機関受診が最も少ない時期なので、このchild-parentスクリーニングはよい機会になるかも。小児期(10歳)からスタチン治療することで、冠動脈疾患リスクを正常人と同等まで減らせるかもしれない。
 これまで行われているCascade screeningでは、高度の高コレステロール血症のある成人を機転に、家族にスクリーニングをかけていく方法で、コストパフォーマンスはよいが、すでに動脈硬化が進行していることも多い。Universal screeningが求められる。Pediatrics 2011にあったExpert panelの発表では、9-11歳と17-21歳でのスクリーニングを推奨しているが、より早い時期に行うことで漏れを少なくしたり早期からの生活指導や治療を始めることができる。

Step9:Correspondenceを使って関連する研究を評価する

Step10:Conference reportを使って論文が社会に与える影響を考える

【開催日】
2017年3月15日(水)

【EBMの学び】単純ヘルペスに対する早期高用量短期間パラシクロピル療法

STEP1 臨床患者に即したPI(E)CO
【評価を行った日付】
 2017年2月1日
【臨床状況のサマリー】
 1年に10回程度、臀部の単純疱疹を繰り返している75歳女性。2週間前にも臀部ヘルペスを発症し、バルトレックス1000mg/day 分2 5日間の内服加療を行った。再び水疱が出現したため受診。臀部には水疱2つあり。
 これまでは毎回バルトレックス1000mg/day 分2 5日間で治療されている。
 既往:慢性C型肝炎抗ウイルス療法後、3日前に肺腺癌疑いと告知

  P;単純疱疹を繰り返している高齢女性において
  I(E);バルトレックスの内服加療 は
  C;経過観察 or 外用薬加療 と比較して
  O:皮疹の治癒を早めるか

STEP2 検索して見つけた文献の名前
 検索したエンジン;UpToDate®
 Treatment of herpes simplex virus type 1 infection in immunocompetent patients
【見つけた論文】
Spotswood LS, et al. High-dose, short-duration, early valacyclovir therapy for episodic treatment of cold sores: results of two randomized placebo-controlled, multicenter studies. Antimicrobial Agents and Chemotherapy, Mar. 2003, p1072–1080.

STEP3;論文の評価
STEP3-1.論文のPECOは患者のPECOと合致するか?

 P;12歳以上の、1年に3回以上口唇ヘルペスを繰り返している患者において
 I(E);早期にvalacyclovir <a: 2g/day 1日間>または<b: 2g/day 1日間+1g/day 1日間>で加療した群は
 C;プラセボを内服した群 と比較して
 O;皮疹の消失が早まったか / 皮疹の出現を予防・抑制できたか
→患者のPECOと (合致する ・ 多少異なるがOK ・ 大きく異なるため不適切)

STEP3-2 論文の研究デザインの評価;内的妥当性の評価
①研究方法がRCTになっているか?隠蔽化と盲検化はされているか?
 →ランダム割り付けが ( されている ・  されていない
 →隠蔽化が( されている ・  されていない ・ 不明 )
 →盲検化が( されている ・ 一部されている ・  されていない ・記載なし )
実際のTableで介入群と対照群は同じような集団になっているか?
 →人種・性別の割合は同等。年齢・再発頻度の中央値は同等。しかしリスク因子に関しては全く不明。除外基準は、HIV感染などの免疫低下宿主、
  腎障害。担癌患者などは不明。
② 解析方法はITT(intention to treat)か?
 →ITTが( されている ・ されていない )

STEP3-3 論文で見いだされた結果の評価
Outcomeについて、以下の値を確認する
【① 治療効果の有無; P値を確認する】1-day therapy / 2-day therapy
皮疹の消失が早まったか:study1: 0.001 / 0.009 study2:  皮疹の出現を予防できたか:study1: 0.096 / 0.061 study2:

