子どもの運動はどの時期にどのようなことをしたらよいのか?

―文献名―
智原江美:幼児期の発育発達からみた運動遊びの考え方. 京都光華女子大学短期大学部研究紀要 49, 7-17, 2011-12

―要約―
はじめに
 近年、子どもの体力・運動能力は著しく低下しているといわれている。大人にとって便利になった社会環境の変化は子どもが環境に対応する機会や動きを習得する機会をことごとく奪ってしまっている。このような子どもを取り巻く環境の変化の中で、子どもにはどのような遊びや動きを経験させることが望ましいのであろうか。

子どもの体力・運動能力の現状
 愛知県での調査および神奈川県教育委員会による報告書のデータがある。これを用いて幼児の体力・運動能力の変化を概観すると、1969年から1999年の30年間の幼児の体力・運動能力の変化は、一概に低下しているとはいえなかった。特に、体格に関する測定項目である身長は5歳後半男児で1.1cm、体重は1.2kgの増加が見られ、体格が良くなって体格の向上が結果に直接影響するような20m走や、瞬間的に力を発揮すればよいような立ち幅跳び、反復横跳びなどもむしろ向上しているといえる。しかし、苦しい思いをして持久力を測定する懸垂や繰り返し練習をして初めて習得できる動きである投球能力を測定するテニスボール投げなどは大幅な低下傾向が見られた。
 一方、神奈川県教育委員会教育局スポーツ課は1986年、1997年、2002年、2006年の20年間に4回にわたり幼児の運動能力測定を行った。5歳後半男児の測定結果によると、「25m走」では0.25秒、「立ち幅跳び」は約1cm の低下、「テニスボール投げ」と「両足連続跳び越し」はほとんど変化がなく「テニスボール投げ」は高年齢になるほど個人差が大きくなり、記録の二極化傾向が見られる。また「立ち幅跳び」の主要素である「1回動作の強いキック力」は高いが、全力で走るときにはそれをうまく使えておらず、四肢を素早く、力強く、繰り返し動かす「身のこなし」の能力の低下を示している可能性がある。
 これら2 つの報告から考えると、幼児の体力・運動能力のすべてが低下しているとはいえないが、「身のこなしの不器用さ」、「持久力の低下」といった現代の子どもの運動経験がいかに少ないかということが浮き彫りになってくる。

乳幼児期の運動能力の発達
 ガラヒューは運動を発達的な視点からとらえて分類した。ガラヒューが表した「運動発達の段階とステージ」(1999)では、人間の運動は胎児期から1 歳ごろまでは「反射的な運動の段階」、3 歳ごろまでは「初歩的な運動の段階」、10 歳ごろまでは「基本的運動の段階」、10 歳以降は「専門的な運動の段階」とそれぞれのステージを経て発展していくと述べている。
 一方、身体の発達についてみてみると、スキャモンの発育曲線(1930)では身体の各器官、臓器の発育は大別すると四つのパターンに分類される。そのうち運動能力の発達に大きく関わるものは、一般型と神経型であり、特に乳幼児期の特徴として神経系型の発達が非常に顕著である。
 また、ブラウンは「子どもの運動技能発達のピラミッド」(1990)を表し、1~5歳頃までの「基本動作」を習得する段階と、5~7歳頃までの「より複雑な動作への移行」する時期との間には『運動技能熟達の障壁』が存在すると述べている。「基本動作を5歳ごろまでに経験しないと、成長にともなう向上に障壁ができ、新しい『技術』の獲得が困難になる」と警告を発している。また「幼児のうちにさまざまな動きを体験する機会を、親を中心とした周囲の人たちが積極的に与えなければ、潜在的には獲得可能なはずの運動の『技術』が身につきにくくなってしまう」とも述べている。
 このように、3~6歳までの幼児期は、運動発達の過程から見ても非常に重要な時期であり、その環境を整えることも重要である。

