腰痛に対する多職種による生物心理社会的なリハビリテーション

―文献名―

Steven J Kamper, et al. Multidisciplinary biopsychosocial rehabilitation for chronic low back pain: Cochrane systematic review and meta-analysis. BMJ 2015;350:h444 doi: 10.1136/bmj.h444 (Published 18 February 2015)

―要約―
【目的】
 慢性腰痛の患者に対する多職種による生物心理社会的なリハビリテーションの長期的な効果を評価するため

【デザイン】
 システマチックレビューとメタ解析

【データ源】
 Electronic searches of Cochrane Back Review Group Trials Register, CENTRAL, Medline, Embase, PsycINFO, and CINAHL databases up to February 2014, supplemented by hand searching of reference lists and forward citation tracking of included trials.

【研究選択基準】
・3ヶ月以上の腰痛を患う患者
・多職種によるリハビリテーション:
身体的な側面と心理的な側面か社会的、仕事に関した側面の一つ、あるいは両方に対するリハビリ。少なくとも2つの異なった専門的なバックグラウンドをもつヘルスケアの専門家が提供。非多職種の介入との比較。

【結果】
 41の研究がインクルージョンされ、そこにはトータルで6,858人の患者が含まれていた。しばしば以前の治療では症状が改善せず、平均の疼痛期間が1年以上であった。16の研究では、中等度の質のエビデンスであった。多職種のリハビリテーションによって、通常のケアと比較して、疼痛(標準化平均値差 0.21、95%信頼区間 0.04~0.37 ;10ポイントの疼痛スケールにおいて0.5ポイントに相当)と障害(標準化平均値差 0.23、95%信頼区間 0.06~0.40 ;24ポイントのローランドモリスインデックスにおいて1.5ポイントに相当)を減少させた。19の研究では、低い質のエビデンスであった。多職種のリハビリテーションによって、身体面の治療と比較して、疼痛(標準化平均値差 0.51、95%信頼区間 −0.01~1.04)と障害(標準化平均値差 0.68、95%信頼区間 0.16~1.19)を減少させたが、統計学的に重大な不均質な横断研究があった。8個の研究では、中等度の質のエビデンスであった。多職種のリハビリテーションによって、身体面の治療と比較して、介入後1年間の仕事復帰率を改善させた(オッズ比1.87、95%信頼区間 1.39~2.53)。7個の研究では、中等度の質のエビデンスであった。多職種のリハビリテーションによって、通常のケアと比較して、仕事復帰率を改善させなかった(オッズ比1.04、95%信頼区間 0.73~1.47)。外科的処置との比較をした2個の研究では、アウトカムに違いはほとんどなく、外科的手術に伴う有害事象のリスクが上昇した。

【結論】
 多職種による生物心理社会的なリハビリテーションの介入は慢性腰痛を持つ人々の疼痛と障害を減らすのに、通常のケア(中等度の質のエビデンス)、身体面の治療(低い質のエビデンス)よりも効果的であった。仕事に関するアウトカムは、多職種によるリハビリテーションは身体面の治療よりも効果的だが、通常のケアよりも効果的でないようだ。

【開催日】
2015年3月18日(水)

医療アシスタントによる健康に関するコーチングは低所得層の患者の糖尿病,高血圧,高脂血症を改善する(ランダム化比較試験)

―文献名―

Rachel Willard-Grace, et al. Health Coaching by Medical Assistants to Improve Control of Diabetes, Hypertension, and Hyperlipidemia in Low-Income Patients: A Randomized Controlled Trial.Ann Fam Med. 2015;13:130-138.

―要約―
【目的】
 医療職ではない医療アシスタントによる健康に関するコーチングがもし効果的ならば、プライマリ・ケアの現場におけるセルフケア支援の実現可能なモデルとなり得る。著者らは医療アシスタントがクリニック内で行う健康に関するコーチングが、通常のケアと比較して心血管系または代謝系のリスク因子の改善に寄与するかどうかを調査した。

【方法】
 カリフォルニア州サンフランシスコの2つのセーフティネットプライマリ・ケアクリニックにおいて、441の患者による12か月間のランダム化比較試験を行った。患者は、40時間のトレーニングを受け修了証書を持つ医療アシスタントによる健康に関するコーチングを受ける群:Table 1と、通常ケア(通常の医師の診察、糖尿病教育担当者、管理栄養士によるケア、慢性疾患認定看護師など)を受ける群に分けられた。
 調査開始時に十分コントロールされていなかったヘモグロビンA1c、収縮期血圧、LDLコレステロール値が12か月後に少なくとも3つのうち1つが目標値を達成したか、という複合アウトカムを主要アウトカムとして設定した。データはカイ2乗検定と線形回帰モデルにて解析した。

