日本人糖尿病患者に対する食事療法のエビデンス

-文献名-
Yamada S, Kabeya Y, Noto H. Dietary Approaches for Japanese Patients with Diabetes: A Systematic Review. Nutrients 2018; 10(8): 1080.
-要約-
【背景】
食事療法は糖尿病のマネジメントにおいて重要である。米国糖尿病学会(ADA)では地中海食、dietary approaches to stop hypertension(DASH)、ベジタリアン食、糖質制限食などいくつかの食事療法を推奨している一方で、日本糖尿病学会(JDS)では1965年以来、エネルギー制限食のみを推奨している。JDSガイドラインの食事に関する勧告は86の研究に基づいて報告されているが、そのうち83は日本人の2型糖尿病患者を対象にした研究ではなく、残りの3つもエネルギー制限食の有効性を示した研究ではない。
【目的】
日本人糖尿病患者の管理に対するエネルギー制限食(および炭水化物制限食)の影響を解明する。
【方法】
MEDLINE、EMBASE、JAMASのデータベースから検索
除外基準:(1)外国人データ、(2)非糖尿病患者データ、(3)他の食事療法アプローチ、(4)未発表データ(科学会議でのみ発表された要約を含む)、(5)症例シリーズや症例報告など、評価には不適切な研究
Funnel Plotなし(定量的データ分析は実施していない)
Mindsの勧告に従ってバイアスを評価
Yamada S、Kabeya Yのふたりで評価(意見の相違は議論およびNoto Hへの相談で解決)
【結果】
エネルギー制限食の評価:2つのRCTをレビュー(いずれも糖質制限群V.S.エネルギー制限群、nはそれぞれ24、66)
・エネルギー制限群は糖質制限群より6か月後のHbA1c改善において劣っていた。
・片方のRCTではエネルギー制限群の方が糖質制限群よりもエネルギー摂取量が高く、エネルギー制限の正味の影響は評価不能
糖質制限食の評価:3つのRCTをレビュー(上記2つに加えて、糖質制限群V.S.糖質非制限群、n=15)
・糖質制限群は糖質非制限群に比べて持続血糖モニタリング(CGM)における食後血糖の改善に優れていた。
・糖質制限食は、日本人の2型糖尿病患者における限られたエビデンスによって支持される。
【結語】
①日本人糖尿病患者に対する食事療法のエビデンスはほとんどない
②JDSが推奨するエネルギー制限食は科学的根拠に裏付けられていない → より大規模な試験が必要
③短期間のアプローチでは、糖質制限食はエネルギー制限食より効果的 → より洗練された設計の試験が必要

JC2019後藤

【開催日】2019年6月5日(水)

75歳以上の高齢者に対する一次予防目的でのスタチン投与の是非

―文献名―
Rafel Ramos, et al. Statins for primary prevention of cardiovascular events and mortality in old and very old adults with and without type 2 diabetes: retrospective cohort study. BMJ 2018;362:k3359.

―要約―
【背景】
75歳以上の高齢者に対する心血管疾患(CVD)あるいは心血管死の二次予防目的でのスタチン投与は一定確立されている。一方で、75歳以上、とくに85歳以上の高齢者に対する一次予防目的でのスタチン投与はエビデンスが不足している。
【目的】
スタチンが75歳以上の高齢者のCVD発症あるいは全死亡の一次予防に寄与するかどうか評価する。
【方法】
後ろ向きコホート研究
【セッティング】
スペインの大規模データベース「Database of the Catalan primary care system (SIDIAP)」の2006-15年分
【主要アウトカム】
CVD発症と全死亡
【結果】
臨床的にCVDの既往がない46,864名(平均77歳、63%は女性、追跡期間中央値5.6年)が登録された。(Fig.1)
糖尿病がない被検者のスタチン使用によるハザード比は、75-84歳ではCVD発症0.94 (95%CI 0.86-1.04)、全死亡0.98 (0.91-1.05)、85歳以上ではCVD発症0.93 (0.82-1.06)、全死亡率 0.97 (0.90-1.05)だった。糖尿病がある被検者のスタチン使用によるハザード比、75-84歳ではCVD発症0.76 (0.65-0.89)、全死亡0.84 (0.75-0.94)、85歳以上ではCVD発症0.82 (0.53-1.26)、 全死亡1.05 (0.86-1.28)だった。(Table.4)
同様に、年齢によるsplinesを用いた連続スケール効果解析で、糖尿病のない74歳以上の被検者におけるスタチンのCVD発症と全死亡に対する利益欠如を裏付けた。糖尿病がある被検者では、スタチンのCVD発症と全死亡に対する予防効果が示されたが、この効果は85歳以上では実質的に減少し、90歳以上では消失した。(Fig.2)

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【開催日】2019年5月22日(水)

家庭医療の後期研修中に学術活動を増やすための持続可能なカリキュラムとは?

―文献名―
Sajeewane Manjula Seales et al.
Sustainable Curriculum to Increase Scholarly Activity in a Family Medicine Residency.
Fam Med. 2019;51(3):271-5.