幼児期の3つの運動課題
 第1点はさまざまな「体位感覚」を経験することである。体位感覚とは自分の体が現在どのような状態であるかを把握したうえで、どのようにすれば通常の状態に戻ることができるかを考え実行できる能力である。たとえば頭部が腰の位置より下になるような逆立ちの状態から通常の頭部―胴体―脚部といった体位に戻すことができるような逆さ感覚や、マット上での前・後転の際に、また、鉄棒での逆上がりや前転の際に、自分のからだの状態を正確に把握し身体を回転させて通常の状態に体位を戻すことのできる回転感覚といった能力である。これらは体全体に占める頭部の割合が大きいため重心が上部にあり、また、神経系の発達する時期である幼児期に比較的容易に習得することのできる感覚である。これらの逆さ感覚や回転感覚などは器械運動や園庭・公園の固定遊具で遊ぶことで習得しやすい動きである。
 第2点は「歩く・走る」量の確保があげられる。移動の手段を車にたよっている今日の社会において大人も子どもも運動量が格段に減少している。子どもの体をつくるための運動量確保のためにも、日常の活動でできる限り歩いたり走ったりする量の確保が大切である。これは幼稚園や保育園に通う子どもにとっては保育環境の整備や、自然と子どもの活動量が多くなるような興味ある教材の提供が鍵である。
 第3点はいろいろなリズムで動くことの経験である。人間の通常の動きは歩くという2拍子の動作が基本となると考えられるが、例えばスキップやギャロップ、3拍子の動きなどの体全体でさまざまなリズムを体験、表現することがあげられる。これも神経系が達する幼児期がもっとも習得しやすい時期である。
 幼稚園・保育園や家庭における日常の遊びの中で幅広い運動遊びを経験することにより自然に多くの動きを習得することが望ましい。また、運動遊びの中で重要なことは、運動の楽しさを味わい自発的に運動に取り組む意欲が持てるような環境の設定、教材の提供、保育者のかかわりが重要になる。体を動かすことの楽しさや爽快さを経験することが生涯にわたって運動する習慣の基本となるであろう。

【開催日】
2014年9月3日(水)

小児在宅医療の展開

―文献名―
「改訂2版 医療従事者と家族のための小児在宅医療支援マニュアル」MCメディカ出版 2010年  船戸正久、高田哲 編著

―要約―
推薦のことばより抜粋
子どもの本質は成長と発達にあるが,その基盤は家庭・社会の場における人間交流と生活・学習体験である.病院や施設で提供できるものには大きな限界があり,そのため入院生活を極力避けることが子ども医療の鉄則である(「病院における子どもに関するヨーロッパ憲章 第1項」,EC議会採択,1986).つまり在宅医療の推進は小児医療提供のあり方の原点とつながっている.

P15 表 病院(医療)と在宅(家庭)の利点と欠点

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これらのリスクとベネフィットをよく理解したうえで,在宅への移行を行うか否かの「自己決定」または「子供の最善の利益」に基づく家族の判断が重要となる.

 P24 小児の在宅医療
患者調査によると,小児(0~14歳)の通院・往診を含む外来受診数は全年齢の10.2%であるが、往診に限ると全年齢の1.7%に過ぎず、訪問診療に限ると全年齢の0.5%に過ぎない.
また、小児の在宅医療に関する医療機関側の認識は,71.4%がその供給体制は「不十分」であるが、約88%が「ニーズがある」と答えている.実際に小児の在宅医療を提供する医療機関がとっている連携については,「緊急入院に対応するための連携」(65.6%),「夜間・24時間診療体制を確保するための連携」(56.3%)が多く,在宅医療を行う医療機関の約6割が「小児のほうが成人に対する在宅医療より困難な点がある」と回答している.一方,患者側の認識は,一般の患者と比べて小児患者の「在宅療養できる」割合が78.1%と高く、「在宅療養できない」割合は7.5%とかなり低い.