【結果】
 コーチングをうけたグループは、コントロール群と比較してより多くの患者が主要アウトカムを達成した(46.4% vs 34.3%, p=0.02)。全ての数値が目標値を達成したという2次複合アウトカムも同様の結果であった(34.0% vs 24.7%, p=0.05)。ヘモグロビンA1cは約2倍の目標達成率であった(48.6% vs 27.6%, p=0.01)。規模の大きいクリニックでは、コーチングを受けた患者はLDLの目標達成率が高かった(41.8% vs 25.4%, p=0.04)。収縮期血圧の目標値を達成した患者は、2グループ間では違いは認められなかった。

【結論】
 クリニック内の健康に関するコーチとして務める医療アシスタントは、通常のケアと比較してヘモグロビンA1c、LDLコレステロールを改善するが、血圧は改善しなかった。この結果は患者の臨床的な状態と介入、遂行における背景的な側面のもつ関係性への理解が必要なことを強調している。

【開催日】
2015年3月11日(水)

最適な収縮期血圧目標

―文献名―
Xu W, Goldberg SI, Shubina M, Turchin A.Optimal systolic blood pressure target, time to intensification, and time to follow-up in treatment of hypertension:population based retrospective cohort study.BMJ. 2015 Feb 5;350

―要約―
【目的】
新しい降圧薬を加えるか、既に処方されている薬の量を増やすかについて、最適な収縮期血圧目標を調査することと、治療強化やフォローアップの遅れと心血管イベントあるいは死亡のリスクとの間の関係を明らかにすること。

【デザイン】
後ろ向きコホート研究。

【セッティング】
英国のプライマリ・ケア診療所で、1986年から2010年まで。

【参加者】
健康改善ネットワークの全国のプライマリ・ケア研究データベースから88,756人の高血圧の成人患者。

【主なアウトカム評価】
異なる治療戦略の患者における急性冠動脈疾患イベントの発症率とあらゆる原因の死亡率。治療戦略は10年間の治療評価期間における収縮期の治療強化閾値、強化までに要した時間、フォローアップまでの時間で定義された。年齢、性別、喫煙の状況、社会経済的貧困、糖尿病の病歴、冠動脈疾患もしくは慢性腎臓病、チャールソンの併存疾患指数、BMI、薬物所持率、そして、ベースラインの血圧で調整した。

【結果】
治療戦略評価期間の後、フォローアップの中央値は37.4か月で、その間に9,985人(11.3%)が急性冠動脈イベントを起こしたか、あるいは死亡した。治療強化の閾値が130-150mmHgではアウトカムのリスクに違いはなかった。150mmHg以上では、リスクの増加と関連していた(ハザード比1.21、95%CI 1.13-1.3、160mmHg以上ではp<0.001)。アウトカムのリスクは治療強化までの時間が短い(0-1.4か月)と長いときと比べて1/5になった(ハザード比1.12、95%CI 1.05-1.20、1.4-4.7か月ではp=0.09)。降圧療法を強化して以降、最初に患者が受診するまでの期間が2.7か月を超えると、リスクが上昇することもわかった(ハザード比1.18、 95%CI 1.11-1.25、p<0.001)。 【結論】 心血管イベント・全死亡リスク上昇には、収縮期血圧が150mmHgを超えていること、降圧療法の強化が1.4か月以上遅れること、治療強化後のフォローアップが2.7か月以上遅れることが関連することがわかった。この結果は高血圧の治療でタイムリーな医学管理とフォローアップの重要性を支持するものである。 【開催日】 2015年3月11日(水)

プライマリ・ケアにおける抗うつ薬の効果と耐用性のシステマティック・レビュー

―文献名―
Klaus Linde: Efficacy and Acceptability of Pharmacological Treatments for Depressive Disorders in Primary Care: Systematic Review and Network Meta-Analysis.Annals of Family Medicine  2015 vol. 13 no. 1 69-79

―要約―
目的:
 この研究の目的は、プライマリ・ケアのセッティングにおいて、どの抗うつ薬がプラセボと比較してより効果的なのかを調査し、抗うつ薬の種類によってその効果と耐用性の違いがあるのかを究明することである。

方法:
 私たちは2013年12月までに発表されたMEDLINE, Embase, Cochrane Central of Controlled Trials (CENTRAL), PsycINFOの文献を調査し、プライマリ・ケア医による成人のうつ病治療の無作為試験についてレビューを行った。直接的、あるいは間接的なエビデンスを結合しながら、従来のpairwiseメタ分析と、ネットワークメタ分析の両方を実施した。一次アウトカムは治療への反応(うつ病スケールで50%以上の改善、あるいは症状のスケールでの改善)と、副作用による研究の中断とした。