【②治療効果の大きさ;比の指標と差の指標を確認する】
・皮疹の消失が早まったか(有意差あり)
  study1: -1.0日(median)、-1.1日(mean) /-0.5日(median)、-0.7日(mean)
  study2: -0.5日(median)、-1.0日(mean) /-0.5日(median)、-0.8日(mean)
 ただし、皮疹消失の時期がわからなかった症例は「15.0日」で計算されている。皮疹消失の時期がわからなかった症例が、各群で何人いたかは示されていない。
・皮疹の出現を予防できたか(有意差なし)
  study1: 6.4%(-1.8 to 14.5) / 8.5%(0.2 to 16.7)
  study2: 8.0%(-0.1 to 16.0) / 8.0%(0.3 to 15.8)
・ORを確認する:皮疹の出現を予防できたか(有意差なし)
  study1: 1.32(0.95 to 1.84) / 1.38(0.98 to 1.94)
  study2: 1.39(0.99 to 1.95) / 1.41(1.02 to 1.94)
・ARR(NNT)を計算する皮疹の出現を予防できたか(有意差なし)
  study1: 0.064(16) / 0.085%(12)
  study2: 0.08(13) / 0.08%(13)

【③治療効果のゆらぎ;信頼区間を確認する】
 ②の()に記載

STEP4 患者への適用
【①論文の患者と、目の前の患者が、結果が適用できないほど異なっていないか?】
 担癌患者であること、75歳であり対象の中でも最高齢クラスであること、すでに水疱を形成していること、臀部ヘルペスはHSV-1でない可能性があることから、結果は適応できない。

・内的妥当性の問題点は?
 Subjectの詳細(リスク因子など)が不明であること、resultの治癒期間の算定方法に疑問が残ることから、アウトカムの有意差は鵜呑みにはできない。

【②治療そのものは忠実に実行可能か?】
 帯状疱疹なら可能な投薬量。投薬期間は問題ない。
 ただし、前駆症状の段階での受診は稀であり、治療開始のタイミングは実現困難。
 論文のように、前駆症状がある患者に事前に渡しておくことは可能。

【③重要なアウトカムはコストや害を含めて全て評価されたか?】
 Subjectの詳細が不明であること、resultの治癒期間の算定方法に疑問が残ることから、アウトカムの有意差は鵜呑みにはできない。
 また、副作用として、頭痛が倍増しているのは確か。
 コスト:1錠188.8~405.6円。1-day: 755.2~1622.4円。2-day: 1132.8~2433.6円。

【④使う者の経験の視点】
・これまでのその治療に対する経験はどうか?:
  外用でも効いている印象。初めて内服を試してみたが、確かに水疱まではできなかった。ただ内服しなかったらどうだったかはわからないので、
 なんとも言えない(自分のケース)。
・自分の熟達度から実行は可能だろうか?:処方自体は可能

【⑤患者の考え・嗜好はどうなのか?】
 痛みや痒み、不快感などの症状はなかった。肺癌の精査が10日後に迫っており、それに影響が出ないか心配されていた。精査には影響がないこと、内服薬は不要であることを説明すると納得された。外用薬のみ処方した。

【開催日】
2017年2月8日(水)

【EBMの学び】急性下痢症に対する整腸剤の効果

STEP1 臨床患者に即したPI(E)CO
【評価を行った日付】
 2016年12月23日
【臨床状況のサマリー】
 11歳、男児。
 受診1日前から腹痛を自覚し、その後複数回の下痢あり。
 便の性状は水様性で、血便や黒色便はない。その他、悪心・嘔吐・発熱などの随伴症状はなし。
 周囲流行歴はなく、生ものなどの食事摂取はない。
 胃腸炎と診断し、整腸剤を処方する旨を伝えたところ、同伴した母親から「これ(整腸剤)を飲むと、下痢はすぐ良くなりますか?」「ヨーグルトも効果ありますか?」と質問があった。

  P;小児の急性胃腸炎に対し
  I(E);整腸剤を処方した場合 / 乳製品を摂取したときと
  C;内服しない / 摂取しないときと比較して
  O:下痢症状の期間短縮につながるか

STEP2 検索して見つけた文献の名前
【見つけた論文】
 Probiotics for treatment of acute diarrhoea in children randomised clinical trial of five different preparations

STEP3;論文の評価
STEP3-1.論文のPECOは患者のPECOと合致するか?
 P;小児(3-36ヶ月)の急性下痢症において
 I(E);5種類の整腸剤を追加した群と
 C;経口補液療法(ORT)のみの群を比べ
 O;下痢の期間や排便回数が縮小するか
→患者のPECOと (合致する ・ 多少異なるがOK ・ 大きく異なるため不適切)