P168 家族が望む援助より抜粋
私たちの望みは,たんの吸引等の「医療行為」が必要な子どもたちの「命」と「思い」を大切にしたサポートであり,どんな障害があっても地域の中で自立して当たり前に生活できる社会の実現である.

P191~ 在宅療養支援診療所の役割より抜粋
超重症児のうち,70%が在宅療養中であるが,訪問診療を受けている子どもはわずか7%,訪問看護を受けている子どもでも18%で,ホームヘルパーを利用しているのはわずか12%に過ぎない.また,全体の15%が,急性疾患で入院した後,そのまま入院を続けていると報告されている.

全国の11,928ヶ所の在宅療養支援診療所に小児在宅医療に関するアンケートを実施したところ,1409ヶ所からの回答があり,その中で19歳までの小児を在宅で診療したことのある診療所は367ヶ所で,26%であった.19歳までの小児を10人以上診療したことのある診療所は31ヶ所で,2.2%であった.まだまだ小児在宅医療が,在宅療養支援診療所の中で浸透していないのが現状といえる.

困難な問題を多く抱えた小児在宅医療だが,その困難さを超えて実施する意義は,どのようなものか.それは子どもが自宅で家族とともに生活することを実現するということに尽きる.多くのケースで,自宅で家族とともに生活するとき,子どもたちから,病院では見られない成長,発達の力が引き出され,家族は安定する.小児在宅医療が,病院の稼働率や,医療財政の面からのみでなく,第一義に子どもと家族のQOLの面から推進されるべきであると考える.

【開催日】
2014年7月2日(水)

発達障害児に対するアプローチ

―文献名―
岩間真弓、市河茂樹.かかりつけ医がみていこう common diseaseとしての発達障害.治療.2014;4.Vol.96.増刊号:556-557ページ

―要約―

【はじめに】
2012年度の文部科学省の統計では、発達障害がある児童は全児童の6~9%であることが示された。発達障害は、診断や治療において専門性の高い判断が必要な場合もある。一方、発達障害児の日々の生活のアドバイスや健康相談については、なかなか受診できない専門施設だけでなく、児の住む地域のプライマリ・ケア医が積極的に関わっていくことは大切であり、今後ますます求められていくだろう。

【発達障害とは】
自閉症、アスペルガー症候群その他の汎用性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの(2004年の発達障害者支援法)。
特性に応じた支援が受けられれば、十分に能力を発揮できる可能性がある。

a.自閉症
自閉症の児は発語が遅い、対人意識が弱い、かんしゃくが強いということで保護者から相談を受ける事が多い。成長発達の中で、児の言語、運動、社会性の発達にはマイルストーンがあるが、そこから外れているようであれば、まず1~2ケ月後に、成長が認められるかをしっかりとフォローする。そして表1(言語評価を行うべきred flags)に当てはまるようであれば、耳鼻科、言語聴覚士、地域の発達障害者支援センターに紹介しながら言語評価を開始する。対人面やこだわり、コミュニケーションの取り方について早期に関わっていくことで、児がより安心して成長することが可能となる。

b.注意欠陥多動性障害
じっとしていられない、順番が待てない、忘れ物が非常に多いといったことに、保育園や幼稚園などの集団生活の中で気付かれ、相談される事が多い。ただ、「落ち着きのない子」で終わるのではなく、どうしてそのような行動になっているのかを見極め、周囲にも伝える事が大切。伝える情報はなるべく少なくシンプルにする等、本人に合わせた情報の入力の仕方をすることで生活しやすくなる。