結果:
 計66個の研究(15161人)がinclusionされた(Figure 1)。ネットワークメタ分析では、TCAs、SSRIs、SNRI(セロトニン-ノルアドレナリン再取込阻害薬)、SARI(低用量セロトニンアゴニスト+再取込阻害薬=トラゾドン、レスリン®)、オトギリソウ抽出物(セント・ジョーンズ・ワート)がプラセボと比較して有意な効果があることが分かった(Table 3)(odds ratio 1.69~2.03)。これらの薬剤間での統計上の差異は見出せなかった。rMAO-As(モノアミン酸化酵素阻害薬)とオトギリソウ抽出物は、副作用による中断という点では、TCAs、SSRIs、SNRI、NRI(ノルアドレナリン再取込阻害薬)、NaSSAs(ノルアドレナリン作動性-特異的セロトニン作動制約)に比べて中断は少なかった(Table 4)。

結論:
 TCAsとSSRIsは他の薬剤に比べて、プライマリ・ケアのセッティングでの効果という点で確固たるエビデンスがある。しかし、プラセボと比較した効果の大きさでは比較的小さい。他の薬剤(オトギリソウ抽出物、rMAO-As、SNRI、NRI、NaSSAs、SARI)はいくつか良好な結果があるものの、それらを明確に推奨するには最近のエビデンスでは限界がある。
 限界として、出版バイアス、ネットワークアナリシスによる限界、プライマリ・ケアのセッティングでの文献が少ないこと、効果判定が平均6週間であることから、プライマリ・ケアのセッティングにおける長期的な効果と耐用性については今後さらなる研究が必要。

【開催日】
2015年3月4日(水)

市中肺炎におけるプレドニゾンの追加治療は有効か?

―文献名―

①Djillali Annane: Corticosteroids and pneumonia: time to change practice.The Lancet,Published online: January 18, 2015
②Claudine Angela Blum: Adjunct prednisone therapy for patients with community-acquired pneumonia: a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled trial.The Lancet,January 18, 2015

―要約―
Background:
 全身性ステロイドを市中肺炎の治療に追加することについては、未だ議論がある。今回入院市中肺炎の患者に対し、短期ステロイド治療が臨床的安定に至るまでの期間を短縮するかの検討を行った。

Methods:
 この二重盲検多施設共同ランダム化プラセボ対照試験において、18歳以上の支柱肺炎の患者をスイスの7つの3次医業機関から登録した。患者はランダムに1:1にプレドニゾン 50mg/日あるいはプラセボを7日間投与する群に割り付けられた。プライマリエンドポイントとして臨床的な安定(バイタルサインが少なくとも24時間安定)までの日数とした。

Findings:
 2009年12月1日から2014年5月21日までの間、2911人の患者が登録され、785人がランダム化された。392人がプレドニゾン群、393人がプラセボ群。臨床的に安定するまでの期間の中央値はプレドニゾン群の方が有意にに短かった(プレドニゾン群 3.0 days, IQR 2.5-3.4、プラセボ群 4.4 days, 4.0-5.0; hazard ratio[HR] 1.33, 95% CI 1.15-1.50, p<0.0001)(Table 2)。  30日目までの肺炎関連合併症については両群とも差はみられなかった(11 [3%] in the prednisone group and 22 [6%] in the placebo group; odds ratio [OR] 0.49 [95% CI 0.23-1.02]; p=0.056)(Table 3)。  プレドニゾン群はインスリンを要する入院中の高血糖の頻度が有意に多かった(プレドニゾン群 76 [19%] vs 43 [11%]; OR 1.96, 95% CI 1.31-2.93, p=0.0010)(Table 3)。  ステイロイドによるその他の有害事象はまれであり、両群とも差はみられなかった(Table 3)。 Limitation:  入院患者としたため、外来患者全体への一般化の限界あり。  死亡数が少ないので検討するにはパワー不足。  Primary endpointにおいていくつかのパラメーターが存在していること。しかし、筆者としては、これは現実に即していると考えている。 Interpretation:  入院を要する市中肺炎の患者に対する7日間のプレドニゾン治療は合併症を増加させることなく臨床的な安定までの期間を短縮する。この結果は患者の利益、医療の費用、効率性からは切実なものであると言える。 【開催日】 2015年3月4日(水)