STEP3-2 論文の研究デザインの評価;内的妥当性の評価
①研究方法がRCTになっているか?隠蔽化と盲検化はされているか?
 →ランダム割り付けが ( されている ・  されていない 
 →隠蔽化が( されている ・  されていない ・ 不明 )
 →盲検化が( されている ・ 一部されている ・  されていない ・記載なし )
実際のTableで介入群と対照群は同じような集団になっているか?
 →( なっている ・ なっていない ・ 記載なし )
② 解析方法はITT(intention to treat)か?
 →ITTが( されている ・ されていない )

STEP3-3 論文で見いだされた結果の評価
Outcomeについて、以下の値を確認する
【① 治療効果の有無; P値を確認する】
ひろむ先生図①

ひろむ先生図②

ひろむ先生図③

ひろむ先生図④

【②治療効果の大きさ;比の指標と差の指標を確認する】
●RR(あるいはHR・OR)を確認する
●ARRとNNTを計算する
※P値で有意差が出たものについて計算
→治療効果は計算できない

【③治療効果のゆらぎ;信頼区間を確認する】
→①参照

STEP4 患者への適用
【①論文の患者と、目の前の患者が、結果が適用できないほど異なっていないか?】
 除外基準である栄養失調や重篤な脱水、併存する感染症(髄膜炎、肺炎、sepsis)、免疫不全、食物アレルギー、研究開始3週以内の抗菌薬や止痢剤の使用等はない。
 但し、症例は11歳という学童期で、研究では3か月~3歳といった乳幼児が対象であり、対象年齢から外れている。学童期と乳幼児期の急性下痢症における発症経過や臨床経過、治癒過程などについての差異をはっきりとさせることができなかったため、この点において本症例への適応が可能かは不明である。

・内的妥当性の問題点は?
 研究はランダム化、隠蔽化、盲検化されている。割付された6つの群の特徴が記載されており、比較がなされている。

【②治療そのものは忠実に実行可能か?】
ひろむ先生図⑤

 上記表はある診療所での整腸剤の採用薬だが、どの整腸剤も6円前後であり、内服期間も短期間で内服管理は親が行うことが予想され、内服は実行可能と考えられる。
 投薬量については、整腸剤の菌種の表記が
  日本:製剤1錠/1g中に〇〇菌△mg含まれている
  海外:〇〇菌が10△CFU/dose(twice daily)
といったように記載に相違点があり、投薬量の換算は困難である。
 Group5は4種類の菌種が含まれているので、複数の菌種により今回の結果が出たのか、または複数の菌種のうちどれが効果を発揮したのかは不明である。

【③重要なアウトカムはコストや害を含めて全て評価されたか?】
 整腸剤の副作用に関しての評価はなかった。

【④使う者の経験の視点】
 胃腸炎に対して確固たる意味合いをもって整腸剤を処方していなかったと思しきところがある。しかし、整腸剤の菌種によっては、一般的に5日前後続く下痢の症状が、整腸剤を内服することで3日程度に期間を短縮できる可能性があると積極的に説明し処方することが出来そうだと考える。
 実臨床ではミヤBMを処方する傾向があり、今回の論文では酪酸菌は対象となっていなかったため、今後さらに検索する余地がありそう。

【⑤患者の考え・嗜好はどうなのか?】
 患児は小学校に通学中。内服期間も数日であり、通学中の昼分の内服程度であれば自己管理も可能そう。下痢というつらい症状を早く治したいという希望があり、処方しない根拠になるだけの根拠は無いのではと感じた。
 また「ヨーグルトも効果ありますか?」の問いに対しては、数多あるヨーグルト製品の中から、今回の論文でGroup2と5で使用された菌種を用いている下記のヨーグルトを参照に、お勧めできるかもしれない。(但し、菌株が異なるので、厳密に研究で使用された菌と同じかと言われると断言はできないと考えられる。)
ひろむ先生図⑥

※ビオフェルミン「錠」「散」について
 →剤型が異なると使用されている菌種が異なる別の薬になる。
  ただ、どちらも腸内細菌のバランスにおいて善玉菌である「ビフィズス菌」を優位にするという目的は一緒で、明確な使い分けの基準はない。

 

【開催日】
2017年1月11日(水)

肺炎の経過についての記述研究

―文献名―
Jolien Teepe, Berna DL Broekbuizen, Katberine Lens et al. Disease Course of Lower Respiratory Tract Infection With a Bacterial Cause. Ann Fam Med 2016; 14 (6): 534-539.