―要約―
背景と目的
学術活動(以下SA)は,家庭医療の後期研修プログラムのためにACGMEの準拠要件である。しかし専攻医に学術活動に参加させることは困難である。しかし2010年にジャクソンビル海軍病院の家庭医療レジデンシー(NHJ―FMR)は、専攻医のSAのアウトプットを劇的増加させるリサーチカリキュラムを開発した。この研究の目的は,そのアウトプットが経時的に持続可能かどうかを測定することである。
方法
NHJ-FMRプログラムにおける2012~2013の学年から2016~2017の学年(N=185)の間のレジデントのSAについての後ろ向き記録レビューを実施した。リサーチカリキュラムへの以下の介入が2010~2012年度に実施された:
・研究コーディネートの指導医ポスト(FRC)
 →理想的には研究の経験が豊富でリーダシップスキルがある人材だが、我々のFRCは限られた研究経験であり、准教授レベルでFRCのポストは0.1FTEであった。
・SAポイントシステム(Table1参照)
・同僚支援を行う研究コーディネーターのポスト
 →PGY2やPGY3で特に研究への関心が高い人材で、同僚の研究の動機付けやメンタリングを行う役割。
  彼らは半日の研究日をもつ
・SAのアウトプットは、専攻医の年間のプロジェクトの合計、年間の質プロジェクト(地方会や全国学会での発表もしくはピアレビュー雑誌への投稿)もしくはピアレビューのプロジェクトを計算し、回帰分析とマン・ホイットニーのU検定(ノンパラメトリック検定)を行った。

結果
専攻医一人あたりのプロジェクトの年間件数は、2012~2013年度の0.34件から、2016~2017年度の1.05件に増加した(Fig1)。また専攻医一人あたりの質改善プロジェクトは、統計的に有意な経時変化を示した。(F(1,9)−18.98,P<0.05,R2 of 0.6784:Fig3)介入前の年数と介入後の年数を比較すると、専攻医の平均の質プロジェクトでは統計的有意はなかった(P<005) 結語 このカリキュラムのモデルは、研修プログラムで実施できる学術活動の成果を高めるために独自性かつ信頼性の高い介入を重視している。 毎年の研究コーディネーターの異動にもかかわらず,SAの量と質は5年間で増加している、介入後に増加している。 この研究は専攻医主導の(教育)文化の変化を実証し、他のプログラムへの適応性に関する今後の研究の証拠となる。 ディスカッション ピアレビューのメンターシップは専攻医の文化を変え、研究が修了のためのチェックボックス項目から、それぞれの専攻医にとっての教育的な経験となった。この研究の限界は、記録に基づいているデザインであることと、単一プログラムであること。そして軍隊のプログラムであるが、軍隊であることの特徴はなく、ACGMEに準拠してAMFMの要件を満たす非軍隊のプログラムにも応用しやすい。  JC(松井0522)

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【開催日】2019年5月22日(水)

2型糖尿病における心血管及び腎機能の1次予防/2次予防に対し用いられるSGLT2阻害薬

―文献名―
Thomas A Zelniker, Stephen D Wiviott, et al. SGLT2 inhibitors for primary and secondary prevention of cardiovascular and renal outcomes in type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis of cardiovascular outcome trials. Lancet 2018 Nov 9.

―要約―
◎背景
SGLT2阻害薬に関しては、2型糖尿病の患者の心血管イベント発生に対するいくつかのランダム化比較試験が行われている。2型糖尿病患者を対象としたSGLT2阻害薬の無作為化対照試験に関して系統的レビュー並びにメタアナリシスを実施した。’18年9月24日までに公開された試験に関し、PubMed及びEmbaseを検索している。有効性の結果は、主要な有害な心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管死)、心血管死もしくは心不全による入院、腎臓病の進行を含んでいる。

◎結果
▼ 3つの試験(① EMPA-REG OUTCOME、② CANVAS program、③ DECLARE-TIMI 58)を対象とした
① Zinman B, Wanner C, Lachin JM, et al. Empagliflozin, cardiovascular outcomes, and mortality in type 2 diabetes. N Engl J Med 2015; 373: 2117–28.
 42カ国、590施設で、18歳以上、BMI≦45kg/㎡、eGFR≧30を満たす患者
② Neal B, Perkovic V, Mahaffey KW, et al. Canagliflozin and cardiovascular and renal events in type 2 diabetes. N Engl J Med 2017; 377: 644–57
 30カ国で、HbA1c 7.0~10.5%、30歳以上で症状を有する動脈硬化性の心血管疾患を持つか、50歳以上で心血管疾患のリスク因子を2項目以上満たす患者
③ Wiviott SD, Raz I, Bonaca MP, et al. Dapagliflozin and cardiovascular outcomes in type 2 diabetes. N Engl J Med 2018; published online Nov 10. DOI: 10. 1056/ NEJMoa1812389.
 (対象患者に関する情報を検索できず)