診察での抵抗、両価性、葛藤への対応

序章
 私たちセラピストやクライエントがセラピーの成功を妨げる、通常は抵抗と考えられている者の価値に気付くことが基本にある。セラピーにおける葛藤、両価性、抵抗、そして様々な「雑草」に対処する態度はひとつの芸術となり得る。他のアプローチに無反応であったり抵抗したりする人に対してインクルーシブセラピーは有効で、特に「境界性人格障害」と診断された人に対して有効である。
 1990年代に多くのセラピストが解決志向アプローチに変更した後、クライエントの多くは恩恵を得るものの、何人かはこの技法にイライラし、セッションが進むにつれて離れていく経験をした。セラピストは何が役に立ったか、何が上手くいったかを尋ね続けることで憤慨させたり、不快にさせたりすることに対して無頓着で、この現象を「解決強制」と名付けて専門誌に発表された。
 物事を変化させようと可能性に踏み込むときでも、私たちは痛みや苦しみに直面しなければならない。複雑なことに直面する最もよいスタンスは、問題を承認すること、そして同時に変化への可能性を認めることである。

3Dイメージとインクルーシブセルフ
ピアジェによれば、初め乳児は他人を含む世界と自分自身を区別していない。社会適応が進む過程で、私たちは他人と自分自身を区別し始める。徐々に、生の体験からアイデンティティの感覚を構成し始める。そしてたいてい私たちは、自分で構成するアイデンティティのストーリーのなかに生の体験の多くを包含するが、すべてを包含するわけではなく、体験のいくらかの側面は、主たるストーリーにあわないため除外される。また、私たちが恥じているために除外される側面や、何らかのトラウマに対する反応として分離される部分もある。このプロセスを「3Dモデル」と呼び、私たちが分離したり(dissociate)、自分のものではないとしたり(disown)、価値をさげたり(disvalue)すること。私たちは自分のある側面しか同一視せず、残りは同一視から除外されるのです。
―文献名―
ビル・オハンロン著・宮田敬一訳:インクルーシブセラピー 敬意に満ちた態度でクライエントの抵抗を解消する26の方法,2007

―要約―
序章
 私たちセラピストやクライエントがセラピーの成功を妨げる、通常は抵抗と考えられている者の価値に気付くことが基本にある。セラピーにおける葛藤、両価性、抵抗、そして様々な「雑草」に対処する態度はひとつの芸術となり得る。他のアプローチに無反応であったり抵抗したりする人に対してインクルーシブセラピーは有効で、特に「境界性人格障害」と診断された人に対して有効である。
 1990年代に多くのセラピストが解決志向アプローチに変更した後、クライエントの多くは恩恵を得るものの、何人かはこの技法にイライラし、セッションが進むにつれて離れていく経験をした。セラピストは何が役に立ったか、何が上手くいったかを尋ね続けることで憤慨させたり、不快にさせたりすることに対して無頓着で、この現象を「解決強制」と名付けて専門誌に発表された。
 物事を変化させようと可能性に踏み込むときでも、私たちは痛みや苦しみに直面しなければならない。複雑なことに直面する最もよいスタンスは、問題を承認すること、そして同時に変化への可能性を認めることである。

3Dイメージとインクルーシブセルフ
ピアジェによれば、初め乳児は他人を含む世界と自分自身を区別していない。社会適応が進む過程で、私たちは他人と自分自身を区別し始める。徐々に、生の体験からアイデンティティの感覚を構成し始める。そしてたいてい私たちは、自分で構成するアイデンティティのストーリーのなかに生の体験の多くを包含するが、すべてを包含するわけではなく、体験のいくらかの側面は、主たるストーリーにあわないため除外される。また、私たちが恥じているために除外される側面や、何らかのトラウマに対する反応として分離される部分もある。このプロセスを「3Dモデル」と呼び、私たちが分離したり(dissociate)、自分のものではないとしたり(disown)、価値をさげたり(disvalue)すること。私たちは自分のある側面しか同一視せず、残りは同一視から除外されるのです。
 そこで、初めは360度あった自己が、例えば267度の自己になってしまうが、そのストーリーの周囲には常に本来の生の体験の材料があり、そこには私たちがまだ発展させていない潜在力が含まれている。これを「インクルーシブセルフ」と呼ぶ。(図:イングル―ジブセルフ 表示)
 このインクルーシブセルフは、私たちがインクルーシブセラピーを用いるときに、豊饒さを引き出す源泉となる。その人が体験の中で、分離したり、価値を下げたり、自分のものでないとしているいかなるものに対しても、招待し、許しを与え、含んでいくことで、インクルーシブセルフを扱うようデザインされている。