【適切な支援】
発達障害とは児の生まれ持った特性であり、治療して治す疾患ではない。また、決まった対応方法があるわけでもなく、児の特性とライフステージに合わせた支援を、医療、保健、福祉、教育および労働などの各関係機関が連携を図りながら提供していく必要がある。各都道府県に、発達障害者支援センターがあるほか、各自治体の子育て支援課が相談を受け付け、近くの療育機関を紹介してくれる。支援における医療の役割としては、医師による診断、特性に合わせた育児方法のアドバイス、薬物療法、言語聴覚士・作業療法士や児童心理士による言語・行動療法や感覚統合訓練などが挙げられる。ADHDに対して治療薬もあり、注意力の向上に一定の効果が期待出来る。発達が気になる児やその育児者の相談に乗り、児にあったリハビリ、子育て支援機関を紹介し療育を開始する。診断が困難な場合は発達支援外来に紹介している。専門医、言語聴覚士、作業療法士、保健師、教員などが集まって児の事を話し合うカンファレンスを実施する。

【おわりに】
発達障害児の診療といっても医師1人の力だけでは出来る事は限られている。日常診療の中で、かかりつけ医が児やその育児者の悩みに気づき、その児にあった支援につなげていく流れをリードしていくことで、児1人ひとりが生まれ持った特性を安心して十分発揮するためのお手伝いができるのである。専門医に紹介した後も、かかりつけ医としてこまめに関わり続けていけば、常に「その児の専門家」として近くで成長を応援し、児がのびのびと成長出来る地域づくりを推進していく事が出来る。

―ディスカッション―

発達障害児に対するアプローチ、支援方法が紹介され、我々家庭医の関わりについても述べられている。寿都での最近の取り組みとしては、5歳児健診前に、家庭医、役場保健師、保育園保育士が集まり、情報の共有をするようにして、すでに診断されている児の最近の動向や、疑いがある児に対する対応策を検討し、健診での対応の改善につなげた。疑わしい児は、家族と相談し、専門医に紹介し、診断がつけば、その後の支援につながっている。しかし、その後、我々家庭医が、紹介した専門医や療法士、児童心理士とうまく連携して、児の特性に合わせた対応が統一して出来ているとはあまり感じられない。今後、このような専門家との密接な連携がより求められるのはないかと感じた。

開催日:平成26年4月16日

① 小児期の肥満,その他の心血管リスクファクター,そして早期死亡 ② 炭酸飲料消費量の減量による小児期の肥満予防:クラスターランダム化試験

- 文献名 -
① Paul W. Franks, Ph.D., Robert L. Hanson, M.D., M.P.H., William C. Knowler, M.D., Dr.P.H., Maurice L. Sievers, M.D., Peter H. Bennett, M.B., F.R.C.P., and Helen C. Looker, M.B., B.S., 
Childhood Obesity, Other Cardiovascular Risk Factors, and Premature Death, 
N Engl J Med 362;6 nejm.org February 11, 2010
② Janet James, Peter Thomas, David Cavan, David Kerr, Preventing childhood obesity by reducing consumption of carbonated drinks: cluster randomised controlled trial, BMJ. 2004 May 22; 328(7450): 1236.

 - この文献を選んだ背景 -
上川町の保健師さんとの定例会議で小学生の肥満が話題になり,北海道ブロック支部の地方会でも別海町における小児の肥満対策の発表があったので,小児期の肥満について自分なりに調べてみた.まず,小児期の肥満が介入すべき問題なのか?ということと,介入する方略として論文にまとめられているものを調べてみた.研究デザインとしても興味深かったので,今回は2つの文献を取り上げた.

 - 要約 -
① Childhood Obesity, Other Cardiovascular Risk Factors, and Premature Death
BACKGROUND
The effect of childhood risk factors for cardiovascular disease on adult mortality is poorly understood.

METHODS
In a cohort of 4857 American Indian children without diabetes (mean age, 11.3 years; 12,659 examinations) who were born between 1945 and 1984, we assessed whether body-mass index (BMI), glucose tolerance, and blood pressure and cholesterol levels predicted premature death. Risk factors were standardized according to sex and age. Proportional-hazards models were used to assess whether each risk factor was associated with time to death occurring before 55 years of age. Models were adjusted for baseline age, sex, birth cohort, and Pima or Tohono O’odham Indian heritage.