―要約―
目的:
 • 細菌感染に由来する咳と、それ以外の咳の経過は異なると思われるが、先行文献は乏しい。
 • プライマリ・ケアの現場では通常細菌検査は行われず、臨床的な判断のもとで加療が行われる。現場の医師は重症化する細菌性の咳を見落としたく
  ないがため、症状が強い場合に抗菌薬を処方することがある。しかし、こうした対応では副作用の発症、耐性菌の出現を招いてしまう。
 • 抗菌薬による治療を受けなかった場合の細菌性の下気道感染(Lower Respiratory Tract Infection: LRTI)の経過の経過が明らかになれば、
  初期対応として注意深く経過をみたり、患者の治療経過を予測することができるようになると考えられる。よって本研究では、成人における
  急性発症の咳について、細菌性LRTIの経過について調べた。

方法:
研究デザインと研究対象者

 • プライマリ・ケアの現場から取得された発現から28日以下の急性発症の咳を伴う成人2,061人のデータ(ヨーロッパの多施設研究GRACE-10 study
  の二次利用)を用いた。この研究では被験者らはアモキシシリン群とプラセボ群にランダムに割り付けられていたが、今回の解析には疾病の自然
  経過を反映しているプラセボ群(1,021名)のみを用いた。聴診により明らかに肺炎が疑われる患者(局所的なラ音・気管支音)、全身所見が強い
  患者(高熱、嘔吐、重度の下痢)、妊娠している患者、ペニシリンにアレルギーがある患者、前月に抗菌薬治療を受けている患者、免疫不全の
  患者は除外した。
評価項目
 • 症状)4段階のLikert scaleによって以下の症状を記録した:咳、痰、息切れ、喘鳴、鼻汁、発熱、共通、筋肉痛、頭痛、睡眠障害、具合の悪さ、
  日常生活や仕事の障害、意識障害、下痢。
 • 検体)初診日に痰と鼻咽頭の培養を取得した。細菌検査とウイルス学的検査を実施した。
 • 胸部X線)初診から7日以内、できれば3日以内に取得した。
細菌感染の定義
 • S. Pneumoniae, H. influenza, M. Pneumoniae, B. pertussiss, L. Pneumoniae が気道検体から検出された場合、あるいは血清学的に
  証明された場合に、細菌感染ありと定義した。
抗菌薬の使用
 • 医師の判断で、必要な場合は適切な抗菌薬投与が行われた。
アウトカム指標
 • 初診から「症状がよくない」と評価された期間、診療から2日目から4日目の重症度、疾病増悪による再診、初診から4週以内に入院が必要となった
  際の新しい症状および所見、寛解までの期間、日常的な活動や仕事に支障があった期間。

統計解析:
 • 重症度(線形回帰)、期間(Cox回帰)、再診(ロジスティック回帰)を解析。多変量解析の際は調整因子を以下のように定めた:年齢、喫煙、
  併存疾病(肺・心・糖尿病)、受診までの咳の期間。

結果:
 • 対象者は834名で、細菌性LRTIは162名(19%)に認められた。
 • 起炎菌はS. Pneumoniae, H. influenza(いずれも34.7%)が多かった。
 • 細菌性LRTIの患者には喫煙者が多く(33% vs 24%)、咳の期間が長く(9日 vs 8日)、初診時の患者の訴える重症度が高く(34 vs 30)、
  レントゲン上の所見が多かった(6% vs 3%)。
 • 62名(7%)の患者に、初診から10日以内に5日以上の抗菌薬使用が認められた。これらの患者は医師の評価する重症度が高かったが(36 vs 31)、
  年齢や併存疾患は非使用群と差はなかった。
 • 細菌性LRTI患者は2日目から4日目にかけて患者の訴える重症度が有意に高く、症状の増悪のため再診する割合も有意に高かった。
 • X線上肺炎像が認められる患者を除外しても、結果は変わらなかった。
 • 細菌性LRTI群と非細菌性LRTI群にそれぞれ1名ずつの入院があった。死亡例はなかった。
 • 細菌性LRTI群と非細菌性LRTI群では、「症状がよくない」状態について経過に有意な差は認めなかった。
 • 抗菌薬使用者を除外した解析では、症状増悪のための再診が細菌性LRTI群で多かった(23% vs 16%, OR=1.67, 95%CI 1.06-2.63, P=.029)。
 • S. Pneumonia 感染者を除外した解析と、H. influenza 感染者を除外した解析について、それぞれにおいて特に結果は変わらなかった。