インクルーシブセラピーの3つの基礎的方法
1.クライエントの体験などへの許可やそうしなくてもよいという許可を与える。(許可法)
2.一見正反対や矛盾に見えるものが葛藤なく共存する可能性を示す。
3.過去にそうだった、現在そうである、将来そうなるだろうと話すときに、正反対の可能性も考慮に入れる。
 26の方法はこれら3つから応用的な方法やテクニックを選び出したもの。
許可法
許容は、インクルーシブセラピーの最初の基礎的な方法で、ほとんどのセラピストはおそらくすでにこの方法を用いている。なぜなら感じてはならない感情や考えてはならない考えやしてはならない行動のために行き詰まり、セラピーにやってくるのだから。
1.1 許可を与える
クライエントが持つかもしれない、ありとあらゆる体験や感情や思考や空想に対して許可を与えてください。感覚、不随意的な思考、感情、イメージなどの無意識な体験は大丈夫だと、クライエントに知らせてください。もちろん、それらと「計画」および「行動」(すべてが大丈夫とは限らない)との区別には常に注意する。
用例
クライエント : 私は時々、夫と子供から逃げ出すことを空想するんですよ。
セラピスト : 他の女性たちが同じことを言うのを聞いたことがありますよ。そういった場合、結婚生活や家庭生活のいくつかの局面と失望を結び付けすぎることからくることが多いんですが。それがあなたにもあてはまるかどうかはわかりませんが、しかしそのような考えをもつのはいいと思います。もちろん離別を「企てる」ことと実際にそうすることは、全く別物ですよ。

【開催日】
2015年1月21日(水)

企画実現への攻撃と処方箋

―文献名―
ジョン・P・コッター,ローン・A・ホワイトヘッド,庭田よう子 訳.「ハーバード流企画実現力」.2011.日経BP社.221p.

―要約―
優れたアイディアを守る、通説と一件相反する5つの原則
i. 攻撃させることによって周囲の関心を引き付ける
 反対意見を閉出すと、企画を進行させるために十分な共感や賛同が聴衆の中で高まるだけの注意を集められないため。
ii. 簡潔明瞭で良識にあふれた対応をする
 膨大なデータや論理を駆使して反対者をやり込めない。聴衆の関心が離れてしまう。
iii. 敬意を持って接する姿勢を聴衆に示す
 聴衆から反感を買わないようにすることが重要。
iv. 少数の攻撃者よりも聴衆の反応を観察する
 攻撃に対峙する際、真の問題の核心となるのは大多数の人々の反応である。
v. 事前に準備する
 企画に対する攻撃の基本戦略は「混乱」、「遅延」、「嘲り」、「不安をあおる」である。24の攻撃とその対応について準備しておく。

<24の攻撃とその対応(抜粋)>
1.「これまでうまくやってきたのに、どうして変える必要があるのか?」

 対応:確かにそうかもしれないが、状況に適応しなかった者がやがて滅びた例を誰もが知っているはずだ。

4.「わたしたちが失敗したと行っているも同然だ!」
 対応:あなたがたは必要なツールもない状態で、本当に素晴らしい仕事をしていると言っているのだ。(どちらか一方が正しいではなく、どちらも正しいという方向に導く)

6.「これについてはどうか、あれについては?これは、あれは・・・・・・・・?」
 対応:よいアイデアでも、それが新しいアイデアであれば、確実に答えられない多くの疑問が提起されるものだ。(確実に答えられない質問を反対者に多く語らせず、やんわり遮る)

7.「その提案は度を超している」「十分とは言えない」
 対応:これからこのアイデアより正しい方向へ踏み出せるし、これ以上遅れることなく進めるはずだ。(方向性の一致を利用して遅延の企てに対抗する)

10.中核をなす価値観を捨て去ろうとしている」
 対応:このプランは、わたしたちの伝統的価値観を守るために絶対的に必要なものだ。

14.「どうだ!これは否定できまい!(提案者が知らない厄介ごと)」
 対応:その重要性は誰も否定できない。確かにわたしたちはその問題を詳しく調べていない。だが、これまで見つけた潜在的な問題は容易に解決できた。それを踏まえると、新たな問題も、これまでの問題と同様に対処可能という自信がある。(その場で答えようとするのは得策ではない)

16.「かつて試したことがあるが、うまくいかなかった」
 対応:過去はそうだったかもしれない。しかし、状況は変化すると、わたしたちの提案はその内容とまったく同じものでもない。(シンプルに対応すべし、違う点を詳細に示す必要はない、新たな反撃を生む)

18.「よいアイデアだが、今はふさわしいタイミングではない」
 対応:絶好のタイミングというのは、気分が盛り上がり、何かを実現するために全力を注ぎたいと大勢の人が思うときであり、まさに今がそのときだ。

20.「ここではうまくいくはずがない。わたしたちはほかとはちがうのだから!」
 対応:わたしたちはみんなちがうが、一方でまったく同じところもある。

―考察とディスカッション―
 本書は反対者を駆逐する方法ではなく、反対者がいるなかで、その他大勢をどのように巻き込んでいくかについての方法を説いている。ともすれば反対者を論理でねじ伏せるような対応がとられがちだが、本書は企画実現のための効果的な立ち振る舞いとはどのようなものなのかを考える一つの視点を提供している。

<ディスカッションポイント>
皆さんは反対意見にあった際にどのような行動をとっていることが多いだろうか?
そしてその行動は果たして効果的に機能しているのだろうか?