RESULTS
There were 166 deaths from endogenous causes (3.4% of the cohort) during a median follow-up period of 23.9 years. Rates of death from endogenous causes among children in the highest quartile of BMI were more than double those among children in the lowest BMI quartile (incidence-rate ratio, 2.30; 95% confidence interval [CI], 1.46 to 3.62). Rates of death from endogenous causes among children in the highest quartile of glucose intolerance were 73% higher than those among children in the lowest quartile (incidence-rate ratio, 1.73; 95% CI, 1.09 to 2.74). No significant associations were seen between rates of death from endogenous or external causes and childhood cholesterol levels or systolic or diastolic blood-pressure levels on a continuous scale, although childhood hypertension was significantly associated with premature death from endogenous causes (incidence-rate ratio, 1.57; 95% CI, 1.10 to 2.24).

CONCLUSIONS
Obesity, glucose intolerance, and hypertension in childhood were strongly associated with increased rates of premature death from endogenous causes in this population. In contrast, childhood hypercholesterolemia was not a major predictor of premature death from endogenous causes.


② Preventing childhood obesity by reducing consumption of carbonated drinks: cluster randomised controlled trial
OBJECTIVE
To determine if a school based educational programme aimed at reducing consumption of carbonated drinks can prevent excessive weight gain in children.

DESIGN
Cluster randomised controlled trial.

SETTING
Six primary schools in southwest England.

PARTICIPANTS
644 children aged 7-11 years.

INTERVENTION
Focused educational programme on nutrition over one school year.

MAIN OUTCOME MEASURES
Drink consumption and number of overweight and obese children.

RESULTS
Consumption of carbonated drinks over three days decreased by 0.6 glasses (average glass size 250 ml) in the intervention group but increased by 0.2 glasses in the control group (mean difference 0.7, 95% confidence interval 0.1 to 1.3). At 12 months the percentage of overweight and obese children
increased in the control group by 7.5%, compared with a decrease in the intervention group of 0.2% (mean difference 7.7%, 2.2% to 13.1%).

CONCLUSION
A targeted, school based education programme produced a modest reduction in the number of carbonated drinks consumed, which was associated with a reduction in the number of overweight and obese children. 

 - 考察とディスカッション -
①の文献では,対象が限定されたコホート研究であり,一概に日本人の小児に適応することはできないが,人種の系統としては近いと考えられるため,小児期の肥満は介入すべき問題と考えられた.②の文献は,フェローで行う研究のヒントになりそうな研究デザインで,地域コミュニティケアの取り組みとしても興味深く感じられた.
そこで,各サイトでの小児期の肥満に対する取り組みなどについて,共有やディスカッションをしたいと思った.

開催日:平成25年12月18日

子供はCTによる被曝によって、どのような影響を受けるか?

- 文献名 -
 Mark S Pearce et al:Radiation exposure from CT scans in childhood and subsequent risk of leukaemia and brain tumours: a retrospective cohort study.Lancet. 2012 August 4; 380(9840): 499-505.

- この文献を選んだ背景 -
 当診療所ではCT検査が可能である。年に数人は小児のCT検査を施行することがある。今回CT検査から受ける放射線により、白血病、脳腫瘍の発生に対する影響を評価するコホート研究が発表されたため、紹介したい。

