禁煙のための電子たばこ・インセンティブ・薬剤に関する実臨床試験

―文献名―
HALPERN, Scott D., et al. A Pragmatic Trial of E-Cigarettes, Incentives, and Drugs for Smoking Cessation. New England Journal of Medicine, 2018.

―要約―
Introduction:
金銭的インセンティブ・薬物療法・電子タバコが禁煙を促進するかどうかは不明である。
Method:
54 社に勤務する喫煙者を、4つの禁煙介入のうち 1 つor通常ケアに無作為に割り付けた。
・通常ケアでは、禁煙の利益に関する情報と動機付けメッセージ配信サービスを提供した。
・通常ケアの加え
 無料の禁煙補助薬(ニコチン代替療法あるいは薬物療法 (バレニクリンやブプロピオン日本未発売)、これらの標準療法が失敗した場合に電子タバコを使用)
 標準療法を試みたことを要件としない無料の電子タバコ
 無料の禁煙補助薬と禁煙継続に対する 600 ドルの報奨金
 無料の禁煙補助薬と600 ドルの報奨金(保証金)の前払い(禁煙の目標が達成できなかった場合は、継続期間に応じて報奨金は払い戻される)
Results:
登録を呼びかけた喫煙者 6,131 例のうち、125 例が辞退し、6,006 例が無作為化された。6 ヵ月の禁煙継続率は,通常ケア群 0.1%、無料の禁煙補助薬群 0.5%、無料の電子タバコ群 1.0%,報奨金群 2.0%、払い戻し可能な保証金群 2.9%であった。禁煙継続率に関して、払い戻し可能な保証金と報奨金は、無料の禁煙補助薬に対し有意差があった(それぞれ P<0.001 と P=0.006)。払い戻し可能な保証金は無料の電子タバコに対し有意差があった(P=0.008)。無料の電子タバコは通常ケアに対しても(P=0.20)、無料の禁煙補助薬に対しても(P=0.43)有意差を示さなかった。この試験に積極的に参加した従業員1,191 例(19.8%)では、禁煙継続率が試験に積極的に取り組まなかった者の 4~6 倍で、相対的な有効性は同程度であった。

Conclusions:
禁煙に関する実臨床試験において,無料の禁煙補助薬に金銭的インセンティブを追加した群のほうが,無料の禁煙補助薬のみの群よりも禁煙継続率が高かった.通常ケア(情報と動機付けメッセージの提供)を受けた喫煙者では,無料の禁煙補助薬や電子タバコを追加してもメリットなかった.

Discussion:
無料の電子タバコは、従来の禁煙補助薬と比較しても禁煙継続率は高くならなかった。しかし効果を調べる研究ではそれぞれのグループにおいてそれぞれの製品の使用を確実にしておかなければならないので、実情を反映していないかもしれない。
この試験では、喫煙者の間では、職場の禁煙プログラムの禁煙率が低く、無料の禁煙薬や無料の電子タバコを提供しても、情報や動機付けのテキストメッセージにアクセスできた喫煙者の禁煙は増加しなかった。

【開催日】2018年8月1日(水)