【開催日】
2015年1月21日(水)

Healthを尋ねる

―文献名―
Marian R, Stuart PhD and Joseph A, Lieberman Ⅲ MD, MPH.The Fifteen Minute Hour: Therapeutic Talk in Primary Care 4th  Edition.Chapter 8 Accenting the Positive: Putting an Affirmative Spin on the BATHE Technique.

―要約―
新しいBATHE法を理解するために、以下に例を示す。

 Eさんは、63歳の女性で、糖尿病、高血圧、軽度うつ、不眠があり、定期診察を受け、処方内容を調整することになっていた。彼女の日常の症状を聴取し、処方内容を見直した後で、Dr.Sは、「前回の診察から今日までで、最も良かったことはどんなことでしたか?」と尋ねた。Eさんは、怪訝そうにDr.Sを見つめたが、「何もいいことなんて無かったわ」と答えた。「OK、素晴らしいことは無かったかもしれませんね。ただこの数日で、ちょっと良いことはなかったですか?」するとEさんは笑顔を浮かべて、「そういえば…、孫から手紙が届いたわ。彼女は8歳なの。」「なるほど!それはどうして起こったんでしょうね。」とDr.Sが尋ねたところ「そうね、きっとあの子は私に連絡を取りたかったのよ。あの子は私のことが好きだから。」Eさんに笑顔が戻って来た。Dr.Sは、そのことに関して最も感謝していることを聞きたいと思った。すると、「私は、あの子のことを愛しています。とてもかわいい子なんです。あの子がいてくれることに感謝しています。息子夫婦がもっと近くに住んでくれればと思うけど…」とEさんは答えた。Dr.Sはどうやったら、Eさんがお孫さんとうまく関われるようになるかを尋ねた。「やっぱり、手紙と折々の電話、訪ねてみることかしら。」Dr.Sは「それは素晴らしいプランですね。こうしたことを話してくれて感謝しています」と答えた。そして、「それと、定期的な運動もしましょうね。最低30分程度のウォーキングがおすすめです。また、お孫さんと会う時には、何か体を動かすような遊びをされたらいいですね。」と付け加えた。Eさんは診察室を出る際、微笑をたたえていた。

長先生図5

 これまでのBATHE法(左表)は有効性がありながらも臨床家にとって、毎回持ち出す必要がないと考えられる嫌いがあった。そこで、毎回の診察室でもルーチンで用いられる新しい枠組み(ポジティブBATHE法(右表))が編み出された。
 ポジティブ心理学は、通常の人間の強さや善行に関する科学研究である。患者の人生におけるポジティブな側面に焦点を当てることが重要とされる。その焦点の当て方、エビデンスに基づいた枠組みとして、ポジティブBATHE法がある。ポジティブな感情つまり、感激、決心、ひらめきといったものは、健康や寿命に影響する。ポジティブな考え方は、免疫力を高め、抑うつ気分を振り払い、身体的、精神的健康を高めてくれる。ポジティブな感情な人は、ネガティブな感情の人よりも健康的な取り組みを行なうことが多い。
 感謝に関しての質問は、うまくいっていることに焦点を当てる技法である。うまくいっていることを発見し(Discover)、起こりえる最良のことを想像して(Dream)、戦略を立て(Design)、そしてポジティブな結果をもたらす(Deliver)。
 また、ポジティブBATHE法は治療手段の一つで、頻回受診の患者や、慢性疾患のある患者に推奨され、人生におけるポジティブな側面に焦点を当てる様に設計されている。BはBestであり、「今週(または、前回の診察から今日までで)最高に良いことがありましたか?」と尋ねる。AはAccountであり、「この良いことをどう説明しますか?」、TはThankfulnessを表し、「この良いことのどんなところに一番感謝しますか?」、HはHappenであり、「より頻回にこの良いことが起こるにはどうすればいいですか」、EはEmpathy, Empowermentを表し、「それは素晴らしい、あなたならできますよ」となる。
 人生において、よりポジティブな面に目を向けさせる一つの手法としては、毎日、3つよかったことを書き出すというものがある。感謝の気持ちはより健康状態を高める。患者は、自分自身の個性の長所を自己認識し、その長所を活かして行くように勧められる。
 赦し、つまり、過去の憤怒や妬みなどをやり過ごすことは、精神的、身体的に健康状態を改善する。患者は赦しの心境に達するように、プロセスを理解した方がよい。つまり、自分を傷つける者を特定し、想像の中で、彼と向き合い、なぜ不愉快な事が起こったかを理解し、相手の立場、自分の立場からそれぞれ対話させ、赦す決意をし、自身の苦悩・痛みをやり過ごすことができれば、人は赦しの境地に至り、精神的、身体的反応は変化して行く。個人の苦悩・痛みのポジティブな面とは、赦しの過程を導いてくれるということである。
 知足とは、様々な問題を解決しようとする中で常につきまとうストレスを軽減する手法として知られている。常に自身の振舞いや考え方の型を変化させて行く事の難しさは承知の通りである。しかし、ネガティブな結果はいつでも学びの糧となる。現実的楽観主義は、ポジティブな結果に至らしめ、健康の質を改善する。最後に、医師は希望を常に処方するべきである。