・合わせて34322名の患者(うち60.2%が動脈硬化性の心血管イベントを有している)のデータを収集した。平均年齢は63.5歳、35.1%は女性であった。3342名に有害な心血管イベントを、2028名に心血管死もしくは心不全に因る入院を、766名に腎臓病の進行を認めた。
・主要な有害な心血管イベントを11%減らしたが、その効果は動脈硬化性の心血管疾患を有している患者にのみ有意差がみられ(HR=0.86(95%CI=0.80-0.93))、リスクファクターは有するが動脈硬化性の心血管疾患を有しない患者にはみられなかった(HR=1.00(95%CI=0.87-1.16))。
・心血管死もしくは心不全に因る入院を23%減らし、それは動脈硬化性の心血管疾患を有しているか否かに関わらず同様の効果がみられた。
・心筋梗塞のリスクを11%下げ、心血管死は16%下げるとするデータは得られたが、高い異質性がある(I2=79.9%)。
・脳梗塞のリスク低下には寄与しない(HR=0.97(95%CI=0.86-1.10))。
・腎臓病の進行、末期腎不全、腎死のリスクを45%減らし、それは動脈硬化性の心血管疾患を有しているか否かに関わらず同様の効果がみられた。動脈硬化性の心血管疾患を有する患者ではHR=0.56(95%CI=0.47-0.67)、リスクファクターのみを有する患者ではHR=0.54(95%CI=0.42-0.71)。
・SGLT2阻害薬の効果の大きさは基準の腎機能によって変わり、より深刻な腎機能を有している患者では、心不全に因る入院を大きく減らす一方、腎臓病の進行を抑える効果はより小さくなる。eGFR<60の群では心不全による入院は40%減少させるも、腎臓病の進行抑制は33%にとどまった。一方eGFR>90の群では心不全による入院は12%の減少にとどまるが、腎臓病の進行抑制は56%に達した。
・SGLT2阻害薬は全原因死を15%減少させるとする結果は出たが、異質性が高い(I2=75.2%)。動脈硬化性の心血管疾患を有する患者ではHR=0.83(95%CI=0.75-0.92)、リスクファクターのみを有する患者ではHR=0.90(95%CI=0.77-1.05)であった。同様に、心不全の既往を有する患者ではHR=0.80(95%CI=0.67-0.95)、心不全の既往を有しない患者ではHR=0.88(95%CI=0.80-0.97)であった。
・肢切断や骨折のリスク増加は1本の試験のみで示されているが、いずれについても異質性がある。糖尿病性ケトアシドーシスのリスク増加に関しては、プラセボに較べてSGLT2阻害薬がHR=2.20であったが、イベントの発生率自体は1未満/1000人年と低い。

◎考察
・SGLT2阻害薬は、心不全による入院や、腎臓病の進行に対する相対的なリスク軽減に大きな影響を与えることが判明した。一方で、臨床的な効果は、使用する患者の特性に依存し、深刻な心血管イベントのリスク軽減は、既に動脈硬化性の心血管疾患を有している患者のみに明らかで、動脈硬化性の心血管疾患を持たない患者群に対しては効果は認められなかった。ただし、心不全に因る入院に関しては、動脈硬化性の心血管疾患の有無や心不全の既往の有無に関わらず明らかかつ同等の効果がある。腎臓病の進行に関しても、より悪い水準の腎機能を有する患者にSGLT2阻害薬を使う方が、腎機能の悪化への効果が少ないが、心不全による入院の減少に大きく寄与する結果となった。
・概して、SGLT2阻害薬は、真菌性の生殖器感染のリスクを上昇させることを除いては、忍容性が高く、一般的に安全な薬だと捉えられる。糖尿病性ケトアシドーシスのリスクを上げうるが、その割合は極めて低く、充分な患者教育と注意を払うことでリスクを下げることができる。脳卒中に対する安全警告があったが、現時点でのメタアナリシスではそのリスクは示されなかったし、肢切断や骨折に関しては1つの試験でしかリスク上昇は認められなかった。
・今回の研究の限界として、個々の特定のデータというよりは、むしろ研究レベルでのデータの集合を用いたこと、対象とする患者の基準が、検討した研究間でわずかながら異なること、さらに動脈硬化性の心血管疾患や心不全の既往がその患者にあるか否かは、研究者側の報告によっており、一部の患者はこれらの疾患の明確な診断を受けていない可能性があることが挙げられる。

◎結論
・動脈硬化性の心血管疾患や、心不全既往の有無に関わらず、2型糖尿病患者にはSGLT2阻害薬を考慮して良いと思われる。

※資料一覧
20190320富田1
3つの臨床試験の詳細。使用されているSGLT2阻害薬は、それぞれエンパグリフロジン(ジャディアンス®)、カナグリフロジン(カナグル®)、ダパグリフロジン(フォシーガ®)。

20190320富田2
(図1) 心筋梗塞、脳梗塞、心血管死に関するメタアナリシス。

20190320富田3
(図2) 心不全に因る入院及び心血管死に関して、動脈硬化性の心血管疾患を持つか、
リスクファクターのみにとどまるかの観点から検討したメタアナリシス。

20190320富田4
(図3) 心不全に因る入院及び心血管死に関して、心不全既往の有無で検討したメタアナリシス。

20190320富田5
(図4) 腎機能の悪化、末期腎不全、腎死に関して、動脈硬化性の心血管疾患の有無の観点から
検討したメタアナリシス

20190320富田6
(図5) (A)腎機能低下、末期腎不全、腎死について、(B)心不全に因る入院について、
(C)大きな心血管イベントについて、それぞれ腎機能の観点から検討したメタアナリシス

【開催日】2019年3月20日(水)

急性鼻副鼻腔炎,急性細菌性鼻副鼻腔炎の診断に有用な病歴,身体所見

―文献名―
Mark H. Ebell, Brian McKay, et al. Accuracy of Signs and Symptoms for the Diagnosis of Acute Rhinosinusitis and Acute Bacterial Rhinosinusitis. Annals Fam Med 2019; 17:164-172.