考察:
結論

 • 急性の細菌性LTRIはそうでないものよりも症状経過がやや悪いことが明らかになったが、この相違の意義は乏しい。
限界
 • この研究では、非常に重篤で即時紹介された患者は含まれていないので、研究結果は重症患者へ一般化することはできない。
 • 細菌がcolonizationしていた事例も細菌性LRTIに分類された可能性がある。ただし、S. Pneumoniae, H. influenzaは健常者で最大10%ほど
  colonazationが認められる程度である。COPD患者に, H. influenza のcolonazationが多いが、この研究では5%しか該当しない。
実臨床への意義
 • 細菌性LRTIは非細菌性LRTIと経過は変わらない。継承例は細菌性だとしてもself-limitingであるため、watchful waitingの戦略が検討の
  余地がある。

【開催日】
 2016年12月21日(水)

【EBMの学び】慢性心不全と利尿薬

STEP1 臨床患者に即したPI(E)CO
【評価を行った日付】
 2016年11月9日
【臨床状況のサマリー】
 78歳男性、慢性心不全、慢性心房細動あり、イグザレルト10mg,フロセミド20mg,アムロジピン5mgを内服している。当院へ定期通院を切り替えたいという主訴で受診した。初回外来で、2週前から体重が3kg増え、足のむくみが増強し、倦怠感や起座呼吸があると訴えあり。胸部レントゲンでは両側胸水貯留がみられ、心エコーでは収縮能低下(EF38%)、中等度MR、中等度ARがみられた。うっ血性心不全と診断し、フロセミド40mgへ増量したが改善なく、予定入院とした。入院日までフロセミドを60mgへ増量して処方した。入院後はもとのフロセミド60mg内服にラシックス20mg静注を追加した。1週間で著明に下腿浮腫軽減し、体重減少がみられ、起座呼吸や倦怠感も消失した。脱水傾向も認めず、静注を中止しすべて内服へ切り替えようとした。フロセミド80mg内服を検討していたが、上級医のすすめで長時間作用型のループ利尿薬アゾセミド(商品名ダイアート)の存在を知った。アゾセミドは緩徐な利尿効果を示すため、内服直後の頻尿を解消する可能性があるということであった。過去の臨床試験で、フロセミド20mgに対してアゾセミド30mgが同じ尿量排泄を促すということであったので、予定しているフロセミド80mg内服を単純換算するとアゾセミド120mgとなる予定であった。果たして患者の予後やQOL改善に良い影響をもたらすのか疑問に思った。

 P;70台の心房細動を持つ慢性心不全患者.NYHA2度.
 I(E);ダイアート120mg投与
 C;フロセミド80mg投与
 O:QOL改善

STEP2 検索して見つけた文献の名前
【見つけた論文】
Superiority of Long-Acting to Short-Acting Loop Diuretics in the Treatment of Congestive Heart Failure– The J-MELODIC Study –. Masuyama T, Tsujino T, Origasa H, Yamamoto K, Akasaka T, Hirano Y, Ohte N, Daimon T, Nakatani S, Ito H. Circ J. 2012;76(4):833-42.

STEP3;論文の評価
STEP3-1.論文のPECOは患者のPECOと合致するか?

 P;年齢中間値71歳で,NYHA2〜3度の慢性心不全のある患者320名
 I(E);アゾセミド30〜60mg/day
 C;フロセミド20〜40mg/day
 O;2年間の心血管イベントによる死亡またはうっ血性心不全による緊急入院の率を下げる
→患者のPECOと (合致する ・ 多少異なるがOK ・ 大きく異なるため不適切)