- 要約 -
【背景】
 CTは臨床的に非常に有用である一方で、電離放射線に関連した潜在的な発癌リスクが存在する。しかも大人よりも子供は放射線への感受性が強い。今回子供と若年成人のコホートでCTスキャン後の白血病と脳腫瘍の存在を評価したい。今までCT施行後の患者における発癌リスクの直接的な研究はなかった(新奇性)。
【方法】
 後ろ向きコホート研究で、1985年から2002年にイングランド、ウェールズ、スコットランドのNHSにおいてCT検査を受けた、当時22歳以下の方で、過去に癌の診断を受けていない患者を対象とした。1985年1月1日から2008年12月31日までにNHS名簿から癌発現率、死亡、フォローアップ不能のデータを採取した。CTスキャンごとに脳と赤色骨髄に吸収された線量(mGy)を計算し、ポワソン相対危険モデルで白血病と脳腫瘍の過剰発現を評価した。癌を疑った際の診断目的に施行されたCTの算入を避けるため、初回のCT検査から白血病の診断に至った期間が2年間、脳腫瘍であれば5年間以下の者は除外した。
【結果】
 追跡期間中に178,604人の患者のうち74人が白血病と診断され、176,587人の患者のうち135人が脳腫瘍の診断に至った。CTスキャンと白血病に関連のある放射線濃度はERR/mGyは0.036(95%CI0.005-0.120;P=0.0097) であり、脳腫瘍では過剰相対リスク0.023(0.010-0.049;P<0.0001)であった。5mGy以下の線量を受けた患者と比較して、少なくとも累積30mGy(平均51.13mGy)の被曝をした患者では白血病の相対危険度は3.18(95%CI1.46-6.94)であった。また累積50-74mGy(平均60.42mGy)の被曝をした患者では脳腫瘍の相対危険度は2.82(1.33-6.03)であった。 【解釈】  小児が約50mGy(脳CT5~10回)の累積被曝をした場合、白血病のリスクが約3倍で、脳腫瘍においては約60mGy(脳CT2~3回)で3倍になる。これらの癌はまれなものである故、累積寄与危険度は低い。10歳以下の小児で初回のCT検査から10年間において考えてみると、10,000回の頭部CT検査で1人の白血病、1人の脳腫瘍が生じる計算となる。臨床的な利点が相対危険度を上回ることは確かだが、CT検査の放射線濃度は可能な限り低く保つべきあり、妥当性があるのであれば電離放射線を生じない他の方法を考慮すべきである。 参考 相対リスク(RR)と過剰相対リスク(ERR)       一般的な疫学研究において2つ以上の集団でリスクを比べる時、非曝露群と比べて曝露群が「何倍」のリスクがあるのかをみるのが相対リスク(RR: relative risk)で、1以上であれば曝露群のリスクが高く、1以下であれば曝露群のリスクが低い。例えば、被曝線量がゼロの集団における疾患Aの発生リスクが10万人あたり2人で、被曝線量が1 Svの集団では10万人あたり5人だった場合、単純なRRは5/2=2.5倍となる。しかし、放射線被ばくのリスク評価では、放射線を浴びることによって単位線量当たりどのくらい過剰にリスクが上昇したのかをみる過剰相対リスク(ERR: Excess relative risk / 1Sv)という指標が用いられることが多い。上記の例では、単純なERRは(5-2)/2=1.5となり、被曝線量1 Sv浴びると1.5倍過剰に発生リスクが上昇することを意味する。しかし、実際の被曝者集団における解析では、被ばく線量、被ばく時年齢、被ばくからの経過時間、現在の年齢、性別などの、様々な因子を考慮して解析されている点に注意が必要である。 開催日:2012年8月29日

小児の市中肺炎のレビュー

【文献名】
Stucky Schrock K, Hayes BL, George CM. Community-Acquired Pneumonia in Children. American Family Physician 86(7), p661-p667, 2012.

-要約-
【病因】
2歳未満の小児ではウイルスが原因の大半を占め、年齢と共に比率が減っていく(Table1.)。小児では市中肺炎の30%~50%がウイルスと細菌の混合感染である。細菌性の市中肺炎では肺炎球菌の頻度が最も高いが、ワクチンが広く接種されるようになり重症の感染症の発生率は低下した。学齢期の市中肺炎ではMycoplasma pneumoniae、chlamydophila pneumoniae,肺炎球菌が主要な原因である。
重症事例ではブドウ球菌、とくにMRSAが原因として増えつつある。ブドウ球菌は特異的な所見がみられないため診断はチャレンジングである。 重症例や直近にインフルエンザ感染を伴う例、βラクタムやマクロライド系抗菌薬が奏功しない場合には疑うべきである。