―要約―
【背景と目的】
過去の急性鼻副鼻腔炎の臨床診断に関するシステマティックレビューは全て15年以上前のものであり,2変量メタ解析のような最新の統計分析的手法を用いていない.本研究の目的は急性鼻副鼻腔炎や急性細菌性鼻副鼻腔炎の臨床診断に関する包括的なメタ分析を行うことである.
【方法】
臨床的に急性鼻副鼻腔炎を疑う外来患者を対象とし,感度と特異度を測定し十分な情報を報告している研究をMedlineで探索した.検索された1649の研究のうち17の研究が組み入れ基準(inclusion criteria)に合致した.急性鼻副鼻腔炎は評価が確定されている参照基準(レントゲン,超音波エコー,CT)により診断され,急性細菌性鼻副鼻腔炎は副鼻腔穿刺による膿汁の証明または細菌培養陽性により診断した.病歴や身体所見の精度の見積もりを測定するために2変量メタ解析を用いた.
【結果】
副鼻腔炎を臨床的に疑う患者において,画像的に確定診断された急性鼻副鼻腔炎の有病率は51%,副鼻腔穿刺により確定診断された急性細菌性鼻副鼻腔炎の有病率は31%であった(Table2).

20190320山田1

急性鼻副鼻腔炎を最もよくrule inできる臨床所見は中鼻道の膿性鼻汁(陽性尤度比[LR+] 3.2),全体的な印象(LR+ 3.0)であった.最も良くrule outできる所見は全体的な印象(陰性尤度比[LR-] 0.37),transillumination(副鼻腔の透過照明)が正常であること(LR- 0.55),先行する気道感染がないこと(LR- 0.48),鼻汁がないこと(LR- 0.49),膿性鼻汁がないこと(LR- 0.49)であった(Table 3).

20190320山田2

限られた情報に基づくが,急性細菌性鼻副鼻腔炎の最良の予測因子は全体的な印象(LR+ 3.8,LR- 0.34),悪臭症(息の悪臭)(LR+ 4.3,LR−0.86),歯痛(LR+ 2.0,LR- 0.77)であった(Table4).

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Clinical decision ruleがいくつか提案されているがどの研究においても前方視的に有効性が確認されてはいなかった(Table5).

20190320山田4

【結論】
臨床的に急性鼻副鼻腔炎を疑う患者において急性細菌性鼻副鼻腔炎は約1/3しか認められない.全体的な印象,悪臭症,歯痛が急性細菌性鼻副鼻腔炎の最良の予測因子であった.C-reactive proteinや尿検査をもちいたClinical decision ruleは有用である可能性があるが,前方視的な有効性の確認が必要である.

【開催日】2019年3月20日(水)

電子タバコの方がニコチン代替療法よりも禁煙率が高い

-文献名-
Peter Hajek, Ph.D, et al. A Randomized Trial of E-Cigarettes versus Nicotine-Replacement Therapy. The New England Journal of Medicine. 2019;7(380):629-637.