【開催日】
2015年1月14日(水)

過去の食環境・経験が現在・未来の食生活へ及ぼす影響

―文献名―
小林 敬子 (日本女子体育大学).去の食に関する環境および体験が 現在および未来の食生活に及ぼす影響.校保健研究 45 ;2003;200-217

―要約―
目的:
過去の食に関する環境および体験が現在の食習慣や未来の家庭的食事に対する意識に与える影響を明らかにする

セッティング:
2002年10-11月
東京都内の私立女子大学

対象:
女子大生(2・3年生) 187名

方法:
 集合調査票を用い、上記対象者に調査用紙に無記名で解答を依頼。
 質問は、過去における食に関する環境および体験、現在における食に関する習慣、未来における家庭的食事に対する意識について、それぞれ16項目・10項目・5項目を実施。
 その結果を用い、上記3つの因果関係を用いて検証した。

結果:
 食に関する要因の因子分析結果を考慮して要因ごとに抽出された因子を説明する質問項目を因子ごとに合成し、過去における食に関する環境及び体験を説明する5項目、現在における食に関する習慣を説明する3項目、未来における家庭的食事に対する意識を説明する2項目の計10項目を用いて分析を行った。その結果採択された因果構造モデルにおいて、過去における食に関する環境及び体験から、現在における食に関する習慣へのパス係数は0.66、現在における食に関する習慣から、未来における家庭的食事に対する意識へのパス係数は0.92と中等度から高い値を示した。
図1:仮説モデル
 150115_1

図2:因果構造モデル 表示
150115_2

結論:
過去における食に関する環境および体験は現在の食に関する習慣に影響を及ぼし、現在の食に関する習慣は現在および未来における家庭的食事に対する意識に影響 を及ぼす。
また過去における食に関する環境および体験は現在および未来における家庭的食事に対する意識には直接的ではなく、現在の食に関する習慣 を介在 し、間接的に影響 している。

【開催日】
2015年1月14日(水)

ペアレント・トレーニング

―文献名―
「むずかしい子を育てるペアレント・トレーニング」 野口啓示著 明石書店

―要約―
はじめに
 しつけとは、親の愛情を子どもに伝えるための方法である。しかし、しつけには子どもの成長に悪い影響を与えるものと、良い影響を与えるものの2つがあることが分かってきた。子どもに悪い影響が出てしまうしつけは、多くの場合叩いたり、怒鳴ったりといった罰を伴うしつけである。これらは、子どもにしてはいけないことを伝えるというより、親は怖いといった恐怖心を伝えてしまう。それにより子どもの成長に一番大事な親子関係にダメージを与えてしまう。親子関係が悪くなると、親と子のコミュニケーションが悪化し、その結果子どもの問題行動は増加する。その状況は親の苛立ちを強め、罰を伴うしつけを生み出しやすくなる。それによって親子関係はさらに悪化するというバッドサイクルに陥ってしまう。このサイクルが始まると、抜け出すのはなかなか難しく、抜け出すための方法が必要になる。
 この本では、アメリカで生まれたペアレント・トレーニングを日本流にアレンジした10の方法を紹介する。

1.わかりやすく伝えよう [具体的な言い方のすすめ]
 例えば、「今からレストランに行くから、ちゃんとしているのよ」「今日はいい子にしていてね」という表現はどうか。これで子どもが親のしてもらいたいことを理解するのは難しい。「レストランでは走り回らないで、座って食べる」というように、具体的にしてほしい行動を伝えることが重要である。