【診断】
市中肺炎の臨床診断では第1印象が重要である。数ある肺炎を示唆する所見の中でも頻呼吸がもっとも重要なサインであり、正確に計測するために患児が静かにしている状態で、1分間フルでカウントすることが望ましい。発熱している児において頻呼吸のない場合は高い陰性的中率(97.4%)を誇る。
反対に、陽性的中率は低い(20.1%)。頻呼吸を呈している発熱児の場合、陥没呼吸や呻吟(grunting)、鼻翼呼吸、捻髪音の存在が肺炎の可能性を高くする。WHOは発展途上国でX線が利用できない環境では頻呼吸を診断の指標としている(Table 2)。
胸部レントゲン写真が診断としてよく用いられるが、陽性所見は臨床上のアウトカムや治療方針を大きく変えることにはつながらない。画像検査は診断が病歴や身体所見で診断がハッキリしないときや矛盾する結果が得られたときに有用である。画像所見で細菌性肺炎を疑うことが出来るが、特異的な所見はない。CRPやプロカルシトニン、血沈は細菌性の肺炎の診断に有用ではない。喀痰培養は採取すること難しく診断や治療のためには限定的にしか利用できない。血液培養はマネジメントを変化させることはなく、起因菌を明らかに出来ないことが多い。

【抗菌薬による治療】
市中肺炎診断時の最初の抗菌薬の選択は経験的とならざるを得ない(Table3,4)。
抗菌薬の選択は患者の年齢、疾患の重症度、よくみられる起因菌の薬剤耐性の地域性を元に判断する。
経口投与が難しいか、重度の市中肺炎でなければ抗菌薬は経口投与が望ましい。重症ではない市中肺炎の入院症例では経口のアモキシシリンとペニシリンGの経静脈投与はほぼ同等の効果を示し、費用対効果に優れたという研究がある。

治療期間
適切な治療期間はRCTにより確立されていない。多くの場合、外来における経験的治療の場合7日~10日間の治療で十分である。アジスロマイシンは5日間継続すべきである。経験的治療を開始した24~48時間後には再評価を行うべきである。経験的治療で効果がない場合、抗菌薬の選択が不適切であったか、初回投与の抗菌薬に対する耐性か、合併症の発症である可能性がある。

【対症療法】
発熱、胸痛、腹部への放散痛、頭痛、関節痛などを訴えることがある。アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの解熱鎮痛薬を用いる。アスピリンはRye症候群のリスクがあるため用いない。

【入院治療】
小児から思春期の肺炎の入院決定は臨床的、社会的、多様な要因で決定される。4か月未満の乳児はウイルス性またはChlamydia trachomatis感染を疑う場合か無症状でこまめなフォローアップが可能でない限り原則として入院である(Table5)。

【予防】
いくつかのガイドラインが市中肺炎予防のための方法を紹介している。
頻繁な手洗い、タバコを避けること、母乳栄養の推奨、他の児童との不必要な接触を少なくすること、予防接種である。13価の肺炎球菌ワクチンが認可されている。その他インフルエンザワクチン、Hibワクチン、百日咳、水痘、麻疹ワクチンの接種が推奨される。

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【開催日】
2012年11月14日

頭部外傷とADHDの関係

【文献名】
著者名:Heather T Keenan et al. 
文献タイトル:Early head injury and attention deficit hyperactivity disorder: retrospective cohort study.
雑誌名・書籍名:BMJ 2008: 337 doi: 10.1136/bmj.a1984 .
発行年:Published 6 November 2008.

【要約】
<Objective> 
To explore the hypothesis that medically attended head injury in young children may be causal in the later development of attention deficit hyperactivity disorder (ADHD).

<Design>
Retrospective cohort study.