-要約-
Background:
電子タバコは禁煙の試みとしてよく利用されるが、禁煙治療として認定されているニコチン代替療法と比べて、その効果についてのエビデンスは限られている。
タバコから電子タバコへの変更することで、健康上のリスクを減らすことが期待されている
ニコチン含有の電子タバコはニコチンの入っていない電子タバコとくらべて禁煙に効果があるとコクラン・レビューは示している
しかし、対面の診療を伴わない、ニコチンパッチと低用量のニコチンを含有している電子タバコによる治療を比較した研究では、いずれの治療法もあまり効果は高くなかった
Method:
イギリスのNHSによる禁煙プログラムに参加した成人を、最大3ヶ月間のニコチン代替療法(各々が選択した製品を利用、複数併用可能)か、電子タバコスターターパック(第2世代、詰替可能、1本あたり18mg/mlのニコチン含有)にランダムに割り付けた。詰替用の液体は、各々が好みの香りや強さのものを購入して良いと勧めている。治療には、少なくとも4週間、週1回の行動療法が行われる。プライマリ・アウトカムは、最終受診で生化学的に評価される1年間の継続的な禁煙とした。フォローから脱落した、あるいは最終的な生化学的な評価を受けなかった参加者は禁煙失敗と判断した。セカンダリー・アウトカムは、参加者の自己申告による治療の利用状況と呼吸器症状とした。
Two-group, pragmatic, multicenter, individually randomized, controlled trial
期間:May 2015-Feb 2018
NHSの禁煙プログラムは英国内では無料で提供されている
ソーシャル・メディアや広告で参加者を募る
事前に候補者をスクリーニングし、ベースラインのセッションに呼ぶ
書面で同意を得て、禁煙日を決める
禁煙日を決めてから、いずれかの治療法にランダムに割り付ける
ランダム化の後は、すぐに製品の利用を開始する
全ての参加者は行動療法的なサポートを受ける
医師による1対1のセッションで、CO濃度測定も行われる
参加者は26週と52週に、電話にて製品の使用状況と禁煙状況について報告する
52週の時点で禁煙あるいは50%以上の減煙ができているか参加者はCO濃度測定するよう勧められる(26$US支給あり)
ニコチン代替療法:パッチ、ガム、飴、鼻スプレー、口スプレー、mouth strip、吸入、microtabs)、併用療法が推奨されており、特にパッチと速攻型系抗生剤の組み合わせが多い。変更も可能。提供の仕方はサイトによって異なる。通常の治療の同様、最大3ヶ月まで利用可能。
電子タバコ:One Kitというスーターキットを提供される。電子タバコの詰替方法の指導あり。電子タバコの液体がなくなったら、ネットや店で詰替用を購入してもらう。ある製品が合わなければ別な製品へ変更しても良い。詰替用の液体は、異なる香りや強さを自由に試してみてよい。One Kit 26-40$。
ニコチン代替療法も電子タバコも、禁煙後4週間はもう一方へ変更してはダメ。
Results:
Figure 1, Table 1〜5参照
Conclusion:
行動的なサポートが行われている場合には、電子タバコはニコチン代替療法よりも禁煙に対する効果がある。
Discussion:
他の同じような研究と比べて禁煙率がとても高い。その原因として以前にも禁煙にトライしたことのある参加者が多いので、参加者のモチベーションが高かったか。あるいは対面のサポートがあったからか。詰替可能な電子タバコがよかったのか、自由に詰替用液体を選択できたからか。
これまでの研究では、電子タバコはタバコの離脱症状が軽く、禁煙率が高く、それぞれのニーズに合わせてニコチン量を選べることがニコチン代替療法よりも良い理由としている。
電子タバコの継続率はかなり高い。まだ知られていない健康上のリスクが長期使用で出てくる可能性がある。しかし、便秘や口内炎、体重増加といった禁煙の離脱症状を和らげる効果がある。ヘビースモーカーの再発予防のためには役立つかもしれない。
Limitation:製品は盲検化出来なかった。CO濃度は24時間以内の喫煙を検出するため偽陰性の可能性あり。脱落率が21%と高く、通常研究の妥当性に影響するとされるが、他の禁煙の研究でも同等。
By Dynamed:
禁煙率は人種によって異なる。今回の研究では、人種毎のデータがなく、人種によって調整された分析がされていない。
白人やヒスパニックでは禁煙率は高いが、アフリカン・アメリカンでは禁煙率は低い。

【開催日】2019年3月6日(水)

プライマリ・ケアにおける受診予約までの時間短縮対策の システマティクレビュー

-文献名-
Ansell, Dominique, et al. “Interventions to reduce wait times for primary care appointments: a systematic review.” BMC health services research 17.1 (2017): 295.

-要約-
背景:近接性と使い勝手の良さ、は効率的かつ効果のあるプライマリケア提供体制の重要な特徴である。昨今、タイミングの良い家庭医への受診がカナダにおいて懸念されている。好ましくないアウトカムと受診予約までの時間の長さは関連があり、人によっては救急受診に頼ることになっている。受診予約までの時間が長いと、患者は良くない健康アウトカムを経験し、救急外来を使用することになる。私たちの研究の主目的は、系統的に文献をレビューし、受診予約までの時間を短縮するための介入方法を同定することである。また二番目の目的として、患者満足度の評価と未来院率を下げることである。
方法: Medline via Ovid SP (1947 to present), Embase (from 1980 to present), PsychINFO (from 1806 to present), Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL; all dates), Cumulative Index to Nursing and Allied Health (CINAHL; 1937 to present), Pubmed (all dates) のデータベースを検索し、プライマリケアの受診予約までの時間減少のための介入とアウトカムの関連を報告した研究を同定した。2名の独立した研究者が、事前に定めた包含・除外基準とMulti-level screening approachを用いてエントリーした全ての研究をレビューした。また、the Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventionsに基づいて行った。
結果:3960件の文献が同定され、11件が全ての包含・除外基準を満たした。対象となった文献からデータ抽出を行うと、open access schedulingが最も普遍的に使用されている、受診予約までの時間短縮のための介入方法であった。さらに対象となった研究は、診療後のフォローの電話対応、ナースプラクティショナーがスタッフの上にいること、看護師やGPがトリアージをすること、E-mailによる相談、は受診予約までの時間短縮に効果があった。
結論:私たちの知る限りでは、プライマリケアの受診予約までの時間短縮のための介入を同定した、初めての系統的レビューである。結果によれば、open access schedulingと他の患者中心の介入が時間短縮に寄与するかもしれない。
このレビューが、政策立案者や家族内のケア提供者へ、タイムリーなプライマリケアの利用へ繋がる介入を紹介するであろう。
open access schedulingとは・・・(同じ主治医にいつでも受診する体制を確保することが重要という前提がある) 外来予約枠を50%あまりopenにしておいて(予約を入れない状態に当日までしておく)、当日のニーズにその主治医が答えられるようにするモデル。従来のモデルでは、外来予約枠は10%あまりopenにして対応していたり、当日ニーズに対応するWI枠担当医のような医師を設定するモデルがあったとのこと。
カバーする人口規模と医師の外来枠の数を分析して、demand/Capacityのバランスを見た上で、何%程度にするか決めるようだ。まずprimary careという医療体制の国ではpopulationの分析からdemandの予測もしやすいのだろう。