2.ほめることで悪い面をやっつけよう [良い面を増やして悪い面を減らす方法]
 人はほめられると嬉しくなる。その体験は行動を維持するのに大きな力を発揮する。ほめ方のコツは、①ほめ言葉をかける、②何が良いかを伝える、③理由を説明する、④もう一度ほめ言葉をかける、というステップを意識すると良い。

3.がんばり表を使って子どものやる気を引き出そう
 ほめることに役立つのが「がんばり表」である。具体的な行動を取り上げ、目標をはっきりさせる。それができたら表に○をつける。①子どもが喜んでする行動、②ときどきする行動、③ほとんどしない行動、の3つに分ける。がんばり表を作るポイントは、①子どもが喜んでする行動をうまく取り入れることである。子どもが達成しやすい目標をあげて成功体験をさせて、本当にできてほしい②や③の行動を少しずつ達成させていく。

4.前もってのお約束 [ころばぬ先の練習]
 何かが起こる前に、前もって子どもに言ってきかせる方法を紹介する。ここでは4つのステップで、子どもと約束をする。①子どもにしてほしいことを説明する、②理由を説明する、③練習、④お約束、である。練習をすることで、ただ口で説明するより子どもが教えられたことをするようになる。また、親がしてほしいことを子どもが理解しているのかを確認することができる。

5.まずは落ち着こう [不安感を減らして落ち着きを取り戻すプラン]
 親の苛立ちが強くストレスの高い状況から抜け出すため、落ち着きを取り戻すヒントを紹介する。叩いたり、怒鳴ったりするような状況の時は、我を忘れた状態になっていることが多い。それは状況にうまく対処できないのではないかという不安感が強い時に起こる。そのため少しでも不安感を下げるためのリラックス方法を考えておく。ここでは3つのステップを使う。
①状況の整理   「次に(       )が起こったとき」
②体の変化を察知「私が(       )を感じたら」
③リラックス     「私は(       )をして落ち着きを取り戻します」
この( )を埋めて、落ち着きを取り戻すプランを作成する。

6.行動を分析しよう
 子どもの問題行動を分析する。ポイントは、子どもの問題行動が起こった前後の状況を観察し、何が起こっていたのかを見ることである。子どもの行動が起こる前の状況はどんな状況だったのか、どんな刺激があったのか。それによってどんな行動に至ったのか。行動の後にどんな結果があったのか。結果によって行動は強められたり、弱められたりする。
 実際に行動を変えるためには、良い結果と悪い結果をうまく使い分ける。良い結果を使うのは、前述した「ほめる」「がんばり表を使う」という方法でできるが、悪い結果を使うのはどうか。叩く、怒鳴る、という方法は多くの場合有効ではなく、子どもが「しまった」と思えるものを使う。①特権を取り去る方法(子どもの楽しみに制限を加える)、②責任を取らせる方法(汚したら掃除をするなど、したことを償わせる)などが有効である。

7.怒鳴ったり叱ったりしないで子どもをしつける方法
 これまで紹介した方法を用いて、子どもをしつける。①共感的な表現を使って、問題行動をやめさせる、②悪い結果を使い、「しまった体験」をさせる、③子どもにしてほしいことを説明する、④練習、という4つのステップを使う。

8.危機介入 [親子で身につけるセルフコントロール]
 親が落ち着くための方法は5で説明したが、そのテクニックを子どもにも教える。興奮してくると人の言うことは聞こえなくなるので、親とともに子どもも落ち着きを取り戻す必要がある。ここでのステップは「まずは落ち着く」の第1ステップと、「セルフコントロールを教えるフォローアップ」の第2ステップの2つからなる。

9.子どもの発達と親の期待
 子どもの発達と親の期待がぴったりと合っていれば、そこにストレスはない。しかし、なんだか怒ることが増えているなと感じたら、一度立ち止まって、親としてどのような期待を子どもにしているのか考えてみると良い。
 子どもが言われたことをできない状況には、言われたことが理解できていない状況、実行する力がない状況の2つがある。具体的な表現を使って親の期待を詳しく教えること、そして教えたことを実際にさせてみて、教えたとおりにできるのか確認することで、その期待が適切なものであるのか確認できる。

10.問題解決法 [子どもとの話し合いをうまく行うための方法]
 問題を解決するために、子どもとの話し合いをうまく行うための方法を紹介する。ここでは①子どもが抱える問題を整理する、②どうしたら良いかの案を整理する、③メリットを考える、④デメリットを考える、⑤どうするかを決める、というステップを使う。

【開催日】
2014年12月17日(水)