プライマリ・ケアにおける抗うつ薬の効果と耐用性のシステマティック・レビュー

―文献名―
Klaus Linde: Efficacy and Acceptability of Pharmacological Treatments for Depressive Disorders in Primary Care: Systematic Review and Network Meta-Analysis.Annals of Family Medicine  2015 vol. 13 no. 1 69-79

―要約―
目的:
 この研究の目的は、プライマリ・ケアのセッティングにおいて、どの抗うつ薬がプラセボと比較してより効果的なのかを調査し、抗うつ薬の種類によってその効果と耐用性の違いがあるのかを究明することである。

方法:
 私たちは2013年12月までに発表されたMEDLINE, Embase, Cochrane Central of Controlled Trials (CENTRAL), PsycINFOの文献を調査し、プライマリ・ケア医による成人のうつ病治療の無作為試験についてレビューを行った。直接的、あるいは間接的なエビデンスを結合しながら、従来のpairwiseメタ分析と、ネットワークメタ分析の両方を実施した。一次アウトカムは治療への反応(うつ病スケールで50%以上の改善、あるいは症状のスケールでの改善)と、副作用による研究の中断とした。

結果:
 計66個の研究(15161人)がinclusionされた(Figure 1)。ネットワークメタ分析では、TCAs、SSRIs、SNRI(セロトニン-ノルアドレナリン再取込阻害薬)、SARI(低用量セロトニンアゴニスト+再取込阻害薬=トラゾドン、レスリン®)、オトギリソウ抽出物(セント・ジョーンズ・ワート)がプラセボと比較して有意な効果があることが分かった(Table 3)(odds ratio 1.69~2.03)。これらの薬剤間での統計上の差異は見出せなかった。rMAO-As(モノアミン酸化酵素阻害薬)とオトギリソウ抽出物は、副作用による中断という点では、TCAs、SSRIs、SNRI、NRI(ノルアドレナリン再取込阻害薬)、NaSSAs(ノルアドレナリン作動性-特異的セロトニン作動制約)に比べて中断は少なかった(Table 4)。

結論:
 TCAsとSSRIsは他の薬剤に比べて、プライマリ・ケアのセッティングでの効果という点で確固たるエビデンスがある。しかし、プラセボと比較した効果の大きさでは比較的小さい。他の薬剤(オトギリソウ抽出物、rMAO-As、SNRI、NRI、NaSSAs、SARI)はいくつか良好な結果があるものの、それらを明確に推奨するには最近のエビデンスでは限界がある。
 限界として、出版バイアス、ネットワークアナリシスによる限界、プライマリ・ケアのセッティングでの文献が少ないこと、効果判定が平均6週間であることから、プライマリ・ケアのセッティングにおける長期的な効果と耐用性については今後さらなる研究が必要。

【開催日】
2015年3月4日(水)