【開催日】2019年3月6日(水)

血圧コントロールを評価するための血圧日誌の活用

-文献名-
James E.Sharman, BHMS(Hons), PhD, et al. Pragmatic Method Using Blood Pressure Diaries to Assess Blood Pressure Control. Annals of family medicine. Vol.14, No.1, January/February 2016

-要約-
Introduction
診療所血圧は患者の血圧管理によく使われるが、真のコントロール状況を正確に反映しないという限界がある。家庭血圧(HBP)、または24時間自由行動下血圧(ABP)の使用は予後有用性が高い。HBPは一般的に広く利用されており、その有用性から多数の国で支持されているが、患者の日誌から手動で血圧の平均を計算しなければならないという問題がある。外来の時間で医師がその計算をすることは現実的ではない。今回、HBPが収縮期血圧の閾値(≧135mmHg)を超えている割合について、どの程度の割合が最適かを決定する目的で研究が行われた。
Method
3つのオーストラリアの施設で、高血圧治療中の患者286名が募集され、ランダム化臨床試験が実施された。患者は合併症のない本態性高血圧に対し、3種類以下の降圧薬内服により治療を受けている妊娠していない成人が選ばれた。除外基準は左室心筋重量係数の異常、冠動脈疾患または腎疾患の既往、血清クレアチニン>1.6、二次性高血圧、コントロール不良の高血圧(診療所血圧>180/100)、大動脈弁狭窄症、上肢閉塞性アテローム性動脈硬化症の患者である。患者は7日間HBPを記録し、24時間ABP、大動脈硬化、左室心筋重量および機能、ならびに研究登録時のベースライン検査で評価された左房面積が測定された。24時間ABP収縮期血圧≧130mmHg、または日中の24時間ABPの収縮期血圧≧135mmHgと定義された。確証的証拠による検証は、最終臓器疾患のマーカーとの関連によって行われた。
Results
治療/目標閾値を超える24時間のABP収縮期血圧の最良の予測因子は、最後の10回の在宅収縮期血圧測定値のうち3回以上が135mmHg以上の血圧となっていることであった(Table 2参照)。この基準を満たさない患者と比較して、この基準を満たす患者は標的臓器疾患の証拠があり、有意に高い大動脈硬化、左室の相対的な壁肥厚、左房拡大、左室駆出率低下がみられた。
Discussion
患者のHBP日誌の使用は、血圧管理ガイドラインおよび国際的な専門家委員会によって推奨されているが、外来の中で全ての患者のHBPの平均を計算することは現実的ではない。本研究により、最後10回のHBPのうち30%以上が≧135mmHgであった場合、24時間ABPによれば血圧コントロールが不良になる傾向があることが分かった。その妥当性として、最後10回のHBPの30%以上が≧135mmHgとなった患者で、高血圧関連の心臓および大動脈の末梢臓器疾患罹患率が高いことで裏付けられた。本研究の限界として、今回の調査結果は我々が使用したHBPプロトコルの影響を受けているかもしれず、異なるHBP記録方法や、著明に高い診療所血圧(>180/100mmHg)の患者に一般化できない可能性がある。また、降圧薬の服用時間を標準化したり、HBPの一貫性に影響を与える可能性のある日常生活活動を制限したりはしなかった(運動習慣、食事、飲酒など)。それでも、HBPが今回の研究で使用され、ガイドラインで推奨されているような方法で記録された場合、再現性高く、信頼性の高い血圧が確認できる。

【開催日】2019年2月20日(水)

ACE阻害薬と肺癌リスク

-文献名-
Blánaid M Hicks, et. al. Angiotensin converting enzyme inhibitors and risk of lung cancer: population based cohort study BMJ 2018;363:k4209