STEP3-2 論文の研究デザインの評価;内的妥当性の評価
①研究方法がRCTになっているか?隠蔽化と盲検化はされているか?
 →ランダム割り付けが ( されている ・  されていない )
 →隠蔽化が( されている ・  されていない ・ 不明
 →盲検化が( されている ・ 一部されている ・  されていない ・記載なし )
実際のTableで介入群と対照群は同じような集団になっているか?
 →( なっている ・ なっていない ・ 記載なし )
 PROBE法が採用されている。
 ※PROBE法とはProspective, Randomized, Open-labeled Blinded Endpoints(前向きランダム化オープンラベル試験)の略。参加者(患者)と介入実施者(医師)の二者は、経過中、治療群と対照群のどちらに割り付けられたかを知っているが、Outcome評価者はそれを知らずにOutcomeを評価する方法である。(はじめてトライアルシートより(南郷医師のHPより))
② 解析方法はITT(intention to treat)か?
 →ITTが( されている ・ されていない )

STEP3-3 論文で見いだされた結果の評価
Outcomeについて、以下の値を確認する
【① 治療効果の有無; P値を確認する】
1)Primary outcome
 心血管イベントによる死亡またはうっ血性心不全による再入院
 介入群23/160,対照群34/160.p=0.03
2)Secondary outcome
 うっ血性心不全による再入院または心不全の治療薬変更が必要になった
 介入群26/160,対照群36/160.p=0.048
すべての死亡率
 介入群17/160,対照群17/160.p=0.99
3) Component events
 心血管イベントによる死亡
 介入群7/160,対照群11/160.p=0.36
 うっ血性心不全による緊急入院
 介入群19/160,対照群29/160.p=0.04
 心不全の治療薬変更が必要になったケース
 介入群7/160,対照群10/160.p=0.44

【②治療効果の大きさ;比の指標と差の指標を確認する】
●RR(あるいはHR・OR)を確認する
●ARRとNNTを計算する
 ※P値で有意差が出たものについて計算
1)Primary outcome
 心血管イベントによる死亡またはうっ血性心不全による再入院
 HR=0.55(95% CI, 0.32 to 0.95)
 ARR=CER—EER=34/160-23/160=11/160=0.069
 NNT=1/ARR=1/0.069=15
2)Secondary outcome
 うっ血性心不全による再入院または心不全の治療薬変更が必要になった
 HR=0.60(95% CI, 0.36 to 0.997)
 ARR=CER—EER=36/160-26/160=10/160=0.063
 NNT=1/ARR=1/0.063=16
3) Component events
 うっ血性心不全による緊急入院
 HR=0.53(95% CI, 0.30 to 0.96)
 ARR=CER—EER=29/160-19/160=10/160=0.063
 NNT=1/ARR=1/0.063=16

【③治療効果のゆらぎ;信頼区間を確認する】
 ②参照

STEP4 患者への適用
【①論文の患者と、目の前の患者が、結果が適用できないほど異なっていないか?】
 年齢、心不全の重症度は同等。
 第一にアゾセミドの初期投与量について。本研究では30〜60mg/dayであるが本症例では120mg/dayと異なる。しかし、Methodsの欄には心不全の症状が安定しないときにアゾセミドを120mg/dayまで増量したとあり、結果が適応できないほどの差はないと考える。
 第二に他の内服薬変更歴について。本研究の除外基準には「ランダム割付する前1ヶ月以内の心血管系内服薬変更歴」が組み込まれている。本症例は、ループ利尿薬変更前にACE阻害薬を導入したり、Ca拮抗薬を中止したりしている点で除外基準に当てはまる。しかし、この除外基準はループ利尿薬の差を正確に調べるための基準であることが予想され、本症例への適応に関して大きな問題はないと考える。

【②治療そのものは忠実に実行可能か?】
<最安価を採用した場合>
 アゾセミド(アゾセミド錠)60mg×2T=34.8円
 フロセミド(フロセミド錠)40mg×2T=12.6円
<当院の場合>
 アゾセミド(ダイアート錠)30mg×4T=83.6円
 フロセミド(フロセミド錠)40mg×2T=12.6円
 アゾセミドを使用することで薬価が3〜7倍となる。また添付文書上、ダイアートの最大投与量は60mg/dayであり、120mg/dayの使用は保険をきられる可能性がある。