<Setting>
Health improvement network database (1988-2003), a longitudinal UK general practice dataset.
Participants All children registered in the database from birth until their 10th birthday.

<Main outcome measures> 
Risk of a child with a head injury before age 2 developing attention deficit hyperactivity disorder before age 10 compared with children with a burn injury before age 2 and children with neither a burn nor a head injury.

<Results>
Of the 62?088 children who comprised the cohort, 2782 (4.5%) had a head injury and 1116 (1.8%) had a burn injury. The risk of diagnosis of attention deficit hyperactivity disorder before 10 years of age after adjustment for sex, prematurity, socioeconomic status, and practice identification number was similar in the head injury (relative risk 1.9, 95% confidence interval 1.5 to 2.5) and burn injury groups (1.7, 1.2 to 2.5) compared with all other children.

開催日】
2012年5月2日

子供と一緒に食事していますか?

【文献名】

Is Frequency of Shared Family Meals Related to the Nutritional Health of Children and Adolescents? PEDIATRICS Vol. 127 No. 6 June 1, 2011 pp. e1565 -e1574

【要約】

<Objective>
To examine the frequency of shared family mealtimes in relation to nutritional health in children and adolescents.

<Method>
 Four search engines were used to systematically locate empirical research: PubMed, PsycINFO, Web of Science, and the Cochrane Database of Systematic Reviews, conducted in 2009 with no year restrictions.
 Three categories were constructed on the basis of reported outcomes: weight status, food consumption, and disordered eating. Flowchart of the study-selection process is shown at Figure1. 
Meta-analytic methods were used. Pooled odds ratios were calculated. A random-effects model was used to estimate all outcomes.

<Results>
  Table 1 lists descriptive information for the 17 included studies. The studies were conducted in the United States (n=12), Australia(n=1), Canada (n=1), Finland(n=1), Japan (n=1), and New Zealand(n=1). Fifteen studies reported cross-sectional findings, and 5 reported longitudinal findings. Analyses were performed separately for cross-sectional and longitudinal studies. The total sample size for all studies was 182 836 children and adolescents (mean sample age: 2.8 ?17.3 years). 
  Thirteen studies reported on the percentages of family meals, and the majority of families had meals together 5 to 7 nights per week (52%), 31% shared 1 to 4 meals together, and 14% did not share any meals together.
The frequency of shared family meals is significantly related to nutritional health in children and adolescents. Children and adolescents who share family meals 3 or more times per week are more likely to be in a normal weight range and have healthier dietary and eating patterns than those who share fewer than 3 family meals together. In addition, they are less likely to engage in disordered eating. Benefits include a reduction in the odds for overweight (12%), eating unhealthy foods (20%), and disordered eating (35%) and an increase in the odds for eating healthy foods (24%). (Table2)
  Two of the all five longitudinal studies had 5-year follow-ups, whereas the others reported on 3-year and 2-year follow-ups. Of the 4 studies that reported on longitudinal findings, only 1 reported significant findings. However, the OR for the meta-analysis is significant (0.93 [95% CI: 0.90?0.95]), which suggests that shared family meals are associated with 7% odds of reduction of overweight and disordered eating. (Figure2)

<Conclusion>
The results of this study suggest that shared family mealtimes offer nutritional benefits to family members. Health professionals are advised to encourage families to eat meals together.

<Limitation>
 Future studies should develop interventions for families that struggle with health issues such as obesity and disordered eating and add focus on family mealtimes as a setting in which to promote better nutrition habits.
  The longitudinal studies included in this meta-analysis were few and focused mainly on overweight; more longitudinal studies need to be conducted to shed light on the potential long-term relationship between family meals and nutritional health.
Specific mechanisms of how family mealtimes influence related nutritional outcomes should be investigated.
  Future research should include more precision in the measurement of not only the frequency of family mealtimes but structural aspects of the family and who is present during meals.

【開催日】2012年3月7日

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