-要約-
Introduction:
アンジオテンシン変換酵素阻害剤(以降、ACEI)は短期的には比較的安全であることが示されているが、長期使用が癌のリスク増加と関連する可能性が懸念されている。いくつかの生物学的研究がACEIと肺癌リスクとの関連の可能性のために存在する。ACEIの使用は肺にブラジキニンの蓄積を引き起こし、肺がんの増殖を刺激しうると報告されている。5また、サブスタンスPの蓄積をもたらし、これは肺癌組織において発現され、そして腫瘍増殖および血管新生と関連している。
いままでの研究では無作為化対照試験のメタアナリシスでは、ACEIによるがんの発生率の増加は認めらなかったが、ほとんどのサンプルが比較的小規模で追跡期間が短かった(中央値3.5年)。アンジオテンシン受容体遮断薬(以下、ARB)の使用と比較してACEIの使用が肺癌リスク増加と関連しているか決定するため大規模な集団ベース試験を行った。
Method:
この研究は1500万人以上の患者を含む約700の一般診療からのデータが含まれる、英国臨床診療研究データリンク(CPRD)を使用した。降圧薬(βアドレナリン受容体遮断薬、αアドレナリン受容体遮断薬、ACEI、ARB、カルシウムチャンネル遮断薬、血管拡張薬、中枢性降圧薬を含む)で新たに治療開始された18歳以上の全患者の基本コホートを特定した。すべての患者に少なくとも1年間の病歴がCPRDにあることを要求した(利尿薬、神経節遮断薬、およびレニン阻害薬)。
上記で定義された基本コホートから、1995年1月1日以降(英国でACEIとARBの両方が処方可能となった最初の年)の12月31日までに新規降圧薬を服用し始めた全患者の試験コホートを特定した。これらの患者には、新たに降圧薬で治療開始された患者、ならびに以前の治療歴で使用されていない降圧薬を追加または切り替えた患者が含まれた。癌と診断をうけたことのある患者(非黒色腫皮膚癌以外)およびコホートに入る前の任意の時点で癌治療(化学療法または放射線療法)を受けたことのある患者は除外した。潜伏期間の考慮と追跡調査の間の偶発的事象の同定を確実にするためにコホート登録後の追跡調査1年未満の患者を除外した。
すべての解析モデルでは、コホート参加時に測定された以下の変数について調整された:年齢、性別、コホート参加年、BMI、喫煙状態(喫煙継続中、禁煙後、非喫煙)アルコール依存性疾患(アルコール依存症、アルコール性肝硬変、アルコール性肝炎、肝不全を含む)、および肺疾患の既往歴(肺炎、結核、慢性閉塞性肺疾患を含む)。さらに研究モデルには治療された高血圧の期間(降圧薬の最初の処方からコホート参加との間の時間として定義)およびコホートに参加前のスタチンの使用が含まれた。
各曝露群について、ポアソン分布に基づいて、肺癌の粗発生率および95%信頼区間を計算した。欠損値を持つ変数の多重代入を使用して、アンジオテンシン受容体遮断薬の使用と比較したACEIの使用に関連する肺がんのハザード比および95%信頼区間を推定するために、時間依存Cox比例ハザードモデルを使用した。
Results:
コホートには992 061人の患者が含まれ、1年後のコホート参加準備期間を超えて平均6.4(SD 4.7)年間追跡された。追跡調査期間中、335,135人の患者がACEIで治療され、29,008人がARB、そして10 1,637人がACEI/ARB併用で治療された。全体として、7952人の患者が肺癌に罹患していると新たに診断され、1000人年当たり1.3の粗発生率1.3(95%信頼区間1.2〜1.3)となった。

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表1は、コホート全体のACEI、ARB、および他の降圧薬の使用によるベースライン特性を示す。アンジオテンシン受容体遮断薬の使用者と比較して、ACEI服用群は男性、アルコール関連障害、現在喫煙していること、およびより高いBMIを有する可能性が高かった。さらに、ACEI服用群は治療された高血圧の期間がより短く、スタチンや他の処方薬を使用する可能性がより高かった。ACEIおよびARB服用者は、肺炎、結核、および慢性閉塞性肺疾患の類似した病歴を持っていた。

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ARBと比較して、ACEIは14%の肺癌リスク増と関連していた(1000人年あたり1.6v1.2 ハザード比1.14、95%信頼区間1.01〜1.29)。5年未満のACEIの使用は肺がんのリスク増加と関連していなかった(ハザード比1.10、0.96から1.25)。しかし5〜10年の使用(1.22、1.06〜1.40)で上昇し、10年以上の使用(1.31、1.08〜1.59)でも増加し続けた。ACEI開始以降の期間についても同様の関連性が観察され、ハザード比は開始後より長い時間で増加し、開始後10年以上でピークに達した(ハザード比1.29、1.10から1.51)。