【③重要なアウトカムはコストや害を含めて全て評価されたか?】
コストは上記の通り。副作用は下記。
黒岩先生図①

 1年以内の低K血症がアゾセミド群で多いように見えるが、P値は計算されていない。副作用の発生率については差がないのかどうかわからない。
アウトカムについて。本研究によって、「2年以内のうっ血性心不全による緊急入院or心血管イベントによる死亡」がアゾセミド群で低くなることが示された。しかし、フォローアップ期間は最低2年間と短く長期的な予後については不明である。また、心血管イベントによる\\\\死亡率のみでの比較や総死亡率のみでの比較では有意差は出ておらず、生命予後に関する結果も不明である。
また、本研究は参加者(患者)と介入実施者(医師)の盲検化のなされていないPROBE法によるRCTである。Primary endpointにも含まれる「うっ血性心不全による緊急入院」やSecondary endpointにある「心不全治療薬の変更」については、介入実施者が恣意的に操作することも可能である。したがって今回のアウトカムは低めに見積もった方が良い。
デメリットについて。副作用に関する両群の比較は十分になされておらず、アゾセミドを使用することで薬価は3〜7倍となる。また保険上、使用できる容量にも上限がありそうである。
以上の考察より、アゾセミド投与のメリットは本研究で著者が主張するほど大きくないが、デメリットである薬価が患者にとって些細な問題で、かつ保険上使用可能な容量であれば、アゾセミドを使用する価値はあると考える。

【④患者の考え・嗜好はどうなのか?】
理想的には薬価の問題を議論しながら、患者およびご家族と導入について検討する必要がある。しかし、高齢の非医療従事者に以上の考察を共有することは難しい。
そこで、患者の経済状況について推測する。患者はすでに引退したが、同敷地内に居住している長男が患者の妻とともに農家と酪農を営んでいる。医療費は長男からの支出となることが予想される。更別村の農家は作付面積が広く比較的裕福な家庭が多く、経済的な問題は少ないことが予想される。
現時点ではアゾセミド120mgを導入して退院しているが、今後は電解質や脱水状況を見ながら容量を調整する必要がある。アゾセミドが60mg以下になるなら、アゾセミドを継続しても良いと考える。アゾセミドが60mgを上回る状態が続くのであれば保険適用外になるため、一部かすべてをフロセミドに変更する。その際はもちろん本人およびご家族に説明し合意形成する必要がある。

【開催日】
2016年11月9日(水)

Afに対する抗凝固薬の有効性と安全性の比較

-文献名-
Torben Bjerregaard Larsen, Flemming Skjøth, Peter Brønnum Nielsen, Jette Nordstrøm Kjældgaard, Gregory Y H Lip.
Comparative effectiveness and safety of non-vitamin K antagonist oral anticoagulants and warfarin in patients with atrial fibrillation: propensity weighted nationwide cohort study. BMJ 2016; 353

-要約-
Objective
 抗凝固薬を初めて開始する心房細動の患者さんで、ダビガトラン(プラザキサ)、リバーロキサバン(イグザレルト)、アピキサバン(エリキュース)といったNOACsの有効性や安全性をワーファリンと比較した。

Design
 観察的全国コホート研究

Setting
 3つのデンマークの全国データベース、2011年8月から2015年10月

Participants
 61,678人の経口抗凝固薬を初めて処方された非弁膜症性心房細動の患者で、弁膜症性心房細動や静脈血栓症の既往がない患者。治療の選択はワーファリン(n=35,436、57%)、ダビガトラン 150mg (n=12,701、21%)、リバーロキサバン 20mg (n=7,129、12%)、アピキサバン 5mg (n=6,349、10%)に分けられた。

Main outcome measures
 虚血性脳梗塞、虚血性脳梗塞もしくは全身性塞栓症の合計、死亡、虚血性脳梗塞もしくは全身性塞栓症もしくは死亡の合計を有効性の結果と定義した。安全性の結果はあらゆる出血、脳内出血、大出血とした。

Results
 分析を虚血性脳梗塞に限定すると、NOACsはワーファリンと有意差はなかった。1年のフォローの中では、リバーロキサバンはワーファリンと比べて虚血性脳梗塞と全身性塞栓症の年間発症率の減少(それぞれ3.0%と3.3%)と関連していた。ハザード比は0.83(95%信頼区間は0.69-0.99)。ダビガトランとアピキサバン(それぞれ年間2.8%と4.9%)のハザード比はワーファリンと比べて有意差はなかった。年間死亡率はアピキサバン(5.2%)とダビガトラン(2.7%)(それぞれ0.65,0.56-0.75、0.63,0.48-0.82)とワーファリン(8.5%)と比較して有意に低かったが、リバーロキサバン(7.7%)は有意差がなかった。あらゆる出血の組み合わされたエンドポイントでは、アピキサバン(3.3%)とダビガトラン(2.4%)(0.62,0.51-0.74)とワーファリン(5.0%)と比較して有意に低かった。ワーファリンとリバーロキサバンの年間の出血率(5.3%)は同じであった。

Conclusion
 通常の診療では、すべてのNOACsがワーファリンと比べて安全性も有効性も代替できるものであると考える。虚血性脳梗塞についてはNOACsとワーファリンに有意差を認めなかった。死亡率、あらゆる出血、大出血に関してはワーファリンと比較して、アピキサバンとダビガトランが有意に低かった。

-考察とディスカッション-
 この文献を読んで、NOACsについての知識が増えて、これらの薬剤が自分の中でより身近に感じられるようになった。
 今後も新しい薬剤の処方は躊躇すると思われるが、その有効性と安全性を調べて、使いこなせるようにしていきたい。

【ディスカッション】
 1.みなさんはNOACsを新規に処方する際に躊躇することはありませんでしたか?
 (使いこなしている方は気持ちの変遷などがあれば教えてください。)
 2. 新しい薬剤の知識をどのようにして手に入れていますか?

【開催日】
 2016年11月2日(水)

COPDに対する抗コリン薬:噴霧吸入は死亡率が上がる?

-文献名-
Sonal Singh, Yoon K Loke, Paul L Enright, Curt D Furberg. Mortality associated with tiotropium mist inhaler in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ 2011;342:d3215

-要約-
目的
 COPDの症状改善を目的としたチオトロピウム噴霧吸入の、長期使用と死亡リスクの関連について系統的に分析

情報源
Medline, Embase, the pharmaceutical company clinical trials register, the US Food and Drug Administration website, and ClinicalTrials.gov for randomised controlled trials from inception to July 2010

研究の選択
 チオトロピウム噴霧吸入とプラセボをCOPDに対して用いたRCTであり、30日以上治療を行う死亡のデータが報告されている研究を選択。全死亡の相対リスクはa fixed effect meta-analysisを用いて見積もり、不均一性はI2 statisticで評価

結果
・inclusion:5つのRCT
・全体:チオトロピウム噴霧吸入は死亡率の有意な上昇と関連
 90/3686 v 47/2836; relative risk 1.52, 1.06 to 2.16; P=0.02; I2=0%
・容量別:5μg・10μgともに死亡リスク上昇と関連
 5µg(1.46,1.01 to 2.10; P=0.04; I2=0%)、10 µg (2.15, 1.03 to 4.51;P=0.04;I2=9%)
・感度分析:全体的な概算は実質的に変わりなかった。
  random effects modelを用いた場合(1.45, 1.02 to 2.07; P=0.04)
  1年間の追跡を行った3つの研究に限定した場合(1.50, 1.05 to 2.15)
  別の1つの研究データを追加した場合(1.42, 1.01 to 2.00)
・NNT(5㎍):124
 1年間の追跡を行った研究のコントロール群のイベント発生率を基準に考えると、124人の噴霧治療により年間1人の死亡が発生

結論
 このメタアナリシスは、規制機関による安全性の懸念を説明し、チオトロピウム噴霧吸入による52%の死亡リスク上昇を示唆する。

-考察とディスカッション-
DynaMedには下記の記載があります
———————————————————————————————-
inhaled long-acting anticholinergics
◆tiotropium 18 mcg via DPI (Spiriva HandiHaler) once daily – decreases exacerbations and improves quality of life in patients with COPD (GOLD Evidence A; level 1 [likely reliable] evidence)
◆tiotropium via soft mist inhaler (Spiriva Respimat) may increase risk of death in patients with COPD (level 2 [mid-level] evidence) while tiotropium via HandiHaler dry powder inhaler does not appear to increase risk for cardiovascular events or mortality in patients with COPD(level 2 [mid-level] evidence)
———————————————————————————————-
各サイトでは、噴霧吸入は使用していますか?
すでに上記のような研究結果をもとに診療の工夫をしていることはありますか?

【開催日】
 2016年10月19日(水)

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