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Discussion:
約100万人の患者を対象としたこの大規模な集団ベースの研究では、ACEIの使用は全体で14%の肺がんリスクの増加と関連していた。関連性は5年間の使用後に明らかになり、特に10年間以上ACEIを使用した患者の間では、長期間の使用で増加した(31%のリスク増加)。英国では、毎年7,010万件の降圧薬が投与されており、そのうち約32%がACEIである。
以前の無作為化比較試験のメタアナリシスでは、ACEI服用と癌全体または肺癌との間に関連は見つからなかったが、比較的短期間の追跡期間(中央値期間3.5年(1.3〜5.1年))であることから癌などの長期の有害事象を評価するのに十分な追跡期間ではなかった。本研究で5年間の使用後にACEIと肺癌リスクとの関連が明らかになったことを考えると、これは特に重要である。
この研究にはいくつかの制限がある。まず、重要な交絡因子を調整することはできたが、この研究では、社会経済的地位、食事、ラドンまたはアスベストへの曝露、肺がんの家族歴など、他の潜在的な交絡因子に関する情報が欠けていた。さらに、喫煙状態を調整したにもかかわらず、喫煙の期間と強度に関する詳細な情報が不足していた。しかしながら非喫煙者内で行われた分析は、明らかな持続時間- 反応の関連性とともに、一次分析の結果と一致する結果を生み出し、喫煙強度による交絡が今回の調査結果に重大な影響は及ぼさないだろう。第二に、CPRDの処方は一般開業医によって書かれた処方を表しているので、患者が治療計画に従わなかったり、専門家から処方を受けたりした場合、ばく露の誤分類が起こり得る。しかし、コホートに入るすべての患者が降圧薬で新たに治療された患者であったので、非遵守による誤分類は最小限であり、ACEIとARBの間ではおそらく差がないはずである。
最後に、持続性咳嗽はACEIの一般的でよく知られた副作用であり、観察された関連性が検出バイアスに起因する可能性を高める。ACEIを服用している患者は、胸部コンピュータ断層撮影などの診断的評価を受ける可能性が高く、前臨床肺癌の検出率が増加する可能性がある。CPRDに胸部検査に関する情報は十分に記録されておらず、分析でこの可能性を説明することはできなかった。しかし、最近の研究では、ACEIとアンジオテンシン受容体拮抗薬の開始後の胸部検査での違いはごくわずかなものと示されており、さらに、肺癌の過剰検出は治療開始後比較的早く観察されることが予想され、それが我々の追跡調査を1年遅れらせた理由の一つである。さらに、ACEIの使用と肺癌リスクとの関連は、使用期間の増加(少なくとも5年間の使用後)によってのみ明らかになった。まとめると、これらの結果は肺癌の過剰検出の仮説を裏付けるものではない。
Conclusion:
この大規模な集団ベースの研究では、ACEIの使用は、期間と反応の関係の証拠とともに、全体として肺がんのリスクの上昇と関連していた。観測された推定値は控えめだが、肺癌リスクがある多数の患者につながる可能性があるため、今回の知見は他の状況でも再現する必要がある。

【開催日】2019年2月20日(水)

サルコペニアと嚥下障害

―文献名―
Ichiro Fujishima. Sarcopenia and dysphasia. Sarcopenia and dysphagia. 2019; Jan 9.

―要約―
Introduction:
 サルコペニアと嚥下障害については学会や研究会で話題に上がることが多い。しかし、明確な基準や定義はまだ定まっておらず。今後のさらなる研究の発展のためにも、現時点でわかっていることをまとめる必要があると考えられた。メカニズム・診断・治療・今後の展望について統一見解を出すことを目的とする。(日本摂食嚥下リハビリテーション学会、日本サルコペニア・フレイル学会、日本リハビリテーション栄養学会、日本嚥下医学会の4学会合同で作成)

 サルコペニアは1989年に提案された概念で、骨格筋量の低下に伴う筋力低下による身体機能低下を示している。診断基準は未だまちまちで、骨格筋量は必須項目であるものの、筋肉の機能の評価には筋力低下(握力)と身体機能低下(歩行速度)の両者もしくはいずれかを採択するのかで意見は分かれている。嚥下機能との関連については2012年に最初の報告があり、その後は本邦を中心に研究が重ねられている。サルコペニアの概念は、老化に伴う生理的なもの(内的要因)と運動不足・栄養摂取不足といった外的要因の両者が誘因となって生じる筋萎縮を示しており、原因には中枢神経、筋繊維自体の変化、ホルモンや栄養、生活習慣などが関与している。嚥下筋のサルコペニアについては未だ議論中で、嚥下筋の廃用とサルコペニアの違いや、栄養改善と訓練によって回復可能性があるのかどうかについてさらなる研究が必要である。
 サルコペニアによる摂食嚥下障害のリスク因子としては、サルコペニアそのもの、低栄養、低ADLがあり、予防にはリハビリテーションや栄養管理が有用ではないかと考えられている。
現在、サルコペニアに伴う嚥下障害は2017年に診断フローチャート(Fig.1)があり、嚥下関連筋の筋肉量を評価せずに診断が可能である。これにより、「サルコペニアの嚥下障害とは、全身と嚥下筋関連のサルコペニアによる摂食障害である。全身のサルコペニアをみとめない場合、神経筋疾患によるサルコペニアは除外。加齢・活動低下・低栄養・疾患による二次性サルコペニアは含む。」定義されている。嚥下関連筋の筋肉量はCTやエコーで評価可能と言われており、特にオトガイ舌骨筋のエコーでの筋肉量・輝度による評価が有用と言われており、サルコペニアの診断基準案(Table.1参照)を提示した。
 治療によってサルコペニアによる摂食嚥下障害が改善されたという報告は3例。いずれも摂食嚥下リハビリと同時に35kcal/kg(理想体重)を目標とした栄養管理を行っている。リハビリテーションと栄養改善の併用がやはり重要と言える。

 嚥下筋にサルコペニアが生じた場合の嚥下障害の判定方法は未だ不明瞭。両者の関係性についても引き続き議論を要する。予防や治療については、栄養改善を目指した栄養管理がどこまで予防・治療に効果を及ぼすのかを明らかにしていきたいところ。健常高齢者や加齢に伴う変化を評価していくことや、薬物療法の開発も今後の課題の一つである。

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CC:下腿最大径、DXA:二重エネルギー X 線吸収測定法、BIA:生体インピーダンス法
DXAは全身測定用のものが必要のため、骨密度測定に一般に使われているものは不適切
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【開催日】2019年2月6日(水)

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